FX

「短編集」
もしも編

倒してから行け!  2

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テヨンがちょうど2階から下りて来たとき、玄関のロックが解除される音がして、ガチャリとドアが開く音がした。
おかしい。とテヨンは首を傾げた。

この家のロック解除の暗証番号を知っているのは、自分とパク・ハ以外にはいない。
そして、今日この時間にパク・ハが帰ってくるはずがないのだ。

まさか、彼女に何かあったのだろうか。


「家の者を呼ぶからここで待て。・・・パッカ。パッカはおらぬか?」

現れたのは、王世子だった。


イ・ガクは階段を下りてくるテヨンに気付いた。

「ヨン・テヨン。何故そなたが屋根部屋におるのだ?」

「それはこっちの台詞だよ。」

「まあ、よい。・・・パッカはどこだ?」

「・・・お義姉さん・・・セナさんと、旅行に行ってる。」

「なんと、またか?どうして、いつもパッカがおらぬのだ。」

「君が、彼女がいないときに来るんじゃないか。」

会わせて堪るもんか!とテヨンは思っている。

「致し方ない。ヨン・テヨン。この者に代金を支払ってやれ。」

イ・ガクは玄関先に向けて顎をしゃくった。
テヨンは、はあ?と首を傾け階段を下りて来ると、玄関を覗いた。
タクシーの運転手と思しき中年の男が、不安そうに立っている。
彼はテヨンと目が合うとホッとした表情をした。

「ご家族の方ですか?・・・ああ、双子のご兄弟?・・・あの、こちらまでお乗せした料金をお支払い頂きたく・・・。」

テヨンは運転手の言った通りの代金を支払ってやる。
彼は、ありがとうございます、と頭を下げると帰って行った。


テヨンがリビングに戻ると、イ・ガクがソファに腰かけていた。

そこ、僕の指定席だけど?
何を申す!私の場所だ!
・・・それで?タクシーでどこから来たのさ?
昌徳宮(チャンドックン)だ。


イ・ガクは宮殿内の庭園を散策していた。
芙蓉池(プヨンジ)に架かる橋に歩を進めた時、一陣の風が吹いた。
彼は、咄嗟に袖の袂で顔を覆った。


腕を戻した次の瞬間、彼は、観光客で賑わう芙蓉池の橋の真ん中に立っていた。


王世子姿のイ・ガクを見た若い女性が、一緒に写真を撮って、と彼の袖を引っ張った。
それから、王世子と写真が撮れる、と人々が集まり始めたのだ。
観光客、特に女性は大喜びだ。
由緒正しいこの昌徳宮で、王世子(に扮した芸能人張りのイケメン)と一緒に写真が撮れると言うのだから。
無礼者!とイ・ガクが叫べば、本格的!と喜ばれる始末。

イ・ガクは人々を撒いて昌徳宮の門を潜ると、そこにいたタクシーに飛び乗った。
彼は迷わずパク・ハの屋根部屋を目指したのである。


「それで?何しに来たんだ?」

「パッカがおらぬのなら・・・」



イ・ガクが馬に跨り、テヨンはそれを見ていた。


何もない馬場をぐるぐると走らせるだけでは埒が明かぬ、とイ・ガクが言いだし、障害馬術のコースに出ることにした。しかし、慣れ親しんだ馬を操るテヨンが有利なのは明らかだ。

テヨンも全く初めての馬を使い、同じ馬で交互にコースに出た。

華麗な彼らの手綱捌きに、見学者が集まり始める。
そのスピード、障害飛越の仕方、どちらも甲乙つけがたい。


一つの障害の難易度を上げて、その飛越の仕方だけで競ってみても、高さも幅も、同じように越えていく。

何度やっても結果は同じ。


音を上げたのは、なんと、馬だった。


馬術対決は、乗馬クラブのスタッフによって止められてしまった。


「今回は引き分けだな。」

テヨンが苦笑する。
イ・ガクは、ふんと鼻を鳴らした。

「・・・そうだ、書はどうだ?」

「・・・君が有利に決まってるだろ? 絵なら僕に敵わないよね?」

しばしの沈黙の後、二人同時に口を開く。

「「ところで・・・」」

「空腹ではないか?」
「お腹空かないか?」

二人は顔を見合わせた。


テヨンは、手っ取り早く乗馬クラブの近くのレストランに行こうかと思った。
しかし、馴染みの乗馬クラブで、イ・ガクと一緒にいるだけで、双子だったんですか、と驚かれたのだ。あまり二人でいるところを他人に見られたくはない。

