「長編(完結)」
生まれ変わっても
生まれ変わっても 27
パク・ハがテヨンからのメールに気付いたのは、店終いをした後だった。
テヨンが "早く帰る" と言った日は定時に会社を出てくるから、必然的に営業時間中にパク・ハの店に来ることになる。
いつもの時間にテヨンが訪れないことが気になりはしたが、客が途切れず、スマホを確認できずにいた。
メインライトを落とし、ブラインドを下げた後、やっとスマホを手に取った。
パッカ、ごめん。遅くなる。先に帰ってて。
パク・ハはスーパーで買い物をし、屋根部屋に戻った。
一通り料理の下ごしらえを済ませ、テヨンが帰ってくればすぐに温かい食事ができるように、その準備を整える。
しかし、テヨンはなかなか帰って来なかった。
電話の着信も、メールもない。
パク・ハの方からメールをしてみても返信は来なかった。
電話をしてみても、虚しく呼び出し音が鳴り続けるだけ・・・。
まさか、事故にでも遭ったんじゃ?
言いようのない不安を覚えて、会社に電話をした。
テヨンのオフィスの直通電話を鳴らしてみたが、やはり、呼び出し音だけが響いてくる。
どうしよう・・・。会社にも居ないってことよね?
しばらく考えて、テクスに電話をした。
「もしもし?」
「ピョ社長。こんばんは、パク・ハです。」
「ああ、パク・ハさん。こんばんは。・・・どうした?」
「あの、テヨンさんに電話がつながらなくて・・・」
「え?あのバカ、連絡してないのか?」
「あ、いえ。メールはもらったんです。遅くなるって。でも、あまりにも遅いので・・・」
そこまで言って、その"あまりにも遅い時間" にテクスに電話してしまったことに気付く。
「すみません。お休みでしたか?」
もう、とっくに日付が変わっていた。
「いや、起きてたよ。テヨンはまだ配送センターに居るんだろう。」
「配送センター、ですか?」
「ああ、商品出荷でトラブルがあってな・・・まあ、大事には至らなかったから・・・心配せずに、先にやすみなさい。」
「・・・はい。すみませんでした。おやすみなさい。」
テクスの、ああ、おやすみ、と言う返事を聞いてパク・ハは電話を切った。
無事で良かった。
パク・ハは、ほーっ、と溜息を吐いた。
え?・・・ちょっと待って。社長はテヨンさんがうちに泊まりに来てるって、知ってるの?
彼女はカッと熱くなってしまったその頬を両手で覆ったが、そもそもテクスに"テヨンが帰らない" と電話をした時点で、その事実をテクスに告げているようなものなのだ。
電話の着信音が鳴った。
バイブレーションも相まって、ヴーッヴーッと震えながらテーブルの上で鳴り響く。
リビングで、うつらうつらしていたパク・ハは、ハッとして、その振動で落ちそうになっているスマホを両手で押さえた。
あわてて通話ボタンをタップする。
「もしもし、テヨンさん?」
「パッカ、おはよう。寝てた?」
「ううん。ちょっとウトウトしてただけ。・・・今、どこ?」
「それが・・・ドアの前なんだ。」
ドアの前?・・・うちの?
「どうして、入って来ないの?」
「ロック解除できなくて・・・・」
パク・ハはあわてて玄関に走った。急いでドアを開けてやる。
テヨンは入って来るなり、ガバッとパク・ハに抱きついた。
「パッカ、ただいま。・・・疲れた。」
白み始めていた空がテヨンの肩越しに見える。
「お帰りなさい。」
パク・ハもテヨンの背中に手を廻した。
リビングのソファに沈み込むように座ったテヨンに、何か飲む?とパク・ハは尋ねた。
テヨンは背後のパク・ハを振り返ると彼女の手を取り、こっちに来て、と言った。
パク・ハがソファを回り込み、テヨンの前を通り過ぎてその隣に腰かけようとした時、彼は彼女の手を掴んでグイッと自分の方へ引き寄せた。
その反動でパク・ハはバランスを崩す。
彼女はきゃっと言って、本人にはそのつもりはなかったのだが、テヨンにしなだれかかる格好になってしまった。
それを受け止めたテヨンは、その身をよじりソファに彼女を組み伏せる。
「ま、待って。テヨ・・・」
テヨンがパク・ハの口を塞いだ。
「・・・待てないよ。」
彼は彼女の頬や額にキスの雨を降らせる。
彼女の首筋から肩口にかけた滑らかなライン上にその顔を埋め、彼女の白い肌に唇を充てた。
そのまま胸元に向けて唇を這わせ始める。
パク・ハは思わず声を上げそうになって、目を瞑り、口を固く結んだ。
「パッカ。愛してる。」
・・・・テヨンさん?
