「長編(完結)」
生まれ変わっても
生まれ変わっても 29
パク・ハはスーパーの袋を重そうに抱えて、屋根部屋に帰ってきた。
暗証番号を押して、ドアのロックを解除する。
ピッピッピピ、ピーッ、ガチャ。
玄関先で、どさりと荷物を置いた。灯りを点けて靴を脱ぐ。
ソリも帰ってきた。今夜、テヨンが屋根部屋に来るものかどうかは分からない。それでも、テヨンの分まで買い物をしてきた。
私と一緒に居たら、
「テヨンさん、太っちゃうわね。」
後半は独り言と共に、うふふふ、と笑い声になる。
「誰が太ってるって?」
驚いてパク・ハが顔を上げると、リビングへと続く入り口の壁にもたれかかるようにして、ラフな服装のテヨンが腕を組んで立っていた。
「テヨンさん!」
「はりきって買い物したね。どんなご馳走を作るつもりだったの?」
笑いながら、スーパーの袋をひょいと持ち上げる。ほんとに、重いね、とまた笑う。
「テヨンさん、仕事だったんじゃないの?」
「お店に行かないから、まっすぐ帰って来てってメールしたつもりだけど?」
パク・ハは、えーっと言って口を尖らせた。ほら、また尖らせてる、テヨンはちゅっとキスをする。もう、儀式みたいなものだ。
「パッカ目を瞑って。」
パク・ハは、えっ?と言いつつも、テヨンに言われるままに目を閉じる。
いいって言うまで、そのままだよ。テヨンはパク・ハの手を取ってゆっくりと歩き出す。パク・ハはテヨンにその行く先を委ね、そろそろと歩を進めた。
リビングを過ぎ、ダイニングまで入ってきてテヨンはパク・ハの手を離した。
「テヨンさん。まだ?」
「もうちょっと、待って。」
スーパーの買い物袋が置かれたらしい、ガサリと言う音の後に、何かカチカチと言う音がする。
閉じたまぶたの裏に、ぽわっと柔らかい光の揺らめきを感じた。
・・・ろうそく?
「いいよ。パッカ、目を開けて。」
ライトを消されてほの暗いダイニング。テーブルの上や奥の作業台の上にもたくさんのろうそくの炎。
柔らかな橙色の炎が揺らめいて、辺りをほんのりと照らしている。
きれいにテーブルクロスが敷かれ、そこかしこに花も飾られていた。
「素敵・・・。」
うっとりとしたまま、立ち尽くすパク・ハの為にテヨンが椅子を引いてくれた。
「どうぞ、お座りください。」
パク・ハを椅子に座らせると、テヨンはシャンパングラスをテーブルに置いた。
そして、パク・ハの斜め後ろから、彼女の目の前にすっと料理の皿を置く。
「どうぞ、本日のメイン・ディッシュです。」
「いきなり、メイン・ディッシュなの?」
パク・ハはくすくすと笑った。
「ごめん。それしか作れなかったんだよ。」
テヨンも笑いながら、彼女の向かいの席に腰を下ろす。
テヨンの手造りだと言うオムライスが湯気を立てていた。
彼はパク・ハのグラスにシャンパンを注いでやり、自分のグラスにも注ぐ。
キンと小気味よい金属音が響いた。
シャンパンを一口飲んで、匙を取った。
いただきます、と二人の声が合って、微笑み合う。
「テヨンさん。上手ね。卵で包むのが、一番、難しいのに・・・。」
「実は、5回失敗したんだ。僕のが6回目で、君のが7回目。おかげでちょうど出来上がった時に、お嬢様がお帰り遊ばしたってわけ。」
テヨンは片目を瞑ってみせた。
じゃあ、卵、無くなっちゃった?買ってくれば良かった。
スクランブルエッグがたくさんできちゃったから、しばらく卵料理はいいよ。
うふふ、と笑ってパク・ハがオムライスを一匙すくった。口に運んで、ゆっくりと咀嚼する。
うん、おいしい。
本当?
ええ。今度からテヨンさんに作ってもらおっかなっ?