車を走らせながら、どうしようかと考えていると、後部座席からイ・ガクがテヨンに声を掛けてくる。

「オムライす、がよい。」

何様のつもりだ?テヨンは何も答えなかった。

「聴いておるのか?」

「聴いてる、けどさ。」

テヨンは屋根部屋に帰ることにした。



屋根部屋のダイニング。食卓には、オムライスが湯気を立てている。

「食べないの?」

「よもや、そなたが作るとは・・・。」

イ・ガクは目を見開いてテヨンを見た。

「パッカにも褒められたことがある。マズくはないはずだ。・・・毒なんて入ってないよ。」

テヨンはにやりと笑った。

「ふん。見た目は悪くないようだ。」


目の前にいるのが、何故、よりにもよって、自分にそっくりなこの男なのか・・・。

二人して溜息を吐く。

パッカの作るオムライすが食べたかった。パッカと共に・・・。
パッカに食べさせたかった。せっかくの僕の手料理なのに・・・。


イ・ガクはオムライスを一匙掬うと、口に運んだ。
テヨンも空腹であることには変わりがなかったから、彼も匙を取った。

テヨンはオムライスを頬張りながら、イ・ガクの様子をちらりと見る。
イ・ガクは、一瞬、驚いたようにその動きを止めたが、また、匙を握るその手を動かし始めた。


美味いではないか。


イ・ガクは、パク・ハのためにオムライすを作った時のことを思い出す。
王世子たる自分が、食事を手ずから作るなど、まして女人のために・・・あり得ぬことをした。
見た目も味も、彼女の作るそれとは似ても似つかなかった。
それでも、おいしいと言って食べたパク・ハ。

テヨンの作ったそれも、彼女の優しさで、おいしいと言ったに違いない。

そう、思ったのに・・・。

彼女は、心から喜んで食べたのだろう。


死後、三百年を経ても忘れられぬ女人のために、見た目も、味も、申し分のないオムライすを作れるようになった。


私の負け・・・か。


イ・ガクの握っていた匙が落ちた。


王世子はオムライスをきれいに食べ終わって、その姿を消した。
テヨンは空になった皿をじっと見つめる。


剣術ならば、負けぬ。
弓ならば、負けはせぬ。
書ならば・・・。


イ・ガクのそんな言葉が聞こえはしないかと、テヨンはじっと耳を澄ませた。
しかし、ただ沈黙が横たわるのみ。

テヨンは天井を見上げる。


もう、来ないだろ?

パッカは僕の妻になる。・・・君の妻になるってことだ。


そうだろ?

_____________________________

私、乗馬なんて経験ないですし、表現力も持ち合わせておりませんし、
わずかな検索結果を頼りに書いたらこうなりました。(苦笑)

スカッシュにしろ、乗馬にしろ、現代ならどう考えてもテヨン有利ですよね。
ましてオムライス対決とか・・・

にしても、ちと切なさ漂ってますねぇ。

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Re: タイトルなし t*******様へ

t*******様

ほんとですね。
勝ち負けではないですよね、この二人は。
イ・ガクが、パク・ハを想って、想って、テヨンが居るんですものね。

待ってました♪

妻になるんですね…パッカは。
嬉しい、本当に嬉しいのに何でこんなに切ないのでしょう…

乗馬対決は引き分けでしたか~
現代に来れるなら、パッカに会わせてあげたくて仕方がありません(T_T)

ありちゃんさんのコメントの返しの中に、300年イ・ガクがパッカを想い続けたからテヨンがいるという言葉が頭から離れません。

テヨンとして結ばれて良かったと思う反面、イ・ガクの昌徳宮で王として生きていく姿を思うと(T_T)
これが二次でイ・ガクをより魅力的にしてるんですよね…(^_^;)
お忙しい中、書いて下さってありがとうございます。
早く退院できますように

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Re: 待ってました♪ ふにゃん様へ

ふにゃん様

お待ち頂いてありがとうございます!

