「長編(完結)」
生まれ変わっても
生まれ変わっても 28
ソリが出かけて四日目、午後にはもう帰ってくる。
昨夜もテヨンは、日付が変わってから屋根部屋に戻ってきた。
玄関ドアの暗証番号は教えてもらっていたから、そーっと家の中に入ったがリビングの灯りを点けると、パク・ハが起き出してきた。
「お帰りなさい。テヨンさん。」
「ただいま。・・・ごめん、起こしたね。」
お茶を飲みながら少しだけ話をして、それぞれの部屋でやすんだ。
朝、一緒に朝食を摂り、一緒に家を出て、パク・ハを彼女の店の前で車から降ろしてやる。
「テヨンさん。行ってらっしゃい。」
「うん。行ってきます。・・・今夜は早く帰るから。」
テヨンは、また"早く帰る" と言って微笑んだ。
同じセリフを言うのは三回目。それは、まだ実現していない。
午前中仕事が一段落すると、テヨンは早めのランチを済ませて空港に向かった。
ソリとその友人たちが、相変わらずきゃあきゃあと騒ぎながら現れた。
その後ろをキムチーム長が付いてくる。
テヨンの姿を認めると、チーム長は小走りに彼の許へやって来て深々と頭を下げた。
「本部長、申し訳ありません。私の部下が大変なご迷惑をお掛けしました。」
彼は、出張先からも一日に一度は会社に連絡を入れて部下の動きを把握していた。
「キムチーム長、申し訳なかったのは僕の方です。あなたを出張に行かせなければ、未然に防げたことだった。」
「いえ、私も確認を怠っていました。本部長のおかげで出荷に遅れを出さずに済んだんです。」
「人海戦術に加わってくれた社員逹のおかげですね。」
テヨンは苦笑する。
「疲れてるでしょうが、貴方は先に会社に戻って報告書を作成して下さい。僕は奥様方を送ってから戻ります。」
キムチーム長は、はい、では後ほど、と言って一礼した。
ソリの友人達をそれぞれの自宅に送り終え、ソリを自宅に連れ帰るべく車を走らせる。
ソリは車中でずっとしゃべり続けていた。
「大叔母様、楽しかった?」
「もちろんよ。ヒット間違いなしね。キムチーム長は優秀よね。」
「それは良かった。ところで、大叔母様。」
「ん?」
「大叔母様の留守中、僕、パッカの屋根部屋に泊まってたんだ。」
「あら、そうなの?うちの方が広いでしょうに。」
「今夜も泊まるよ。」
「だったら、パッカの方をうちに喚びなさいよ。お土産も渡したいし。」
「大叔母様も疲れてるでしょう?また今度、うちに連れて来るから、お土産はその時にしてくれない?」
「うーん。ま、いいわ。お店に持っててもいいし。」
「うん。そうしてよ。どっちにしろ、近いうちに連れてくるから。」
ソリは、急に、おかしなコね、と首を傾げたが、また旅行がいかに楽しかったかをしゃべり始めた。
ヨン家の邸に到着し、ソリの荷物を車から降ろした。出発した時以上に増えている。
お手伝いさんと、運転手も手伝って邸に運び込む。
テヨンは、会社に戻ると言って家には上がらなかった。
ソリは車庫を離れかけて、ふとテヨンを振り返った。
「テヨン!あなた、まさか・・・パッカと?!」
突然、ソリが甲高い声を上げた。心なしか頬を染めている。
ソリは、パッカと、パッカと、と口の中でもごもごと言い続けた。
今頃、その反応?・・・やっぱり、分かってなかったのか・・・。テヨンは苦笑する。
「・・・まだ、だよ。」
「そうなの?・・・って、テヨン。あなた達、まだ結婚してないのよ!」
「"嫁" だって言い続けてるのは、大叔母様じゃないか。」
「・・・それは、そうなんだけど・・・。」
「僕を信じて。そんなに不誠実な男に見える?」
ソリはもう何も言わなかった。
「とにかく、今夜は帰らないけど、心配しないで。」
テヨンは車に乗り込んだ。
オフィスでキムチーム長からの報告を受けた。
彼が手応えを感じているようなので、それだけでも今回のソリの旅行は意味があった、とテヨンは思うことにした。
テヨン自身には、くたびれもうけの期間でしかなかったわけだが。
結局のところ、ソリに宣言するに至った。
変な小細工をするよりは、その方が善かったのだろう、とテヨンは思う。
今夜は早く帰る、と決意をして残りの仕事に取り掛かった。
夕刻、パク・ハのスマホがメールの着信を報せる。
From: テヨンさん
To: パク・ハ
Subject: 無題
テヨンです。
大叔母様は無事に帰って来たよ。
ごめん。急用ができてお店に行けそうにないんだ。
僕を待たずに帰ってて。連絡するから。
今日は比較的客の入りも少なくて、商売としてはよろしくないが、パク・ハはテヨンとの時間が作れると喜んでいたのに、一気に肩を落とした。
テヨンの為に食事を準備して待っていることはもちろんのこと、帰りが遅いと心配することさえも、彼女にとっては幸せなことなのだ、と実感した。
