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「長編(完結)」
生まれ変わっても

生まれ変わっても 33

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ヨン家の邸。
パク・ハは緊張の面持ちでテヨンに続いた。


「ただいま。」

「お帰りなさい。早かったのね。」

「・・・お邪魔します。」

「あら、パッカ。いらっしゃい。」

ソリはにこやかにパク・ハを迎えてくれた。
そして、ハッとしたようにテヨンに近付き、彼に耳打ちをする。

「テヨン。あなた・・・昨夜は・・・。」

「ああ、パッカに大事な話があったから・・・夜は、自分の部屋で寝たよ。」

パク・ハと一緒に、とは敢えて言わない。

「あ、そう。そうよね。・・・それなら、いいのよ。そう、良かったわ。」

ソリはソファに座りかけて、また立ち上がった。

「そう、そう。パッカにお土産があるのよ。忘れるところだったわ。」

お手伝いさんにコーヒーを持って来るよう言って、二人に座るように促すと、自分は自室に向かった。


テヨンとパク・ハは並んで腰掛けた。テヨンがパク・ハの手を握る。

「緊張してるの?」

「え?ええ、そうかも。」

「大丈夫だよ。大叔母様は君のこと、大歓迎じゃないか。」

ほどなくしてお手伝いさんがコーヒーを運んできた。ソリも包みを持って現れる。
パク・ハはテヨンの手から自分の手を離そうとしたが、テヨンの方が離そうとしなかった。

「パッカ。これ。気に入ってくれるといいんだけど。」

「あ、ありがとうございます。」

ソリの視線が二人の繋がれた手に落とされた。

「もう、仲が好いわね。」

羨ましい・・・、とぼそりと呟き、そのまま、二人の向かいに腰かける。

「大叔母様、大事な話があるんだ。」

「何よ?結婚でもしようって言うの?」

「そうだよ。」

「あら、そう。・・・って、本当なの?テヨン!」

「なんで、驚くの?」

「だって、いくら言ってもそんな素振りも見せないで!ああ、でも、良かった!」

パッカ。婚約式のドレス、一緒に選びに行きましょうね。
そうだわ、私もドレス、新調しなくちゃ!
結婚式はうんと豪華に、ね。
忙しくなるわね。新婚旅行はどこに行く?ああ、楽しみだわ。

ソリは二人には目もくれず、うっとりとしながら、口だけ動かし続けた。

他人が聞いたら、一体誰が花嫁なのか分からなかったかもしれない。


テヨンが、明日は二人で祖父母や両親に報告に行く、と告げると、ソリは、だったら今夜はパク・ハもこの家に泊まるといい、と言った。
そのつもりではなかったから、パク・ハは準備をしてきていない。
彼女が、どうしようかと考えていると、自分が屋根部屋に泊まる、とテヨンが言いだした。

「彼女は、泊まりの準備はしてきてないんだ。向こうには僕の部屋もあるから・・・。」

「そう?ゆっくり話がしたかったのに・・・まあ、いいわ。食事くらいはしていくでしょ?」

「はい。ありがとうございます。」

ソリは嬉しそうに頷くと、二人分の夕食を追加してもらうためキッチンに向かった。
ソリの姿が消えると、テヨンがパク・ハの耳元で囁く。

「家に泊まったら、部屋が別々になっちゃうからさ。」

「あら、向こうでも別々よ。」

「なんで?!」

テヨンの方が唇を尖らせている。パク・ハは思わず吹き出した。

「テヨンさんの部屋もあるけど、私の部屋もあるもの。」

「君の部屋は、もう使用禁止だ!」

「何、それ?そんなの、横暴よ!」

唇を尖らせるのはパク・ハの番だった。
それから、二人で顔を見合わせて笑い声を上げた。

「あら、楽しそうね。何の話?」

そこへ、ソリがやって来る。パク・ハはテヨンを横目で見て、ソリに向き直った。

「おば様、聞いてください。テヨンさんたら、屋根部屋の私の部屋を・・・。」

テヨンはあわてて、パク・ハの口を手で覆う。

「やだ・・・テヨ・・・離し・・」

「何、やってんのよ。いちゃつくなら他でやってちょうだい!」

三人の笑い声が響いた。




小高い丘の上に、納骨堂は建っていた。
敷地内の芝生はきれいに整備され、ちょっとした公園といった雰囲気だ。
テヨンはパク・ハを伴い、白い建物を通り過ぎ、更に奥へと進んでいく。

「ここは、うちの子会社が管理運営してる納骨堂だよ。ヨン家の納骨堂はこの奥なんだ。」

一際大きく、荘厳な建物が見えてきた。

ここよりずっと郊外の山の中に、ヨン家の先祖達は眠っている。
テヨンの両親が亡くなる少し前、納骨堂のビジネスも展開し始めた。
両親が亡くなったのを機にヨン家の納骨堂が建てられ、まずテヨンの曾祖父母と祖父がここに移された。そして、両親もここで眠りに付き、祖母も眠っている。
そのうち、もっと上代のご先祖様の墓参りをする日も来ることだろう。


中は一般的な納骨堂と同じように、扉付きのロッカーの集合体のようになっていた。
一区画に夫婦単位で遺骨が納められている。
この建物はヨン家専用の納骨堂だから、それぞれは大きめの造作になっており、名前も刻まれ、遺影も飾られていた。

