「長編(連載中)」
生まれ変わっても -朝鮮編-
生まれ変わっても 39
身構えるテヨンの腕をヨンスルが掴み、羽交い絞めにする。
・・・などということはなく、臣下三人は、またもテヨンの前にひれ伏した。
テヨンは拍子抜けしたように、顔の前で構えていた腕を下ろし、中腰になっていた腰も下ろしたが、早とちりしたことが恥ずかしい。
笑ってごまかしながら、頭を掻いた。
臣下達はそんなことは全く気にしていない。と言うよりも、顔を伏しているのでそこに座すテヨンの足元しか見えていない。
「ヨン・テヨン様!どうか我らにお力をお貸しください!」
突然の申し出にテヨンは驚く。
最初にテヨンの力になると言ったのは彼らの方だ。なのに、自分に力になって欲しいとは・・・。
「とにかく顔を上げて、話を聞かせてくれないかな?」
三人はおずおずと顔を上げた。
「我らは王命でこちらに参ったのです。」
「それって、王様も僕のことを知っているってこと?」
「いいえ。チョナは貴方様のことをご存知ではあられません。」
「・・・もうちょっと分かるように、話してくれないかな?」
チサンが王に呼ばれた理由、それは、湯治場で王世子が倒れたという報せを受けたが、事の真偽は如何に?というものだった。
チサンら三名が都へと向かったその日の朝、イ・ガクはいたって普通だった。体調が悪いようにも見えなかった。
三人は王世子に挨拶をし、彼の前を辞した。
そしてその翌日の朝には、王の許へ火急の報せが届いたのだと言う。
マンボが急ぎ参内し、王に謁見した時、王は言った。
「そなたらが世子の許を離れたその日の夜、世子が倒れたそうだ。・・・何か心当たりはあるか?」
「・・・いいえ。チョナ。」
マンボは、王が自分たちを疑っているのかと思った。
「世子が倒れたなどと知れ渡れば、また善からぬことを企む輩が現れるであろう。・・・ソン司書。そなたならどうする?」
「チョナ。・・・恐れながら・・・」
「申してみよ。」
「まずは、チョハの病状を知り、治療に当たるが先決。」
「宮中より御医(オウィ)を差し向けるか?」
「御医が湯治場のチョハの許へ差し向けられたとなれば、チョハの健康に深刻な問題あり、と宣言するようなものでございます。」
マンボは深呼吸をして続けた。
「チョハは幸い湯治場におられます。短くとも一月、長ければ三月は滞在されたとて不思議ではありません。その間に、謀(はかりごと)あらばそれを調べ、チョハのご快癒に向けて尽力すべきかと。」
「・・・もう一人おったな、世子の腹心の臣下が。」
「はい。チョナ。ウ翊賛でございます。」
チサンが王に答えた。
「ト内官、ソン司書、そしてウ翊賛にも伝えよ。そなたら三人は世子の許へ行け。怪しい動きあらばそれを調べ、一刻も早く世子を帰都させるべく尽力せよ。王命である。・・・このことは誰にも知られてはならぬ。佳いな。」
「 「 ははぁー。 」 」
二人は王の前にひれ伏した。
テヨンは目を閉じた。
イ・ガクが倒れた・・・。
「ウ翊賛に伝えようと急いでいた時に、ヨン・テヨン様にお会いしたのです。我らの一存で、貴方様をこちらにお連れ致しました。」
「僕も来たいと言ったしね。」
王に伝えたところで、信じようはずもなかっただろう。
"王世子の生まれ変わりが、三百年の後の世からやって来た。"
"テヨンの前世の王世子が三百年前からやって来ていた。" と同じぐらい、当事者以外が信じられるはずもないことだった。
テヨンは目を開け、三人に視線をやった。
「それにしても、むちゃくちゃな命令だよね?君たちにイ・ガクを元気にさせろって言うの?陰謀も暴けって?そもそも本当に陰謀なの?」
イ・ガクは王世子、油断をすればすぐにその位置から引きずりおろそうと企む者はいる。
テヨンは何か思い当ったように目を見開いた。
「僕を身代わりにしようと思ってる?」
三人は押し黙ったまま何も言わない。
「姿形はそっくりでも、この時代の人間じゃないんだよ?」
「存じております。」
「漢字も読めないんだよ?・・・上奏文って言うんだっけ、あれも読めないよ。読めたところで判断ができるわけもないだろ?」
「我らが傍におりますゆえ、書は我らが読み、お伝えいたします。政(まつりごと)に関しては、本よりチョハに権限はございませぬ。チョナが意見を求められることはありましょうが・・・。」
「僕が正しい意見を述べられると思う?王様に?」
「貴方様がチョハの生まれ変わりでございますれば・・・。」
テヨンは溜息を吐いた。
「とにかく、イ・ガクと話をさせてくれないかな?」
「それは難しいかと存じます。」
「そんなに、悪いの?話もできないほど?」
「チョハは意識を失っておいでです。」
!!!は?なんだって?
