「長編(完結)」
生まれ変わっても
生まれ変わっても 19
朝食の席で、ソリは楽しげにおしゃべりをしていた。
いつもなら、テヨンが適当に相槌を打って、彼女の一方的な話で終わるのだが、今朝は違った。
「大叔母様、旅行はいつだったっけ?」
「ああ、あの話ね。流れちゃったわ。」
「ええー !! どうして ?! 」
テヨンが大声を上げたので、ソリがびくっと肩を震わせた。
「もう!びっくりするじゃないの。」
「ごめん。・・・だってさ、楽しみにしてたでしょ?」
「うーん。そうなんだけどね。ミョンリが行けないって言うの。」
ソリがいつも行動を共にしている仲良し五人組のうちの一人の名をあげた。
「一人でも行けなかったら止めちゃうの?」
「あら、五人が三人になったって、ミョンリさえいれば行くわよ。」
彼女がいる方が楽しいと言う。
何でも段取りしてくれて、彼女に任せておけば、女子会だろうと、旅行だろうと間違いなく楽しめる、彼女がいなければ意見すらまとまらない。
まとめ役であり、相当な世話好きということらしい。
ここで、ソリに旅行を諦められては、テヨンも困る。
そのまとめ役のおばさんを旅行に参加させるか、あるいはソリの納得するような旅行プランを立ててやるか。
「その人は、なんで旅行に行けないの?」
「お産が近いのよ。」
嫁か娘が臨月なのだろうか。それなら仕方ない。旅行プランを練ってやるしかないか・・・、とテヨンは思った。
「たくさん、生まれたら、貰ってもいいかしら?」
「え?たくさんって、三つ子とか・・・待ってよ、貰うって?」
まさか、養子?
「五匹くらいは生まれるって話よ。うちでも一匹、飼いましょうよ。猫。」
・・・猫って・・・。
「大叔母様、世話しないでしょ?」
「それもそうね。」
ソリのペースにハマってしまい、旅行の話が完全に流れてしまいそうになっている。
テヨンはあわてた。自分がそのプランを練ってでも、ソリには旅行に行ってもらわねば。
「大叔母様、僕がしてあげるよ。」
「ほんとに?! 嬉しいわぁ。やっぱりメスがおとなしくていいわよね。」
「は?メス?」
「うん。仔猫、かわいいわよぉ。前もね、仔猫、見せてもらったことがあってね。次は貰おうって思ってたのよ。」
ソリは両手を合わせて、明後日の方を向いている。
テヨンが、今度生まれる仔猫の世話をしてくれるものだと思い込んで。
「待って。大叔母様。猫は要らないよ。僕がするって言ってるのは、旅行の段取りの方!」
「え、そうなの?仔猫、かわいいのに。」
「猫はいいから、旅行、楽しんできてよ。きちんと、段取りしてあげるからさ。四人でいいんでしょ?」
ええ、まあ、とソリは仔猫に未練を残しつつ、段取りをしてくれるのなら友人達に連絡をすると言った。
元々は二週間後、火曜日から金曜日の平日に三泊四日の小旅行の予定だった。
ちょうどパク・ハの店の定休日も挟んではいるが・・・。
日曜日までゆっくりしてくれば、とテヨンは微笑んだ。
会社に着くと、自分の仕事をこなしつつ、決済すべき書類にサインをし、その合間にパソコンを開いた。
一口に旅行プランと言っても、その辺のパックツアーではソリ達を満足させられはしないだろう。
どうしたものか。自社の旅行パッケージに適当なものはなかっただろうか・・・。
テヨンは受話器を取ると内線電話で部下を呼び出した。
オフィスのドアがノックされる。
どうぞ、と声を掛けると、テヨンに呼び出された部下が一礼して入ってきた。
テヨンよりも年上の30代半ばのチーム長は、テヨンの下にいる何人かのチーム長の中でも一番の若手で、将来も嘱望されていた。
センスも良く、若々しいその姿は20代と言っても通用しそうだ。はにかんだような笑顔が、特におばさま達の心をつかむに違いない。
