「長編(完結)」
生まれ変わっても
生まれ変わっても 20
昨夜の約束通り、テヨンは早々に仕事を切り上げ、パク・ハの店へやって来た。
まだ営業中で、比較的多くの客でにぎわっている。
テヨンも注文の客の列に加わった。
パク・ハの方も、テヨンの来店には気付いていた。
彼が入店して来た時、型通りに、いらっしゃいませ、と言ったきり会話はできずにいる。
パク・ハは、内心、どぎまぎしていた。
昨夜の彼の言葉の意味を考えると、どう接していいのか分からない。
どういう意味か、と尋ねるのも照れくさい。尋ねるまでもなく、そういう意味だ、と彼女も分かってはいるのだから・・・。
テヨンの番になった。
「いつもの、リンゴジュースで。」
「はい。」
テヨンがにっこり微笑むのに、パク・ハは目を合わせることもできなかった。
彼はさほど気にするでもなく、ジューサーを動かす彼女を見つめていた。
出来上がったジュースのカップを受け取り、カウンターに紙幣を置く。
ありがとうございます、とまた型通りに言うパク・ハに、テヨンは目配せすると、小声で、待ってる、と告げた。
テヨンの視線の先は、店の一角。彼の指定席とも言うべき二人掛けのテーブルだった。
そこに座ると、カウンターのパク・ハのことがよく見える。テヨンお気に入りの座席だ。
客がいなければ会話も楽しめるが、その日は客足がなかなか途絶えなかった。
にこやかに応対したり、常連客と親しげに話すパク・ハを見ているのも楽しくて、飽くこともなく、テヨンは彼女を見つめ続ける。
笑みを湛える唇を見て、その柔らかさと甘さを思い出す。
顎から首筋、胸元へと視線を下げていきながら、白く滑らかな柔肌を想像した。
他の客が目に飛び込んできて、あわてて彼女から視線を逸らす。
ストローを咥え、液体を吸い上げるが、実は味がよく分からない。
また彼女に視線を戻し・・・・。
そんなことを繰り返していたが、いつの間にか、彼女のことしか見えなくなっていた。
ごくり
と、テヨンは生唾を飲み下した。
閉店時間、最後のお客さんを見送るとパク・ハはメインライトを落とした。
カウンターを出ると、ウインドウのブラインドを下げ、入り口のドアに鍵をかける。
テヨンを振り返ると、先刻から微動だにせず自分の方を見つめている。
頬に薄らと赤みが差し、ぼんやりしているようにも見える。
どうしたのかしら?体調が悪いのかな・・・。
パク・ハはテヨンに近付いて、白い手を伸ばした。
テヨンの額にひんやりとしたパク・ハの手が触れる。
「テヨンさん。顔が赤いわ。熱でもあるんじゃないの?」
テヨンの目の前に、心配そうに自分の顔を覗き込むパク・ハの顔があった。
「さっきから、ぼーっとしてるし、大丈夫?」
「えっ?いや、考え事してただけだよ。」
ふーんと言って、パク・ハはカウンターの中に戻って、洗い物を始めた。
「すぐ片付けちゃうから、待っててね。」
「うん。僕も何か手伝おうか?」
「すぐ済むから、座ってて。」
忙しく手を動かしながらパク・ハは微笑んだ。
パク・ハの答えに、テヨンはホッとする。
今は立ち上がれない・・・。
確かに熱は上がっていた。
体中の血流が、一か所に集中してしまっているのだ。
テヨンは切なげに溜息を吐いた。
「お待たせ。」
パク・ハが後片付けを終えて、テヨンの座るテーブルの脇に立った。
「パッカ、座って。」
パク・ハを向かいの椅子に座らせると、彼女の左手を取ってテーブルの上に置かせた。
そして、何やらズボンのポケットを探る。
テヨンがポケットから取り出したのは、赤いリボンだった。
そのリボンの端をパク・ハの親指に結わえ付けると、長いそのリボンを手繰ってもう片方の端を自分の右手の親指に結わえ付けた。
「なあに?何のおまじない?」
「パッカ、知らないの?『運命の赤いリボン』だよ。・・・女のコのくせに。」
パク・ハはきょとんとして、次の瞬間には吹き出した。
「やだ。それを言うなら『運命の赤い糸』でしょ?それに、親指じゃなくて小指!」
くすくすと笑うパク・ハに、そんなに笑うなよ、と言いながらテヨンも笑った。
そして、笑いながら、彼女の五本の指全部にリボンを結わえ付けてしまった。
「これで、よし。・・・絶対に離れられないよ。」
「あら、テヨンさんは、親指だけなの?」
「パッカが結んでよ。」
パク・ハもリボンを手繰りよせると、テヨンの指、一本一本に丁寧にリボンを結んでいく。
「できたわ。テヨ・・・」
パク・ハが顔を上げた時、テヨンが身を乗り出し、パク・ハの唇を塞いだ。
リボンが結わえ付けられた指と指を絡ませて、お互いにしっかりと握りしめる。
唇を離すと、テヨンが立ち上がり、パク・ハも立ち上がらせた。
しっかりと抱き合って、もう一度キスをする。
「食事に行こう。」
「ええ。・・・でも、これは外さないと。」
テヨンが、絡めていた指をしごくようにして、パク・ハの指からリボンを抜き取った。
そのまま、くしゃくしゃとポケットにしまう。
「そのリボン、私にちょうだい。」
「だめ。僕のだ。」
えー、ケチ!と尖らせたパク・ハの唇に、テヨンはまた唇を重ねる。
キスしたくなるから、尖らせないでくれる?そう言って彼は、笑った。
