「短編集」
もしも編
夢
★お話は、私のうだうだした説明の後にございます★
皆さん、こんばんは。
迷走気味の本編でも、楽しんで頂いてるようで、感謝しております。
テヨンが消えた時から、どこに行った?朝鮮?と予想コメントをたくさん頂いていました。
(まあ、タイムスリップは、ほとんどの方の読み通りだったかと思います。)
その後も、テヨンの成すべきことって何なのか?イ・ガクはどうしているのか?いろいろ、コメントくださるのが嬉しくて、楽しくて。
その中で、イ・ガクとテヨンの直接対話を楽しみにしてくださってた方が多くてですね。
これは、私も、考えなくはなかったことでした。
そして、次に多かったのが、テヨンと入れ替わりでイ・ガクが現代に飛ぶ、というもの。
これは、ですね、うむむむと考えました。
テヨンが消えてしまった現代ということは、プロポーズの後、結婚の報告の直後。
ここにイ・ガクが現れる・・・パク・ハの心情は・・・。
もちろん、イ・ガクを忘れることはできませんが、テヨンと歩むことを決意したのに・・・。
前向きに、イ・ガクのおかげで、更にテヨンとの絆を深められる方向に持っていけるか・・・。
私の頭の中では、そうはならなかったんです。
ううむ。ちょっと、妄想しづらいぞ、と。
そうだ!
テヨンに出会う前のパク・ハの所に飛ばせばいいんじゃ?
あとは妄想に身を任せ・・・
どうにか、書けないものかと考えたんです。
そうして、「もしも○○だったら」編ということで、本編とはつながりのない、別個のお話として書いてみようと思い至りまして・・・
先に「イ・ガク現代に飛ぶ」編を書いてしまいました。
(直接対話編も書きますので、少々お待ちを。)
題して、「頼まれもしないのにリクエストに応えたつもりだよ。なにそれ?ひとりよがりプロジェクト」の始動であります。(変なプロジェクトの多いブログだよ。
)
本編とはつながりはありません。(なので、本編のパク・ハの心の動きには影響してないとお考えください。)
つながりはありませんが、イ・ガクが現代に来るとなれば、テヨンはまた、おねんねしててもらわなきゃなりません。
「目覚めたテヨン」10話から11話で、テヨンが気絶してしまうくだりがあります。
時間にして数分との記述ですが、この気絶した時間がもっと長くて、この時にイ・ガクが現れたとしたら・・・というお話です。
先に言っておきます。
切ないお話になってしまいました。
そのおつもりでお読みくださいませ。
___________
パク・ハは屋根部屋へと続く階段を上りきった。
テラスを進みドアの前に立つ。
ピッピッピッピ ピー ガチャ。
「ただいまぁ。」
誰も居るはずのない家の中に声を掛けて、玄関を上がった。
リビングでスーパーの買い物袋を下ろし、電気のスイッチを入れる。
彼女は、そのまま屈みこむと今買ってきたばかりの水のペットボトルを取り出そうと、袋の中をガサゴソと探り始めた。
手に当たったペットボトルを持つと立ち上がり、顔を上げた。
ガッ、ゴトン。
ペットボトルはパク・ハの手から滑り落ち、ごろごろと転がった。
「・・・チョハ。」
パク・ハは短くそう言ったきり、手を口に当てて立ち尽くしている。
リビングのソファとテーブルの間の床の上に、目を閉じて座す王世子がいた。
イ・ガクは驚き、目を見開いたが、すぐさま立ち上がりゆっくりとパク・ハに近付いた。
「パッカ。・・・そなたか?」
何も言えず涙を溜めて立ち尽くす彼女を、イ・ガクは抱きしめた。
「本当にそなたか?夢ではないのか?」
