「長編(完結)」
生まれ変わっても
生まれ変わっても 25
パク・ハはキッチンで食事の準備をしていた。
そこへ、シャワーを浴び終えたテヨンが、タオルで頭を拭きながらやって来る。
「いい匂いだな。お腹、空いた。」
パク・ハを後ろから抱きすくめながら、テヨンが言った。
「テヨンさん、離してくれなきゃ、ますます遅くなっちゃうわよ。」
テヨンはパク・ハの耳元に唇を寄せると、ひそひそと何事か囁いてから、その腕を離してパク・ハを開放した。
早く、君を食べたいな。
え?今、何て言ったの?パク・ハはテヨンを振り返る。
どぎまぎと顔を赤らめるパク・ハとは対照的に、テヨンは何事もなかったように微笑んでいる。
「何か、手伝うことある?」
「・・・座ってて。すぐだから。」
その笑顔はいつもと同じ。でも何かが違う。
テヨンに男を感じてしまう。自分自身には女を感じて、パク・ハは落ち着かなかった。
ピンポーン。
玄関のチャイムが鳴った。少し遅めの夕食時、来客など心当たりがなくて、パク・ハが首を傾げた。
「僕が出るよ。」
テヨンが玄関のドアを開けた。
「パッカオンニ~!久しぶりぃ!!」
「パッカぁ!元気だった?!」
ドアが開くと同時に、口々にパク・ハの名を呼びながら、女性が二人飛び込んできた。
茶色のパーマヘアの女性と、外国人と思しき女性。テヨンの知らない女性が二人、そこに立っている。
驚くテヨンを見て、女性二人も目を丸くしたが、次の瞬間、二人ともテヨンを指差して叫んだ。
「イ・ガク オッパ!」
「イ・ガク ッシ!」
なんで!?
今までどこで何してたの!?
いつ戻ってきたのよ!?
どれだけパッカが泣いたと思ってるの!?
ひどい奴!
どういうつもり!?
口々にテヨンを責めたてる。
騒ぎを聞きつけたパク・ハも玄関にやって来た。
「どうしたの?テヨンさん。」
テヨンの脇から顔を出したパク・ハを見て、また叫ぶ二人。
「パッカオンニぃ!」
「パッカぁ!」
「ミミ!ベッキー!」
きゃあぁーっ、と三人三様に叫ぶ。
テヨンの脇をすり抜けてパク・ハが二人に駆け寄った。玄関の中央で、しっかと肩を組んだかと思ったら、その場でぴょんぴょんと飛び跳ねながら、きゃあきゃあと騒ぎ始める。
テヨンは呆気にとられて、三人の女性を見つめていた。
屋根部屋の階下の住人、ベッキーとミミ。
しばらく国に帰る、またここに戻るつもりだけど、それがいつになるかは分からない、そう言ったベッキーの送別会を開いたのが1年前。それに伴い、ミミも実家に帰っていた。
ベッキーがまた戻ってきて、ミミも戻ってきたのが昨日のことだと言う。
「パッカ。イ・ガクさんも戻ってきたの?」
ベッキーがテヨンを見た。
「よく、戻って来れたものよね?」
ミミの冷たい視線がテヨンに突き刺さる。
「あ、この人は・・・」
「初めまして。ヨン・テヨンです。イ・ガクを知ってるお二人には初めてじゃないのでしょうけど・・・。すみません、覚えていないんです。」
パク・ハを制して、テヨンは一歩前に出ると、二人に頭を下げた。
「事情があって、イ・ガクを名乗っていましたが、本名はヨン・テヨンです。事故に遭ってしまって、イ・ガクとしてここで暮らしていた頃の記憶がないんです。すみません。」
「本当に?パッカオンニを捨てて、どっか行っちゃったんじゃなかったの?」
「そうよ。パッカ。この人の言うことは本当なの?」
「本当よ。テヨンさんは私を思い出して、会いに来てくれたの。」
パク・ハが真剣にそう言うので、二人は顔を見合わせた。
「イ・ガクさん、じゃなくて、ヨン・テヨンさんでしたっけ?もう、パッカを泣かせないと、私たちに約束してくれない?」
ベッキーの後ろで、ミミが、そうだそうだと頷いている。
「もちろんです。僕自身、ずっと思い出せなくて苦しんでたんだ。お二人のことは思い出せなくても、パッカのことだけは思い出した。だから、信じてもらえませんか?」
テヨンはパク・ハの肩を抱き、自分の方へ引き寄せた。
なんだか失礼なことを言われたような気もしないでもなかったが、仲の好さそうな二人の様子を見て、ベッキーもミミもとりあえずは納得した。
リビングで「再会祝賀パーティー」ということになった。
おあつらえ向きに、たくさんの花で飾られた部屋を見て、二人の友人たちは大喜びだ。
二人はたくさんの料理と、お酒を持って来ていた。
パク・ハも、準備していたビールやおつまみ、サラダをキッチンから運んできた。
女性三人は、ひっきりなしにしゃべり続ける。
まるで、大叔母様が三人いるみたいだ。
テヨンは内心面白くない。自分の為に用意されたはずのパク・ハの手料理が、二人の邪魔者に食べ尽くされていく。
ガールズトークにもついていけない。テヨンはビールを煽った。
2時間が経ち、
もう、こんな時間ですよ。
更に1時間が過ぎ、
こんな時間まで、大丈夫ですか?