テヨンの腕の中でパク・ハは身を固くしていたが、緊張をほどいた。
彼の腕の力は抜け切って、彼は彼女に覆いかぶさったままぴくりとも動かない。
パク・ハも、テヨンの全体重をその身に受けて動くことができなかった。
「テヨンさん?」
テヨンの片腕が、だらりとソファからこぼれ落ちた。
パク・ハはどうにかテヨンの身体の下から自分の腕を引き抜くと、彼の肩を押した。
すると、彼がソファの背もたれの方へその体重を移動させたので、急いでテヨンの下から這い出した。
テヨンはそのままソファの上に仰向けになって、寝息を立てている。
「なんてタイミングで寝ちゃうのよ!」
パク・ハは腰に手を当ててテヨンを見下ろしたが、横を向いてふっと息を吐いた後、膝まづきその寝顔にキスをした。
しばらくして目を覚ましたテヨンは、シャワーを浴び、パク・ハの準備してくれた朝食を平らげた。
食事中、パク・ハはテヨンをまともに見れずにいたが、その態度があまりにも普通で、あれは寝ぼけてただけで、だから忘れちゃったんだわ、と結論付けた。
玄関で、新婚夫婦よろしくパク・ハに見送られながらテヨンが言った。
「ごめん。昨日の事後処理もあるから会社に行かなきゃ。・・・今日は君と過ごしたかったのに。」
「仕方ないわよ。それよりも、ほとんど寝られなかったしょ?大丈夫?」
「うん。今夜こそ早く帰るから。」
いってきます、いってらっしゃい、と口づけを交わし、家を出る。
「パッカ、続きは今夜のお楽しみだ。」
バタン。
あんぽんたん!覚えてたのね。素知らぬ顔して朝ご飯食べちゃって!
テヨンは会社に着くと、今回の騒動の原因となった新人社員を伴って、昨夜、配送センターで残業をしてくれた社員たちの許を訪れた。助かりました、ありがとうと言って歩く。
総ての部署を廻り終えると、配送センターに向かった。
責任者にもう一度頭を下げ、出荷状況のチェックをした。
問題なく動き始めているのを確認し、本社社屋に戻った。
テヨンのオフィスで、新人社員の彼はぺこぺこと頭を下げた。
「わずかな気の緩みが、多くの人に迷惑をかける。キムチーム長を見習って、頑張ってくれよ。」
「はい。本当に申し訳ありませんでした。」
彼がオフィスを出ていった後、テヨンは溜息を吐いた。
僕自身のことだよな・・・。
テヨンは背筋を伸ばすと、社長室に向かった。
テヨンは、テクスに事のしだいを細かく報告した。
「どうにか、遅れを出さずに出荷の手配ができました。」
「そうか。ご苦労だった。」
「いえ、自分の蒔いた種ですから。」
「そうだな。」
冷たい物言いだが実は、大した奴だ、とテクスもテヨンを頼もしく思っていた。
「ああ、そうだ。悪いが今夜も遅くなるぞ。」
テヨンは険しい顔でテクスを見た。
「例の不良品を納品してきたメーカーの社長が、今夜、一席設けるそうだ。お前も来い。」
接待を受けるのも仕事のうちだ。
向こうさんはきちんと連絡を寄こしていたんだから、我が社の内部の問題だと言ったんだが、実際、不良品を納品してしまったことで相当、青くなっているようだな。
断れば、相手の顔に泥を塗ることになるぞ。
パク・ハさんに、きちんと連絡をしておけよ。
パク・ハのスマホがメールの着信を知らせた。
彼女は鼻歌交じりに家事をしていて気付かない。
パッカ、ごめん。今夜も遅くなる。接待なんだ。先に寝てて。
明日はソリが帰ってくる日だ。
テヨンが "早く帰る" と言った日は定時に会社を出てくるから、必然的に営業時間中にパク・ハの店に来ることになる。
いつもの時間にテヨンが訪れないことが気になりはしたが、客が途切れず、スマホを確認できずにいた。
メインライトを落とし、ブラインドを下げた後、やっとスマホを手に取った。
パッカ、ごめん。遅くなる。先に帰ってて。
パク・ハはスーパーで買い物をし、屋根部屋に戻った。
一通り料理の下ごしらえを済ませ、テヨンが帰ってくればすぐに温かい食事ができるように、その準備を整える。
しかし、テヨンはなかなか帰って来なかった。
電話の着信も、メールもない。
パク・ハの方からメールをしてみても返信は来なかった。
電話をしてみても、虚しく呼び出し音が鳴り続けるだけ・・・。
まさか、事故にでも遭ったんじゃ?
