「長編(完結)」
生まれ変わっても
生まれ変わっても 17
それから、テヨンはイ・ガクのことをパク・ハに尋ねた。
過去からの手紙を読んで、頭で理解していることとは別に、湧き上がる感情に胸が潰れそうだった。
パク・ハを求めて止まぬその深い慕情。
説明しがたい想いに、イ・ガクが自分であると全身で感じた。
何も覚えていないことに悔しさもにじむが、先ほどまで感じていた嫉妬めいた思いとは明らかに異なる感情だった。
今は彼女が傍に居てくれる。
働く姿もこの目で見ることができる。
手も届くところにいる。
会えるし、声も聴ける。触れてもいられる。
「愛している」の言葉も確実に彼女の耳に届く。
これ以上の幸せがあるだろうか?
僕は、300年パッカを待っていたんだ。
「遅かったね。長い間、待ってたのに。」
南山公園で、初めてパク・ハに語りかけたその言葉を思い出した。
魂に刻み込まれた記憶とでも言おうか・・・。
パク・ハは、イ・ガクが初めて現れたその時からのことを、丁寧にテヨンに伝えた。
笑ったり、時には涙を浮かべたり。
テヨンも共に笑ったり、イ・ガクのしたことを謝ってみたり、自分がイ・ガクの転生である、という事実を少しずつ受け入れ始めていた。
ただ、彼がパク・ハの姉であるセナと結婚しようとしていたことだけは、どうにも許し難い様子だ。
「よりによって、君のお姉さんだよ?気が知れないな。」
「お姉ちゃんが世子嬪の生まれ変わりだから。」
「だけど、君を愛してたのに。・・・それに、僕の名前でそんなことされてたら、今頃どうなってたか!」
目が覚めたら妻がいた。それこそ受け入れ難いに違いない。
イ・ガクが自分だと認めて、パク・ハに対する威圧的な態度を謝っていたばかりなのに、今度はイ・ガクが自分の振りをして騒動を起こしたと言って怒っている。パク・ハは思わず笑ってしまった。
「とにかく!僕は君を愛してるんだよ。」
怒りながら言う言葉ではないはずだが、その気持ちが、パク・ハには嬉しかった。
テヨンが、くすくすと笑い続けるパク・ハの腕を取って、自分の方に引き寄せた。
顔を近づけて、目を瞑り、唇を合わせようとする。
唇が触れそうになったその瞬間。
ぐうううううぅぅ。
テヨンの腹の虫が大きく鳴いた。
しばしの沈黙の後、二人とも目をぱちくりさせる。
「くっ、くくく・・うふふ。ふふふ、ふはは、あはははは。」
パク・ハは堪らず、大声で笑い始めてしまった。
「もう、ふふっ、テヨンさんたら。お昼から、何も食べてないんでしょ?何か作るわ。食べたいものある?」
テヨンは、ばつが悪そうに頭を掻いている。
「じゃあ、オムライス。」
テヨンは、なぜそれをリクエストしようと思ったのか、自分でも分かっていなかった。
パク・ハは、驚いた顔をしたが、すぐににっこりと笑う。
「言い忘れてたけど、屋根部屋に来てから初めて食べたものがオムライスだったのよ。」
すぐに準備するね、とパク・ハはキッチンに向かった。
そうして、転生した後でも「屋根部屋に来てから初めて食べるもの」がオムライスということになった。
キッチンから、リズミカルな包丁の音が聞こえ始め、何かを炒めているらしい、じゅーっ、という音がする。
料理をする音、おいしそうな匂い。お腹が空いているのだ、とさらに自覚させられた。
新婚みたいだ、とテヨンは独りほくそ笑む。
パク・ハが手を拭きながら、リビングに戻ってきた。
「テヨンさん。お待たせ。ダイニングは向こうなの。」
うん、と言って立ち上がり、パク・ハに付いてダイニングへ向かう。
おいしそうな匂いがリビングまで届いていたが、ダイニングキッチンには、更に食欲をそそる匂いが充満していた。
テーブルには、出来立てで湯気を立ち上らせているオムライスが一皿だけ。
「あれ?パッカは食べないの?」
テヨンが、椅子に座りながらそう訊いた。パク・ハもテヨンの向かいに腰かける。
「もう、夜中だから。・・・太っちゃう。」
少しぐらい太った方が、抱き心地がいいのに、と思ったがテヨンは口には出さなかった。
腕時計を見ると、もう日付を跨ごうとしていた。
「それにね、夕方、お客さんの差し入れのマフィンを食べちゃったの。」
パク・ハは舌をぺろりと出した。
「ごめん。僕が店に行ったの自体が遅かったから。食べたら、すぐ帰るよ。」
美味しそうだ、いただきます、とテヨンは嬉しそうに匙を取った。
よほどの空腹だったと見え、オムライスを口いっぱいに頬張りながら、勢いよく平らげていくテヨンを見ながら、パク・ハは、初めてそれを食べた時の王世子を思い出していた。
ここへ来て初めての喜びだ、そう言って、偉そうに怒鳴ってばかりいると思っていた王世子が、初めて微笑を浮かべた時のことを。
「泊まって行ったら?」
もう空になってしまった皿に匙を置いて、テヨンが驚いた顔でパク・ハを見た。
過去からの手紙を読んで、頭で理解していることとは別に、湧き上がる感情に胸が潰れそうだった。
パク・ハを求めて止まぬその深い慕情。
説明しがたい想いに、イ・ガクが自分であると全身で感じた。
何も覚えていないことに悔しさもにじむが、先ほどまで感じていた嫉妬めいた思いとは明らかに異なる感情だった。
今は彼女が傍に居てくれる。
働く姿もこの目で見ることができる。
手も届くところにいる。
会えるし、声も聴ける。触れてもいられる。
「愛している」の言葉も確実に彼女の耳に届く。
これ以上の幸せがあるだろうか?