> 妻になるんですね…パッカは。
どんだけ婚約期間が長いんだって感じですね。(苦笑)

> テヨンとして結ばれて良かったと思う反面、イ・ガクの昌徳宮で王として生きていく姿を思うと(T_T)
> これが二次でイ・ガクをより魅力的にしてるんですよね…(^_^;)
確かにそうかも知れませんね。
私の書くイ・ガクは切なさ全開ですみません。(涙)
いつか、幸せいっぱいなイ・ガクの姿も書きたいとは思っているのですが・・・
いつ、とはっきりお約束できないのが申し訳ない限り。

> お忙しい中、書いて下さってありがとうございます。
> 早く退院できますように
ありがとうございます。精神安定剤ですから。♪
お陰様で、主人も順調です。♪

Re: タイトルなし か****様へ

か****様

あんにょ~ん。

イ・ガクのオムライスは、ドラマで有りましたよ。
パク・ハがテムに冷凍車に閉じ込められて、助け出した後に。
見た目はともかく、ほんとに味は良かったのかも、だけど、
お話の都合上、味も?の設定にしちゃいました。(>_<)

か****さんにも精神安定剤とは、嬉しい限り。
にんにく注射ですかぁ。・・・最近、書いてませんね。
そのうち、強力なのを・・・。w

アレルギーはつらいですね。
春はいろいろ大変ですね。(見た目はきれいな季節なんですけどねぇ。)

末っ子ちゃん、やはり泣いてますか。
ママべったりって仰ってらしたので、そうではないかと思ってましたが・・・。
早く慣れてくれるといいですね。

Re: ありがとうございます そ****様へ

そ****様

こんばんは。コメントありがとうございます。
「更新が楽しみ」とのお言葉は、純粋に嬉しいのでお気遣い無用ですよ。
(催促されてるとしても、気付いてませんから。w)

私の方がお力をお貸し頂いて、主人も回復してきてる旨ご報告せねば、と思ってそうしたのですが、
そのように喜んで頂けた上に、お礼まで仰って頂けて、私の方が、ありがとうございます、なのです。
そのようなお心が、大きな力となって私たちに届いているのだと思います。(嬉涙)

私は2月に誕生日を迎えましたので、そ****さんは1コお姉さんですね。
オンニ、これからもヨロシクお願いいたします。m(__)m

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Re: タイトルなし つ*****様へ

つ*****様

こちらこそありがとうございます。
いつも素敵な、とは面映ゆいですが、そう言って頂けて嬉しいです。
夫や私へのお気遣いも感謝しております。m(__)m

馬術対決、引き分けではありましたが、テヨン練習してたんですもんね。
イ・ガクも予告しておかなきゃ勝てたかも知れないのに・・・
多分、わざと、かな?
イ・ガクには幸せになって欲しいですよね、ほんと。
でも、パク・ハ以外の女性だと、複雑、なのもよく解ります。はい。
イ・ガク自身、パク・ハにはテヨンと幸せになって欲しいのだろうけど、複雑、って思ってるのかも知れませんね。

キリン化邁進中ですが、楽しみと言って頂けて嬉しいです。
(あり得ないぐらい首の長いキリンにしてしまって、ごめんなさい。)

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Re: F****様へ

F****様

すごい!仰る通りだと思います。
私がおぼろげに思っていたことを、見事に言い表してくださってありがとうございます!

イ・ガクは頭で分かってるけど、どうしようもない。
テヨンもまたパク・ハを譲れるはずもなく、でも、イ・ガクには感謝しているはず。
直接会って話し、勝負を挑めば納得するかと思ってたけども、勝負はつかないし、納得もできない。
だから、切なさ漂っちゃうのでしょうね。(汗)

テヨンが受け止めてやるしかないのではないか、と私も思います。

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