「短編集」
もしも編
倒してから行け!
本編、休んだままですが・・・ストレス解消的短編にお付き合いください。
もしも編での、イ・ガクとテヨン直接対話編の続きな感じと言うことで・・・
(もしも編に続き書いてたら、益々、本編、立ち往生です。
)
____________
テヨンは自室のドアを開けた。
部屋へ入ると、バックパックを肩から降ろし、上着を脱ぐ。
テヨンは振り向き、そこにあり得ないものを見た。
「・・・何しに来たんだ?」
デスクに自分そっくりの人物、王世子イ・ガクが座っているではないか。
「知らぬ。気付いたらここに居た。」
イ・ガクは目を逸らし、ふんとそっぽを向いた。
「私とて、そなたなどに会いたいわけではない。・・・なぜ、そなたの所なのだ?」
「僕に訊くなよ。・・・今度は何しに来た?」
「知らぬ。・・・パッカは一緒ではないのか?」
横目でテヨンを見つつ、ぼそぼそと尋ねる。
「・・・今は、香港のお母さんの所に行ってる。」
一緒にいたとしても、会わせたいはずがないだろう?そうは口に出さず、テヨンは苦笑した。
婚姻の日は近いのか?
ああ。・・・祝いに来たのか?
そんなわけはあるまい!
なんで?
なぜ?なぜと申すか?パッカは私の妻だぞ。
僕に託したんじゃないのか?
・・・まだ、認めてはおらぬ。
テヨンは溜息を吐いた。
「君、往生際が悪いよ。・・・過去の男のくせに。」
「その口、引き裂いてくれる!」
テヨンはクローゼットから適当に服を選んでイ・ガクに渡した。
サングラスをかけさせ、キャップも目深に被らせる。
自室を出、階段を下りリビングを横切った。
幸い、お手伝いさんは買い物に出かけているらしく不在だった。
車庫に着くと、イ・ガクは車の後部座席のドアの前で待っている。
ドアを開けよ、という意味だ。
「なんで、当然のように後部座席なんだよ?おまけにドアも開けさせる?」
サングラスをかけキャップを目深に被っているとは言え、自分そっくりの人物を助手席に座らせるのも躊躇われる。
テヨンはぼやきながらも後部座席のドアを開けてやった。
イ・ガクは、するりと車に乗り込む。
スポーツクラブのフロントで、受付をするテヨンの後ろに、キャップのつばを抑えながら俯き加減のイ・ガクがいる。サングラスは外していた。
コートに向かう途中、馴染みのトレーナーに声を掛けられた。
「あれ、テヨンさん?お久しぶりです。」
「こんにちは。」
「今日は、お友達と?」
トレーナーはテヨンの後ろのイ・ガクを見た。
「ええ、まあ。」
イ・ガクはキャップのつばを抑えたまま、下を向いて顔を見られないようにしている。
「テヨンさん。今度、私ともお手合わせ願いますよ?」
「そうですね、近いうちに。」
トレーナーは、背格好がよく似てますね。お友達もお上手なんでしょ?と言いながら去って行った。
二人は足早に、コートに向かった。
スカッシュのコートで、イ・ガクはキャップを脱いだ。
軽くストレッチをした後、二人はラケットを握りボールを打ち合った。
ボールと身体があたたまってきたところで、バウンドしたボールをテヨンが手で取る。
テヨンとイ・ガクは、ラケットを握り直して互いに睨み合う。
「僕が勝ったら、パッカを諦めるんだろう?」
「私を負かさねば、パッカは渡さぬ。」
「いくよ。」
「始めよ。」
バンッ!
テヨンが最初のサーブを打ち、試合という名の決闘は始まった。
激しいラリーが続く。
ビシッ!バン、パシッ!