彼女の髪に口づけながら、その腕に更に力を込めた。
パク・ハの温もりが伝わってくる。どうやら、夢ではないらしい。
「チョハ。・・・苦しい。」
「すまぬ。」
彼は腕の力を緩め、パク・ハの肩を掴んで自分の身から離すとその顔を見つめた。
「パッカ、本当に、そなたなのだな?」
・・・会いたかった。そう言って、彼はパク・ハの唇を塞いだ。
その唇の柔らかさ、温かさ、甘さ、もう長い間触れることのできなかったその感触は、間違いなく彼の愛する女人のものだった。
パッカ。・・・パッカ。パッカや。
何度もその名を呼びながら、口づけた。
「チョハ。・・・どうして?」
「分からぬ。体調がすぐれなかったのだ。全身だるくて、めまいがしたと思ったら、ここに居た。」
「どこか、悪い?ベッドで休む?」
パク・ハがあわてたように言うのへ、彼は微笑みながら首を横に振った。
「大丈夫だ。今は何ともない。」
イ・ガクはパク・ハの手を取り、ソファへと座らせ、自分も腰掛けた。手はしっかりと握ったまま。
「あれからどのくらいの時が経ったのだ?そなたは、今どうしておる?元気であったか?」
「そんなに一遍に訊かれても・・・。」
パク・ハは唇を尖らせた。
「変わらぬな。」
ちゅっと口づける。
「あの日、チョハが消えてから・・・もうすぐ一年よ。」
「・・・そうか。私は朝鮮に戻り、三年を過ごした。」
「三年も経ったの?」
パク・ハは驚いて目を見開いた。
「みんなは元気?」
「相変わらずだ。」
お互いに微笑み合う。
「私がまたここへ来たということは、ヨン・テヨンは、まだ目覚めておらぬのか?」
パク・ハは静かに首を横に振る。
「では、目覚めたのだな。・・・・会ったのか?」
彼女はもう一度首を横に振った。
「何故だ?」
目覚めたとは聴いたけど・・・会いたくないよ。
何故だ?彼の者は、私だ。
そうかも知れないけど・・・。
ヨン・テヨンとそなたは出会う運命だったのだ。
分かってる。・・・でも。
でも、何だ?
仕方ないでしょ?そんなに簡単に、割り切れないわ。
パク・ハは、自身の手に絡められたイ・ガクの手をほどき、立ち上がった。
「オムライス、作ってあげる。」
満面の笑みをイ・ガクに向け、そのままキッチンへ行こうとする。
「パッカ!話は終わっておらぬ。待たぬか!」
彼女は、眼の下を指で引き下げながら、べーっと舌を出し、キッチンへ消えてしまった。
イ・ガクは憮然とした表情をしたが、次には俯くと、下を向いたまま微笑んでいた。
やはり、そなたの"オムライす"が一番だな。
・・・何?私以外に作ってくれる女性(ひと)がいるの?
こやつ、王世子を睨むか!勘違いするでない。チサン達だ。
チサナ?
そうだ。三人で"オムライす"を商い始めたのだ。
・・・呆れた。歴史が変わっちゃうわ。
そなたの方はどうなのだ?繁盛しておるのか?
ジュース屋?上々よ。
パク・ハはガッツポーズをして見せた。
「そうであろうな。・・・そなたは商売上手だ。」
イ・ガクはパク・ハに笑いかける。
「・・・幸せか?」
パク・ハは何も言わずイ・ガクを見つめ返した。
「私の文は見つけられたのか?」
「ええ。」
「・・・私の願いは、そなたの幸福だ。」
イ・ガクは目を伏せた。
貴方が居なくて、何故、幸せになれるの?
あんぽんたんめ、何故、解らぬ?
何よっ、あんぽんたんは取り消したんじゃないの?
そなたは、やはり、あんぽんたんだ。取り消したことを取り消す!
何でよ!あんたこそ、あんぽんたんよ!あんぽんたんどころか、バカよ!
何を申すか!
バーカ、バーカ、バーカ!
こやつ!