どんなに遅くなっても、彼は、彼女が待つ屋根部屋に必ず帰ってくる。
From: パク・ハ
To: ヨン・テヨン
Subject: Re:無題
テヨンさん。お疲れ様です。
毎日、大変ですね。お仕事がんばってください。
でも
テヨンさんに、会いたい。
すごく。
From: テヨンさん
To: パク・ハ
Subject: Re:Re:無題
僕も。
スマホを握り締めたパク・ハの瞳に涙が溜まって、ぽろりと落ちた。
昨夜もテヨンは、日付が変わってから屋根部屋に戻ってきた。
玄関ドアの暗証番号は教えてもらっていたから、そーっと家の中に入ったがリビングの灯りを点けると、パク・ハが起き出してきた。
「お帰りなさい。テヨンさん。」
「ただいま。・・・ごめん、起こしたね。」
お茶を飲みながら少しだけ話をして、それぞれの部屋でやすんだ。
朝、一緒に朝食を摂り、一緒に家を出て、パク・ハを彼女の店の前で車から降ろしてやる。
「テヨンさん。行ってらっしゃい。」
「うん。行ってきます。・・・今夜は早く帰るから。」
テヨンは、また"早く帰る" と言って微笑んだ。
同じセリフを言うのは三回目。それは、まだ実現していない。
午前中仕事が一段落すると、テヨンは早めのランチを済ませて空港に向かった。
ソリとその友人たちが、相変わらずきゃあきゃあと騒ぎながら現れた。
その後ろをキムチーム長が付いてくる。
テヨンの姿を認めると、チーム長は小走りに彼の許へやって来て深々と頭を下げた。
「本部長、申し訳ありません。私の部下が大変なご迷惑をお掛けしました。」
彼は、出張先からも一日に一度は会社に連絡を入れて部下の動きを把握していた。
「キムチーム長、申し訳なかったのは僕の方です。あなたを出張に行かせなければ、未然に防げたことだった。」
「いえ、私も確認を怠っていました。本部長のおかげで出荷に遅れを出さずに済んだんです。」
「人海戦術に加わってくれた社員逹のおかげですね。」
テヨンは苦笑する。
「疲れてるでしょうが、貴方は先に会社に戻って報告書を作成して下さい。僕は奥様方を送ってから戻ります。」
キムチーム長は、はい、では後ほど、と言って一礼した。
ソリの友人達をそれぞれの自宅に送り終え、ソリを自宅に連れ帰るべく車を走らせる。
ソリは車中でずっとしゃべり続けていた。
「大叔母様、楽しかった?」
「もちろんよ。ヒット間違いなしね。キムチーム長は優秀よね。」
「それは良かった。ところで、大叔母様。」
「ん?」
「大叔母様の留守中、僕、パッカの屋根部屋に泊まってたんだ。」
「あら、そうなの?うちの方が広いでしょうに。」
「今夜も泊まるよ。」
「だったら、パッカの方をうちに喚びなさいよ。お土産も渡したいし。」
「大叔母様も疲れてるでしょう?また今度、うちに連れて来るから、お土産はその時にしてくれない?」
「うーん。ま、いいわ。お店に持っててもいいし。」
「うん。そうしてよ。どっちにしろ、近いうちに連れてくるから。」
ソリは、急に、おかしなコね、と首を傾げたが、また旅行がいかに楽しかったかをしゃべり始めた。
ヨン家の邸に到着し、ソリの荷物を車から降ろした。出発した時以上に増えている。
お手伝いさんと、運転手も手伝って邸に運び込む。
テヨンは、会社に戻ると言って家には上がらなかった。
ソリは車庫を離れかけて、ふとテヨンを振り返った。
「テヨン!あなた、まさか・・・パッカと?!」
突然、ソリが甲高い声を上げた。心なしか頬を染めている。
ソリは、パッカと、パッカと、と口の中でもごもごと言い続けた。
今頃、その反応?・・・やっぱり、分かってなかったのか・・・。テヨンは苦笑する。
「・・・まだ、だよ。」
「そうなの?・・・って、テヨン。あなた達、まだ結婚してないのよ!」
「"嫁" だって言い続けてるのは、大叔母様じゃないか。」
「・・・それは、そうなんだけど・・・。」
「僕を信じて。そんなに不誠実な男に見える?」
ソリはもう何も言わなかった。
「とにかく、今夜は帰らないけど、心配しないで。」
テヨンは車に乗り込んだ。
オフィスでキムチーム長からの報告を受けた。
彼が手応えを感じているようなので、それだけでも今回のソリの旅行は意味があった、とテヨンは思うことにした。
テヨン自身には、くたびれもうけの期間でしかなかったわけだが。
結局のところ、ソリに宣言するに至った。
変な小細工をするよりは、その方が善かったのだろう、とテヨンは思う。
今夜は早く帰る、と決意をして残りの仕事に取り掛かった。
夕刻、パク・ハのスマホがメールの着信を報せる。
From: テヨンさん
To: パク・ハ
Subject: 無題
テヨンです。
大叔母様は無事に帰って来たよ。
ごめん。急用ができてお店に行けそうにないんだ。
