「長編(完結)」
目覚めたテヨン
目覚めたテヨン 7
真っ暗だ・・・。
辺り一面、闇が広がっていた。
上も下も、右も左も、前も後ろも分からない。・・・方向感覚がまるでない。
暑くもなく、寒くもなく、不思議に不快感はなかった。
ただ水に浮いているみたいに、闇の中に身体が浮いている。
これは夢だ。いつの間にか眠ってしまったんだな・・・。
そういう自覚があった。
何の音もしない。当然、時間の流れも分からない。
波に揺られる小舟のように、ただ浮いている。
そうしてどのくらい、浮いていただろうか・・・。
遠くに小さな光の点が見えた。光の点はだんだん大きくなってくる。
光がだんだんと近付いてきているようだ。
いや、近付いているのは僕自身の方か。
そう思った時、急に加速を感じて、光に吸い込まれた。
刹那、方向感覚が甦って、トン、と床と思しき所にきちんと足から着地した。
どこかの部屋?
あまりのまぶしさに何も見えない。
なに?・・・音?・・・声か?
「・・・ン。・・・ざ・・・・のだ。」
まぶしさに目を細めながら、その声を聞き取ろうと耳に神経を集中させた。
「・・ン・・・ヨン。目覚めるのだ。」
そう聞き取れたとき、僕は現実に引き戻され、目を覚ました。
自室の天井が目に入る。ベッドに横たわっていた。
聞き覚えのあるような、男の声。
すでに空は白み始めているらしく、うっすらと部屋の様子が見えていた。
いつも通りの僕の部屋。
ゆっくりと身を起こした。壁に掛かる時計に目をやると、時計の針は午前5時前だ。
夢の中で不快感を感じたわけではなかったのに、じっとりと汗をかいていた。
今日は休日だったから、ゆっくり寝ていてもかまわなかったが、そのまままた寝る気にもなれなくてシャワーを浴びることにした。ついでに起きてしまうことに決めて、クローゼットから着替えを引っ張り出そうと立ち上がる。
朝の光を入れようと、窓に近づきカーテンに手を伸ばした。
突然、夢の中で聞いた声に、背後から僕の名を呼ばれた気がして、思わず手を引っ込めて振り返る。
ベッドの向こう、壁であるはずの所に、僕にそっくりな男が立っていた。
一瞬ビクッと身を震わせたが、すぐに僕自身の写真だと気付いた。
はは・・・相当、疲れてるな。
そう思った瞬間、男の声が響いた。
「ヨン・テヨン。そなたは何ゆえ伏せっておるのだ。」
耳に聞こえているのではない。頭の中で響いている。
「それが無念で私をこちらに呼んだのか?
まるで己の死を見ているようで、ひどく胸が痛む。」
低く、威厳に満ちたゆっくりとした口調。
「私が無念を晴らしてやる。そなたの役割を果たしていよう。
そなたが戻るまで居場所を守っておく。」
・・・思い出した。
「ゆえに力を尽くせ。目覚めるのだ。」
彼は、眠っている僕を訪ねてきたことがある。
僕は愕然とした。
よろよろと後ずさり、力なく壁にもたれかかる。
そのまま天井を仰ぎみて、声を押し殺して笑った。
嗚咽のようになって、泣いているのか笑っているのか分からない。
人が見たら、気がふれていると思ったかもしれない。
辺り一面、闇が広がっていた。
上も下も、右も左も、前も後ろも分からない。・・・方向感覚がまるでない。
暑くもなく、寒くもなく、不思議に不快感はなかった。
ただ水に浮いているみたいに、闇の中に身体が浮いている。
これは夢だ。いつの間にか眠ってしまったんだな・・・。
そういう自覚があった。
何の音もしない。当然、時間の流れも分からない。
波に揺られる小舟のように、ただ浮いている。
そうしてどのくらい、浮いていただろうか・・・。
遠くに小さな光の点が見えた。光の点はだんだん大きくなってくる。
光がだんだんと近付いてきているようだ。
いや、近付いているのは僕自身の方か。
そう思った時、急に加速を感じて、光に吸い込まれた。
刹那、方向感覚が甦って、トン、と床と思しき所にきちんと足から着地した。
どこかの部屋?
あまりのまぶしさに何も見えない。
なに?・・・音?・・・声か?
「・・・ン。・・・ざ・・・・のだ。」
まぶしさに目を細めながら、その声を聞き取ろうと耳に神経を集中させた。
「・・ン・・・ヨン。目覚めるのだ。」
そう聞き取れたとき、僕は現実に引き戻され、目を覚ました。
自室の天井が目に入る。ベッドに横たわっていた。
聞き覚えのあるような、男の声。
すでに空は白み始めているらしく、うっすらと部屋の様子が見えていた。
いつも通りの僕の部屋。
ゆっくりと身を起こした。壁に掛かる時計に目をやると、時計の針は午前5時前だ。
夢の中で不快感を感じたわけではなかったのに、じっとりと汗をかいていた。
今日は休日だったから、ゆっくり寝ていてもかまわなかったが、そのまままた寝る気にもなれなくてシャワーを浴びることにした。ついでに起きてしまうことに決めて、クローゼットから着替えを引っ張り出そうと立ち上がる。
朝の光を入れようと、窓に近づきカーテンに手を伸ばした。
突然、夢の中で聞いた声に、背後から僕の名を呼ばれた気がして、思わず手を引っ込めて振り返る。
ベッドの向こう、壁であるはずの所に、僕にそっくりな男が立っていた。
一瞬ビクッと身を震わせたが、すぐに僕自身の写真だと気付いた。
はは・・・相当、疲れてるな。
そう思った瞬間、男の声が響いた。
「ヨン・テヨン。そなたは何ゆえ伏せっておるのだ。」
耳に聞こえているのではない。頭の中で響いている。
「それが無念で私をこちらに呼んだのか?
まるで己の死を見ているようで、ひどく胸が痛む。」
低く、威厳に満ちたゆっくりとした口調。
「私が無念を晴らしてやる。そなたの役割を果たしていよう。
そなたが戻るまで居場所を守っておく。」
・・・思い出した。
「ゆえに力を尽くせ。目覚めるのだ。」
彼は、眠っている僕を訪ねてきたことがある。
僕は愕然とした。
よろよろと後ずさり、力なく壁にもたれかかる。
そのまま天井を仰ぎみて、声を押し殺して笑った。
嗚咽のようになって、泣いているのか笑っているのか分からない。
人が見たら、気がふれていると思ったかもしれない。
~ Comment ~