スカッシュは、ボールを常に前面の壁に打ち返すという競技だが、両側面と背面の壁に当てて前の壁に返しても良く、自然、動きは激しくなる。
おまけに冷えたボールは弾みにくい。ある程度の高さに打ち返さなければならないから、その勢いを殺せない。
試合が進みボール自体が温まってくると、その弾み方も徐々に大きくなってくる。
テヨンとイ・ガクは激しく打ち合った。
狭いコートを右に左に、互いに立ち位置を入れ替わりながら、交互に打ち合う。
汗が滴り落ち、息も荒くなってくる。
ビシッ、バシッ、とラッケトがボールを弾く音が響き渡っていた。
ラリーが続き、なかなかポイントにならない。
お互いに、ポイントを落とせば、今度は取り返す。
1ゲーム11点先取、5ゲームマッチで3ゲーム先取した者が勝利者となる。
互いに2ゲームずつ取っていた。これまでのゲームは、デュースに次ぐデュースの果てにようやく決着した。
最後のゲームもデュースを繰り返している。
互角の戦い。
・・・当然である。自分自身と対戦しているのだから。
11点先取のゲームなのに、すでに19対18。
テヨンがリードしているが、イ・ガクに取り返されれば、またデュースとなる。
テヨンの打球は側面の壁に当たって、前面の壁にぶつかった。
その打球を打ち返そうと、イ・ガクが一歩踏み込んだ時、ラケットがわずかにずれた。汗で手が滑る。
パシッ!バン。テン、テン、テン、テン、トットットットット・・・
ボールは壁に届かず、コロコロと転がった。
「僕の勝ちだ。」
イ・ガクは身体を折り曲げ両手を膝に置いている。テヨンはコートに大の字に寝転んだ。
二人ともぜぇぜぇと息をしている。
「僕の勝ち、だ。」
「・・・繰り返し言わずとも、分かっておる。」
イ・ガクの身体が透け始めた。
テヨンはあわてて起き上がり、イ・ガクに近寄った。
伸ばされたテヨンの手を、イ・ガクが取る。
決闘の後の握手。
「馬術ならば、負けは、せぬ。」
イ・ガクは唇の片端を上げた。そのまま徐々に消えてゆく。
「往生際が悪いよ。」
他に誰も居なくなってしまったコートで、テヨンはぽつりと呟いた。
タオルで汗を拭い、天井を見上げる。
・・・また、来るかもしれない。テヨンは溜息を吐く。
数日後、乗馬クラブで馬に跨るテヨンの姿があった。
____________
イ・ガクとテヨンの直接対話、『対話』を『対決』と表現される読者様が多かったんです。
そして、ある方がイ・ガクとテヨンの関係を「俺を倒してから行け!」みたいな感じと仰ってました。
なるほどぉ、と妄想。w この分だと、またイ・ガク来ちゃう?それとも、テヨンが行く?テヨン、乗馬練習しちゃってるし・・・。
(やめてくれっ。←書き手、心の叫び。
)
もしも編での、イ・ガクとテヨン直接対話編の続きな感じと言うことで・・・
(もしも編に続き書いてたら、益々、本編、立ち往生です。

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テヨンは自室のドアを開けた。
部屋へ入ると、バックパックを肩から降ろし、上着を脱ぐ。
テヨンは振り向き、そこにあり得ないものを見た。
「・・・何しに来たんだ?」
デスクに自分そっくりの人物、王世子イ・ガクが座っているではないか。
「知らぬ。気付いたらここに居た。」
イ・ガクは目を逸らし、ふんとそっぽを向いた。
「私とて、そなたなどに会いたいわけではない。・・・なぜ、そなたの所なのだ?」
「僕に訊くなよ。・・・今度は何しに来た?」
「知らぬ。・・・パッカは一緒ではないのか?」
横目でテヨンを見つつ、ぼそぼそと尋ねる。
「・・・今は、香港のお母さんの所に行ってる。」
一緒にいたとしても、会わせたいはずがないだろう?そうは口に出さず、テヨンは苦笑した。
婚姻の日は近いのか?
ああ。・・・祝いに来たのか?
そんなわけはあるまい!
なんで?
なぜ?なぜと申すか?パッカは私の妻だぞ。
僕に託したんじゃないのか?
・・・まだ、認めてはおらぬ。
テヨンは溜息を吐いた。
「君、往生際が悪いよ。・・・過去の男のくせに。」
「その口、引き裂いてくれる!」
テヨンはクローゼットから適当に服を選んでイ・ガクに渡した。
サングラスをかけさせ、キャップも目深に被らせる。
自室を出、階段を下りリビングを横切った。
幸い、お手伝いさんは買い物に出かけているらしく不在だった。
車庫に着くと、イ・ガクは車の後部座席のドアの前で待っている。
ドアを開けよ、という意味だ。
「なんで、当然のように後部座席なんだよ?おまけにドアも開けさせる?」
サングラスをかけキャップを目深に被っているとは言え、自分そっくりの人物を助手席に座らせるのも躊躇われる。
テヨンはぼやきながらも後部座席のドアを開けてやった。
イ・ガクは、するりと車に乗り込む。
スポーツクラブのフロントで、受付をするテヨンの後ろに、キャップのつばを抑えながら俯き加減のイ・ガクがいる。サングラスは外していた。
コートに向かう途中、馴染みのトレーナーに声を掛けられた。
「あれ、テヨンさん?お久しぶりです。」
「こんにちは。」
「今日は、お友達と?」
トレーナーはテヨンの後ろのイ・ガクを見た。
「ええ、まあ。」
イ・ガクはキャップのつばを抑えたまま、下を向いて顔を見られないようにしている。
「テヨンさん。今度、私ともお手合わせ願いますよ?」
「そうですね、近いうちに。」
トレーナーは、背格好がよく似てますね。お友達もお上手なんでしょ?と言いながら去って行った。
二人は足早に、コートに向かった。
スカッシュのコートで、イ・ガクはキャップを脱いだ。
軽くストレッチをした後、二人はラケットを握りボールを打ち合った。
ボールと身体があたたまってきたところで、バウンドしたボールをテヨンが手で取る。
テヨンとイ・ガクは、ラケットを握り直して互いに睨み合う。
「僕が勝ったら、パッカを諦めるんだろう?」
「私を負かさねば、パッカは渡さぬ。」
「いくよ。」
「始めよ。」
バンッ!
テヨンが最初のサーブを打ち、試合という名の決闘は始まった。
激しいラリーが続く。
ビシッ!バン、パシッ!
