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「長編(連載中)」
生まれ変わっても -朝鮮編-

生まれ変わっても 48

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扉が開く音がして、静かにその女性は部屋に入って来た。
俯き加減のまま世子の前に進み出て、ゆっくりと優雅な身のこなしで、世子へと礼を捧げる。

「お帰りなさいませ。チョハ。」

「う、む。・・・嬪宮も息災であったか?」

テヨンは困惑を隠しながら、どうにか言葉を紡ぎ出す。

「はい。」

世子嬪は顔を上げ、微笑んだ。

わ、若い。
そう言えば、イ・ガクは、十歳以上も若い世子嬪を迎えてたんだった。

年の頃は、十七、八といったところか。どう見ても二十歳は越えていない。
聡明そうな、黒い瞳が印象的な美少女であった。

テヨンはその先の会話を、どう続けていいのか分からない。
カン・ヨンチョルにしても、父王にしても、臣下達からある程度の情報を得ていた。
父王との謁見は、それなりにシミュレーションもしてからその場に臨んだ。

ところが、どうだ、今、目の前に居るこの少女のことは、その存在すら頭になかった。
彼は、彼女にどう接しているのか?
仮にも夫婦なのだから、イ・ガクも憎からずは思っていよう。

夫婦?夫婦だって?
現代なら、女子高生に違いないこの女の子と!

願わくば、早々に立ち去ってくれることを!


互いに顔を見つめあったまま、沈黙が続く。


ああ、もう、知るもんか!


「・・・嬪宮。申し訳ないが、私には時間がないのだ。用件は手短に・・・。」

「ご挨拶に伺っただけにございますから。」

世子嬪は静かに微笑みながらテヨンを見つめていた。

「お帰りになられたばかりですのに・・・またお出かけであられますか?」

「いや、内医院(ネイウォン)に用が・・・。」

「まあ!お加減が悪いのでございますか?」

世子嬪は心配そうに眉根を寄せている。

「あ、いや、そうではない!そうではなく・・・。」

テヨンは口籠った。
しかし、いずれ麻疹の件も宮廷中に知れ渡ることとなるだろう。彼女にも予防の措置を伝えておいた方が善いには違いない。

「嬪宮。・・・実は、麻疹が流行りそうな気配なのだ。」

世子嬪は驚き、口許に手を当てた。

「麻疹、でございますか?・・・疫病の?」

「そうだ。私はチョナより疫病退治を命じられた。これより内医院に参って、いろいろと手配せねばならぬのだ。」

世子嬪は何か考えるように目を閉じた。
深呼吸を一つして目を開く。そして、深々と頭を下げた。

「恐れながら、チョハ。王命でございましょうとも、私はチョハの御身が案じられてなりません。チョハは国の未来ではございませんか・・・。」

現代ならば女子高生と思しき年代の少女が、その立場ゆえにとは言え、随分と大人びた物言いをする。
テヨンは優しく微笑んだ。

「その未来を守るために、疫病退治の命を賜りたいと、私から王に願い出たのだ。」

君のことも、民も、未来も、守らなけりゃならない。

「・・・チョハ。差し出たことを申しました。・・・私に罰をお与えください。」

世子嬪は更に頭を低くする。

「・・・嬪宮に落ち度はない。私や国を案じてのことではないか・・・。顔を上げられよ。」

「恐れ入ります、チョハ。」

世子嬪は顔を上げた。

「お邪魔を致しまして申し訳ありませんでした。私は、これで失礼致します。」

「うむ。・・・嬪宮、すまなかった。ああ、そうだ、手洗いとうがいをしっかりしなさい。・・・側付きの者にも徹底させるように。」

「承知致しました。チョハ。」

世子嬪は立ち上がり頭を下げると、世子に背を向けぬように部屋を出て行った。


テヨンは、ほーっと盛大に溜息を吐いた。

「ト内官 !! ソン司書 !! 」

外で待機しているはずの、チサンとマンボを大声で呼び付ける。

扉の外で、二人は顔を見合わせていた。

・・・お怒りの様であられるな。

あわてて部屋へ飛び込む二人。
仁王立ちのテヨンの前に、二人並んでひれ伏す。

「 「申し訳ございません。チョハ。」 」

「・・・申し訳ないと、思っているのか?・・・まあ、いい。時間がない。内医院に案内しろ!!」

「 「はっ!」 」

二人は勢いよく立ち上がった。

「二人とも、覚えてろよ。」

ぼそりと低い声でつぶやいたテヨンを見やれば、唇の片端が意地悪く上がっている。

チョハに・・・相違ない。

チサンもマンボも、背中がぞくりと凍りつくのを感じた。


内医院で、(*)都堤調(トチェジョ)を相手に色々と指示をする。
恵民署への人員の派遣、防疫のための措置、薬剤、物資の確認、すべきことは山積みだ。

「麻疹の特効薬がないのは知っているが・・・それでも、何か対策を練らねばならぬ。」

「恐れながら、チョハ。気力、体力、共に充足しておれば、それがなによりの防疫になると存じます。」

実際、貧困からくる栄養不足は深刻な問題だった。

「分かっておる。それに関しては、私にも考えがある。」

具体的な、病人の治療に当たる者たちの人選や方法は、内医院に委ねることにして、その決定事項を細かく報告するように指示をした。

「発生源と思われる集落にも行かねばならぬ。私と共に行く者も何人か選出しておいてくれ。事と次第によっては、恵民署以上に人員が必要になるかも知れぬ。・・・疫病の件は、外に漏らさぬように致せ。」