イ・ガクは立ち上がり、向かいに座るパク・ハに詰め寄った。
その迫力に気圧されて、パク・ハは目を瞑り、思わず両腕で頭をガードする。
イ・ガクはパク・ハを立ち上がらせて抱きしめた。
「何故、解らぬのだ。私はそなたの幸せを願っておるのだ。」
「解らずやはチョハの方よ。」
パク・ハは大粒の涙を零し始めた。
イ・ガクは親指の腹でパク・ハの涙を拭ってやる。口を近づけて、彼女の涙を吸い取る。
「・・・甘く、ないな。」
「当たり前よ。あんぽんたん。・・・・・甘い飲み物、淹れるわ。」
パク・ハは啜りあげながら、微笑んだ。
リビングのテーブルにカップが二つ置かれた。
パク・ハのは、コーヒー。
イ・ガクのは、ココアにホイップクリームがたっぷりとトッピングされている。
イ・ガクは嬉しそうにホイップクリームを舐めた。
彼は、コーヒーを啜るパク・ハを見やる。
「そのように苦い物、よく飲めるな。」
「そのように甘い物、よく飲めますこと!・・・ヨン・テヨンさんの振りをしてた時はコーヒーも飲んでたじゃない?」
そう言ってから、ヨン・テヨンの名を口にしてしまったことに気付いて、パク・ハは、しまった、と言いたげな表情(かお)になった。
「なぜ、ヨン・テヨンを嫌うのだ?」
「嫌ってなんか・・・。」
「私は、そなたを愛しておるのだ。」
「私も、愛してるわ。」
「テヨンは私だ。そなたは、テヨンに愛されねばならぬ。」
イ・ガクはカップをテーブルに置き、パク・ハとの間を詰めた。
そのまま、唇を重ねる。
「彼の者以外の、男の口づけを受けてはならぬ。」
パク・ハの着るシャツの胸元のボタンを外すと、ぐいっとはだけさせた。
「この白き肌も、テヨン以外に晒してはならぬ。」
露わになった肩に口づけを落とし、首筋に向かって唇を這わせる。
パク・ハが艶めいた声を上げた。
「その甘やかな声を聴かせていいのも、テヨンだけだ。」
「もう・・・言わないで。」
「ならぬ。そなたを愛していいのはテヨンだけだ。テヨンは私だ。」
彼女の耳たぶを甘噛みした。
・・・あぁ・・・
パク・ハの唇から更に声が漏れる。
「パッカ、愛しておる。そなたは、テヨン以外の男から愛を受けてはならぬ。」
イ・ガクの被っていた、翼善冠(イクソングァン)が転がり落ちた。
身に纏っていた袞龍袍(コルリョンボ)の留め具を外す。
そのとき、イ・ガクの胸元でネックレスが揺れた。
ゴールドの小さな円盤を、パク・ハが手に取る。
「・・・曲がっちゃったの?」
「不埒者に矢を射かけられたが、またも、そなたに救われた。」
・・・そう・・・。と呟き、パク・ハは自身の手にはめていたブレスレットを外した。そのままイ・ガクの手首にはめる。
「手錠をかけたわ。私から逃げられないんだから。」
パク・ハはくすくすと笑った。
「こやつ、笑うか?」
イ・ガクはパク・ハの唇を塞いだ。
「約束せよ。そなたはヨン・テヨンだけを愛するのだ。」
身体に走る甘い疼きに翻弄されながら、パク・ハはイ・ガクの声を聴いていた。
ヨン・テヨンを愛せ。
ヨン・テヨンに愛されよ。
呪文のように繰り返される。
言わ・・・ない、で。
約束せよ。
・・・イヤ。
ならぬ。私の誓いを果たすためだ。
私に誓いを果たさせぬ気か?夫として誓ったのだぞ。
愛し・・て・・・る。
ならば、約束いたせ。
チョハ。・・・愛してるわ。
だから・・・テヨン、さんを・・・愛、し・・・ます。
それで・・・いい、の?
よい。・・・それで、よい。
パッカ、愛しておる。そなただけだ。そなただけ・・・。
パク・ハの総身は悦びに粟立った。
朝の光がリビングにも届いていた。
パク・ハは目を擦りながら辺りを見廻す。
ソファの上で薄いシーツだけを被って横になっていたが、その身には何も着けていなかった。
誰もいない屋根部屋の、リビングのソファの上、彼女はあわててシーツをその身に巻き付けた。
「チョハ?」
返事はなかった。
彼の翼善冠だけが転がっている。
「黙って、還っちゃったの?それとも夢だった?」
身体の奥に鈍い痛みが残る。
手首にブレスレットもない。
あんぽんたん。いくら生まれ変わりでも、他の男性(ひと)を愛せなんて・・・。
また、さよなら、とも、元気でね、とも言えなかった。
イ・ガクは、自身がパク・ハの身に愛を注ぎながら、テヨンを愛せと言い続けていた。
それが、チョハの望みなの?
