「長編(完結)」
生まれ変わっても
生まれ変わっても 23
カラン、と来客を告げる鐘の音が鳴った。
パク・ハは顔を上げ、元気よく、いらっしゃいませ、と声を掛ける。
「パッカ。今日はミックスジュース、二つね。」
入ってきたのはソリだった。後ろにサラリーマン風の男性もいる。
はい、とにこやかに返事をすると、パク・ハはジューサーを動かした。
待っている間、ソリはひっきりなしにしゃべり続けた。
この人はね、テヨンの部下のキムチーム長よ。イケメンでしょ?
今度ね、お友達と旅行に行くんだけど、ああ、パッカにも、お土産買ってくるわね。
・・・それで、何だったけ?
ああ、そうそう、テヨンがね、その旅行の段取りをしてくれるって言ってくれたんだけど、
それが、実は仕事がらみだったのよぉ。
キムチーム長が企画するパッケージ旅行のね、モニターをしてくれって。
今日はね、その打ち合わせをしてたの。
もう、会社に帰るって言うから、おいしいジュースを飲ませるって言って、連れてきたのよ。
ありがとうございます、と言ってパク・ハはジュースのカップを差し出した。
ソリは、振り向いてチーム長にカップを渡しながら、微笑んだ。
「このコは、パク・ハっていうの。将来のうちの嫁よ。」
えっとパク・ハが驚く。
ソリに"嫁" と言われるのは初めてではない。ソリ独りがそう思ってくれる分には、嬉しさもあって否定はしてこなかった。しかし、人にそう紹介されたのは初めてで戸惑ってしまう。まして相手はテヨンの部下だ。
「そうなんですか?・・・では、本部長の?」
「そう、テヨンの。・・・かわいいでしょ?」
「ええ、綺麗なお嬢さんですね。こんな素敵なご婚約者がおられたとは、本部長も隅に置けませんね。」
パク・ハは、違います、という言葉を飲み込んだ。そうありたいという願望が、彼女に否定の言葉を隠させた。
キムチーム長は、パク・ハの方を向くと姿勢を正した。
「ヨン本部長の下でチーム長をしております、キム・サンホンと申します。よろしくお願い致します。」
深々と頭を下げられて、パク・ハも頭を下げる。
「パッカ、リンゴジュースも作って。・・・キムチーム長、テヨンに持って行ってやってよ。」
パク・ハはあたふたとリンゴを手に取った。
紙袋にリンゴジュースのカップを入れて差し出す。ソリが受け取り、お願いね、とチーム長に渡した。
「パッカ。再来週の火曜日から三泊四日の予定なの。留守の間、テヨンをよろしくね。」
「はい。楽しんできてください。」
ありがとう、とにこやかに去って行くソリとチーム長の後ろ姿に、パク・ハも、ありがとうございます、と声を掛け見送った。
カラン。
再来週、か。・・・よろしくって・・・何をよろしくなの?
テヨンさんが何か言ったの?・・・何かって、何を言うのよ。
・・・そう言えば、昨夜のテヨンさんの外泊のことも何も言われなかったわ。
ソリが、昨夜テヨンは出張に行ったので帰ってこなかった、と思い込んでいることを知ろうはずもないパク・ハは、ソリが何気なく言った言葉にも想像をたくましくして、その頬を赤らめた。
ノックの音がした。
テヨンが声を掛けると、キムチーム長が入ってきた。
「本部長、企画書です。」
テヨンは書類を手に取りパラパラと捲った。
「うまく、いきそうですか?社長も期待しています。」
本当は、期待ではなく、ヒットさせろとの命令だが、そうは言わなかった。
「はい。奥様方もお喜びのようです。後は現地でご意見を伺いながら、細かいところを修正していきたいと思います。」
キムチーム長が手応えを感じているのなら大丈夫だろう、とテヨンは思った。
それから、日程、宿泊先、観光施設など、企画内容の細かい報告を受けた。
「これを本部長にと、預かってきました。」
見覚えのある柄の紙袋を渡される。
「綺麗な方ですね。ご婚約者がおられたとは、知りませんでしたよ。」
え?婚約者?
