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「長編(連載中)」
生まれ変わっても -朝鮮編-

生まれ変わっても 36

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マンボは深呼吸をした。

「我々は調査の最初の段階で大きな間違いを犯しておりました。
世子嬪殺害を企てた事件だったと思い込んだことが、そもそもの間違いであったのです。」

確かに、世子嬪は実際には生きていたのだからそうとも言えるかもしれないが・・・
察するに、死んだのは世子嬪だったと誰もが思わされてしまうような状況だったのだろう。

テヨンは黙ったままマンボの次の言葉を待った。

「実際は、王世子チョハの暗殺を企てた事件だったのです。
背後に居たのはチョハの異母兄、ムチャン君でした。ムチャン君は、当時、左義政(チャイジョン)であったホン・マンピルと手を組み、チョハを殺害し自身が世子の座に納まろうと考えていたのです。
我々は、三百年の後の世に飛ばされて、ムチャン君の生まれ変わりの者とも出会っております。」

「僕の、知っている人物ですか?」

「はい。」

マンボは苦しげに口を歪めた。
テヨンは目を瞑り、じっと何かを考えている。

「我々は、事件のあった夜チョハの御前に出された干し柿に砒素がかけられていたことを付きとめました。
そして、その砒素を干し柿に振りかけた者こそ、他ならぬ廃妃ホン氏だったのです。」

「それで、廃妃されて流刑に・・・」

「はい。その通りです。」

突然、マンボはガバッとひれ伏し額を床に擦りつけた。後ろの二人も、マンボと一緒にひれ伏している。

「ヨン・テヨン様!伏してお願い申し上げます。どうか、これ以上お聞きくださいますな。
チョハがこの事件の真相をお知りになってのそのお苦しみようは、我々も見ておられぬほどでした。
またその苦しみを味わわずともよろしいではありませぬか。」

「記憶がないのでしたら、敢えてお知りにならなくても良いではございませぬか。」

「三百年の後の世で、パク・ハ殿とお幸せになることだけをお考えください!」

「じゃあ、僕は、何のためにここへ来たのだと思います?
何をしに来たのだとしても、何も知らないまま出来ることなど有るのでしょうか?
僕は例えここに来なかったとしても、自分の時代で、自分のできる方法で、きっと、ことの真相を付きとめたはずだ。
僕は大丈夫ですから、話の続きを。・・・・あなた方が言いにくいのでしたら、僕が言いましょうか?」

テヨンはそう言って目を伏せた。

「亡くなったのはプヨンさんだった。違いますか?
ムチャン君の生まれ変わりとは、テム従兄さんだった。そうでしょう?」

三人は何も言えず、ただ床に額を擦りつけている。

「王世子暗殺に気付いたプヨンさんが、それを止めようとして、逆に殺されてしまったのでは?
世子嬪が死んだということにしてしまったのはなぜだかよく解りませんけど・・・
知っていることを、洗いざらい話してくれませんか?」

三人はおずおずと面(おもて)を上げた。
テヨンの方が三人に頭を下げ、今度は彼が床に額を擦りつけんばかりになっている。

「この通りです。」

「チョハ!なりません!お顔をお上げください!」

世子と同じ顔でひれ伏されて、三人は大慌てだ。

「じゃあ、包み隠さず総てを教えてください。」


三人はへなへなと座り込み、顔を見合わせた。

ソン司書が適任だろう?

二人に押されて、やはりマンボが口を開いた。




「では・・・プヨンさん自らが毒柿を食べ、世子嬪の衣を着て、身を投げた、と言うのですか?」

「はい。チョハと姉君を守ろうと、そうなされたのです。」


なんてことだ・・・・パッカ・・・。


「パク・ハさんが、ヨン・テムの車に撥ね飛ばされて水に落ちた時、総てに気付いたのだ、とチョハはそう仰せでした。」


パッカ。・・・イ・ガクを救うために・・・僕のために・・・君は何度だってその生命を差し出すんだな・・・。


朝鮮に還ってきてもプヨンは既に死んだ後だった。イ・ガクは自分を責めたに違いない。

イ・ガクの苦しみは如何ばかりだったか・・・

パク・ハを愛し、永遠に共に在ると誓いながら・・・
その手を離し、結婚の証だけを残して・・・彼女の身体に自分を刻み付けることもせずに・・・

テヨンは、パク・ハの身体の柔らかさと温もりを思い出す。

その記憶がないと思うことがどれほどに悔しかったか・・・



「ヨン・テヨン様。・・・何かお身体に変化はございませんか?」

「え?」

「総べてが解決した時、我々はこちらに戻って来れました。その前兆として、身体が透けたのです。」

テヨンは自分自身の手や体を見廻してみる。何も変わったことなどなかった。

「やはり、ことの真相を知るためだけに、こちらへおいでになったのではあられないかも知れませんね。チョハは、パク・ハさんにお会いするために飛ばされたのだ、と仰せでしたし・・・」