言いようのない不安を覚えて、会社に電話をした。
テヨンのオフィスの直通電話を鳴らしてみたが、やはり、呼び出し音だけが響いてくる。
どうしよう・・・。会社にも居ないってことよね?
しばらく考えて、テクスに電話をした。
「もしもし?」
「ピョ社長。こんばんは、パク・ハです。」
「ああ、パク・ハさん。こんばんは。・・・どうした?」
「あの、テヨンさんに電話がつながらなくて・・・」
「え?あのバカ、連絡してないのか?」
「あ、いえ。メールはもらったんです。遅くなるって。でも、あまりにも遅いので・・・」
そこまで言って、その"あまりにも遅い時間" にテクスに電話してしまったことに気付く。
「すみません。お休みでしたか?」
もう、とっくに日付が変わっていた。
「いや、起きてたよ。テヨンはまだ配送センターに居るんだろう。」
「配送センター、ですか?」
「ああ、商品出荷でトラブルがあってな・・・まあ、大事には至らなかったから・・・心配せずに、先にやすみなさい。」
「・・・はい。すみませんでした。おやすみなさい。」
テクスの、ああ、おやすみ、と言う返事を聞いてパク・ハは電話を切った。
無事で良かった。
パク・ハは、ほーっ、と溜息を吐いた。
え?・・・ちょっと待って。社長はテヨンさんがうちに泊まりに来てるって、知ってるの?
彼女はカッと熱くなってしまったその頬を両手で覆ったが、そもそもテクスに"テヨンが帰らない" と電話をした時点で、その事実をテクスに告げているようなものなのだ。
電話の着信音が鳴った。
バイブレーションも相まって、ヴーッヴーッと震えながらテーブルの上で鳴り響く。
リビングで、うつらうつらしていたパク・ハは、ハッとして、その振動で落ちそうになっているスマホを両手で押さえた。
あわてて通話ボタンをタップする。
「もしもし、テヨンさん?」
「パッカ、おはよう。寝てた?」
「ううん。ちょっとウトウトしてただけ。・・・今、どこ?」
「それが・・・ドアの前なんだ。」
ドアの前?・・・うちの?
「どうして、入って来ないの?」
「ロック解除できなくて・・・・」
パク・ハはあわてて玄関に走った。急いでドアを開けてやる。
テヨンは入って来るなり、ガバッとパク・ハに抱きついた。
「パッカ、ただいま。・・・疲れた。」
白み始めていた空がテヨンの肩越しに見える。
「お帰りなさい。」
パク・ハもテヨンの背中に手を廻した。
リビングのソファに沈み込むように座ったテヨンに、何か飲む?とパク・ハは尋ねた。
テヨンは背後のパク・ハを振り返ると彼女の手を取り、こっちに来て、と言った。
パク・ハがソファを回り込み、テヨンの前を通り過ぎてその隣に腰かけようとした時、彼は彼女の手を掴んでグイッと自分の方へ引き寄せた。
その反動でパク・ハはバランスを崩す。
彼女はきゃっと言って、本人にはそのつもりはなかったのだが、テヨンにしなだれかかる格好になってしまった。
それを受け止めたテヨンは、その身をよじりソファに彼女を組み伏せる。
「ま、待って。テヨ・・・」
テヨンがパク・ハの口を塞いだ。
「・・・待てないよ。」
彼は彼女の頬や額にキスの雨を降らせる。
彼女の首筋から肩口にかけた滑らかなライン上にその顔を埋め、彼女の白い肌に唇を充てた。
そのまま胸元に向けて唇を這わせ始める。
パク・ハは思わず声を上げそうになって、目を瞑り、口を固く結んだ。
「パッカ。愛してる。」
・・・・テヨンさん?
