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「短話シリーズ」
달달(タルダル)

달달〇〇(タルダル〇〇)-甘々〇〇

 ←うだうだ話-名付け →拍手コメント(3/6~10)へのお返事です。
全国の受験生の皆様、受験生を抱えるオンマ、アッパの皆様、そして、そうでない皆様もこんばんは。
もう合否が分かった方、これからの方、いろいろいらっしゃると思いますが・・・
入試というイベントに緊張しておられるだろう皆様に贈ります。

(内容はないです。あっそ、こんな風に終わるのね、っちゅう話です。

_____________________________________

カンッ、カランッカラン!

来客を告げる鐘の音が、けたたましく鳴り響いた。

「ヌナ!パッカヌナ!」

パク・ハが、いらっしゃいませ、と言うが早いか、学生服に身を包んだ少年が飛び込んで来た。

彼は、走って来たのだろう。カウンターに手を付いてパク・ハの顔を見ながらもゼェゼェと肩で息をしている。
やがて息が整うと改めてパク・ハを見た。

「ヌナ!やったよ。受かったよ!」

「え?そうなの?おめでとう!すごいわ、あの難関高校に受かるなんて。」

パク・ハは手を合わせて喜んだ。

「そっかー。じゃ、今日はヌナがご馳走しちゃう!何がいい?オレンジジュース?」

学生くんは首を傾げて考えるような素振りをしていたが、何か閃いたようににっこりと笑った。

「今日はミックスジュースで。・・・ジュース代はちゃんと払うから。」

「え?せっかく、ご馳走してあげるのに、こんなこと滅多にないわよ?」

パク・ハは注文のジュースを絞る準備をしながら、遠慮しなくていいのよ?ともう一度念を押した。

「うん。その代わり、別のお願い、聴いてくんない?」

「あら、なあに?私にできること?」

出来上がったジュースを手渡してやりながら、パク・ハは微笑んだ。

「僕と、デートして。」

思わぬデートの誘いに、パク・ハは一瞬目を見開く。


心穏やかでないのは、その様子を見ていたテヨンである。
いつものように、いつもの席で、パク・ハのことを微笑ましく観察していたが、今の彼は手の中のカップを握りつぶさんばかりになっている。


パク・ハもテヨンの方にちらりと視線を投げたが、彼女の方は落ち着き払った様子で、学生くんに言った。

「そうねぇ。入学してきちんと勉強して、卒業して、大学に受かって、大学も出て就職して、それでも彼女がいなかったら、考えるわ。」

「・・・何だよ、それ。」

口を歪める彼に紙幣を返しながら、売り物のクッキーの小袋もその手に持たせる。

「だから、今日のところは、ね。これがお祝い。」

パク・ハは片目を瞑って見せた。

学生くんは、チェッと口を尖らせたが、すぐに笑顔になって、ま、いいや、と言った。
後は、他にお客さんが訪れなかったこともあって、いかに受験が大変だったか、これからの高校生活をどんなに楽しみにしているか、延々とパク・ハに話して聞かせる。
パク・ハも、にこにこと応じていた。


テヨンは、バックパックから本を取り出した。
椅子に深く腰掛け直し、背もたれに不自然なほど靠れかかって本を読み始める。
時々、パク・ハの方をちらりと見るが、学生相手に楽しげに話す彼女が目に入るだけ。


「オンマや学校の先生には報告したの?」

「いけね、忘れてた。ヌナに一番に伝えたかったんだ。」

学生くんは、ありがとう、ご馳走様でした、と言ってにこやかに店を出て行った。



パク・ハはブラインドを下げ、入り口のカギを閉めた。これから休憩時間である。

テヨンの傍へ行くが、彼は本に目を落とすばかりでパク・ハのことを見ようともしない。
何を考えているかは明白で、彼女はくすりと笑った。

「何か、おかしい?」

そう言いながらも、テヨンは、やはりパク・ハを見ない。

「私はアメリカのハイスクールだったから・・・こっちの高校はどんなのかな?」

「変わんないんじゃない?」

素知らぬ顔で本のページを捲る。ちっとも読んではいないのに。

「そうかしら?やっぱりお国柄ってものがあると思うな。」

パク・ハはテヨンの向かいに腰かけた。
頬杖をついてテヨンをじっと見る。

テヨンさぁん?
どうしたのぉ?