僕は、300年パッカを待っていたんだ。
「遅かったね。長い間、待ってたのに。」
南山公園で、初めてパク・ハに語りかけたその言葉を思い出した。
魂に刻み込まれた記憶とでも言おうか・・・。
パク・ハは、イ・ガクが初めて現れたその時からのことを、丁寧にテヨンに伝えた。
笑ったり、時には涙を浮かべたり。
テヨンも共に笑ったり、イ・ガクのしたことを謝ってみたり、自分がイ・ガクの転生である、という事実を少しずつ受け入れ始めていた。
ただ、彼がパク・ハの姉であるセナと結婚しようとしていたことだけは、どうにも許し難い様子だ。
「よりによって、君のお姉さんだよ?気が知れないな。」
「お姉ちゃんが世子嬪の生まれ変わりだから。」
「だけど、君を愛してたのに。・・・それに、僕の名前でそんなことされてたら、今頃どうなってたか!」
目が覚めたら妻がいた。それこそ受け入れ難いに違いない。
イ・ガクが自分だと認めて、パク・ハに対する威圧的な態度を謝っていたばかりなのに、今度はイ・ガクが自分の振りをして騒動を起こしたと言って怒っている。パク・ハは思わず笑ってしまった。
「とにかく!僕は君を愛してるんだよ。」
怒りながら言う言葉ではないはずだが、その気持ちが、パク・ハには嬉しかった。
テヨンが、くすくすと笑い続けるパク・ハの腕を取って、自分の方に引き寄せた。
顔を近づけて、目を瞑り、唇を合わせようとする。
唇が触れそうになったその瞬間。
ぐうううううぅぅ。
テヨンの腹の虫が大きく鳴いた。
しばしの沈黙の後、二人とも目をぱちくりさせる。
「くっ、くくく・・うふふ。ふふふ、ふはは、あはははは。」
パク・ハは堪らず、大声で笑い始めてしまった。
「もう、ふふっ、テヨンさんたら。お昼から、何も食べてないんでしょ?何か作るわ。食べたいものある?」
テヨンは、ばつが悪そうに頭を掻いている。
「じゃあ、オムライス。」
テヨンは、なぜそれをリクエストしようと思ったのか、自分でも分かっていなかった。
パク・ハは、驚いた顔をしたが、すぐににっこりと笑う。
「言い忘れてたけど、屋根部屋に来てから初めて食べたものがオムライスだったのよ。」
すぐに準備するね、とパク・ハはキッチンに向かった。
そうして、転生した後でも「屋根部屋に来てから初めて食べるもの」がオムライスということになった。
キッチンから、リズミカルな包丁の音が聞こえ始め、何かを炒めているらしい、じゅーっ、という音がする。
料理をする音、おいしそうな匂い。お腹が空いているのだ、とさらに自覚させられた。
新婚みたいだ、とテヨンは独りほくそ笑む。
パク・ハが手を拭きながら、リビングに戻ってきた。
「テヨンさん。お待たせ。ダイニングは向こうなの。」
うん、と言って立ち上がり、パク・ハに付いてダイニングへ向かう。
おいしそうな匂いがリビングまで届いていたが、ダイニングキッチンには、更に食欲をそそる匂いが充満していた。
テーブルには、出来立てで湯気を立ち上らせているオムライスが一皿だけ。
「あれ?パッカは食べないの?」
テヨンが、椅子に座りながらそう訊いた。パク・ハもテヨンの向かいに腰かける。
「もう、夜中だから。・・・太っちゃう。」
少しぐらい太った方が、抱き心地がいいのに、と思ったがテヨンは口には出さなかった。
腕時計を見ると、もう日付を跨ごうとしていた。
「それにね、夕方、お客さんの差し入れのマフィンを食べちゃったの。」
パク・ハは舌をぺろりと出した。
「ごめん。僕が店に行ったの自体が遅かったから。食べたら、すぐ帰るよ。」
美味しそうだ、いただきます、とテヨンは嬉しそうに匙を取った。
よほどの空腹だったと見え、オムライスを口いっぱいに頬張りながら、勢いよく平らげていくテヨンを見ながら、パク・ハは、初めてそれを食べた時の王世子を思い出していた。
ここへ来て初めての喜びだ、そう言って、偉そうに怒鳴ってばかりいると思っていた王世子が、初めて微笑を浮かべた時のことを。
「泊まって行ったら?」
もう空になってしまった皿に匙を置いて、テヨンが驚いた顔でパク・ハを見た。
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