「長編(完結)」
生まれ変わっても
生まれ変わっても 21
屋根部屋の下で車は停まった。
停車しても、すぐに会話を止めるわけではない。
「パッカ、ゆび・・・」
指輪しないの?と言いかけて、止めた。
初めて南山公園で会った時、彼女は指輪をしていた。次に会った時、いや、初めて会ったその日の別れ際にはもう、その指から外されていた。
テヨンは、それがイ・ガクから贈られたものだろうと思っていたし、自分に気を遣ってしなくなったのだろうとも、ずっと思っていた。最初は嫉妬していたが、今は、もう。
パク・ハは、ん?と言ってテヨンを見た。
「いや、そのネックレス、綺麗だね。翡翠だろ?」
パク・ハは自分の胸元を見た。
これは、とパク・ハが言うのへ、イ・ガクがくれた?とテヨンが続けた。
「ずっと着けてるなぁ、と思ってさ。」
テヨンが手を伸ばして、パク・ハの胸元の翡翠に触れた。
そして、彼女の肌の温もりをブラウス越しに感じて、あわててその手を引っ込める。
顔を赤らめて、ごめん、そんなつもりじゃ・・・と小さく呟いた。
「・・・思い出せないや。」
テヨンの言葉に、パク・ハはゆっくりと首を横に振る。
「テヨンさんは、テヨンさんよ。」
「イ・ガクは・・・僕は、君に何て言って、それを贈ったのかな?」
「これは・・・」
あの手紙を見つけた場所、芙蓉亭の石柱の下からチョハが取り出してくれたの。子供の時に隠した王貫子(オックァンジャ)だそうよ。三百年前からの、あなたからの贈り物よ。
パク・ハはシートベルトを外し、テヨンの方へ向き直ると、テヨンの首に両腕を絡めた。
そして、彼の耳元で囁く。
「結婚の証。」
「え?・・・僕たちは、結婚したの?」
「そうよ。」
パク・ハはテヨンから離れた。
「あなた、ひどいわよ。誓いのキスの後、消えちゃった。」
テヨンはテヨンだと言いながらも、イ・ガクに対する不満を彼にぶつけ、パク・ハは唇を尖らせた。
「目の前で消えて行くなんて。結婚式が最後まで終わる前に、花嫁を残して行くなんて。ひどい奴!」
パク・ハは両手とも拳を握って、笑いながら、テヨンにぶつけ始めた。
全然、痛くはないが、テヨンも、痛い、痛い、と言いながら笑って避ける。
「멍충이(モンチュンイ)!あんぽんたん!あんたなんか、嫌い。嫌いなんだからぁ・・・」
パク・ハの声が、涙声になってきて、終には大粒の涙をこぼし始めた。
嫌い、と言いながらテヨンを打ち続ける。
しかし、元々力が入っていない上に、更に力が抜けてきて、その動きも鈍くなってくる。
テヨンは、拳を握る彼女の両手首を掴んで止めた。
そのまま引き寄せて、自分の胸に彼女の顔を埋めさせる。
「ごめん、パッカ。僕が悪かった。」
パク・ハの背中に手を廻してしっかりと抱きしめ、髪に口づけを落とす。
彼女はテヨンの胸に取りすがって、おいおいと泣いた。
「淋しかったんだから。・・・あんぽんたん。・・・嫌いよ。」
溜めこんできた想いが堰を切ったように、涙と共に溢れ出た。
「ごめん、パッカ。・・・ごめん。」
「すまぬ。パッカ。私が悪かった。すまぬ。」
「あんたなんか嫌い。チョハなんか嫌いよ。テヨンさんなんか嫌い。」
「嫌いでもよい。私がそなたを愛しておる。」
「僕は愛してるよ。」
パク・ハが会話をしている相手は、テヨンなのか、イ・ガクなのか・・・。
パク・ハは溢れ出る感情のまま、泣き続けた。嫌い、と繰り返しながら。
彼は赤ん坊をあやしてでもいるように、パク・ハの背中に廻した手を、ぽん、ぽん、と優しくリズムを刻むように動かし続けた。
やがて、パク・ハはしゃくりあげながら、彼の顔を見上げた。
優しい微笑みに出会って、その手を伸ばして彼の首にすがりつく。
「嫌い。」
その言葉とは裏腹に、離れるのを恐れてでもいるように、パク・ハは腕に力を込めた。
「パッカ。・・・愛してる。」
おずおずと、パク・ハがテヨンの首からその腕を離し、シートに座り直した。
「落ち着いた?」
パク・ハは、前を向いたままこくんと頷いたかと思ったら、今度は俯いてしまった。
「一緒に上まで上がろうか?」
やはり、俯いたまま言葉もなく頷く。
テヨンは微笑んで、車を降りると助手席側に廻り込んだ。ドアを開け、パク・ハに手を差し出す。
彼女はその手を取ると、テヨンに助けられて車を降りた。
そのまま、テヨンに支えられるようにして、屋根部屋へ続く階段を昇る。
家のドアの前まで来た時、テヨンはロック解除の暗証番号を思い出そうとして考えたが、やはり思い出せなかった。パク・ハが隣から手を伸ばす。