転がっていた翼善冠を拾い上げ抱きしめると、パク・ハは声もなく涙を流した。
イ・ガクはゆっくりとその身を起こした。
「チョハ!お目覚めですか?!」
「・・・私は、眠っていたのか?」
「突然、お倒れになられたのです。」
イ・ガクは立ち上がろうとしたが、思うように身体が動かない。
「なりません。ずっと意識があられなかったのです。安静になさらなければ・・・。」
イ・ガクはまた横になった。
「・・・夢を、見ていた。」
頭に当てていた手を下ろした時、手首でちゃりっと音がした。金の鎖が揺れている。
「・・・手錠。」
「は?何でございますか?」
枕に顔を埋め、イ・ガクは臣下から顔が見えないようにした。
「・・・美しい、天女の夢を、見ていたのだ。」
皆さん、こんばんは。
迷走気味の本編でも、楽しんで頂いてるようで、感謝しております。

テヨンが消えた時から、どこに行った?朝鮮?と予想コメントをたくさん頂いていました。
(まあ、タイムスリップは、ほとんどの方の読み通りだったかと思います。)
その後も、テヨンの成すべきことって何なのか?イ・ガクはどうしているのか?いろいろ、コメントくださるのが嬉しくて、楽しくて。
その中で、イ・ガクとテヨンの直接対話を楽しみにしてくださってた方が多くてですね。
これは、私も、考えなくはなかったことでした。
そして、次に多かったのが、テヨンと入れ替わりでイ・ガクが現代に飛ぶ、というもの。
これは、ですね、うむむむと考えました。
テヨンが消えてしまった現代ということは、プロポーズの後、結婚の報告の直後。
ここにイ・ガクが現れる・・・パク・ハの心情は・・・。
もちろん、イ・ガクを忘れることはできませんが、テヨンと歩むことを決意したのに・・・。
前向きに、イ・ガクのおかげで、更にテヨンとの絆を深められる方向に持っていけるか・・・。
私の頭の中では、そうはならなかったんです。

ううむ。ちょっと、妄想しづらいぞ、と。
そうだ!

テヨンに出会う前のパク・ハの所に飛ばせばいいんじゃ?
あとは妄想に身を任せ・・・
どうにか、書けないものかと考えたんです。
そうして、「もしも○○だったら」編ということで、本編とはつながりのない、別個のお話として書いてみようと思い至りまして・・・
先に「イ・ガク現代に飛ぶ」編を書いてしまいました。

(直接対話編も書きますので、少々お待ちを。)
題して、「頼まれもしないのにリクエストに応えたつもりだよ。なにそれ?ひとりよがりプロジェクト」の始動であります。(変なプロジェクトの多いブログだよ。

本編とはつながりはありません。(なので、本編のパク・ハの心の動きには影響してないとお考えください。)
つながりはありませんが、イ・ガクが現代に来るとなれば、テヨンはまた、おねんねしててもらわなきゃなりません。
「目覚めたテヨン」10話から11話で、テヨンが気絶してしまうくだりがあります。
時間にして数分との記述ですが、この気絶した時間がもっと長くて、この時にイ・ガクが現れたとしたら・・・というお話です。
先に言っておきます。
切ないお話になってしまいました。
そのおつもりでお読みくださいませ。
___________
パク・ハは屋根部屋へと続く階段を上りきった。
テラスを進みドアの前に立つ。
ピッピッピッピ ピー ガチャ。
「ただいまぁ。」
誰も居るはずのない家の中に声を掛けて、玄関を上がった。
リビングでスーパーの買い物袋を下ろし、電気のスイッチを入れる。
彼女は、そのまま屈みこむと今買ってきたばかりの水のペットボトルを取り出そうと、袋の中をガサゴソと探り始めた。
手に当たったペットボトルを持つと立ち上がり、顔を上げた。
ガッ、ゴトン。
ペットボトルはパク・ハの手から滑り落ち、ごろごろと転がった。
「・・・チョハ。」
パク・ハは短くそう言ったきり、手を口に当てて立ち尽くしている。