「承知致しました、チョハ。」

内医院は俄かに騒然となった。


東宮殿で、落ち着く間もなく臣下達に指示を繰り返す。
テヨンが口頭で言ったことを、マンボが書にしたためては、内官達に渡していく。
何人もの内官が世子からの書状を持って、あらゆる部署に急いだのだった。

「チョハ。そう言えば、宮中に急激に広まった噂がございます。」

チサンが、小声でそう報告してきた。

「どんな?」

小声でも聞こえるように、テヨンは顔を寄せる。

「チョハが麻疹に罹っている、と。」

「え?なんだって、そんな・・・。まさか、僕のこと、ばれてないよね?」

「それはないと存じます。今、私の目の前にいらっしゃるチョハが、ご病気だと噂が広まっているのでございます。」

「ト内官。何者かが、故意に噂をばらまいているのではないか?」

小声で顔を寄せたマンボに向かって、チサンは頷いた。

「ただの噂と軽んじてはなりませぬ、チョハ。御身の健康にいささかの問題なし、とお示しください。」

「うん。その為に、王宮に乗り込んで来たようなもんだからね。」

三人が顔を寄せ合って、ぼそぼそと言い合っていると、外で控えている内官が呼びかけてきた。

「チョハ、ウ翊賛でございます。」

「通せ。」

ヨンスルが部屋に入ってくる。

「待ちかねた。ああ、挨拶はいいよ。」

ヨンスルは促されるまま、その場に座った。

「それで、どうだった?」

「はい。チョハの仰せの通りに運んでおります。」

「そう。良かった。」

テヨンがほっと息を吐いて、ヨンスルに詳しい報告を求めた。



明日の朝議までに、総てを整えておく必要があった。
ポンソクの家族のいる集落へ、一刻も早く行かねばならない。

あれや、これや思いを巡らし、動き回っているうちにすっかり日も落ちてしまった。

「チョハ。もう、お休みになられては如何ですか?」

チサンに言われて、そうだね、とテヨンは答えた。
チサンは、では、とテヨンの座っている部屋の続きの間に入って行った。

ほどなくして戻ってきたチサンが言った。

「チョハ、寝所は整っております。私は、あちらに控えておりますので。」

扉の外を指し示す。控えの間にいる、と言いたいらしかった。

「うん。」

チサンも退出し、テヨンはうーんと伸びをする。
テヨンが、高く突き上げた両手を下げる前に、今、出て行ったばかりのチサンが飛び込んで来た。

「チョハ!世子嬪媽媽が起こしになられます!」

「な、なんで?・・・拙いよ。断ってくれ!そうだ、具合が悪いって言って!」

「チョハ、それはなりません。」

「なんでだよ!」

「宮中に、チョハがご病気との噂が流れている、と申し上げたではございませんか!具合が悪い、などと言おうものなら、更にまことしやかに噂が広がってしまいます。」

「じゃあ、世子嬪はどうすんのさ?・・・そっちの代理まではできないよ!」

「チョハ・・・。」

チサンにも、どうすることもできない。

「チョハ。世子嬪媽媽が起こしでございます。」

外から、内官の呼ばわる声がする。

___________
都堤調(トチェジョ) 最高責任者 堤調の更に上位 (恵民署では堤調が最上位になる)

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~ Comment ~

お話の更新ありがとうございます。
あー、チョハ、世子嬪宮を迎えていたんですね。ちょっと、軽く目眩が💦

チョハだけ、せつなくて涙してた私だけど、新しく、妻がいたとなるとジェラシーを感じてしまうのは何故でしょう😭
テヨン、どうする??

Re: みかん様へ

みかん様

> あー、チョハ、世子嬪宮を迎えていたんですね。ちょっと、軽く目眩が💦
そうですよね。ショックですよね。(自分で書いといてナンですが・・・)

> チョハだけ、せつなくて涙してた私だけど、新しく、妻がいたとなるとジェラシーを感じてしまうのは何故でしょう😭
ああ、分かります。切ないよぉ、幸せになってって思うんだけど・・・え?パク・ハは?って思います。
(自分で書いておいて何言ってんだか、ですけど・・・)

テヨンのおろおろ、ワタワタをお楽しみください。♪

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