えーっ、僕だってパッカのオムライス、まだ1回しか食べてないよ。
チョハだったときに、いやってほど作ったわ。
だから、覚えてないんだってば。
うふふ、あはは、と笑い合う。
二人は食事を楽しんだ。
「よし、次はデザートだね。」
テヨンが立ち上がって、パク・ハに見えないように何やら準備をしている。
「お待たせ。さあ、どうぞ。」
またも斜め後ろから、すっと皿を差し出した。
皿の上には小さな四角い包み。光沢のある包装紙が、ろうそくの揺らめきを映し出す。
『運命の赤いリボン』が真っ赤なバラのように咲きほこっていた。
パク・ハは驚いて後ろを振り返り、テヨンを見上げた。
「パッカ。開けて。」
パク・ハはそっとリボンに触れた。『運命の赤いリボン』がするするとほどかれていく。
包みを開けると箱が現れる。その箱の蓋もそっと外す。
箱の中にはビロードのリングケース。
テヨンが手を伸ばし、リングケースをその手に取った。
そして、パク・ハの傍らに膝まづく。
リングケースの蓋を開けると、パク・ハの前にうやうやしく差し出した。
ケースの中央には、翡翠をくり貫いたらしい、淡い緑色のリング。三つの小さなダイヤが埋め込まれ輝きを放っている。
「パク・ハさん。僕と結婚してください。」
パク・ハの目に涙が溜まっていく。彼女は両手で口を覆ったまま何も言えずにいた。
「返事は?Yes と言ってくれないの?」
「・・・네.(ネェ)・・・はい。テヨンさん、はい。」
パク・ハの頬を大粒の涙が滑り落ちていく。
テヨンはにっこりと微笑むとリングケースからリングを取り出した。パク・ハの左手薬指にリングをはめてやる。
そして、ゆっくりと立ち上がり、パク・ハも立たせる。しっかりとその胸に彼女を抱きしめた。
翡翠はあらゆる災厄からその身を守ってくれるお守りだよ。
三つのダイヤは、過去と現在、未来を象徴してる。
300年前も、今も、そしてこれからもずっと・・・永遠に、君を愛します。
パク・ハは彼の胸で泣きじゃくっていた。
暗証番号を押して、ドアのロックを解除する。
ピッピッピピ、ピーッ、ガチャ。
玄関先で、どさりと荷物を置いた。灯りを点けて靴を脱ぐ。
ソリも帰ってきた。今夜、テヨンが屋根部屋に来るものかどうかは分からない。それでも、テヨンの分まで買い物をしてきた。
私と一緒に居たら、
「テヨンさん、太っちゃうわね。」
後半は独り言と共に、うふふふ、と笑い声になる。
「誰が太ってるって?」
驚いてパク・ハが顔を上げると、リビングへと続く入り口の壁にもたれかかるようにして、ラフな服装のテヨンが腕を組んで立っていた。
「テヨンさん!」
「はりきって買い物したね。どんなご馳走を作るつもりだったの?」
笑いながら、スーパーの袋をひょいと持ち上げる。ほんとに、重いね、とまた笑う。
「テヨンさん、仕事だったんじゃないの?」
「お店に行かないから、まっすぐ帰って来てってメールしたつもりだけど?」
パク・ハは、えーっと言って口を尖らせた。ほら、また尖らせてる、テヨンはちゅっとキスをする。もう、儀式みたいなものだ。
「パッカ目を瞑って。」
パク・ハは、えっ?と言いつつも、テヨンに言われるままに目を閉じる。
いいって言うまで、そのままだよ。テヨンはパク・ハの手を取ってゆっくりと歩き出す。パク・ハはテヨンにその行く先を委ね、そろそろと歩を進めた。
リビングを過ぎ、ダイニングまで入ってきてテヨンはパク・ハの手を離した。
「テヨンさん。まだ?」
「もうちょっと、待って。」
スーパーの買い物袋が置かれたらしい、ガサリと言う音の後に、何かカチカチと言う音がする。
閉じたまぶたの裏に、ぽわっと柔らかい光の揺らめきを感じた。
・・・ろうそく?
「いいよ。パッカ、目を開けて。」
ライトを消されてほの暗いダイニング。テーブルの上や奥の作業台の上にもたくさんのろうそくの炎。
柔らかな橙色の炎が揺らめいて、辺りをほんのりと照らしている。
きれいにテーブルクロスが敷かれ、そこかしこに花も飾られていた。
「素敵・・・。」
うっとりとしたまま、立ち尽くすパク・ハの為にテヨンが椅子を引いてくれた。
「どうぞ、お座りください。」
パク・ハを椅子に座らせると、テヨンはシャンパングラスをテーブルに置いた。
そして、パク・ハの斜め後ろから、彼女の目の前にすっと料理の皿を置く。
「どうぞ、本日のメイン・ディッシュです。」
「いきなり、メイン・ディッシュなの?」
パク・ハはくすくすと笑った。
「ごめん。それしか作れなかったんだよ。」
テヨンも笑いながら、彼女の向かいの席に腰を下ろす。
テヨンの手造りだと言うオムライスが湯気を立てていた。
彼はパク・ハのグラスにシャンパンを注いでやり、自分のグラスにも注ぐ。
キンと小気味よい金属音が響いた。
シャンパンを一口飲んで、匙を取った。
いただきます、と二人の声が合って、微笑み合う。
「テヨンさん。上手ね。卵で包むのが、一番、難しいのに・・・。」
「実は、5回失敗したんだ。僕のが6回目で、君のが7回目。おかげでちょうど出来上がった時に、お嬢様がお帰り遊ばしたってわけ。」
テヨンは片目を瞑ってみせた。
じゃあ、卵、無くなっちゃった?買ってくれば良かった。
スクランブルエッグがたくさんできちゃったから、しばらく卵料理はいいよ。
うふふ、と笑ってパク・ハがオムライスを一匙すくった。口に運んで、ゆっくりと咀嚼する。
うん、おいしい。
本当?
ええ。今度からテヨンさんに作ってもらおっかなっ?
