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「長編(連載中)」
生まれ変わっても -朝鮮編-

生まれ変わっても 40

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イ・ガクはどこに居るのか?とのテヨンの問いに、すぐ後ろに、と言ってチサンがテヨンの後ろの衝立を動かした。
壁だと思っていたそこには扉がある。
扉を開け中に入った。

イ・ガクは苦しげな息遣いでそこに横たわっていた。

イ・ガク。
・・・何だってそんな風に伏せってしまったんだよ?僕を呼んだのか?
話もできないんじゃ、意味がないだろ?

テヨンは無言で問いかける。

そのとき、イ・ガクが胸を掻きむしるような仕草をした。

苦しいのか?

テヨンはイ・ガクの手を取った。彼の手は燃えるように熱くなっている。
テヨンはあわてて彼の首筋に手を当て、次に額に手を当てた。

「すごい熱だ。いつから?」

後ろに控えている臣下達を振り返る。

「二日前からだそうです。」

「医者はなんて?」

「それが・・・原因は分からぬと。」

テヨンはまたイ・ガクに向き直ると、彼の身体を観察し始めた。
頭を支え横を向かせようとした時、ちゃりんと金属音がして、先ほど掻きむしるようにしたときに緩んでしまった胸元の合わせから、何かが落ちた。

金の鎖にメダルのようなトップが付いたネックレス。
トップの金の小さな円盤は、中心を穿ったように曲がってしまっている。デザインにしては不自然だ。
テヨンがそのトップを持ち上げた時、また金属の擦れあう音がした。
鎖を滑って指輪も姿を現す。

・・・パッカが?

テヨンは、この時代にあるはずのない、その装飾品をイ・ガクの胸元に戻した。

イ・ガクの左頬に親指を、右頬には残りの四本の指を充て、片手で挟むようにして顔を上向かせ、鼻を軽くつまむ。
薄く口を開けたところに、そこにあった手拭いを充てがうと少し強引に口を拡げさせた。
舌を押して口の中を覗き込む。
そこに何かを発見したらしいテヨンは、臣下達に叫ぶように言った。

「三人とも、すぐにこの部屋を出るんだ!早く!」

三人は驚きつつ、世子に命じられたときのように反射的に従った。
部屋を出ると扉を閉じる。

扉の外の臣下に向かってテヨンは呼びかけた。

「いいかい?よく聴いて。皆、すぐに手を洗ってうがいをするんだ。ここに従事している全員にも、そう伝えて。
それから、生理食塩水を持って来て。」

「せいり・・・何ですか?」

「ああ、もうっ!0.9%の濃度の塩水だよ!」

「れい、てん、9・・・ぱーせんと・・・」

「500mlの水に4.5gの塩を溶かして・・・ああ、もう、この時代の容量の単位なんて知らないよ・・・」

「500mlの水に4.5gの塩ですね?」

マンボが答えた。

「分かってくれたんだね?良かった!すぐに作って持って来て!あ、あと酒も!」

「お飲みになりますので?」

チサンが不思議そうに問う。

「違う!消毒用だ!!」

マンボとチサンはあわてて言われたものを準備しに行った。

「私は、何を?」

一人取り残されたヨンスルが扉の向こうに問いかける。

「着替えを二人分用意しておいてくれないか?」

「承知しました。」


ほどなくしてテヨンに要求された物を持って三人は戻ってきた。
扉の向こうに呼びかける。

「ヨン・テヨン様。お申し付けの物を揃えましてございます。」

「扉の前に置いて、君たちはその部屋も出るんだ。」

「「「 はい。テヨン様。」」」

三人は言われた通り、生理食塩水、酒、二人分の着替えを扉の前に置いた。
廊下に出ると、この部屋の扉も閉める。

テヨンは、臣下が完全に出てしまったことを確認すると、イ・ガクの寝ているその部屋から出てきた。
そして、続きのこの部屋の窓という窓を総て開け放つ。
生理食塩水の載せられた盆と、着替えを一人分だけ取ると、また奥の部屋に入り扉をきっちりと閉めた。

イ・ガクの傍へ戻る。
彼の肩を抱き起すと、水の入った器を口に押し当てた。
水は、そのほとんどが顎を伝って零れ落ちたが、少しは喉に流し込まれた。

脱水しかけてる。・・・相手がパッカなら、口移しで飲ませるんだけどな。

男、しかも自分そっくりの顔に口づけなど考えたくもない。テヨンは苦笑した。

テヨンはイ・ガクを横たえた。顎を手拭いで拭ってやり、着替えもさせた。
自分そっくりの病人を世話するなど、なんとも不思議な気分になる。


イ・ガク。
今度は僕の番だ。君の代わりは僕が務めるよ。
君の役目は僕が果たしておくから、早く目覚めるんだ。
王世子、次代の王。こんなことでどうにかなるような、君じゃあないだろう?


テヨンはイ・ガクの部屋の扉を閉じた。
酒を手にふりかけ擦り合わせる。開け放っていた窓を閉じ、自身も着替えて廊下に出た。

部屋の外では、臣下達が立ったり座ったり、落ち着かない様子でテヨンを待っていたが、彼の姿を認めると素早く一直線に並び、頭を垂れる。
テヨンはそんな三人の臣下達を見やると、背筋を伸ばした。

「チサン、マンボ、ヨンスル。たった今、これより、私が王世子だ。よいな?」

テヨンは、ゆっくりとそう言った。いつもよりも低く、威厳に満ちた声で。

三人は、俯いたまま互いに顔を見合わせ、その場で膝まづく。

「「「 チョハ。仰せの通りに致します。」」」

「今後のことを話し合うよ。会議室を準備して。」

「はい。チョハ。」

チサンが一礼して、急ぎその場を離れる。

「顔を上げてよ。」

テヨンは、残りの二人に視線を送った。
二人は物言いたげなテヨンを上目使いに見ている。

「ねえ?」

「何でございましょう?チョハ。」

「・・・似てたかな?」

テヨンは、照れたように笑っている。

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イ・ガクとテヨン

イ・ガクが苦しそうだと私まで苦しいです(どこまでイ・ガク好きなんだ…)
テヨンはネックレスをどう感じたのでしょうね~
焼きもち?それとも切なさ?
最後のテヨンの「似てたかな」に思わず
、「テヨン可愛い(*・・*)」と萌えた私。
このお話、大好きです\(^-^)/

Re: タイトルなし か****様へ

か****様

イ・ガクの看病なら私もしたいです。w
テヨンに看病してもらうのも良いかもぉ。ww(水は、ぜひ、口う・・・以下自粛w)

お子様方、心配ですね。
家族が伝染る病気になると大変!か****さんも、お気を付け下さいね。
もしも伝染ってしまったら、テヨンに看病される妄想で乗り切ってください。

Re: イ・ガクとテヨン ふにゃん様へ

ふにゃん様

イ・ガクを苦しめてごめんなさい。(>_<)
私も心苦しい~。(汗)

> 「テヨン可愛い(*・・*)」と萌えた私。
そうですか。それは良かった。(ニヤリ)私の狙いが大当たりです。
と言うか、自分が萌えるので書き加えました。♡

> このお話、大好きです\(^-^)/
ありがとうございます。そう言ってもらえると嬉しいです。
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