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「長編(完結)」
目覚めたテヨン

目覚めたテヨン 6

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パク・ハさんに会うべきだ。


社長の言葉が耳の奥で響いていた。

今は帰宅して、自室のベットで横になっていたが、先刻 会社で話した内容が重苦しくのしかかってくる。


「正直、俺はテヨンが目覚めることは難しいと思っていたよ。」

真剣にそう言われては、返す言葉もなく、ただ黙って聞いていた。

「あいつが、本当のテヨンではないと知った時、会長のためならそれでもいいかと思った。 いや、むしろ、あいつを利用しようと思ったんだよ。俺は・・・。」

社長が「あいつ」と呼ぶ彼がいたから、会社は守られた。
でも、この人がいたから、彼も「ヨン・テヨン」でいられた。
真に会社を守ったのは、ピョ・テクス この人だろう。

社長は、そんなに会社が大事だったのか・・・。
それも、おばあ様のため?


僕が何も言わないので、社長は独り言のように続けた。

「パク・ハさんという恋人もいたから、そのまま結婚して跡継ぎをもうけてくれたらいい、とも思っていた。」

社長は、僕の様子を確かめるように、ちらりとこちらを見たが、すぐに視線を外す。

「・・・おまけにチャン会長の実の娘だぞ。願ったり、叶ったりじゃないか? もっと早くに知っていたら、俺が社長になったりなんかしなかったのに。」

社長になったりなんかしなかった、の部分は本当にいまいましそうで可笑しかった。

「テヨン。お前、パク・ハさんに会え。」

命令・・・なんですね。

「政略結婚ですか?」

会社のために?
僕が「彼」に「似ている」から、彼女が僕になびくとでも?

社長が「政略結婚」を望んで言っているようにも聞こえなかったが、その真意を図りかねた。

「それは、いい考えだ。・・・チャン会長はテヨンを気に入っているようだし、 パク・ハさんと結婚できたら、会社のためになるな、確かに。 ・・・パク・ハさんに会ってみるか?うん?」

「社長が、今、彼女に会え、と仰ったんですよ。」

僕は語気を荒げた。

「お前が『ヨン・テヨン』だから、だ。」

はっ?それは、どういう・・・。

社長は僕をまっすぐに見た。今度は視線を外そうとはしない。
僕の困惑を見てとって、社長は同じことを繰り返した。

「『ヨン・テヨン』はお前だから、だ。」

だから、どういう意味で・・・?

「あいつとお前は、よく似ている。いや、似ているなんてレベルじゃない。・・・姿形だけじゃなく・・・まるで同一人物だ。」

俺は、会社に入る以前のテヨンのことをよく知らない。

もちろん、違う部分もあるにはあったが・・・仕事の仕方というのは、そのひととなりが顕れるもんだ。
物事に対する目の付け所、企画の立て方、プレゼンの仕方、他にもいろいろ・・・。

俺には、あいつこそ『ヨン・テヨン』だった。

そして、お前は、俺の知っている『ヨン・テヨン』だ。

お前はパク・ハさんに会うべきだ。



社長の声が、耳の奥で響き続けていた。
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