ピッピ、ピ、ピッ、ピーーッ。ガチャ。
リビングのソファにパク・ハを座らせる。
「何か飲む?」
テヨンが飲み物を探そうとキッチンへ向かおうとした時、パク・ハがテヨンの上着の裾を掴んだ。
「傍に、いて。」
テヨンは、パク・ハの隣に座った。
パク・ハは、またテヨンの首にすがりつく。
「もう消えない?」
「傍に居るよ。もう、消えたりしない。僕たちは同じ時代に生きてるじゃないか。」
「大好きよ。」
「あれ?嫌いなんじゃなかったの?」
テヨンの軽やかな笑い声を聞いて、やっと、パク・ハがその手を緩めた。
「愛してるわ。」
「じゃあ、僕は嫌いだ。」
ひどぉい、とパク・ハがまた唇を尖らせたので、テヨンは、ちゅっとキスをした。
尖らせたら、キスするって言っただろ?とテヨンが笑う。
キスしたくなるとは言ったけど、するとは言わなかったじゃない?パク・ハはそう言って、わざと口を突き出した。そのまま、ソファの上を這うように逃げようとする。それをテヨンが追いかける。
二人できゃあきゃあ言いながらじゃれ合った。
ひとしきり笑い合った後、テヨンが立ち上がった。
「もう、遅いから、帰るよ。きちんと戸締りして休んで。」
「やだ。帰らないで。」
後ろからパク・ハが抱きついて彼を止めた。
停車しても、すぐに会話を止めるわけではない。
「パッカ、ゆび・・・」
指輪しないの?と言いかけて、止めた。
初めて南山公園で会った時、彼女は指輪をしていた。次に会った時、いや、初めて会ったその日の別れ際にはもう、その指から外されていた。
テヨンは、それがイ・ガクから贈られたものだろうと思っていたし、自分に気を遣ってしなくなったのだろうとも、ずっと思っていた。最初は嫉妬していたが、今は、もう。
パク・ハは、ん?と言ってテヨンを見た。
「いや、そのネックレス、綺麗だね。翡翠だろ?」
パク・ハは自分の胸元を見た。
これは、とパク・ハが言うのへ、イ・ガクがくれた?とテヨンが続けた。
「ずっと着けてるなぁ、と思ってさ。」
テヨンが手を伸ばして、パク・ハの胸元の翡翠に触れた。
そして、彼女の肌の温もりをブラウス越しに感じて、あわててその手を引っ込める。
顔を赤らめて、ごめん、そんなつもりじゃ・・・と小さく呟いた。
「・・・思い出せないや。」
テヨンの言葉に、パク・ハはゆっくりと首を横に振る。
「テヨンさんは、テヨンさんよ。」
「イ・ガクは・・・僕は、君に何て言って、それを贈ったのかな?」
「これは・・・」
あの手紙を見つけた場所、芙蓉亭の石柱の下からチョハが取り出してくれたの。子供の時に隠した王貫子(オックァンジャ)だそうよ。三百年前からの、あなたからの贈り物よ。
パク・ハはシートベルトを外し、テヨンの方へ向き直ると、テヨンの首に両腕を絡めた。
そして、彼の耳元で囁く。
「結婚の証。」
「え?・・・僕たちは、結婚したの?」
「そうよ。」
パク・ハはテヨンから離れた。
「あなた、ひどいわよ。誓いのキスの後、消えちゃった。」
テヨンはテヨンだと言いながらも、イ・ガクに対する不満を彼にぶつけ、パク・ハは唇を尖らせた。
「目の前で消えて行くなんて。結婚式が最後まで終わる前に、花嫁を残して行くなんて。ひどい奴!」
パク・ハは両手とも拳を握って、笑いながら、テヨンにぶつけ始めた。
全然、痛くはないが、テヨンも、痛い、痛い、と言いながら笑って避ける。
「멍충이(モンチュンイ)!あんぽんたん!あんたなんか、嫌い。嫌いなんだからぁ・・・」
パク・ハの声が、涙声になってきて、終には大粒の涙をこぼし始めた。
嫌い、と言いながらテヨンを打ち続ける。
しかし、元々力が入っていない上に、更に力が抜けてきて、その動きも鈍くなってくる。
テヨンは、拳を握る彼女の両手首を掴んで止めた。
そのまま引き寄せて、自分の胸に彼女の顔を埋めさせる。
「ごめん、パッカ。僕が悪かった。」
パク・ハの背中に手を廻してしっかりと抱きしめ、髪に口づけを落とす。
彼女はテヨンの胸に取りすがって、おいおいと泣いた。
「淋しかったんだから。・・・あんぽんたん。・・・嫌いよ。」
溜めこんできた想いが堰を切ったように、涙と共に溢れ出た。
「ごめん、パッカ。・・・ごめん。」
「すまぬ。パッカ。私が悪かった。すまぬ。」
「あんたなんか嫌い。チョハなんか嫌いよ。テヨンさんなんか嫌い。」
「嫌いでもよい。私がそなたを愛しておる。」
「僕は愛してるよ。」