テヨンの腕の中でパク・ハは身を固くしていたが、緊張をほどいた。
彼の腕の力は抜け切って、彼は彼女に覆いかぶさったままぴくりとも動かない。
パク・ハも、テヨンの全体重をその身に受けて動くことができなかった。
「テヨンさん?」
テヨンの片腕が、だらりとソファからこぼれ落ちた。
パク・ハはどうにかテヨンの身体の下から自分の腕を引き抜くと、彼の肩を押した。
すると、彼がソファの背もたれの方へその体重を移動させたので、急いでテヨンの下から這い出した。
テヨンはそのままソファの上に仰向けになって、寝息を立てている。
「なんてタイミングで寝ちゃうのよ!」
パク・ハは腰に手を当ててテヨンを見下ろしたが、横を向いてふっと息を吐いた後、膝まづきその寝顔にキスをした。
しばらくして目を覚ましたテヨンは、シャワーを浴び、パク・ハの準備してくれた朝食を平らげた。
食事中、パク・ハはテヨンをまともに見れずにいたが、その態度があまりにも普通で、あれは寝ぼけてただけで、だから忘れちゃったんだわ、と結論付けた。
玄関で、新婚夫婦よろしくパク・ハに見送られながらテヨンが言った。
「ごめん。昨日の事後処理もあるから会社に行かなきゃ。・・・今日は君と過ごしたかったのに。」
「仕方ないわよ。それよりも、ほとんど寝られなかったしょ?大丈夫?」
「うん。今夜こそ早く帰るから。」
いってきます、いってらっしゃい、と口づけを交わし、家を出る。
「パッカ、続きは今夜のお楽しみだ。」
バタン。
あんぽんたん!覚えてたのね。素知らぬ顔して朝ご飯食べちゃって!
テヨンは会社に着くと、今回の騒動の原因となった新人社員を伴って、昨夜、配送センターで残業をしてくれた社員たちの許を訪れた。助かりました、ありがとうと言って歩く。
総ての部署を廻り終えると、配送センターに向かった。
責任者にもう一度頭を下げ、出荷状況のチェックをした。
問題なく動き始めているのを確認し、本社社屋に戻った。
テヨンのオフィスで、新人社員の彼はぺこぺこと頭を下げた。
「わずかな気の緩みが、多くの人に迷惑をかける。キムチーム長を見習って、頑張ってくれよ。」
「はい。本当に申し訳ありませんでした。」
彼がオフィスを出ていった後、テヨンは溜息を吐いた。
僕自身のことだよな・・・。
テヨンは背筋を伸ばすと、社長室に向かった。
テヨンは、テクスに事のしだいを細かく報告した。
「どうにか、遅れを出さずに出荷の手配ができました。」
「そうか。ご苦労だった。」
「いえ、自分の蒔いた種ですから。」
「そうだな。」
冷たい物言いだが実は、大した奴だ、とテクスもテヨンを頼もしく思っていた。
「ああ、そうだ。悪いが今夜も遅くなるぞ。」
テヨンは険しい顔でテクスを見た。
「例の不良品を納品してきたメーカーの社長が、今夜、一席設けるそうだ。お前も来い。」
接待を受けるのも仕事のうちだ。
向こうさんはきちんと連絡を寄こしていたんだから、我が社の内部の問題だと言ったんだが、実際、不良品を納品してしまったことで相当、青くなっているようだな。
断れば、相手の顔に泥を塗ることになるぞ。
パク・ハさんに、きちんと連絡をしておけよ。
パク・ハのスマホがメールの着信を知らせた。
彼女は鼻歌交じりに家事をしていて気付かない。
パッカ、ごめん。今夜も遅くなる。接待なんだ。先に寝てて。
明日はソリが帰ってくる日だ。
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~ Comment ~
Re: やはり…
前人未到のパク・ハ山ですから、そう簡単に踏破されては困るのです。w
力尽きちゃったテヨンですが、パク・ハを愛して止まない彼なので、更に策略を巡らせることでしょう。w
結果、パク・ハと幸せになってくれると信じています。
力尽きちゃったテヨンですが、パク・ハを愛して止まない彼なので、更に策略を巡らせることでしょう。w
結果、パク・ハと幸せになってくれると信じています。
- #112 ありちゃん
- URL
- 2014.11/29 16:15
- ▲EntryTop
Re: タイトルなし
か****さま
こんにちは。いつもありがとうございマース。
何気に二人を結びつけてるピョ社長。
一応、テヨンの為に接待を断ってあげてはいるんですけどね・・・。
にしても、接待を受ける側で帰れないって・・・可哀そすぎですよね。(苦笑)
こんにちは。いつもありがとうございマース。
何気に二人を結びつけてるピョ社長。
一応、テヨンの為に接待を断ってあげてはいるんですけどね・・・。
にしても、接待を受ける側で帰れないって・・・可哀そすぎですよね。(苦笑)
- #113 ありちゃん
- URL
- 2014.11/29 16:23
- ▲EntryTop
やはり…
テヨンはもてる力を出し切って、パクハを見たら安心して気が抜けてしまったw お〜い!と突っ込みたいところですが、そんなところもかわいいw
子供の頃は薄幸だったし、愛しのイガクは消えてしまったし、テヨンに対して心配するのはパクハの不安の表れかな。今度こそは確かな愛を掴んで欲しいです。