パク・ハは自分の父が眠る納骨堂とは、全然違う、と思った。
彼女の父親はもっと一般的な、番号だけで管理されるような、小さな箱の中で眠っている。

「いつか、僕達も眠ることになる場所だよ。・・・君のお父さんの所にも挨拶に行かないといけないね。」

ヨン家の嫁は、世子嬪よりは気楽かもしれないが、それでもなかなか大変そうだ。


献花台に花を供え、最も丁寧な礼を捧げる。

テヨンの祖母はパク・ハのことを誤解したまま逝ってしまった。その死に彼女の姉が深く関わってもいる。
パク・ハの胸中は複雑だ。

「父さん、母さん。おじい様。そして、おばあ様。僕の愛する女性(ひと)です。天から見ていたでしょう?彼女以外に僕の妻は考えられない。だから、見守っていて。」

テヨンはそう言って、また頭(こうべ)を垂れた。
パク・ハもまた、隣で深く頭を下げる。

全身全霊でテヨンさんを支えよう。

パク・ハは静かに決意をしていた。



屋根部屋に戻って一息ついた。
それぞれ、着替えて楽な服装になる。
テヨンが、デートに行こう、とパク・ハを誘った。



テヨンがパク・ハを連れ出したのは昌徳宮(チャンドックン)だった。
芙蓉池(プヨンジ)に架かる橋を、手を繋いで歩く。

パク・ハはずっと、テヨンと一緒にここを訪れたいと思っていた。しかし、言い出せずにいた。

「テヨンさん。どうして、ここへ?」

「イ・ガクに会いたいかなと思ってさ。」

彼の陵墓には別の女性が共に眠っている。パク・ハには、ここの方がいいのではないか、とテヨンは思った。

「君は僕のものになるから、諦めろって言ってやるんだ。」

テヨンはいたずらっぽく笑った。

そうね・・・。チョハを忘れることはできない。だけど、テヨンさんと共に歩むと決めたことは伝えておかなきゃ。



芙蓉池の、水面(みなも)すれすれに、一匹の蝶が舞っていた。



兄弟らしき子供が二人、じゃれ合いながら橋の上を走ってきた。
きゃあきゃあと騒ぎながら追いかけっこをしている。
弟が兄を追い回す。兄は捕まるまいと、右に左に逃げ惑う。

そのとき、兄がパク・ハに勢いよくぶつかった。
バランスを崩したパク・ハを、テヨンが引き寄せようとする。
どうにか持ちこたえたテヨンに、今度は追ってきた弟がぶつかった。


きゃあ!
うわぁ!

ばっしゃーん


テヨンは身を翻しパク・ハを橋の方に押しやったつもりだったが、二人とも池に落ちてしまった。

ぶくぶくとあぶくが立ってよく見えない。
池のはずなのに、なぜか勢いよく水が押し寄せてくる。

「人が落ちたぞ!」

人々が騒ぎだし、二人にぶつかった兄弟も座り込んでわんわんと泣いていた。


テヨンもパク・ハも手を伸ばすがお互いに届かない。

ぶくぶく ぶくぶく

泡立つ水の中で、テヨンの手が微かに見えた。
パク・ハは必死にその手を掴もうとする。

テヨンの手が透けていく。

水の中、パク・ハの目の前で、テヨンは掻き消えていった。


テヨンさん!イヤっ!・・・チョハぁ。イヤよ!

テヨンさん!

テヨンさん!どこっ?


必死にテヨンの姿を探した。どこにもいない。そのうち、息が続かなくなってくる。
彼女は水面に顔を出した。思い切り息を吸い、また潜ろうとする。

そこに数人の男性が手を伸ばしてきて、彼女を水から引き揚げた。

「テヨンさん!テヨンさん!・・・お願い、彼を探して!」

「お嬢さん、落ち着いて。ここは池だ。すぐに見つかる。」



芙蓉池の水面は何事もなかったかのように静まり返っていた。

池を覗き込むパク・ハの身体から滴り落ちる水滴が、小さな波紋を作っているばかりだった。



テヨンは、水の中から上がってこない。


芙蓉池の上を、一匹の蝶がひらひらと舞っていた。


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~ Comment ~

NoTitle

えっ?えっ?
テヨン、過去へ飛んだ??
蝶が舞っているということは、プヨンが誘った?
それとも、ガクでしょうか?

次が待ち遠しい!

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Re: NoTitle

阿波の局さま

テヨン、どこ行ったんでしょうね。・・・って、ばっくれたって、仕方ないですが・・・(汗)

> 次が待ち遠しい!

ありがとうございます。m(__)m
首が長くなるかも知れませんので、お気をつけて。ww

Re: タイトルなし

か****さま
こんばんは。
ソリのお土産・・・行先も書いてないし、思わず省略。(苦笑)
くまの置物とかにしようと思いましたが・・・(北海道かよっ!)温泉まんじゅうかも知れません。w

ええ、ええ。テヨンはやはり御曹司。w

予想外でしたか?先の読める展開しか書けない私には最上級の褒め言葉ですね。ありがとうございます。

大きいお子様はしょうがないかなぁ。・・・でも、下の息子さん、ますますかわいい!♡

「しばらく経って」いいですよね。私も好きです。
ジョンウももちろん好き。♡(実は若ジョンウも好きです。W)

Re: タイムスリップした?

t*******さま
お忙しい中、ありがとうございます。お時間あるときにちょろっと覗いて頂けると。
(まとめ読みもオツなもんです。w)

> 意外な展開に、チョットわくわくです。
続きが断片的にしか頭の中になくて、私はドキドキしてます。(ああ、どうしよう。苦笑)

Re: いや~!!

か***さま
パッカがちょっとかわいそうですよね。書きながら、彼女を思うといたたまれませんでした。(涙)
波乱は、総て私が起こす・・・。もちろん、解決しますけども。(苦笑)

分かります。動画を漁るのは、私もやります。W
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