更に更に30分が過ぎ、
ああ、もうこんなに遅くなってしまって!
テヨンが何を言っても、ベッキーとミミには通じなかった。
大丈夫、大丈夫、家、このすぐ下だしぃ。
僕が大丈夫じゃない!!
テヨンは、またビールの栓を抜いた。
そこへ、シャワーを浴び終えたテヨンが、タオルで頭を拭きながらやって来る。
「いい匂いだな。お腹、空いた。」
パク・ハを後ろから抱きすくめながら、テヨンが言った。
「テヨンさん、離してくれなきゃ、ますます遅くなっちゃうわよ。」
テヨンはパク・ハの耳元に唇を寄せると、ひそひそと何事か囁いてから、その腕を離してパク・ハを開放した。
早く、君を食べたいな。
え?今、何て言ったの?パク・ハはテヨンを振り返る。
どぎまぎと顔を赤らめるパク・ハとは対照的に、テヨンは何事もなかったように微笑んでいる。
「何か、手伝うことある?」
「・・・座ってて。すぐだから。」
その笑顔はいつもと同じ。でも何かが違う。
テヨンに男を感じてしまう。自分自身には女を感じて、パク・ハは落ち着かなかった。
ピンポーン。
玄関のチャイムが鳴った。少し遅めの夕食時、来客など心当たりがなくて、パク・ハが首を傾げた。
「僕が出るよ。」
テヨンが玄関のドアを開けた。
「パッカオンニ~!久しぶりぃ!!」
「パッカぁ!元気だった?!」
ドアが開くと同時に、口々にパク・ハの名を呼びながら、女性が二人飛び込んできた。
茶色のパーマヘアの女性と、外国人と思しき女性。テヨンの知らない女性が二人、そこに立っている。
驚くテヨンを見て、女性二人も目を丸くしたが、次の瞬間、二人ともテヨンを指差して叫んだ。
「イ・ガク オッパ!」
「イ・ガク ッシ!」
なんで!?
今までどこで何してたの!?
いつ戻ってきたのよ!?
どれだけパッカが泣いたと思ってるの!?
ひどい奴!
どういうつもり!?
