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「長編(連載中)」
生まれ変わっても -朝鮮編-

生まれ変わっても 38

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マンボは幾分か緊張して頭を垂れていた。

「面(おもて)を上げよ。」

王に促されて顔を上げる。

「そなたがソン司書か?」

「はい。チョナ。」

「ト内官が、そなたも呼べ、と言うものでな。」

マンボの隣にはチサンが静かに座していた。



二人は王の御前を辞し、チサンの居室に入った。

チサンは、きょろきょろと外の様子を伺うと、辺りに誰もいないことを確認した。
後ろ手で扉をパタンと閉じ、マンボに近付き腰を下ろす。

「それで?どうするのだ?」

彼は小声で囁いた。

「まずはウ翊賛にも伝えねば。・・・そのまま明日の朝、出立してはどうであろう?」

対するマンボもひそひそと答える。

「そうだな。私は今から宮廷内で情報を集めることにしよう。」

「それがよい。・・・では、明日。」

「ああ、明日。」

二人は頷き合って部屋を出た。



マンボはヨンスルの住まいへと急いだ。
"パク・ハのオムライす"店の裏口に廻る。

古ぼけた木戸の前で立ち尽くす男がいた。
きょろきょろと辺りを見廻している。道行く人々が怪しい男を訝しむように見ていた。

頭髪をうなじの辺りまで短く刈り込み、常とは違う衣を身に纏い、しかも全身ずぶ濡れの男。

マンボはその後ろ姿に見覚えがあった。

チョハ!・・・ではない・・・とすると・・・。

彼は気配を押し殺すように、そうっと、でもできるだけ急いでテヨンの背後に近付いた。

申し訳ありませぬ。

一瞬の躊躇いの後、マンボは目の前の背中を押した。

「うわっ!」

突然木戸に押し付けられてテヨンが声を上げる。

「しっ、お静かに。こちらにお入りを。・・・おい、開けてくれ。私だ!」

ぎいっと音を立てて木戸は開いた。



テヨンが着替えている間、部屋の外でマンボはヨンスルに手短かに要件を伝えた。

「それで?どうするのだ?」

「ヨン・テヨン殿が現れた。この意味が分かられるか?」

「分からぬから、訊いている。」

「テヨン殿を、チョハの許にお連れしてはどうだろうか。・・・とりあえず、ト内官の到着を待つことにしよう。」


"ヨン・テヨン殿が現れた"

それだけ書かれた書状で、チサンは飛んで来た。




湯治場はさほど遠くはなかった。
ゆるゆると馬を歩かせながらテヨンは臣下達と話をした。

「ここへは、よく来るの?」

「いえ、チョハがご自身でおいでになられたのは二度目です。」

「・・・今は、西暦、何年?」

「・・・」

「君たちが朝鮮に戻ってからどれくらいの時が経った?」

「もうじき三年を数えます。」

「そう。・・・パッカが君たちと別れてからは、一年半ぐらいかな・・・。僕が目覚めてからは一年ちょっと。」

時が経つのは早いね、とテヨンが言い、臣下達も頷いた。

時の流れを超えて、本来共に会話することなどあり得ぬ者同士。
時という概念がおかしくなりそうで、もう、そのことは考えないようにしよう、とテヨンは思った。
臣下達もどうやらそれは同じらしかった。

「パク・ハ殿は、如何にお過ごしなのですか?」

それまで黙りこくっていたヨンスルが口を開いた。
テヨンは後ろを振り向き、ヨンスルも横に並ぶよう目で合図した。

「話しにくいからこっちへ来てよ。誰も、僕なんか襲わないでしょ?」

ヨンスルも馬を進めて四頭が横並びになる。

「君たちの用意した店で、毎日、元気に働いてるよ。僕はほぼ毎日リンゴジュースを飲みに行ってる。」

テヨンは、目覚めてからどんな風にパク・ハと出会い、どんな風にイ・ガクを知ったか、簡単に話して聞かせた。

「パク・ハ殿はお幸せなんですね。」

「僕もね。」

淀みのないテヨンの言葉に嬉しさを感じながら、自分たちの主君を思えば、三人は胸に痛みを覚える。


やがて、四人は湯治場に到着した。

各地から湯治に訪れた両班や民たちで賑わっている。
幾つかの宿屋を通り過ぎると、道の奥まったところに立派な門が見えてきた。
門の両脇には護衛の兵士が立っている。

チサンが、懐から通行証のようなものを取り出し護衛兵に見せると、護衛兵は四人に門を通らせた。
門をくぐり馬を下りると、下働きらしい男に馬を預ける。



イ・ガクがこの湯治場の離宮を訪れたのは十日程前だった。
彼は、プヨンの墓を訪れた後、ここで独り湯に浸かった。
湯治と言えば長逗留が常ではあるが、彼は十日もそこに留まるつもりではなかった。