えーっ、僕だってパッカのオムライス、まだ1回しか食べてないよ。
チョハだったときに、いやってほど作ったわ。
だから、覚えてないんだってば。
うふふ、あはは、と笑い合う。
二人は食事を楽しんだ。
「よし、次はデザートだね。」
テヨンが立ち上がって、パク・ハに見えないように何やら準備をしている。
「お待たせ。さあ、どうぞ。」
またも斜め後ろから、すっと皿を差し出した。
皿の上には小さな四角い包み。光沢のある包装紙が、ろうそくの揺らめきを映し出す。
『運命の赤いリボン』が真っ赤なバラのように咲きほこっていた。
パク・ハは驚いて後ろを振り返り、テヨンを見上げた。
「パッカ。開けて。」
パク・ハはそっとリボンに触れた。『運命の赤いリボン』がするするとほどかれていく。
包みを開けると箱が現れる。その箱の蓋もそっと外す。
箱の中にはビロードのリングケース。
テヨンが手を伸ばし、リングケースをその手に取った。
そして、パク・ハの傍らに膝まづく。
リングケースの蓋を開けると、パク・ハの前にうやうやしく差し出した。
ケースの中央には、翡翠をくり貫いたらしい、淡い緑色のリング。三つの小さなダイヤが埋め込まれ輝きを放っている。
「パク・ハさん。僕と結婚してください。」
パク・ハの目に涙が溜まっていく。彼女は両手で口を覆ったまま何も言えずにいた。
「返事は?Yes と言ってくれないの?」
「・・・네.(ネェ)・・・はい。テヨンさん、はい。」
パク・ハの頬を大粒の涙が滑り落ちていく。
テヨンはにっこりと微笑むとリングケースからリングを取り出した。パク・ハの左手薬指にリングをはめてやる。
そして、ゆっくりと立ち上がり、パク・ハも立たせる。しっかりとその胸に彼女を抱きしめた。
翡翠はあらゆる災厄からその身を守ってくれるお守りだよ。
三つのダイヤは、過去と現在、未来を象徴してる。
300年前も、今も、そしてこれからもずっと・・・永遠に、君を愛します。
パク・ハは彼の胸で泣きじゃくっていた。
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~ Comment ~
Re: タイトルなし
か****さま
こんにちは。
オムライスは難易度、高いですよねぇ。テヨン大したものです。
プロポーズはするつもりで指輪を準備していたはずなんですけど、お預け喰らわされまくったので、
先にけじめつけようと思ったんですかねぇ?w
待ったなしですか・・・それは困った。あわあわしている書き手がここに。WW
こんにちは。
オムライスは難易度、高いですよねぇ。テヨン大したものです。
プロポーズはするつもりで指輪を準備していたはずなんですけど、お預け喰らわされまくったので、
先にけじめつけようと思ったんですかねぇ?w
待ったなしですか・・・それは困った。あわあわしている書き手がここに。WW
Re: ∑(゚Д゚)
ほ**さま
お仕事中にありがとうございます。w
なんか、驚かれた方が多くいらっしゃって、私が驚いてるという・・・。ww
もちろん、そのつもりで指輪を準備したはずなんですけど、(なんせ、特注でっせ!)このタイミングでと決意したのはいつのことなのか・・・ちょっと聞いておきます。w(私の予想では、あの時か、あの時。)
お仕事中にありがとうございます。w
なんか、驚かれた方が多くいらっしゃって、私が驚いてるという・・・。ww
もちろん、そのつもりで指輪を準備したはずなんですけど、(なんせ、特注でっせ!)このタイミングでと決意したのはいつのことなのか・・・ちょっと聞いておきます。w(私の予想では、あの時か、あの時。)
文字化け
一度書き込みしたのですが文字化け!
失われた文章だけが美しいってないですか?苦笑
同じものは二度と書けないですよね!
今はもう 悔しくもなく こう言える 覚えてないよ イ・ガクのころは
汝(な)がくれし 吾が命なれ これよりは 三世永遠に 共に歩まん
昨日でも 吾にとっては 遥かなる 遠い昔の 記憶ではある
失われた文章だけが美しいってないですか?苦笑
同じものは二度と書けないですよね!
今はもう 悔しくもなく こう言える 覚えてないよ イ・ガクのころは
汝(な)がくれし 吾が命なれ これよりは 三世永遠に 共に歩まん
昨日でも 吾にとっては 遥かなる 遠い昔の 記憶ではある
- #131 阿波の局
- URL
- 2014.12/03 23:33
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Re: 文字化け
阿波の局さま
返信遅くなって申し訳ありません。
そして、そして、本当にありがとうございます。
素敵な歌を三首も!
いろいろな方の作品に寄せて、歌をお詠みになられていましたよね。
実は憧れていましたが、本当に感激しますね。
涙が出るほど嬉しかったです。
今度、記事上にコピペさせて頂きます!
返信遅くなって申し訳ありません。
そして、そして、本当にありがとうございます。
素敵な歌を三首も!
いろいろな方の作品に寄せて、歌をお詠みになられていましたよね。
実は憧れていましたが、本当に感激しますね。
涙が出るほど嬉しかったです。
今度、記事上にコピペさせて頂きます!
- #134 ありちゃん
- URL
- 2014.12/04 17:13
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