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「長編(完結)」
生まれ変わっても

生まれ変わっても 30

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「パッカ、笑って。・・・泣き顔もかわいいけどね、僕は、君の笑顔が見ていたいな。」

テヨンは、ん?と腕の中のパク・ハの顔を覗き込んだ。
パク・ハは涙を流しながら、笑顔を作る。

テヨンは、パク・ハの左手を持ち自身の口許へ持っていく。今、はめてやったばかりの、翡翠のリングにキスをした。
そして、ズボンのポケットに手を突っ込むと、何やら取り出した。

「これも、持ってて。」

パク・ハの左手薬指の翡翠に並べるように、赤いリボンの輪をリングよろしくはめてやる。

「これは・・・」

それは『運命の赤いリボン』だった。

「君の指輪のサイズなんて知らなかったしさ、直接、聞いちゃったら、気付かれちゃうだろ?」

テヨンはいたずらっぽく笑った。

「どうやってサイズを測ろうかって、随分、考えたよ。僕が『赤い糸』を知らないと本気で思った?」

テヨンはパク・ハの頬に優しくキスをした。

「このリボン、欲しがってただろ?」



そうしてしばらく抱き合っていたが、テヨンがその腕を緩めた。

「後片付けは僕がするから、君はお風呂に入っておいで。」

「・・・後片付けぐらい、私が。」

「いいよ、僕がする。・・・それに、時間がもったいない。」

「え?」

「もう、僕は済ませてるから・・・。」

「・・・テヨンさん、お風呂、入ったの?」

「うん。」

「・・・おば様、帰ってきたのよね?」

「うん。泊まるって言ってきたよ。・・・まさか、追い帰すつもり?」

テヨンは片目を瞑った。

「・・・そんな、追い帰すなんて。」

「じゃあ、問題ないだろ?」

彼はキッチンの灯りを点けると、上機嫌で後片付けを始めた。




浴槽に張られた湯の中で、パク・ハは手足を伸ばした。


テヨンさんと、結婚する・・・。


かつて、イ・ガクと結婚式を挙げた時のことを思い出す。
彼は『永遠に共に在る』という誓いの言葉と、結婚の証だけを残して去って行ってしまった。
誓いのキスを交わした直後に。

イ・ガクとテヨン。生まれた時代も人格も違うけれど、パク・ハが愛したのは同じ魂の持ち主。
イ・ガクは『永遠に共に在る』と誓い、テヨンは『永遠に愛する』と誓った。

イ・ガクの誓いが、テヨンによって成される。それは、何度生まれ変わっても、繰り返されるであろう永遠の誓い。


パク・ハは両手で湯をすくい、高く掲げた。
湯は手からこぼれ落ち、彼女の腕を伝い、肌を伝い滴り落ちていく。

同じことを何度も繰り返すその姿は、さながら、聖水でその身を清めているかのようだった。



パク・ハが風呂から上がりリビングに行ったとき、テヨンはソファに腰かけていた。

彼は彼女の姿を認めると、さっと立ち上がり、パク・ハをその腕(かいな)に包み込んだ。
彼女の肩口に顔をうずめたテヨンの鼻腔を、湯上りの良い香りがふわりと掠める。
パク・ハはいつもならその手をテヨンの背中に廻して応えるが、今は、少し緊張して、ただ抱きすくめられるままになっていた。

突然テヨンがその身を屈めたかと思ったら、パク・ハを抱き上げた。
ふいのことで、小さくきゃっと叫んだパク・ハはテヨンの首に腕を絡める。

「もっと、色っぽい格好してくれなきゃ。」

テヨンは、上は七分袖のカットソー、下は柔らかな素材のハーフパンツ姿のパク・ハを、ワザとらしく上から下まで見て言った。
パク・ハは、恥ずかしさもあって、何よ!と言って唇を尖らせた。テヨンはすかさずキスをする。

テヨンはパク・ハを抱いたまま階段を昇り、自室へ向かった。

「ちょ、ちょっと待って、テヨンさん。降ろして。」

「ダメ、待てないよ。降ろすのは部屋に入ってからだ。」

ドアの前まで来ると、最初からそのつもりだったらしく、ドアは少し隙間が空いていた。ドアの下に足先を差し込んで器用に開ける。

部屋に入ると、パク・ハをベッドの上にそっと降ろしてやった。
横たえられるように降ろされたが、パク・ハはあわてて上体を起こした。

「テヨンさん。待って。お願い。」

「待たないよ。」

テヨンはパク・ハの肩をベッドに押し付けた。そのまま、自身の両足でパク・ハの身体を挟み込むようにして跨り、上体をパク・ハの上に覆いかぶせる。
頬にキスをして、首筋に顔を埋め彼女の耳元で囁いた。