まだ営業中で、比較的多くの客でにぎわっている。
テヨンも注文の客の列に加わった。
パク・ハの方も、テヨンの来店には気付いていた。
彼が入店して来た時、型通りに、いらっしゃいませ、と言ったきり会話はできずにいる。
パク・ハは、内心、どぎまぎしていた。
昨夜の彼の言葉の意味を考えると、どう接していいのか分からない。
どういう意味か、と尋ねるのも照れくさい。尋ねるまでもなく、そういう意味だ、と彼女も分かってはいるのだから・・・。
テヨンの番になった。
「いつもの、リンゴジュースで。」
「はい。」
テヨンがにっこり微笑むのに、パク・ハは目を合わせることもできなかった。
彼はさほど気にするでもなく、ジューサーを動かす彼女を見つめていた。
出来上がったジュースのカップを受け取り、カウンターに紙幣を置く。
ありがとうございます、とまた型通りに言うパク・ハに、テヨンは目配せすると、小声で、待ってる、と告げた。
テヨンの視線の先は、店の一角。彼の指定席とも言うべき二人掛けのテーブルだった。
そこに座ると、カウンターのパク・ハのことがよく見える。テヨンお気に入りの座席だ。
客がいなければ会話も楽しめるが、その日は客足がなかなか途絶えなかった。
にこやかに応対したり、常連客と親しげに話すパク・ハを見ているのも楽しくて、飽くこともなく、テヨンは彼女を見つめ続ける。
笑みを湛える唇を見て、その柔らかさと甘さを思い出す。
顎から首筋、胸元へと視線を下げていきながら、白く滑らかな柔肌を想像した。
他の客が目に飛び込んできて、あわてて彼女から視線を逸らす。
ストローを咥え、液体を吸い上げるが、実は味がよく分からない。
また彼女に視線を戻し・・・・。
そんなことを繰り返していたが、いつの間にか、彼女のことしか見えなくなっていた。
ごくり
と、テヨンは生唾を飲み下した。
閉店時間、最後のお客さんを見送るとパク・ハはメインライトを落とした。
カウンターを出ると、ウインドウのブラインドを下げ、入り口のドアに鍵をかける。
テヨンを振り返ると、先刻から微動だにせず自分の方を見つめている。
頬に薄らと赤みが差し、ぼんやりしているようにも見える。
どうしたのかしら?体調が悪いのかな・・・。
パク・ハはテヨンに近付いて、白い手を伸ばした。
テヨンの額にひんやりとしたパク・ハの手が触れる。
「テヨンさん。顔が赤いわ。熱でもあるんじゃないの?」
テヨンの目の前に、心配そうに自分の顔を覗き込むパク・ハの顔があった。
「さっきから、ぼーっとしてるし、大丈夫?」
「えっ?いや、考え事してただけだよ。」
ふーんと言って、パク・ハはカウンターの中に戻って、洗い物を始めた。
「すぐ片付けちゃうから、待っててね。」
「うん。僕も何か手伝おうか?」
「すぐ済むから、座ってて。」
忙しく手を動かしながらパク・ハは微笑んだ。
パク・ハの答えに、テヨンはホッとする。
今は立ち上がれない・・・。
確かに熱は上がっていた。
体中の血流が、一か所に集中してしまっているのだ。
テヨンは切なげに溜息を吐いた。
「お待たせ。」
パク・ハが後片付けを終えて、テヨンの座るテーブルの脇に立った。
「パッカ、座って。」
パク・ハを向かいの椅子に座らせると、彼女の左手を取ってテーブルの上に置かせた。
そして、何やらズボンのポケットを探る。
テヨンがポケットから取り出したのは、赤いリボンだった。
そのリボンの端をパク・ハの親指に結わえ付けると、長いそのリボンを手繰ってもう片方の端を自分の右手の親指に結わえ付けた。
「なあに?何のおまじない?」
「パッカ、知らないの?『運命の赤いリボン』だよ。・・・女のコのくせに。」
パク・ハはきょとんとして、次の瞬間には吹き出した。
「やだ。それを言うなら『運命の赤い糸』でしょ?それに、親指じゃなくて小指!」
くすくすと笑うパク・ハに、そんなに笑うなよ、と言いながらテヨンも笑った。
そして、笑いながら、彼女の五本の指全部にリボンを結わえ付けてしまった。
「これで、よし。・・・絶対に離れられないよ。」
「あら、テヨンさんは、親指だけなの?」
「パッカが結んでよ。」
パク・ハもリボンを手繰りよせると、テヨンの指、一本一本に丁寧にリボンを結んでいく。
「できたわ。テヨ・・・」
パク・ハが顔を上げた時、テヨンが身を乗り出し、パク・ハの唇を塞いだ。
リボンが結わえ付けられた指と指を絡ませて、お互いにしっかりと握りしめる。
唇を離すと、テヨンが立ち上がり、パク・ハも立ち上がらせた。
しっかりと抱き合って、もう一度キスをする。
「食事に行こう。」
「ええ。・・・でも、これは外さないと。」
テヨンが、絡めていた指をしごくようにして、パク・ハの指からリボンを抜き取った。
そのまま、くしゃくしゃとポケットにしまう。
「そのリボン、私にちょうだい。」
「だめ。僕のだ。」
えー、ケチ!と尖らせたパク・ハの唇に、テヨンはまた唇を重ねる。
キスしたくなるから、尖らせないでくれる?そう言って彼は、笑った。
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