リビングのソファとテーブルの間の床の上に、目を閉じて座す王世子がいた。
イ・ガクは驚き、目を見開いたが、すぐさま立ち上がりゆっくりとパク・ハに近付いた。
「パッカ。・・・そなたか?」
何も言えず涙を溜めて立ち尽くす彼女を、イ・ガクは抱きしめた。
「本当にそなたか?夢ではないのか?」
彼女の髪に口づけながら、その腕に更に力を込めた。
パク・ハの温もりが伝わってくる。どうやら、夢ではないらしい。
「チョハ。・・・苦しい。」
「すまぬ。」
彼は腕の力を緩め、パク・ハの肩を掴んで自分の身から離すとその顔を見つめた。
「パッカ、本当に、そなたなのだな?」
・・・会いたかった。そう言って、彼はパク・ハの唇を塞いだ。
その唇の柔らかさ、温かさ、甘さ、もう長い間触れることのできなかったその感触は、間違いなく彼の愛する女人のものだった。
パッカ。・・・パッカ。パッカや。
何度もその名を呼びながら、口づけた。
「チョハ。・・・どうして?」
「分からぬ。体調がすぐれなかったのだ。全身だるくて、めまいがしたと思ったら、ここに居た。」
「どこか、悪い?ベッドで休む?」
パク・ハがあわてたように言うのへ、彼は微笑みながら首を横に振った。
「大丈夫だ。今は何ともない。」
イ・ガクはパク・ハの手を取り、ソファへと座らせ、自分も腰掛けた。手はしっかりと握ったまま。
「あれからどのくらいの時が経ったのだ?そなたは、今どうしておる?元気であったか?」
「そんなに一遍に訊かれても・・・。」
パク・ハは唇を尖らせた。
「変わらぬな。」
ちゅっと口づける。
「あの日、チョハが消えてから・・・もうすぐ一年よ。」
「・・・そうか。私は朝鮮に戻り、三年を過ごした。」
「三年も経ったの?」
パク・ハは驚いて目を見開いた。
「みんなは元気?」
「相変わらずだ。」
お互いに微笑み合う。
「私がまたここへ来たということは、ヨン・テヨンは、まだ目覚めておらぬのか?」
パク・ハは静かに首を横に振る。
「では、目覚めたのだな。・・・・会ったのか?」
彼女はもう一度首を横に振った。
「何故だ?」
目覚めたとは聴いたけど・・・会いたくないよ。
何故だ?彼の者は、私だ。
そうかも知れないけど・・・。
ヨン・テヨンとそなたは出会う運命だったのだ。
分かってる。・・・でも。
でも、何だ?
仕方ないでしょ?そんなに簡単に、割り切れないわ。
パク・ハは、自身の手に絡められたイ・ガクの手をほどき、立ち上がった。
「オムライス、作ってあげる。」
満面の笑みをイ・ガクに向け、そのままキッチンへ行こうとする。
「パッカ!話は終わっておらぬ。待たぬか!」
彼女は、眼の下を指で引き下げながら、べーっと舌を出し、キッチンへ消えてしまった。
イ・ガクは憮然とした表情をしたが、次には俯くと、下を向いたまま微笑んでいた。
やはり、そなたの"オムライす"が一番だな。
・・・何?私以外に作ってくれる女性(ひと)がいるの?
こやつ、王世子を睨むか!勘違いするでない。チサン達だ。
チサナ?
そうだ。三人で"オムライす"を商い始めたのだ。
・・・呆れた。歴史が変わっちゃうわ。
そなたの方はどうなのだ?繁盛しておるのか?
ジュース屋?上々よ。
パク・ハはガッツポーズをして見せた。
「そうであろうな。・・・そなたは商売上手だ。」
イ・ガクはパク・ハに笑いかける。
「・・・幸せか?」
パク・ハは何も言わずイ・ガクを見つめ返した。
「私の文は見つけられたのか?」
「ええ。」
「・・・私の願いは、そなたの幸福だ。」
イ・ガクは目を伏せた。
貴方が居なくて、何故、幸せになれるの?
あんぽんたんめ、何故、解らぬ?
何よっ、あんぽんたんは取り消したんじゃないの?
そなたは、やはり、あんぽんたんだ。取り消したことを取り消す!
何でよ!あんたこそ、あんぽんたんよ!あんぽんたんどころか、バカよ!
何を申すか!
バーカ、バーカ、バーカ!
こやつ!