スカッシュは、ボールを常に前面の壁に打ち返すという競技だが、両側面と背面の壁に当てて前の壁に返しても良く、自然、動きは激しくなる。
おまけに冷えたボールは弾みにくい。ある程度の高さに打ち返さなければならないから、その勢いを殺せない。
試合が進みボール自体が温まってくると、その弾み方も徐々に大きくなってくる。
テヨンとイ・ガクは激しく打ち合った。
狭いコートを右に左に、互いに立ち位置を入れ替わりながら、交互に打ち合う。
汗が滴り落ち、息も荒くなってくる。
ビシッ、バシッ、とラッケトがボールを弾く音が響き渡っていた。
ラリーが続き、なかなかポイントにならない。
お互いに、ポイントを落とせば、今度は取り返す。
1ゲーム11点先取、5ゲームマッチで3ゲーム先取した者が勝利者となる。
互いに2ゲームずつ取っていた。これまでのゲームは、デュースに次ぐデュースの果てにようやく決着した。
最後のゲームもデュースを繰り返している。
互角の戦い。
・・・当然である。自分自身と対戦しているのだから。
11点先取のゲームなのに、すでに19対18。
テヨンがリードしているが、イ・ガクに取り返されれば、またデュースとなる。
テヨンの打球は側面の壁に当たって、前面の壁にぶつかった。
その打球を打ち返そうと、イ・ガクが一歩踏み込んだ時、ラケットがわずかにずれた。汗で手が滑る。
パシッ!バン。テン、テン、テン、テン、トットットットット・・・
ボールは壁に届かず、コロコロと転がった。
「僕の勝ちだ。」
イ・ガクは身体を折り曲げ両手を膝に置いている。テヨンはコートに大の字に寝転んだ。
二人ともぜぇぜぇと息をしている。
「僕の勝ち、だ。」
「・・・繰り返し言わずとも、分かっておる。」
イ・ガクの身体が透け始めた。
テヨンはあわてて起き上がり、イ・ガクに近寄った。
伸ばされたテヨンの手を、イ・ガクが取る。
決闘の後の握手。
「馬術ならば、負けは、せぬ。」
イ・ガクは唇の片端を上げた。そのまま徐々に消えてゆく。
「往生際が悪いよ。」
他に誰も居なくなってしまったコートで、テヨンはぽつりと呟いた。
タオルで汗を拭い、天井を見上げる。
・・・また、来るかもしれない。テヨンは溜息を吐く。
数日後、乗馬クラブで馬に跨るテヨンの姿があった。
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イ・ガクとテヨンの直接対話、『対話』を『対決』と表現される読者様が多かったんです。
そして、ある方がイ・ガクとテヨンの関係を「俺を倒してから行け!」みたいな感じと仰ってました。
なるほどぉ、と妄想。w この分だと、またイ・ガク来ちゃう?それとも、テヨンが行く?テヨン、乗馬練習しちゃってるし・・・。
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- 倒してから行け! 2
- 倒してから行け! « «
- 고맙다(コマプタ)-ありがとう
~ Comment ~
Re: タイトルなし か****様へ
か****様
お心遣い感謝します。
面白かったですか?良かったです。♪
はい、負けず嫌いですよ。
イ・ガクなら落ちてきてほしいですよね。♡
お心遣い感謝します。
面白かったですか?良かったです。♪
はい、負けず嫌いですよ。
イ・ガクなら落ちてきてほしいですよね。♡
Re: 大変でしたね! やすべぇ様へ
やすべぇ様
笑ってもらって嬉しいです。♪
はい、ファイティンですね。ありがとうございます。
笑ってもらって嬉しいです。♪
はい、ファイティンですね。ありがとうございます。
Re: NoTitle F****様へ
F****様
イ・ガクとテヨンって決着つかないと思うんですよね。(苦笑)
運次第と言うか・・・乗馬なら、馬次第でしょうね。
お心遣い、感謝いたします。
皆様に支えられて、日々、頑張れています。
ほんと、ありがとうございます。
イ・ガクとテヨンって決着つかないと思うんですよね。(苦笑)
運次第と言うか・・・乗馬なら、馬次第でしょうね。
お心遣い、感謝いたします。
皆様に支えられて、日々、頑張れています。
ほんと、ありがとうございます。
Re: タイトルなし ふ***様へ
ふ***様
度々覗いて頂けて、感謝であります。
ふ***さんにも十分お心遣い頂いてますよ!「待ってます」の言葉はとても励みになります。
また、帰ってこなくちゃって思いますし、そのために頑張ろうって思えますもん。
主人への心遣いもありがとうございます。
二人の前にパッカは居させられません。選べるはずがないですから。
男二人、勝手に張り合っててもらわなくちゃ。w
度々覗いて頂けて、感謝であります。
ふ***さんにも十分お心遣い頂いてますよ!「待ってます」の言葉はとても励みになります。
また、帰ってこなくちゃって思いますし、そのために頑張ろうって思えますもん。
主人への心遣いもありがとうございます。
二人の前にパッカは居させられません。選べるはずがないですから。
男二人、勝手に張り合っててもらわなくちゃ。w
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