僕を待たずに帰ってて。連絡するから。
今日は比較的客の入りも少なくて、商売としてはよろしくないが、パク・ハはテヨンとの時間が作れると喜んでいたのに、一気に肩を落とした。
テヨンの為に食事を準備して待っていることはもちろんのこと、帰りが遅いと心配することさえも、彼女にとっては幸せなことなのだ、と実感した。
どんなに遅くなっても、彼は、彼女が待つ屋根部屋に必ず帰ってくる。
From: パク・ハ
To: ヨン・テヨン
Subject: Re:無題
テヨンさん。お疲れ様です。
毎日、大変ですね。お仕事がんばってください。
でも
テヨンさんに、会いたい。
すごく。
From: テヨンさん
To: パク・ハ
Subject: Re:Re:無題
僕も。
スマホを握り締めたパク・ハの瞳に涙が溜まって、ぽろりと落ちた。
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~ Comment ~
やっと
>どんなに遅くなっても、彼は、彼女が待つ屋根部屋に必ず帰ってくる。
涙を落としても、今はもうその涙は冷たくはないですよね。きっと。
待つのは切ないけれど、それさえも幸せと思えるようになれて、パク・ハ良かったね
パク・ハもテヨンも自分の帰るべき場所をやっと得ることができたということでしょうか。
それにしても・・・
三日間もお預けで・・・、せっかく段取ったのに・・・テヨン・・・
今宵こそ、頑張れ
ふぁいてぃん
ありちゃんさん、よろしく
涙を落としても、今はもうその涙は冷たくはないですよね。きっと。
待つのは切ないけれど、それさえも幸せと思えるようになれて、パク・ハ良かったね

パク・ハもテヨンも自分の帰るべき場所をやっと得ることができたということでしょうか。
それにしても・・・
三日間もお預けで・・・、せっかく段取ったのに・・・テヨン・・・

今宵こそ、頑張れ


ありちゃんさん、よろしく

- #118 阿波の局
- URL
- 2014.12/01 22:23
- ▲EntryTop
Re: タイトルなし
か****さま
こんばんは。
宣言しましたよ。w
とりあえず、今夜は帰らないってことですが、そのまま泊まり続ける気もあるとか、ないとか。w
だけど、急用とかで、ジュース屋に行けず・・・。どうなる?
こんばんは。
宣言しましたよ。w
とりあえず、今夜は帰らないってことですが、そのまま泊まり続ける気もあるとか、ないとか。w
だけど、急用とかで、ジュース屋に行けず・・・。どうなる?
Re: 開眼
ほ**さま
ここは正攻法で行くと決めたようですね。w
不誠実な男でないなら、覚悟を決めにゃならんことに気付いたようで。
ええ男になってきてると信じつつ、応援してやりたいところです。w
ここは正攻法で行くと決めたようですね。w
不誠実な男でないなら、覚悟を決めにゃならんことに気付いたようで。
ええ男になってきてると信じつつ、応援してやりたいところです。w
Re: やっと
阿波の局さま
や、や、や、またも私のお気に入りの一文を拾い上げてくださいました!
イ・ガクは待ってももう来ないけれど、テヨンは何が何でも帰ってきてくれますから!
冷たい涙じゃありません。
テヨンのくたびれもうけの3日間。
きっと無駄ではなかったはず、です。W
や、や、や、またも私のお気に入りの一文を拾い上げてくださいました!
イ・ガクは待ってももう来ないけれど、テヨンは何が何でも帰ってきてくれますから!
冷たい涙じゃありません。
テヨンのくたびれもうけの3日間。
きっと無駄ではなかったはず、です。W
Re: NoTitle
F****さま
コメントありがとうございます!!
お気遣いに感謝します。
コメントは、お時間のあるとき、気が向いたとき、気負いなく下さればありがたいです。<m(__)m>
テヨンへの応援もありがとうございます。
これからもヨロシクお願いしますね。
コメントありがとうございます!!
お気遣いに感謝します。
コメントは、お時間のあるとき、気が向いたとき、気負いなく下さればありがたいです。<m(__)m>
テヨンへの応援もありがとうございます。
これからもヨロシクお願いしますね。
Re: タイトルなし
j******さま
ありがとうございます。
キュンとして頂けて良かったです。
テヨンもパッカも何か乗り越えた感じですかねぇ。
ソリ、いい味出してると、結構、人気者でございます。W
ありがとうございます。
キュンとして頂けて良かったです。
テヨンもパッカも何か乗り越えた感じですかねぇ。
ソリ、いい味出してると、結構、人気者でございます。W
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