イ・ガクは立ち上がり、向かいに座るパク・ハに詰め寄った。
その迫力に気圧されて、パク・ハは目を瞑り、思わず両腕で頭をガードする。
イ・ガクはパク・ハを立ち上がらせて抱きしめた。
「何故、解らぬのだ。私はそなたの幸せを願っておるのだ。」
「解らずやはチョハの方よ。」
パク・ハは大粒の涙を零し始めた。
イ・ガクは親指の腹でパク・ハの涙を拭ってやる。口を近づけて、彼女の涙を吸い取る。
「・・・甘く、ないな。」
「当たり前よ。あんぽんたん。・・・・・甘い飲み物、淹れるわ。」
パク・ハは啜りあげながら、微笑んだ。
リビングのテーブルにカップが二つ置かれた。
パク・ハのは、コーヒー。
イ・ガクのは、ココアにホイップクリームがたっぷりとトッピングされている。
イ・ガクは嬉しそうにホイップクリームを舐めた。
彼は、コーヒーを啜るパク・ハを見やる。
「そのように苦い物、よく飲めるな。」
「そのように甘い物、よく飲めますこと!・・・ヨン・テヨンさんの振りをしてた時はコーヒーも飲んでたじゃない?」
そう言ってから、ヨン・テヨンの名を口にしてしまったことに気付いて、パク・ハは、しまった、と言いたげな表情(かお)になった。
「なぜ、ヨン・テヨンを嫌うのだ?」
「嫌ってなんか・・・。」
「私は、そなたを愛しておるのだ。」
「私も、愛してるわ。」
「テヨンは私だ。そなたは、テヨンに愛されねばならぬ。」
イ・ガクはカップをテーブルに置き、パク・ハとの間を詰めた。
そのまま、唇を重ねる。
「彼の者以外の、男の口づけを受けてはならぬ。」
パク・ハの着るシャツの胸元のボタンを外すと、ぐいっとはだけさせた。
「この白き肌も、テヨン以外に晒してはならぬ。」
露わになった肩に口づけを落とし、首筋に向かって唇を這わせる。
パク・ハが艶めいた声を上げた。
「その甘やかな声を聴かせていいのも、テヨンだけだ。」
「もう・・・言わないで。」
「ならぬ。そなたを愛していいのはテヨンだけだ。テヨンは私だ。」
彼女の耳たぶを甘噛みした。
・・・あぁ・・・
パク・ハの唇から更に声が漏れる。
「パッカ、愛しておる。そなたは、テヨン以外の男から愛を受けてはならぬ。」
イ・ガクの被っていた、翼善冠(イクソングァン)が転がり落ちた。
身に纏っていた袞龍袍(コルリョンボ)の留め具を外す。
そのとき、イ・ガクの胸元でネックレスが揺れた。
ゴールドの小さな円盤を、パク・ハが手に取る。
「・・・曲がっちゃったの?」
「不埒者に矢を射かけられたが、またも、そなたに救われた。」
・・・そう・・・。と呟き、パク・ハは自身の手にはめていたブレスレットを外した。そのままイ・ガクの手首にはめる。
「手錠をかけたわ。私から逃げられないんだから。」
パク・ハはくすくすと笑った。
「こやつ、笑うか?」
イ・ガクはパク・ハの唇を塞いだ。
「約束せよ。そなたはヨン・テヨンだけを愛するのだ。」
身体に走る甘い疼きに翻弄されながら、パク・ハはイ・ガクの声を聴いていた。
ヨン・テヨンを愛せ。
ヨン・テヨンに愛されよ。
呪文のように繰り返される。
言わ・・・ない、で。
約束せよ。
・・・イヤ。
ならぬ。私の誓いを果たすためだ。
私に誓いを果たさせぬ気か?夫として誓ったのだぞ。
愛し・・て・・・る。
ならば、約束いたせ。
チョハ。・・・愛してるわ。
だから・・・テヨン、さんを・・・愛、し・・・ます。
それで・・・いい、の?
よい。・・・それで、よい。
パッカ、愛しておる。そなただけだ。そなただけ・・・。
パク・ハの総身は悦びに粟立った。
朝の光がリビングにも届いていた。
パク・ハは目を擦りながら辺りを見廻す。
ソファの上で薄いシーツだけを被って横になっていたが、その身には何も着けていなかった。
誰もいない屋根部屋の、リビングのソファの上、彼女はあわててシーツをその身に巻き付けた。
「チョハ?」
返事はなかった。
彼の翼善冠だけが転がっている。
「黙って、還っちゃったの?それとも夢だった?」
身体の奥に鈍い痛みが残る。
手首にブレスレットもない。
あんぽんたん。いくら生まれ変わりでも、他の男性(ひと)を愛せなんて・・・。
また、さよなら、とも、元気でね、とも言えなかった。
イ・ガクは、自身がパク・ハの身に愛を注ぎながら、テヨンを愛せと言い続けていた。
それが、チョハの望みなの?