「どんな風に、して欲しい?」

耳にかかるテヨンの吐息に、パク・ハは身じろぐ。

「イ・ガクにどんな風に愛されたの?」

「・・・・・な・・い。」

「え?」

「・・・・したこと、ない。」

テヨンは、驚いたようにパク・ハから身体を離し、上体を起こした。

「イ・ガクと・・・してない?」

「・・・他の誰とも・・・ないわ。」

パク・ハはテヨンの視線から逃れるように、顔を逸らした。

「アメリカ生活が長かったって聞いてたから・・・てっきり・・・。」

「アメリカに居たからって、経験豊富とは限らないわ。」

パク・ハは顔を逸らしたまま、頬を膨らませた。

「テヨンさんはアメリカに居たとき、女のコをとっかえひっかえしてたの?」

今度はテヨンを下から睨み付ける。

「まさか!」

確かに、女の一人や二人抱いたことはある。
テヨンも男だ。そういう状況になれば欲情はする。だが、今まで彼の方からそういう状況に持ち込んだことはない。
自分から、欲しい、と思ったのはパク・ハだけだった。

「でしょ?」

パク・ハが柔らかく笑った。

テヨンは膝立ちの姿勢で後ずさり、パク・ハの上から退くとベッドの縁に腰かけた。
パク・ハも這い出してその隣に腰かける。



「イ・ガクと結婚したって言うから・・・」

あの日、君が帰るなって僕を引き留めた時、僕は・・・全身全霊で君を欲した。
その身も心も、君の総てが欲しいと思ったんだ。
長く待った、そう思わされたのは、イ・ガクが結婚するまで待ったからなんだね。


朝鮮時代の王世子なら当然の判断だったかも知れない。
結果、彼女を抱くこともなく過去に還ってしまった。


どうして気付かなかったんだろう、とテヨンは思った。
彼女を抱いたことがなかったからこそ、強烈に、欲しいと思ったのだ、と。

「僕は・・・君の温もりも、肌の感触も、記憶にないのが淋しくて・・・」

イ・ガクも体感していないのに、そんな記憶があるはずがないではないか。



「私から結婚を申し込んだの。」

テヨンが、えっ?と言ってパク・ハを見た。

一度は拒絶されたわ。・・・何も残さず、朝鮮に還ろうとしてたの。
でも・・・結婚の証と、と言ってパク・ハは胸元の翡翠を触った。

「永遠に共に在る、と誓ってくれた。」

パク・ハはテヨンのうなじの後ろで手を組んで、自身の左手の翡翠のリングにキスをする。


「私たち、結婚の誓いをしたのよ。」


テヨンはパク・ハの腕をほどいた。彼女の頬を両手で包むようにして、自分の方に顔を向けさせ、そのまま唇を塞ぐ。

彼は、ゆっくりと、味わうように、彼女の唇を食んだ。


イ・ガクの誓いが、テヨンによって、成される。

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Re: ふ〜っ

ほ**さま
いつもありがとうございます。
運命の赤いリボン・・・考えに考えました。(ああ、テヨンがですね。w)

イ・ガクのことを聞いちゃうのは、やはり、なんだかんだ言って、嫉妬も悔しさもあるとみました。w
くそ~、覚えてねぇ。みたいな?ww
イ・ガクの想いを開放できるのもテヨンですから、彼は責任重大ですね。

Re: タイトルなし

j******さま
あ、やはり驚かれました?唐突な感じはしましたよね。(苦笑)
まあ、でも安心して頂けて良かったです。
あんた、草食じゃなかったんか~い?と突っ込みたいほどのガッツキ振りも楽しんで頂けて嬉しいです。w

Re: NoTitle

か****さま
こんばんは。こちらこそ、いつもありがとうございます。
運命の赤いリボン、なかなかでしたでしょ?
そう、あの時から始動されてたわけですよ。(妄想も大暴走でしたがww)
お風呂はいつ、入ったんでしょうね?パッカが帰ってくる前に、オムライス頑張ってたはずなのに・・・
必死に仕事、片付けて、速攻で退社したんでしょうね。(想像するだけで、笑えます。w)
ピンクか、レースか、はたまた白か・・・書くべきでしょうか?w
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