「本部長、ご用とは何でしょう?」
「ええ、僕の大叔母をご存知ですか?」
「はい。」
大叔母ぐらいの年代の女性の小グループ向けに、小旅行のパッケージを組んではどうだろうか、と持ちかけた。
ちょうど、大叔母が友人数人と旅行を計画しているから、彼女たちをリサーチして喜びそうなことを調べてみてはどうか、そのままプランニングして、彼女たちにモニターしてもらったらいいと思う、と告げた。
細かいモニタリングの為に、貴方が旅行に同行したらいいと思う、とも付け加える。
注文の多そうなおばさま達の旅行の計画という煩わしいことを、仕事として部下に押し付ける。
一見、職権乱用のようだが、仕事を与えられたチーム長は期待に応えようと頑張るだろう。
巧くいけば、商品として売り出すことができ、会社の利益にも繋がる。
しかも、彼を同行させることによって、おばさま達からすれば、イケメンの世話係も付いてくるのだ。
無駄がない、いい方法であると言えた。
本部長の辞令を受けて良かった、とテヨンは初めて思った。
今の彼の権限がなければ、社長に決済を仰がなければならないところだ。ソリの旅行の為に、あの仕事人間がOKを出すとはとても思えなかった。
チーム長に細かいことは任せると伝えて、ソリに電話をし事情を説明した。
ソリも大喜びで、電話口にチーム長を出させると、その日のうちに打ち合わせをしようと約束をしていた。
どうにか、ソリを旅行へと送り出せそうだ。
チーム長がオフィスを出て行った後、テヨンは、自分のすべきことに取り掛かった。
自分の前世がイ・ガクであった、と一度、感情的に受け入れることができた後は、いろんなことがしっくりと動き始めたように思う。
仕事関係で、過去のヨンチーム長の件を持ち出されても気にならなくなった。
祖母に対する自責の念も。
パク・ハに対する想いだけが溢れ出てくる。
彼女なしには生きられない。・・・イ・ガクはどうやって彼女のいない世界を生きたのだろうか?
何も覚えていなくても、思い出すことができなくても、イ・ガクのその感情の総てが自分のものだと理解できる。
「パッカ。・・・愛してる。」
テヨンは噛みしめるように、呟いた。
いつもなら、テヨンが適当に相槌を打って、彼女の一方的な話で終わるのだが、今朝は違った。
「大叔母様、旅行はいつだったっけ?」
「ああ、あの話ね。流れちゃったわ。」
「ええー !! どうして ?! 」
テヨンが大声を上げたので、ソリがびくっと肩を震わせた。
「もう!びっくりするじゃないの。」
「ごめん。・・・だってさ、楽しみにしてたでしょ?」
「うーん。そうなんだけどね。ミョンリが行けないって言うの。」
ソリがいつも行動を共にしている仲良し五人組のうちの一人の名をあげた。
「一人でも行けなかったら止めちゃうの?」
「あら、五人が三人になったって、ミョンリさえいれば行くわよ。」
彼女がいる方が楽しいと言う。
何でも段取りしてくれて、彼女に任せておけば、女子会だろうと、旅行だろうと間違いなく楽しめる、彼女がいなければ意見すらまとまらない。
まとめ役であり、相当な世話好きということらしい。
ここで、ソリに旅行を諦められては、テヨンも困る。
そのまとめ役のおばさんを旅行に参加させるか、あるいはソリの納得するような旅行プランを立ててやるか。
「その人は、なんで旅行に行けないの?」
「お産が近いのよ。」
嫁か娘が臨月なのだろうか。それなら仕方ない。旅行プランを練ってやるしかないか・・・、とテヨンは思った。
「たくさん、生まれたら、貰ってもいいかしら?」
「え?たくさんって、三つ子とか・・・待ってよ、貰うって?」
まさか、養子?
