「長編(完結)」
生まれ変わっても
生まれ変わっても 32
テヨンがパク・ハの店に行った時、ちょうど彼女が鍵をかけて店を出ようとしていた。
「パッカ、屋根部屋まで送るよ。」
「屋根部屋の方で構わなかったのに、迎えは。・・・仕事は?テヨンさん。」
「今日は、ほんとは休みだよ。」
テヨンは本来土曜日も休みだが、立場上ほとんど関係ない。
好きな時に休んでもいいような立場でもあるし、休みなんて返上して対応しなければならないような立場でもある。
パク・ハの休みに合わせることがほとんどだったが、今日はイ・ガクを訪ねると決めていた。
リビングで、テヨンはパク・ハが身支度を整えるのを待っていた。
色々なことが頭を巡る。
とりあえず、婚約式まで終えたら少し落ち着くだろう。それから少し調べてみるか・・・。
テヨンはイ・ガクのその後の人生が気になっていた。
パク・ハの話では、「世子嬪の死の真相」を求めてイ・ガクは現代に来たと言う。
しかし、ネットで調べても、文献を漁っても、最初の世子嬪は廃妃され流刑、幽閉との記録しかない。
没年はイ・ガク自身の死よりもずっと後なのだ。
そして、イ・ガクは王に即位する前に新しい世子嬪を迎えている。
最初の世子嬪の妹のことなど、一般的に求められる情報には何の記述もない。
イ・ガクの陵墓で共に眠る世子嬪が、パク・ハの前世であるプヨンでないことは明白だった。
最初の世子嬪、つまりプヨンの姉が廃妃されて流刑と言うことは、罪人扱いである。
罪人の妹を新たな世子嬪にするはずもないし、そうでなくても義妹だった者を妻の座に据えるはずもない。
何より年齢が違う。その世子嬪はイ・ガクより十歳は若いのだから。
パク・ハは図書館に行き、歴史書でイ・ガクが紛れもない王世子であることを確認したと言っていた。
その早すぎる死にショックを受けた、とも。
パク・ハはイ・ガクが二番目の妻を迎えたことも知ったが、そのときはイ・ガクに対する自分の想いに気付いていなかったからさらっと流した。
彼を愛するようになってからは歴史書を読むこともなかった。
パク・ハにしてみれば、自分の姉の前世でもある最初の世子嬪の不遇をそれ以上知りたくもなかったし、彼がまた別の女性を妻に迎え入れたという史実から目を逸らしたくもあった。
彼女は、イ・ガクが現代にやって来たときには、最初の世子嬪は既に死んでしまっていた、と思い込んでいる。
でも史実は違う。
世子嬪は生きていた。では、死んでしまったのは誰なのか?
「世子嬪の死の真相」が解明されたから、イ・ガクは朝鮮に還った。
彼はパク・ハにその真相を語ることはしなかったし、パク・ハも尋ねなかった。
生まれ変わった今でも「世子嬪の死の真相」を探ろうと言うのか、僕は・・・。
パク・ハの前世であるプヨンのことが心から離れない。
彼女はパク・ハとして、自分の妻になろうとしているのに。
今の自分たちが幸せだからそれでいい、とは思えなかった。
真実を知ったところで、それが明るく希望的だとは限らない。むしろ、逆である可能性の方が高い。
それでも、イ・ガクとプヨンの真実を知っておきたかった。
「テヨンさん。お待たせ。」
パク・ハの声で現実に引き戻される。
「綺麗だ。」
清楚に装ったパク・ハが、はにかんだように笑う。
テヨンは立ち上がり、パク・ハをその手で柔らかく包んだ。キスをしようとしたが、パク・ハが人差し指で彼の唇を押さえる。
「口紅がつくわ。」
「じゃあ、こっちに。」
首筋にキスを落とされ、パク・ハは微かに吐息を漏らす。
「そんな声、出さないでくれ。・・・やばい。」
「・・・あんぽんたん!・・・く、唇がダメなら、おでこか、頬でしょ。普通はっ!」
テヨンはいたずらっぽく笑った。
「さあ、行こうか。」
「パッカ、屋根部屋まで送るよ。」
「屋根部屋の方で構わなかったのに、迎えは。・・・仕事は?テヨンさん。」
「今日は、ほんとは休みだよ。」
テヨンは本来土曜日も休みだが、立場上ほとんど関係ない。
好きな時に休んでもいいような立場でもあるし、休みなんて返上して対応しなければならないような立場でもある。
パク・ハの休みに合わせることがほとんどだったが、今日はイ・ガクを訪ねると決めていた。
リビングで、テヨンはパク・ハが身支度を整えるのを待っていた。
色々なことが頭を巡る。
とりあえず、婚約式まで終えたら少し落ち着くだろう。それから少し調べてみるか・・・。
テヨンはイ・ガクのその後の人生が気になっていた。
パク・ハの話では、「世子嬪の死の真相」を求めてイ・ガクは現代に来たと言う。
しかし、ネットで調べても、文献を漁っても、最初の世子嬪は廃妃され流刑、幽閉との記録しかない。
没年はイ・ガク自身の死よりもずっと後なのだ。
そして、イ・ガクは王に即位する前に新しい世子嬪を迎えている。
最初の世子嬪の妹のことなど、一般的に求められる情報には何の記述もない。
イ・ガクの陵墓で共に眠る世子嬪が、パク・ハの前世であるプヨンでないことは明白だった。
最初の世子嬪、つまりプヨンの姉が廃妃されて流刑と言うことは、罪人扱いである。
罪人の妹を新たな世子嬪にするはずもないし、そうでなくても義妹だった者を妻の座に据えるはずもない。
何より年齢が違う。その世子嬪はイ・ガクより十歳は若いのだから。
パク・ハは図書館に行き、歴史書でイ・ガクが紛れもない王世子であることを確認したと言っていた。
その早すぎる死にショックを受けた、とも。
パク・ハはイ・ガクが二番目の妻を迎えたことも知ったが、そのときはイ・ガクに対する自分の想いに気付いていなかったからさらっと流した。
彼を愛するようになってからは歴史書を読むこともなかった。
パク・ハにしてみれば、自分の姉の前世でもある最初の世子嬪の不遇をそれ以上知りたくもなかったし、彼がまた別の女性を妻に迎え入れたという史実から目を逸らしたくもあった。
彼女は、イ・ガクが現代にやって来たときには、最初の世子嬪は既に死んでしまっていた、と思い込んでいる。
でも史実は違う。
世子嬪は生きていた。では、死んでしまったのは誰なのか?