都へ還る予定の三日前、イ・ガクは臣下三人を呼び、先に都へ還るよう命じた。
還ったらするべきことがある、その準備をせよ、とのことではあったが、三人に休暇を与えようという意図でもあった。

ところが、彼らが都へ帰り着き、一日たったところで、まずはチサンが王から呼び出された。
王直々の呼び出しを受けるなど初めてのことで、チサンは泡を喰う。
呼び出しの理由を、直接王から聞くに至ったチサンは、マンボも王宮に呼ぶようにと進言し、マンボも王の御前に参上した。
そして、最終的に、ヨンスルも含む王世子の腹心の臣下三人は、王の密命を賜ることになる。

再びイ・ガクの許へと馬を駆る、その前日にテヨンが現れた。
マンボが、テヨンも王世子の許へ連れて行こう、そう意見したとき、チサンもヨンスルも同意した。

テヨンが事態を何とかしてくれる。

臣下三人はそう思った。



離宮の回廊を歩き、突き当りの部屋へ通された。
二重の扉がどちらも閉じられ、テヨンと三人の臣下だけになったのを確認してマンボが口を開いた。

「ヨン・テヨン様。我らは、貴方様に黙っていたことがございます。」

三人とも頭を下げたまま、微動だにしない。

「・・・面を上げよ、とか言う場面かな?」

テヨンは嫌な予感がして、ははは、と力なく笑う。
三人はテヨンに命じられた通り、ゆっくりと顔を上げた。

「貴方様が望まれずとも、こちらにお連れするつもりでありました。」

「まさか、監禁とかしないよね?」

ヨンスルが動く。

「ま、待ってよ。僕はパッカの所へ還らなきゃ。」

テヨンは思わず身構えた。
ヨンスルに敵うとは思えない、それでも精一杯抵抗してやる、そんな決意をして。

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~ Comment ~

不穏な気配?

全く、予想はできませんが...
イ.ガクに健康上の問題でもあって、湯治に来ているとか?
パッカの元気な様子をテヨンから聞いて
復活するとか?どうぞ、無事にパッカの元へ
帰れますように~!

こんにちは。更新ありがとうございます。
次回チョハとテヨン対面ですか?でも、訳ありですか?次はテヨンがチョハになる?
たくさん謎ありでドキドキしてます。
続き楽しみにしています。

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Re: 不穏な気配? やすべぇ様へ

やすべぇ様

テヨン、どうなるんでしょう?
パッカが待ってるから早く還してやりたいんですけどねぇ。(苦笑)
イ・ガクの様子も気になります・・・。

Re: タイトルなし ようちゃん様へ

ようちゃん様

おはようございます。

ドキドキして頂いてありがとうございます。
今後の展開をどう収拾するか、謎に溺れている私です。(汗)

行き当たりばったりの更新にも関わらず、楽しみにして頂いてありがたいです。

Re: NoTitle F****様へ

F****様

王様まで出てきちゃって・・・・どうする、私?(汗)
テヨンへの声援、ありがとうございます。

更新にムラがあってごめんなさい。
楽しみにして頂いていることを胸に頑張ります。

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Re: タイトルなし か****様へ

か****様

いつも、コメントありがとうございます。<m(__)m>
これからどうなるんでしょう?書いてる私もどう収拾すべきか困惑気味です。(苦笑)
ほんと、現代に戻れるのはいつなんでしょう?
「成すべきこと」に近づいてるのは確かなんですけどねぇ。

免許更新まだ行けておりません。
メガネもできてきたし、髪も切ったし、顔をつくって写真を撮りに行かねば・・・。
私も次はゴールド。写真はちょっとでもよく取りたいですね。w

いつもコメント頂けるので、嬉しくて・・・いつでも気の向いたときにどうぞ、と言いながら、心待ちにしている自分がいるのも正直なところ。
ほんとに励みになってます。
ありがとうございます。

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