「五匹くらいは生まれるって話よ。うちでも一匹、飼いましょうよ。猫。」
・・・猫って・・・。
「大叔母様、世話しないでしょ?」
「それもそうね。」
ソリのペースにハマってしまい、旅行の話が完全に流れてしまいそうになっている。
テヨンはあわてた。自分がそのプランを練ってでも、ソリには旅行に行ってもらわねば。
「大叔母様、僕がしてあげるよ。」
「ほんとに?! 嬉しいわぁ。やっぱりメスがおとなしくていいわよね。」
「は?メス?」
「うん。仔猫、かわいいわよぉ。前もね、仔猫、見せてもらったことがあってね。次は貰おうって思ってたのよ。」
ソリは両手を合わせて、明後日の方を向いている。
テヨンが、今度生まれる仔猫の世話をしてくれるものだと思い込んで。
「待って。大叔母様。猫は要らないよ。僕がするって言ってるのは、旅行の段取りの方!」
「え、そうなの?仔猫、かわいいのに。」
「猫はいいから、旅行、楽しんできてよ。きちんと、段取りしてあげるからさ。四人でいいんでしょ?」
ええ、まあ、とソリは仔猫に未練を残しつつ、段取りをしてくれるのなら友人達に連絡をすると言った。
元々は二週間後、火曜日から金曜日の平日に三泊四日の小旅行の予定だった。
ちょうどパク・ハの店の定休日も挟んではいるが・・・。
日曜日までゆっくりしてくれば、とテヨンは微笑んだ。
会社に着くと、自分の仕事をこなしつつ、決済すべき書類にサインをし、その合間にパソコンを開いた。
一口に旅行プランと言っても、その辺のパックツアーではソリ達を満足させられはしないだろう。
どうしたものか。自社の旅行パッケージに適当なものはなかっただろうか・・・。
テヨンは受話器を取ると内線電話で部下を呼び出した。
オフィスのドアがノックされる。
どうぞ、と声を掛けると、テヨンに呼び出された部下が一礼して入ってきた。
テヨンよりも年上の30代半ばのチーム長は、テヨンの下にいる何人かのチーム長の中でも一番の若手で、将来も嘱望されていた。
センスも良く、若々しいその姿は20代と言っても通用しそうだ。はにかんだような笑顔が、特におばさま達の心をつかむに違いない。
「本部長、ご用とは何でしょう?」
「ええ、僕の大叔母をご存知ですか?」
「はい。」
大叔母ぐらいの年代の女性の小グループ向けに、小旅行のパッケージを組んではどうだろうか、と持ちかけた。
ちょうど、大叔母が友人数人と旅行を計画しているから、彼女たちをリサーチして喜びそうなことを調べてみてはどうか、そのままプランニングして、彼女たちにモニターしてもらったらいいと思う、と告げた。
細かいモニタリングの為に、貴方が旅行に同行したらいいと思う、とも付け加える。
注文の多そうなおばさま達の旅行の計画という煩わしいことを、仕事として部下に押し付ける。
一見、職権乱用のようだが、仕事を与えられたチーム長は期待に応えようと頑張るだろう。
巧くいけば、商品として売り出すことができ、会社の利益にも繋がる。
しかも、彼を同行させることによって、おばさま達からすれば、イケメンの世話係も付いてくるのだ。
無駄がない、いい方法であると言えた。
本部長の辞令を受けて良かった、とテヨンは初めて思った。
今の彼の権限がなければ、社長に決済を仰がなければならないところだ。ソリの旅行の為に、あの仕事人間がOKを出すとはとても思えなかった。
チーム長に細かいことは任せると伝えて、ソリに電話をし事情を説明した。
ソリも大喜びで、電話口にチーム長を出させると、その日のうちに打ち合わせをしようと約束をしていた。
どうにか、ソリを旅行へと送り出せそうだ。
チーム長がオフィスを出て行った後、テヨンは、自分のすべきことに取り掛かった。
自分の前世がイ・ガクであった、と一度、感情的に受け入れることができた後は、いろんなことがしっくりと動き始めたように思う。
仕事関係で、過去のヨンチーム長の件を持ち出されても気にならなくなった。
祖母に対する自責の念も。
パク・ハに対する想いだけが溢れ出てくる。
彼女なしには生きられない。・・・イ・ガクはどうやって彼女のいない世界を生きたのだろうか?