転がっていた翼善冠を拾い上げ抱きしめると、パク・ハは声もなく涙を流した。
イ・ガクはゆっくりとその身を起こした。
「チョハ!お目覚めですか?!」
「・・・私は、眠っていたのか?」
「突然、お倒れになられたのです。」
イ・ガクは立ち上がろうとしたが、思うように身体が動かない。
「なりません。ずっと意識があられなかったのです。安静になさらなければ・・・。」
イ・ガクはまた横になった。
「・・・夢を、見ていた。」
頭に当てていた手を下ろした時、手首でちゃりっと音がした。金の鎖が揺れている。
「・・・手錠。」
「は?何でございますか?」
枕に顔を埋め、イ・ガクは臣下から顔が見えないようにした。
「・・・美しい、天女の夢を、見ていたのだ。」
~ Comment ~
Re: やはり めい様へ
めい様
チョハを書いてみると、チョハ、好き♡と思います。
ですが、どうしても切なくなってしまう・・・。
> 素敵な夢をありがとうございました。
そう言って頂けて、嬉しいです。
こちらこそ、ありがとうございます。
チョハを書いてみると、チョハ、好き♡と思います。
ですが、どうしても切なくなってしまう・・・。
> 素敵な夢をありがとうございました。
そう言って頂けて、嬉しいです。
こちらこそ、ありがとうございます。
Re: 言葉が出ません…(T_T) ふ***様へ
ふ***様
そんなに喜んで頂けて、変なプロジェクト立ち上げた甲斐があります。w
>イ・ガクは別格
分かる気がします。どうしても切なくなってしまうので、私自身は蓋をしている感じかも知れない、とこのお話を書いてみて気づきました。
>これからも全力で、応援
なんて、もったいない、ありがたいお言葉でしょう。(感涙)
これからも全力で妄想に励みます。w
そんなに喜んで頂けて、変なプロジェクト立ち上げた甲斐があります。w
>イ・ガクは別格
分かる気がします。どうしても切なくなってしまうので、私自身は蓋をしている感じかも知れない、とこのお話を書いてみて気づきました。
>これからも全力で、応援
なんて、もったいない、ありがたいお言葉でしょう。(感涙)
これからも全力で妄想に励みます。w
切ないですねぇ
生まれ変わってテヨンとはいっても、プヨンは亡くなっていて、
パッカは一人で、パッカはガクへの思いが断ち切れなくて、
テヨンはパッカを心から愛してて...転生がなせる、三角関係?
パッカがテヨンをガクだと感じられたら、幸せになれるのかなぁ~
ひとの心って、理屈ではないのですよね。
パッカは一人で、パッカはガクへの思いが断ち切れなくて、
テヨンはパッカを心から愛してて...転生がなせる、三角関係?
パッカがテヨンをガクだと感じられたら、幸せになれるのかなぁ~
ひとの心って、理屈ではないのですよね。
Re: タイトルなし ほ**様へ
ほ**様
追記、感謝!!
嬉しいです。w
その観点は私にはなかったのですが、そう思って読み返すと・・・
あぁら不思議、私が書いたお話じゃないみたい。w
それもありだと思います。
ありがとうございました。
追記、感謝!!
嬉しいです。w
その観点は私にはなかったのですが、そう思って読み返すと・・・
あぁら不思議、私が書いたお話じゃないみたい。w
それもありだと思います。
ありがとうございました。
Re: タイトルなし か****様へ
か****様
そうなんです。切ないんですよ。(涙)
はい。ちゃんと・・・です。♡
顔文字、ちゃんと見れてます。か****さんの感情が伝わってきて嬉しいです。
私はPCに登録されているものしか使わない(てか、使えない?)ので、微笑ましいし、
使いこなされてて羨ましくもあります。w
そうなんです。切ないんですよ。(涙)
はい。ちゃんと・・・です。♡
顔文字、ちゃんと見れてます。か****さんの感情が伝わってきて嬉しいです。
私はPCに登録されているものしか使わない(てか、使えない?)ので、微笑ましいし、
使いこなされてて羨ましくもあります。w
Re: 切ないですねぇ やすべぇ様へ
やすべぇ様
> 転生がなせる、三角関係?