イ・ガクと三人の臣下が三百年の後の世で成したこと。
世子嬪の死の真相を付きとめるということのみならず、複雑に絡みあっていた因縁を解いた、ということでもあった。
セナは改心しパク・ハとの姉妹の絆を取り戻し、テムは罪の清算をしている。
そして、テヨンはパク・ハと結ばれた。

朝鮮時代でテヨンが成すべきことなどないのではないか、と思ってしまう。


「プヨンさんのお墓に、連れて行ってはもらえませんか?」

テヨンは静かにそう言った。

三人はゆっくりと頷く。

「明日の朝、お連れすることに致します。狭く、むさ苦しい所で申し訳もございませぬが、今宵はこちらでお休みください。」

いつの間にか日も傾いて、室内は薄暗くなっていた。

「ヨン・テヨン様。私は一旦宮殿に戻ります。明日の朝、またこちらに参ることと致します。」

チサンはテヨンに最高の礼を捧げると、彼に背を向けぬよう後ずさりして部屋を出て行った。

「ヨン・テヨン様・・・」

マンボに呼びかけられ、彼がまだ言葉を繋ごうとするのへ、テヨンは手をかざしてその言葉を止める。

「その『ヨン・テヨン様』って言うの、止めてくれませんか?」

テヨンが苦笑しながらそう言った。

「・・・では、我々に敬語をお使いになるのもお止め下さい。さすれば、『テヨン殿』とお呼び致します。」

マンボが頭を下げる。

「・・・分かったよ。それで?何?」

マンボはにっと笑って顔を上げた。

「テヨン殿は馬に乗ることはおできになりますか?」

「ああ、一応、経験はあるけど?」

「では、明日は馬で参ります。」

馬?・・・そんなに遠出なのか。

「私は、夕餉を用意してまいります。」

ヨンスルも部屋を出て行った。

「またオムライスじゃないよね?」

マンボはテヨンの言葉に首を傾げる。

「チョハはいつもオムライスをご所望でしたが・・・」

そう言えば、パッカが、嫌ってほど作ったとか言っていたな・・・。

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謎解き

う~ん、どうなるんでしょうか。
楽しみ、楽しみ・・・

しかし・・・ガクが生きている時代にテヨンが来る・・・
まさか二人は遭遇しませんよね。

テヨンを呼んだのはプヨン?
謎解きがいっぱい・・・

>君は何度だってその生命を差し出すんだな・・・。
ああ・・・ぐっとくる・・・


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Re: タイトルなし t*******様へ

t*******様

はい。オムライスですよ。
テヨンは現代人ですから、やはり毎食はきついでしょう。w

私も検索のセンスはないのですが・・・ちょと調べてみましたら、事実としては物々交換が主流だった、みたいなことしか分かりませんでした。(苦笑)
樽もないのか・・・そりゃ不便。

Re: 謎解き 阿波の局さまへ

阿波の局さま

> う~ん、どうなるんでしょか。
はい、心配です。ちゃんと書けるんでしょうか?(おいっ!)
謎が多すぎて、謎に溺れそうになってる私です。(苦笑)

テヨンに添っていただいてありがとうございます。
彼はパク・ハにめろめろ。W(なんか古臭い表現ですね・・・)

Re: 首伸びました^ ^ う***様へ

う***様

読者様キリン化プロジェクト推進中です。w
(なんじゃ、そりゃ。)

私も一読者として他所にもお邪魔しますので、2.3日が、待つ人には長いとよく解っています。
そして、書き手としてはそう言って頂けるのが無上の喜び。
お待ちいただいていることを励みに、仕事もがんばって片付けてます。<m(__)m>

Re: 役目 ほ**様へ

ほ**様

マンボにはつらい役目を負わせてしまいました。

テヨンはきっとパク・ハの許に還りたくて仕方いはず。
早く還れるよう、お尻を叩くしかありません。(私の・・・)

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Re: タイトルなし F****様へ

F****様

こちらこそ、いつもありがとうございます。
>記憶を持って生まれ変わるかのよう
ほんと、そうですね。
生まれ変わった以上、前世の記憶はない、というのが私のスタンスでしたが(ドラマの中でもそうですよね)
実は知っててほしいとも思ってて・・・過去に飛ばすしかなかったんです。(苦笑)

目は大事ですね。
私も1.5が見えていただけにショックで・・・今や左は0.4、右に至っては0.15でした。(涙)
それこそ視界がぼやけててモザイク状態ですわ。w
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