「・・パッ・・・パク・ハさんの店に行ったんですか?・・・大叔母と?」
「はい。ジュースをご馳走になりました。」
では、と言ってキムチーム長はオフィスを出ていった。
・・・婚約者、か。
テヨンのその両頬が緩む。
頭を振って、両手でぺちぺちと頬を叩いてみるが、引き締めることはできなかった。
空港に向かう車中で、ソリとその友人は後部座席でおしゃべりをしていた。
ソリは自分の運転手付きの車で行くと言ったが、テヨンが送ると言って車を出した。
そのぐらいはしないと、キムチーム長に申し訳ないような気がして。
ふと、友人とのおしゃべりが途切れたソリが、運転するテヨンに声を掛けた。
「ねえ、テヨン。私の留守中、パッカに家に来てもらいなさいよ。」
「えっ?・・・な、なんで?」
「一人だけで朝食なんて、寂しいでしょ?部屋なんて、いくらでもあるんだし。」
部屋はない方がいい、というのがテヨンの本音だ。
「もう、着いたよ。チーム長とお友達が待ってる。」
トランクから大きなスーツケースを出す。
三泊四日の小旅行とは思えない荷物だった。
「キムチーム長、よろしくお願いします。」
「はい。お任せください。」
「じゃあ、テヨン、行ってくるわ。」
「気を付けて。行ってらっしゃい。」
きゃあきゃあと騒ぎながら行くソリ達と、キムチーム長を見送って、テヨンはふーっと長い息を吐いた。
その日、テヨンは気合を入れて仕事をした。
パク・ハは顔を上げ、元気よく、いらっしゃいませ、と声を掛ける。
「パッカ。今日はミックスジュース、二つね。」
入ってきたのはソリだった。後ろにサラリーマン風の男性もいる。
はい、とにこやかに返事をすると、パク・ハはジューサーを動かした。
待っている間、ソリはひっきりなしにしゃべり続けた。
この人はね、テヨンの部下のキムチーム長よ。イケメンでしょ?
今度ね、お友達と旅行に行くんだけど、ああ、パッカにも、お土産買ってくるわね。
・・・それで、何だったけ?
ああ、そうそう、テヨンがね、その旅行の段取りをしてくれるって言ってくれたんだけど、
それが、実は仕事がらみだったのよぉ。
キムチーム長が企画するパッケージ旅行のね、モニターをしてくれって。
今日はね、その打ち合わせをしてたの。
もう、会社に帰るって言うから、おいしいジュースを飲ませるって言って、連れてきたのよ。
ありがとうございます、と言ってパク・ハはジュースのカップを差し出した。
ソリは、振り向いてチーム長にカップを渡しながら、微笑んだ。
「このコは、パク・ハっていうの。将来のうちの嫁よ。」
えっとパク・ハが驚く。
ソリに"嫁" と言われるのは初めてではない。ソリ独りがそう思ってくれる分には、嬉しさもあって否定はしてこなかった。しかし、人にそう紹介されたのは初めてで戸惑ってしまう。まして相手はテヨンの部下だ。
「そうなんですか?・・・では、本部長の?」
「そう、テヨンの。・・・かわいいでしょ?」
「ええ、綺麗なお嬢さんですね。こんな素敵なご婚約者がおられたとは、本部長も隅に置けませんね。」
パク・ハは、違います、という言葉を飲み込んだ。そうありたいという願望が、彼女に否定の言葉を隠させた。
キムチーム長は、パク・ハの方を向くと姿勢を正した。
「ヨン本部長の下でチーム長をしております、キム・サンホンと申します。よろしくお願い致します。」
深々と頭を下げられて、パク・ハも頭を下げる。
「パッカ、リンゴジュースも作って。・・・キムチーム長、テヨンに持って行ってやってよ。」
パク・ハはあたふたとリンゴを手に取った。
紙袋にリンゴジュースのカップを入れて差し出す。ソリが受け取り、お願いね、とチーム長に渡した。
「パッカ。再来週の火曜日から三泊四日の予定なの。留守の間、テヨンをよろしくね。」
「はい。楽しんできてください。」
ありがとう、とにこやかに去って行くソリとチーム長の後ろ姿に、パク・ハも、ありがとうございます、と声を掛け見送った。
カラン。
再来週、か。・・・よろしくって・・・何をよろしくなの?