パク・ハが会話をしている相手は、テヨンなのか、イ・ガクなのか・・・。
パク・ハは溢れ出る感情のまま、泣き続けた。嫌い、と繰り返しながら。
彼は赤ん坊をあやしてでもいるように、パク・ハの背中に廻した手を、ぽん、ぽん、と優しくリズムを刻むように動かし続けた。
やがて、パク・ハはしゃくりあげながら、彼の顔を見上げた。
優しい微笑みに出会って、その手を伸ばして彼の首にすがりつく。
「嫌い。」
その言葉とは裏腹に、離れるのを恐れてでもいるように、パク・ハは腕に力を込めた。
「パッカ。・・・愛してる。」
おずおずと、パク・ハがテヨンの首からその腕を離し、シートに座り直した。
「落ち着いた?」
パク・ハは、前を向いたままこくんと頷いたかと思ったら、今度は俯いてしまった。
「一緒に上まで上がろうか?」
やはり、俯いたまま言葉もなく頷く。
テヨンは微笑んで、車を降りると助手席側に廻り込んだ。ドアを開け、パク・ハに手を差し出す。
彼女はその手を取ると、テヨンに助けられて車を降りた。
そのまま、テヨンに支えられるようにして、屋根部屋へ続く階段を昇る。
家のドアの前まで来た時、テヨンはロック解除の暗証番号を思い出そうとして考えたが、やはり思い出せなかった。パク・ハが隣から手を伸ばす。
ピッピ、ピ、ピッ、ピーーッ。ガチャ。
リビングのソファにパク・ハを座らせる。
「何か飲む?」
テヨンが飲み物を探そうとキッチンへ向かおうとした時、パク・ハがテヨンの上着の裾を掴んだ。
「傍に、いて。」
テヨンは、パク・ハの隣に座った。
パク・ハは、またテヨンの首にすがりつく。
「もう消えない?」
「傍に居るよ。もう、消えたりしない。僕たちは同じ時代に生きてるじゃないか。」
「大好きよ。」
「あれ?嫌いなんじゃなかったの?」
テヨンの軽やかな笑い声を聞いて、やっと、パク・ハがその手を緩めた。
「愛してるわ。」
「じゃあ、僕は嫌いだ。」
ひどぉい、とパク・ハがまた唇を尖らせたので、テヨンは、ちゅっとキスをした。
尖らせたら、キスするって言っただろ?とテヨンが笑う。
キスしたくなるとは言ったけど、するとは言わなかったじゃない?パク・ハはそう言って、わざと口を突き出した。そのまま、ソファの上を這うように逃げようとする。それをテヨンが追いかける。
二人できゃあきゃあ言いながらじゃれ合った。
ひとしきり笑い合った後、テヨンが立ち上がった。
「もう、遅いから、帰るよ。きちんと戸締りして休んで。」
「やだ。帰らないで。」
後ろからパク・ハが抱きついて彼を止めた。
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~ Comment ~
Re: NoTitle
きいこ様
コメありがとうございます。
ラブラブな二人は、書いててもとても嬉しいです。w
今後の二人も応援してやってください。
コメありがとうございます。
ラブラブな二人は、書いててもとても嬉しいです。w
今後の二人も応援してやってください。
- #65 ありちゃん
- URL
- 2014.11/15 15:42
- ▲EntryTop
Re: 自分の存在
お互いに遠慮が無くなったと言いますか・・・。
心を曝け出せてこそ、次は・・・。
テヨンは、成長したと思います。ますます、いい男になりますよ。w
書きながらにやける私は、やはり、変な人。(汗)
心を曝け出せてこそ、次は・・・。
テヨンは、成長したと思います。ますます、いい男になりますよ。w
書きながらにやける私は、やはり、変な人。(汗)
- #67 ありちゃん
- URL
- 2014.11/15 15:58
- ▲EntryTop
Re: タイトルなし
か****さま
本当に、ストレートに"好き"しか伝わってこない二人ですよね。w
甘えんぼパッカがかわいくて、無意識にテヨンを煽る、煽る・・・。ww
テヨンが妄想を実行に移すのは、いつか・・・私も知りません。(な訳ないですけど・・・)
本当に、ストレートに"好き"しか伝わってこない二人ですよね。w
甘えんぼパッカがかわいくて、無意識にテヨンを煽る、煽る・・・。ww
テヨンが妄想を実行に移すのは、いつか・・・私も知りません。(な訳ないですけど・・・)
- #69 ありちゃん
- URL
- 2014.11/16 15:19
- ▲EntryTop
NoTitle
とても、嬉しいです。これで、チョハも、報われる~!!(T_T)(嬉し泣き)