テヨンは立ち上がり怒鳴った。
「どうして、それを早く言わない?!イ・ガクはどこに居る?!」
初めて聞いたテヨンの怒鳴り声に、臣下達はびくっと身を震わせ、あわててひれ伏す。
「 「 「 も、申し訳ございません。チョハァ。 」 」 」
「のんびりし過ぎだ!意識不明って・・・どうやって目覚めさせるつもりだったんだ?医者はなんて?」
「恐れながら・・・」
「いいから早く言ってくれよ!」
「貴方様はチョハの生まれ変わり。同じ魂の持ち主が、同じ時、同じ空間に存在はできませぬ。かつて、貴方様が眠っておられた時のように・・・。」
イ・ガクが意識を失ったからテヨンが来たのか、テヨンを来させる為にイ・ガクが意識を失ったのか。
どちらにしろ、その魂の持ち主は、今、「テヨン」としてここに居る。
・・・などということはなく、臣下三人は、またもテヨンの前にひれ伏した。
テヨンは拍子抜けしたように、顔の前で構えていた腕を下ろし、中腰になっていた腰も下ろしたが、早とちりしたことが恥ずかしい。
笑ってごまかしながら、頭を掻いた。
臣下達はそんなことは全く気にしていない。と言うよりも、顔を伏しているのでそこに座すテヨンの足元しか見えていない。
「ヨン・テヨン様!どうか我らにお力をお貸しください!」
突然の申し出にテヨンは驚く。
最初にテヨンの力になると言ったのは彼らの方だ。なのに、自分に力になって欲しいとは・・・。
「とにかく顔を上げて、話を聞かせてくれないかな?」
三人はおずおずと顔を上げた。
「我らは王命でこちらに参ったのです。」
「それって、王様も僕のことを知っているってこと?」
「いいえ。チョナは貴方様のことをご存知ではあられません。」
「・・・もうちょっと分かるように、話してくれないかな?」
チサンが王に呼ばれた理由、それは、湯治場で王世子が倒れたという報せを受けたが、事の真偽は如何に?というものだった。
チサンら三名が都へと向かったその日の朝、イ・ガクはいたって普通だった。体調が悪いようにも見えなかった。
三人は王世子に挨拶をし、彼の前を辞した。
そしてその翌日の朝には、王の許へ火急の報せが届いたのだと言う。
マンボが急ぎ参内し、王に謁見した時、王は言った。
「そなたらが世子の許を離れたその日の夜、世子が倒れたそうだ。・・・何か心当たりはあるか?」
「・・・いいえ。チョナ。」
マンボは、王が自分たちを疑っているのかと思った。
「世子が倒れたなどと知れ渡れば、また善からぬことを企む輩が現れるであろう。・・・ソン司書。そなたならどうする?」
「チョナ。・・・恐れながら・・・」
「申してみよ。」
「まずは、チョハの病状を知り、治療に当たるが先決。」
「宮中より御医(オウィ)を差し向けるか?」
「御医が湯治場のチョハの許へ差し向けられたとなれば、チョハの健康に深刻な問題あり、と宣言するようなものでございます。」
マンボは深呼吸をして続けた。
「チョハは幸い湯治場におられます。短くとも一月、長ければ三月は滞在されたとて不思議ではありません。その間に、謀(はかりごと)あらばそれを調べ、チョハのご快癒に向けて尽力すべきかと。」
「・・・もう一人おったな、世子の腹心の臣下が。」
「はい。チョナ。ウ翊賛でございます。」
チサンが王に答えた。
「ト内官、ソン司書、そしてウ翊賛にも伝えよ。そなたら三人は世子の許へ行け。怪しい動きあらばそれを調べ、一刻も早く世子を帰都させるべく尽力せよ。王命である。・・・このことは誰にも知られてはならぬ。佳いな。」
「 「 ははぁー。 」 」
二人は王の前にひれ伏した。
テヨンは目を閉じた。
イ・ガクが倒れた・・・。
「ウ翊賛に伝えようと急いでいた時に、ヨン・テヨン様にお会いしたのです。我らの一存で、貴方様をこちらにお連れ致しました。」
「僕も来たいと言ったしね。」
王に伝えたところで、信じようはずもなかっただろう。
"王世子の生まれ変わりが、三百年の後の世からやって来た。"
"テヨンの前世の王世子が三百年前からやって来ていた。" と同じぐらい、当事者以外が信じられるはずもないことだった。
テヨンは目を開け、三人に視線をやった。
「それにしても、むちゃくちゃな命令だよね?君たちにイ・ガクを元気にさせろって言うの?陰謀も暴けって?そもそも本当に陰謀なの?」
イ・ガクは王世子、油断をすればすぐにその位置から引きずりおろそうと企む者はいる。
テヨンは何か思い当ったように目を見開いた。
「僕を身代わりにしようと思ってる?」
三人は押し黙ったまま何も言わない。
「姿形はそっくりでも、この時代の人間じゃないんだよ?」
「存じております。」
「漢字も読めないんだよ?・・・上奏文って言うんだっけ、あれも読めないよ。読めたところで判断ができるわけもないだろ?」
「我らが傍におりますゆえ、書は我らが読み、お伝えいたします。政(まつりごと)に関しては、本よりチョハに権限はございませぬ。チョナが意見を求められることはありましょうが・・・。」
「僕が正しい意見を述べられると思う?王様に?」
「貴方様がチョハの生まれ変わりでございますれば・・・。」
テヨンは溜息を吐いた。
「とにかく、イ・ガクと話をさせてくれないかな?」
「それは難しいかと存じます。」
「そんなに、悪いの?話もできないほど?」
「チョハは意識を失っておいでです。」
!!!は?なんだって?