テヨンさんが何か言ったの?・・・何かって、何を言うのよ。
・・・そう言えば、昨夜のテヨンさんの外泊のことも何も言われなかったわ。
ソリが、昨夜テヨンは出張に行ったので帰ってこなかった、と思い込んでいることを知ろうはずもないパク・ハは、ソリが何気なく言った言葉にも想像をたくましくして、その頬を赤らめた。
ノックの音がした。
テヨンが声を掛けると、キムチーム長が入ってきた。
「本部長、企画書です。」
テヨンは書類を手に取りパラパラと捲った。
「うまく、いきそうですか?社長も期待しています。」
本当は、期待ではなく、ヒットさせろとの命令だが、そうは言わなかった。
「はい。奥様方もお喜びのようです。後は現地でご意見を伺いながら、細かいところを修正していきたいと思います。」
キムチーム長が手応えを感じているのなら大丈夫だろう、とテヨンは思った。
それから、日程、宿泊先、観光施設など、企画内容の細かい報告を受けた。
「これを本部長にと、預かってきました。」
見覚えのある柄の紙袋を渡される。
「綺麗な方ですね。ご婚約者がおられたとは、知りませんでしたよ。」
え?婚約者?
「・・パッ・・・パク・ハさんの店に行ったんですか?・・・大叔母と?」
「はい。ジュースをご馳走になりました。」
では、と言ってキムチーム長はオフィスを出ていった。
・・・婚約者、か。
テヨンのその両頬が緩む。
頭を振って、両手でぺちぺちと頬を叩いてみるが、引き締めることはできなかった。
空港に向かう車中で、ソリとその友人は後部座席でおしゃべりをしていた。
ソリは自分の運転手付きの車で行くと言ったが、テヨンが送ると言って車を出した。
そのぐらいはしないと、キムチーム長に申し訳ないような気がして。
ふと、友人とのおしゃべりが途切れたソリが、運転するテヨンに声を掛けた。
「ねえ、テヨン。私の留守中、パッカに家に来てもらいなさいよ。」
「えっ?・・・な、なんで?」
「一人だけで朝食なんて、寂しいでしょ?部屋なんて、いくらでもあるんだし。」
部屋はない方がいい、というのがテヨンの本音だ。
「もう、着いたよ。チーム長とお友達が待ってる。」
トランクから大きなスーツケースを出す。
三泊四日の小旅行とは思えない荷物だった。
「キムチーム長、よろしくお願いします。」
「はい。お任せください。」
「じゃあ、テヨン、行ってくるわ。」
「気を付けて。行ってらっしゃい。」
きゃあきゃあと騒ぎながら行くソリ達と、キムチーム長を見送って、テヨンはふーっと長い息を吐いた。
その日、テヨンは気合を入れて仕事をした。
← 【 お礼画像と、時々SS 掲載してます 】
↑↑↑
読んだよ!のしるしにポチッとしてねん。
↓↓↓ ツイッターに更新情報を投稿中
Follow @arichan6002
↑↑↑
読んだよ!のしるしにポチッとしてねん。

↓↓↓ ツイッターに更新情報を投稿中
Follow @arichan6002
- 生まれ変わってもの関連記事
-
- 生まれ変わっても 24
- 生まれ変わっても 23 « «
- 生まれ変わっても 22
優秀なブレーン
優しいが故に攻めきれないテヨンの外堀を埋めています。デレ〜っとしている場合じゃないですよ!残るはテヨン自身が動かなくては!
でもね、これだけお膳立てされちゃうと、逆にすんなり行けないのがパクハ。もちろん彼女も心の中では望んではいるから、甘〜く、ムーディーに攻めてあげてほしいな。