ほんと、そんな感じですね。プヨンが生きていてくれたら、また違ったんでしょうが・・・
(それじゃ、ドラマの世界が成り立たないのでしょうけど・・・)
> ひとの心って、理屈ではないのですよね。
全くです。だから、切なくて美しくはあるのですが・・・
みんな、まるっと幸せにしたい!(けど、その力がない・・・涙)
> 転生がなせる、三角関係?
ほんと、そんな感じですね。プヨンが生きていてくれたら、また違ったんでしょうが・・・
(それじゃ、ドラマの世界が成り立たないのでしょうけど・・・)
> ひとの心って、理屈ではないのですよね。
全くです。だから、切なくて美しくはあるのですが・・・
みんな、まるっと幸せにしたい!(けど、その力がない・・・涙)
Re: タイトルなし み*様へ
み*様
コメントありがとうございます。
> テヨンを愛するためにも、必要な再会だと思いました~。
本編に関わりなし、と書いたものの・・・確かに、そうかも知れません。
パク・ハがイ・ガクを忘れることはできないでしょうから、どう、二人で乗り越えるか・・・
テヨンも大変ですけど、パク・ハも辛いですもんね。
みんな、切なくて・・・。(涙)
コメントありがとうございます。
> テヨンを愛するためにも、必要な再会だと思いました~。
本編に関わりなし、と書いたものの・・・確かに、そうかも知れません。
パク・ハがイ・ガクを忘れることはできないでしょうから、どう、二人で乗り越えるか・・・
テヨンも大変ですけど、パク・ハも辛いですもんね。
みんな、切なくて・・・。(涙)
- #376 ありちゃん
- URL
- 2015.02/17 17:02
- ▲EntryTop
Re: 素敵すぎます。 う***様へ
う***様
変なプロジェクト、楽しんで頂けて嬉しいです。W
> ひとりよがりプロジェクトを応援する会(そんな会はない?)会員にもなります。
ありがとうございます。w こちらの会員様も募集かけますかね?(W 冗談です。)
> 本編も楽しみ。
> 脱線も楽しみ。
うう、ありがたいお言葉。・・・でもキリン化しますよ?あ、会員様ですから大丈夫ですね?w
変なプロジェクト、楽しんで頂けて嬉しいです。W
> ひとりよがりプロジェクトを応援する会(そんな会はない?)会員にもなります。
ありがとうございます。w こちらの会員様も募集かけますかね?(W 冗談です。)
> 本編も楽しみ。
> 脱線も楽しみ。
うう、ありがたいお言葉。・・・でもキリン化しますよ?あ、会員様ですから大丈夫ですね?w
- #384 ありちゃん
- URL
- 2015.02/18 10:37
- ▲EntryTop
Re: サ**様へ
サ**様
おはようございます。早速のコメありがとうございます。
やはり、イ・ガク ファンの読者様は多いですよ。
イ・ガク少なめでスミマセン。
ドラマの続き的にはテヨンで進めちゃってるので、
ドラマの中の時系列でイ・ガク話を書きたいのですが、これが、なかなか・・・(汗)
精進します。
内緒のお部屋のパス、ややこしくてスミマセン。
どうしても、の時は(アメブロの)メッセージでもください。<m(__)m>
おはようございます。早速のコメありがとうございます。
やはり、イ・ガク ファンの読者様は多いですよ。
イ・ガク少なめでスミマセン。
ドラマの続き的にはテヨンで進めちゃってるので、
ドラマの中の時系列でイ・ガク話を書きたいのですが、これが、なかなか・・・(汗)
精進します。
内緒のお部屋のパス、ややこしくてスミマセン。
どうしても、の時は(アメブロの)メッセージでもください。<m(__)m>
&(/。\)
やっぱり切ない~チョハ……
目覚めたら愛し合った相手がいない……
パッカのブレスがせめてもの救いだゎ。
目覚めたら愛し合った相手がいない……
パッカのブレスがせめてもの救いだゎ。
- #1316 ハニです( ´∀`)
- URL
- 2016.03/16 14:06
- ▲EntryTop
やはり
これからのあるテヨンとの結びつきが深まった方がいいのでしょうが、やはり、チョハが好きだなぁ。
素敵な夢をありがとうございました。