パク・ハはおどけて呼びかける。

パク・ハの視線に耐えかねて、テヨンはやっと顔を上げた。

「やっと、見た。・・・ねぇ、やきもち、焼いてるの?」

パク・ハは嬉しそうだ。


・・・嬉しそうだね?
嬉しいわよ?
若い男にデートに誘われて、そんなに嬉しい?
嬉しいってそういう意味じゃないわ。それに、彼は、まだ子供じゃない。
高校生なら、もう、立派に大人だ。


パク・ハは呆れ顔だ。


なに?そんな風に見てたの?それにきちんと、断ったでしょ?
気を持たせてたじゃないか。
は?その気はないって、やんわり言ってたつもりよ?
どうだか!君は、年下好きだからね。


パク・ハは怒るのも馬鹿らしくなってくる。


「もう!そうやって拗ねてたらいいのよ。ほんとに、子供ね。さっきの彼の方がよっぽど大人だわ。」

パク・ハはすっと立ち上がった。

ええ、ええ、私は年下好きですからね。
あの子だけじゃなくて、他にも言い寄ってくるお客さんは、いっぱいいるのよ。
テヨンさんだけが男じゃないんだから・・・。

ぶつぶつと言いながら、カウンターの中に入って行く。

「パ、パッカ?」

テヨンはしまった、という表情になった。

パク・ハは上手に学生をあしらっていた。傷つけないように、失礼のないように。
一方的に嫉妬をし、一方的に彼女を責めたのは自分の方だ。

テヨンはあわてて立ち上がり、パク・ハを追ってカウンターの中に入ろうとする。

「ここから先は部外者は立ち入り禁止です!これから仕込がありますから、お帰り下さい。お・きゃ・く・さ・ま!」

パク・ハの強烈な拒絶に遭い、テヨンはたじたじとする。

「パッカ。・・・ごめん。」

パク・ハは溜息を吐いて、テヨンを見た。

「あなた、ずるいわ。」

「え?なんで?」

「そんな顔されると・・・許したくなっちゃう。・・・ほんとは、とっても怒ってるのよ?」

「ごめん。」

パク・ハはカウンターから出て、テヨンの腕の中に滑り込んだ。

「他の男の人とデートなんてするわけないのに・・・。」

「ごめん。」

テヨンはパク・ハに口づけた。

「僕とデートしてくれる?」

「・・・そうねぇ。・・・高校を卒業して、大学も出て、就職して、他に彼女もいないみたいだから・・・いいわよ。」


もう一度キスをする。


『パク・ハの달달쥬스(タルダルジュス)』店内で、テヨンだけが味わうことができる・・・

달달키스(タルダルキス)。

パク・ハの甘い、甘いキス。

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~ Comment ~

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うまい!

こんな風に終わるのねって、予想はついても、ありちゃんさんうまい!

パク・ハはもちろんテヨンにぞっこんだけど、やっぱりテヨンが尻に敷かれてる?のかな~

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Re: タイトルなし か****様へ

か****様

受験生が出てきたってだけで、受験には何の関係もないお話ですよね。(汗)
息子さん、初心ですか。そうですか。・・・かわゆいですね。

テヨンはいつもパク・ハのお店で彼女を見つめてますが、一歩間違うと、ストー・・・
パク・ハが受け入れてるから、いっか。

Re: うまい! 阿波の局さまへ

阿波の局さま

そ、そうですかぁ?(喜)
喧嘩とも言えないような、傍から見れば、勝手にしてろって言いたくなるような・・・
(おかげでオチがない。汗)

テヨンは、パク・ハの尻に敷かれてますね。どう見ても。w

Re: タイトルなし F****様へ

F****様

こちらこそ、いつもありがとうございます。
店名通りに「甘々」な二人ですよ。w
確かにこの独占欲は、イ・ガクからのものですよね。
でも、イ・ガクだったらそう簡単には謝らないかな?w て言うか、イ・ガクなら大人の余裕を見せる(ふりで)嫉妬心を言葉にしないでしょうかね?
なんにしても、幸せなら、良いです。ってことで。w

蜜の味

嫉妬はスパイスでもあり、蜜の味でもあり(*^^*)

テヨン可愛いな~
強気に出るパッカもテヨンの可愛さにすぐ許しちゃうんですね。
前の方への返信にもありましたが、チョハだと気にしないって素振りでしょうね~
内心、「さきほどの男子、三代まで成敗?してくれよう」と思ってるブラックチョハが好きです。

Re: 蜜の味 ふにゃん様へ

ふにゃん様

そう、テヨンだとかわいくなっちゃうんですよねぇ。w

> 前の方への返信にもありましたが、チョハだと気にしないって素振りでしょうね~
> 内心、「さきほどの男子、三代まで成敗?してくれよう」と思ってるブラックチョハが好きです。
あはは、分かります。♪
ちょっといろいろ考えまして、イ・ガクバージョンも書いてみました。
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