口々にテヨンを責めたてる。
騒ぎを聞きつけたパク・ハも玄関にやって来た。
「どうしたの?テヨンさん。」
テヨンの脇から顔を出したパク・ハを見て、また叫ぶ二人。
「パッカオンニぃ!」
「パッカぁ!」
「ミミ!ベッキー!」
きゃあぁーっ、と三人三様に叫ぶ。
テヨンの脇をすり抜けてパク・ハが二人に駆け寄った。玄関の中央で、しっかと肩を組んだかと思ったら、その場でぴょんぴょんと飛び跳ねながら、きゃあきゃあと騒ぎ始める。
テヨンは呆気にとられて、三人の女性を見つめていた。
屋根部屋の階下の住人、ベッキーとミミ。
しばらく国に帰る、またここに戻るつもりだけど、それがいつになるかは分からない、そう言ったベッキーの送別会を開いたのが1年前。それに伴い、ミミも実家に帰っていた。
ベッキーがまた戻ってきて、ミミも戻ってきたのが昨日のことだと言う。
「パッカ。イ・ガクさんも戻ってきたの?」
ベッキーがテヨンを見た。
「よく、戻って来れたものよね?」
ミミの冷たい視線がテヨンに突き刺さる。
「あ、この人は・・・」
「初めまして。ヨン・テヨンです。イ・ガクを知ってるお二人には初めてじゃないのでしょうけど・・・。すみません、覚えていないんです。」
パク・ハを制して、テヨンは一歩前に出ると、二人に頭を下げた。
「事情があって、イ・ガクを名乗っていましたが、本名はヨン・テヨンです。事故に遭ってしまって、イ・ガクとしてここで暮らしていた頃の記憶がないんです。すみません。」
「本当に?パッカオンニを捨てて、どっか行っちゃったんじゃなかったの?」
「そうよ。パッカ。この人の言うことは本当なの?」
「本当よ。テヨンさんは私を思い出して、会いに来てくれたの。」
パク・ハが真剣にそう言うので、二人は顔を見合わせた。
「イ・ガクさん、じゃなくて、ヨン・テヨンさんでしたっけ?もう、パッカを泣かせないと、私たちに約束してくれない?」
ベッキーの後ろで、ミミが、そうだそうだと頷いている。
「もちろんです。僕自身、ずっと思い出せなくて苦しんでたんだ。お二人のことは思い出せなくても、パッカのことだけは思い出した。だから、信じてもらえませんか?」
テヨンはパク・ハの肩を抱き、自分の方へ引き寄せた。
なんだか失礼なことを言われたような気もしないでもなかったが、仲の好さそうな二人の様子を見て、ベッキーもミミもとりあえずは納得した。
リビングで「再会祝賀パーティー」ということになった。
おあつらえ向きに、たくさんの花で飾られた部屋を見て、二人の友人たちは大喜びだ。
二人はたくさんの料理と、お酒を持って来ていた。
パク・ハも、準備していたビールやおつまみ、サラダをキッチンから運んできた。
女性三人は、ひっきりなしにしゃべり続ける。
まるで、大叔母様が三人いるみたいだ。
テヨンは内心面白くない。自分の為に用意されたはずのパク・ハの手料理が、二人の邪魔者に食べ尽くされていく。
ガールズトークにもついていけない。テヨンはビールを煽った。
2時間が経ち、
もう、こんな時間ですよ。
更に1時間が過ぎ、
こんな時間まで、大丈夫ですか?
更に更に30分が過ぎ、
ああ、もうこんなに遅くなってしまって!
テヨンが何を言っても、ベッキーとミミには通じなかった。
大丈夫、大丈夫、家、このすぐ下だしぃ。
僕が大丈夫じゃない!!
テヨンは、またビールの栓を抜いた。
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~ Comment ~
刺客
ふふふ。やっとソリを追いやったと思ったのに…。思わぬ刺客が来ましたね。女達は手強いぞ。
そんな簡単に大切なパクハは渡さぬ!とイガクが寄越した刺客かもw
テヨンはすご〜くモヤモヤしてますねw でもね、山は高いほど登った時の達成感があるものです。簡単に手に入ってしまっては本当の価値がわからないのだよ。
テヨン、ファイティン!
そんな簡単に大切なパクハは渡さぬ!とイガクが寄越した刺客かもw
テヨンはすご〜くモヤモヤしてますねw でもね、山は高いほど登った時の達成感があるものです。簡単に手に入ってしまっては本当の価値がわからないのだよ。
テヨン、ファイティン!
Re: タイトルなし
か****さま
一緒にお風呂ですか?いいですね。(ニヤリ)
なぜ、このタイミング~?って感じですよね。
肩透かしを喰らわせちゃってごめんなさ~い。(>_<)
一緒にお風呂ですか?いいですね。(ニヤリ)
なぜ、このタイミング~?って感じですよね。
肩透かしを喰らわせちゃってごめんなさ~い。(>_<)
- #99 ありちゃん
- URL
- 2014.11/26 09:10
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Re: 刺客
ほっほ様
刺客・・・そうか、イ・ガクが放ったのですね。(^.^)
テヨンはイ・ガクに嫉妬してましたが、イ・ガクもだったとは・・・。
テヨンにはその価値をじっくりと認識してもらうしかありませんね。
刺客・・・そうか、イ・ガクが放ったのですね。(^.^)
テヨンはイ・ガクに嫉妬してましたが、イ・ガクもだったとは・・・。
テヨンにはその価値をじっくりと認識してもらうしかありませんね。
- #100 ありちゃん
- URL
- 2014.11/26 09:14
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