「世子嬪の死の真相」が解明されたから、イ・ガクは朝鮮に還った。
彼はパク・ハにその真相を語ることはしなかったし、パク・ハも尋ねなかった。
生まれ変わった今でも「世子嬪の死の真相」を探ろうと言うのか、僕は・・・。
パク・ハの前世であるプヨンのことが心から離れない。
彼女はパク・ハとして、自分の妻になろうとしているのに。
今の自分たちが幸せだからそれでいい、とは思えなかった。
真実を知ったところで、それが明るく希望的だとは限らない。むしろ、逆である可能性の方が高い。
それでも、イ・ガクとプヨンの真実を知っておきたかった。
「テヨンさん。お待たせ。」
パク・ハの声で現実に引き戻される。
「綺麗だ。」
清楚に装ったパク・ハが、はにかんだように笑う。
テヨンは立ち上がり、パク・ハをその手で柔らかく包んだ。キスをしようとしたが、パク・ハが人差し指で彼の唇を押さえる。
「口紅がつくわ。」
「じゃあ、こっちに。」
首筋にキスを落とされ、パク・ハは微かに吐息を漏らす。
「そんな声、出さないでくれ。・・・やばい。」
「・・・あんぽんたん!・・・く、唇がダメなら、おでこか、頬でしょ。普通はっ!」
テヨンはいたずらっぽく笑った。
「さあ、行こうか。」
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~ Comment ~
Re: 記憶がなくとも
阿波の局さま
> 記憶がなくとも、人格が別であっても命の中に刻み込まれたガクの想いがテヨンの中にあるのですね。
記憶がないからこそ、その想いだけが残っていて解明されたはずの謎を追い求めるんですかねぇ。
真実を知れば切なくなるのに・・・今はパク・ハが傍にいますから、叶わぬ想いに涙せずに済むのが救いですかね。
> 甘々テヨンのくせに・・・実は真面目?
あはは。できる男アピールもしておかなくちゃ、ですね。w
> ありちゃんさん、勉強なさってますね~。
いや、もうね、それが苦手・・・というか、嫌いで、めんどくさがって、イ・ガクのその後に手が出せずにいたんですよ。(汗)
現代舞台でもよく解らんことは描写を避けると言う体たらく・・・(苦笑)
そのくせ何かにこだわり始めると、気になり始めて・・・結果、中途半端なんですよねぇ。困った奴です。
> 記憶がなくとも、人格が別であっても命の中に刻み込まれたガクの想いがテヨンの中にあるのですね。
記憶がないからこそ、その想いだけが残っていて解明されたはずの謎を追い求めるんですかねぇ。
真実を知れば切なくなるのに・・・今はパク・ハが傍にいますから、叶わぬ想いに涙せずに済むのが救いですかね。
> 甘々テヨンのくせに・・・実は真面目?
あはは。できる男アピールもしておかなくちゃ、ですね。w
> ありちゃんさん、勉強なさってますね~。
いや、もうね、それが苦手・・・というか、嫌いで、めんどくさがって、イ・ガクのその後に手が出せずにいたんですよ。(汗)
現代舞台でもよく解らんことは描写を避けると言う体たらく・・・(苦笑)
そのくせ何かにこだわり始めると、気になり始めて・・・結果、中途半端なんですよねぇ。困った奴です。
- #232 ありちゃん
- URL
- 2015.01/09 17:15
- ▲EntryTop
Re: タイトルなし
か****さま
こんにちは。
私も忘れてました・・・と言うか、知らんぷりしてました。(苦笑)
イ・ガクのその後に触れると、下調べが面倒だから。(おーい!)
テヨンとパッカの日常でも、舞台が日本でないと言うだけで避けていることが多いのに。
(実際、何か思いついても、韓国式は分からんと言う理由で却下された描写も多いのでした。汗)
今後の展開はプレッシャーなのであります。
こんにちは。
私も忘れてました・・・と言うか、知らんぷりしてました。(苦笑)
イ・ガクのその後に触れると、下調べが面倒だから。(おーい!)
テヨンとパッカの日常でも、舞台が日本でないと言うだけで避けていることが多いのに。
(実際、何か思いついても、韓国式は分からんと言う理由で却下された描写も多いのでした。汗)
今後の展開はプレッシャーなのであります。
記憶がなくとも
パク・ハの前世であるプヨンのことが心から離れない。
記憶がなくとも、人格が別であっても命の中に刻み込まれたガクの想いがテヨンの中にあるのですね。
甘々テヨンのくせに・・・実は真面目?
ありちゃんさん、勉強なさってますね~。(←このお話を読んでから、あわてて検索してみました。そうなんだ~。もう一人妃を迎えていたのね・・・知らなんだ。)
私なんぞ、ぜんぜん調べもしないで好きなように書いているもので・・・、汗汗