何も覚えていなくても、思い出すことができなくても、イ・ガクのその感情の総てが自分のものだと理解できる。
「パッカ。・・・愛してる。」
テヨンは噛みしめるように、呟いた。
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~ Comment ~
か****さま へ
ええ、ええ、パッカのことで頭いっぱいですよ。w
必死な姿が笑えますが・・・出張だって言って、泊まってくればいいのに、と書いてる私が思うという・・・ww
必死な姿が笑えますが・・・出張だって言って、泊まってくればいいのに、と書いてる私が思うという・・・ww
- #43 ありちゃん
- URL
- 2014.11/11 10:25
- ▲EntryTop
Re: 素敵な邪心
真面目にヨコシマなところが、笑えますよね。
イ・ガクはその立場に縛り付けられても仕方ありませんが、テヨンはその立場を大いに利用しそうです。W
イ・ガクはその立場に縛り付けられても仕方ありませんが、テヨンはその立場を大いに利用しそうです。W
- #44 ありちゃん
- URL
- 2014.11/11 10:33
- ▲EntryTop
Re: 野*様へ
野*様
パスワード申請ありがとうございます。
パスを送信させて頂きましたので、ご確認くださいませ。
パスワード申請ありがとうございます。
パスを送信させて頂きましたので、ご確認くださいませ。
NoTitle
ありちゃんさん、おはようございます!
前の記事にコメントすみません。
ソリの
>「ああ、あの話ね。流れちゃったわ。」
にテヨンより先に私の方が「えー、ど、どうして!」と叫んでいました(笑)
しかも猫!
猫の面倒なら私が見ますから、ぜひぜひご旅行に・・・(笑)
でも、テヨンって真面目なんですねぇ。
この先、2人がどんな風に結ばれるか、楽しみです。
やっぱり順番に楽しんで行くことにしました(*^_^*)
前の記事にコメントすみません。
ソリの
>「ああ、あの話ね。流れちゃったわ。」
にテヨンより先に私の方が「えー、ど、どうして!」と叫んでいました(笑)
しかも猫!
猫の面倒なら私が見ますから、ぜひぜひご旅行に・・・(笑)
でも、テヨンって真面目なんですねぇ。
この先、2人がどんな風に結ばれるか、楽しみです。
やっぱり順番に楽しんで行くことにしました(*^_^*)
- #985 瑞月
- URL
- 2015.10/15 09:21
- ▲EntryTop
Re: 瑞月さまへ
瑞月さま
こんにちは。
コメは、いつでも、どの記事にでも嬉しいです。
ありがとうございます。
> でも、テヨンって真面目なんですねぇ。
ホント、そうですね。・・・この時は・・・。フフフ。(ニヤリ)
> この先、2人がどんな風に結ばれるか、楽しみです。
ありがとうございます。この後、しばらく、私が楽しんでます。フフフ。(ニヤリ)
> やっぱり順番に楽しんで行くことにしました(*^_^*)
どうぞ、どんな形でもお好きに楽しんで頂けたら、嬉しいです。<m(__)m>
こんにちは。
コメは、いつでも、どの記事にでも嬉しいです。
ありがとうございます。
> でも、テヨンって真面目なんですねぇ。
ホント、そうですね。・・・この時は・・・。フフフ。(ニヤリ)
> この先、2人がどんな風に結ばれるか、楽しみです。
ありがとうございます。この後、しばらく、私が楽しんでます。フフフ。(ニヤリ)
> やっぱり順番に楽しんで行くことにしました(*^_^*)
どうぞ、どんな形でもお好きに楽しんで頂けたら、嬉しいです。<m(__)m>
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