テヨンは立ち上がり怒鳴った。
「どうして、それを早く言わない?!イ・ガクはどこに居る?!」
初めて聞いたテヨンの怒鳴り声に、臣下達はびくっと身を震わせ、あわててひれ伏す。
「 「 「 も、申し訳ございません。チョハァ。 」 」 」
「のんびりし過ぎだ!意識不明って・・・どうやって目覚めさせるつもりだったんだ?医者はなんて?」
「恐れながら・・・」
「いいから早く言ってくれよ!」
「貴方様はチョハの生まれ変わり。同じ魂の持ち主が、同じ時、同じ空間に存在はできませぬ。かつて、貴方様が眠っておられた時のように・・・。」
イ・ガクが意識を失ったからテヨンが来たのか、テヨンを来させる為にイ・ガクが意識を失ったのか。
どちらにしろ、その魂の持ち主は、今、「テヨン」としてここに居る。
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~ Comment ~
Re: 同じ やすべぇ様へ
やすべぇ様
テヨンはすっかり直接対話をする気でしたから・・・
もう、言いたいことがあるなら態度で示し、
イ・ガクが目覚めた時に認めてもらえるような"何か"を残すしかありません。
>どんな素敵な物語がつづられるのか…
>ここは前向きに考えながら、待つことにしましょう!
力強い声援をありがとうございます。
テヨンはすっかり直接対話をする気でしたから・・・
もう、言いたいことがあるなら態度で示し、
イ・ガクが目覚めた時に認めてもらえるような"何か"を残すしかありません。
>どんな素敵な物語がつづられるのか…
>ここは前向きに考えながら、待つことにしましょう!
力強い声援をありがとうございます。
Re: おおお! な*様へ
な*様
はい、こんな展開でした。w
私も皆様の反応が気になって仕方がないです。w
(けっこうドキドキしてます。いつも。)
さすが、とか、すごいなんて言われると、すぐ舞い上がってしまう、すごくもなんともない私です。
はい、こんな展開でした。w
私も皆様の反応が気になって仕方がないです。w
(けっこうドキドキしてます。いつも。)
さすが、とか、すごいなんて言われると、すぐ舞い上がってしまう、すごくもなんともない私です。
Re: タイトルなし か****様へ
か****様
か****さんのコメント、いつも顔文字がかわいいですよね。w
それだけで癒されるんですけどぉ。w
イ・ガクとの直接対話成らずですみません。
キスで目覚めるなら、すみません、私がします。ww(ここはお譲り致しかねます。w)
コメントを頂くのは、ありがたいことです。
最上のご褒美をもらっている気分です。
もう、頂けるのでしたら、いくらでも頂きます。w
(返信することもまた嬉しいのです。)
ありがとうございます。
か****さんのコメント、いつも顔文字がかわいいですよね。w
それだけで癒されるんですけどぉ。w
イ・ガクとの直接対話成らずですみません。
キスで目覚めるなら、すみません、私がします。ww(ここはお譲り致しかねます。w)
コメントを頂くのは、ありがたいことです。
最上のご褒美をもらっている気分です。
もう、頂けるのでしたら、いくらでも頂きます。w
(返信することもまた嬉しいのです。)
ありがとうございます。
Re: タイトルなし ふ***様へ
ふ***様
気遣いできてないなんて、そんなことないです。
そう言われても、返事しちゃってますし・・・。w
返事をすることもまた、私にとってはご褒美のようなもの。
これからもヨロシクお願いしますね。
気遣いできてないなんて、そんなことないです。
そう言われても、返事しちゃってますし・・・。w
返事をすることもまた、私にとってはご褒美のようなもの。
これからもヨロシクお願いしますね。
同じ
魂のなかで会話は出来ても...
テヨンの苦悩がズシンと心に覆いかぶります。
何を?ここから掴んで、テヨンがパッカの元へ戻るのか?
どんな素敵な物語がつづられるのか...
ここは前向きに考えながら、待つことにしましょう!