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「長編(連載中)」
生まれ変わっても -朝鮮編-

生まれ変わっても 52

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テヨンが緊張を隠しながら王と対峙していた頃、ヨンスルは、カン・ヨンチョルの後を追っていた。

ヨンチョルは輿に乗り、担ぎ手たちに、早くしろ!と急かしていた。
でっぷりと太った彼の乗る輿を担ぐ者たちは、額に汗を浮かべながら必死の形相で喘いでいる。申し訳ございません、と荒い息の合い間に言って、先を急ぐ。

急いでおるなら、己の足で歩けばよいものを・・・。

しかし、もしも彼が急ぎ足で歩いたところで、その速度が速まるとは思えない。まして、走るなど、その姿を思い浮かべることすら難しい。

ヨンスルは溜息交じりに苦笑した。

貧しい者から搾取をし、自らは肥え太る。使用人を人間とも思わぬ扱い。
その所業で、彼奴(きゃつ)の程度が知れると言うものだ。
その小悪党振りに、嫌悪感で吐き気がする。

ヨンチョルは、自分を尾行する者がいるなど微塵も疑っていない様子だ。
悪事を働くにしては無防備過ぎる。ヨンスルは半ば呆れていた。

私も頭が良いとは言えぬが・・・あの者よりは、ましだろう。

それでも、ヨンチョルに付き従う用心棒と思しき男が、鋭い目で辺りを警戒していたから、ヨンスルも己の気配を殺しつつ後をつけていた。
もっと良い主人に仕えれば良いだろうに・・・、ヨンスルはまた溜息を吐いた。

母と妹の命を奪ったのも、彼奴のような腐った両班だった。
今の地位に執着心など微塵もないが、王世子チョハにお仕えすること、ヨンスルはその幸せを噛みしめる。


ほどなくして、大きな邸の門の前で輿は止まった。担ぎ手達が輿をゆっくりと地上に下ろし、ヨンチョルは地面を踏んだ。門が開かれ、彼は門の中に入って行った。その後を、用心棒がやはり警戒しながら付いて行く。
四人の輿の担ぎ手たちは、それぞれに首や肩を廻しつつ、やれやれとホッとした表情をしている。

ヨンスルは、邸を囲む壁伝いに歩きながら、邸の様子を観察する。
使用人たちが、それぞれの仕事に従事している様々な音や話し声が聞こえていた。
明るい陽光の下、両班の邸に忍び込むなど、如何にヨンスルと言えども危険だ。
彼は、近くの木陰にその身を隠すと、息を殺して裏口の木戸の様子を窺った。

じっと待っていると、木戸が、ぎいいっ、と音を立てて開いた。
あの用心棒の男が、別の二人の男を従えて出てくる。辺りを警戒しながら、足早に何処かへ向かって行った。

チョハの仰った通りだ。

ヨンスルはテヨンの言葉を思い出しながら、男たちの後を追った。


カン・ヨンチョルは、ソ堤調の行方を知っているに違いない。
だけど、自分の邸に監禁しているとも思えない。帰路の途中で、誰かをそこに差し向けるか、邸に帰ってから、人を向かわせるだろう。ソ堤調を殺してしまったら、自分が恵民署に行かなきゃならなくなるから、それはないと思うけど・・・彼を見つけて、救い出して。
でもさ、恵民署をあんなに大々的に閉鎖して、しかも自分の邸の私兵を使うなんて・・・バカ、だよね。

テヨンは、人差し指を立てると自分の頭の方に向けて、くるくると廻しながら苦笑していた。


彼らが湯治場に向かう道すがら、恵民署に民の大行列ができているのを見た。
それは、締め出された民達が作った行列だったのだ。
そんな事実が公にならないとでも思っていたのか。しかも自分の邸の私兵を使って・・・。

テヨンの言う、バカ、が吏曹判書の地位にある。


チョハのお悩みと心労は如何ばかりか・・・。

ヨンスルは、イ・ガクのことを思い、溜息を吐いた。

_______________________________________

本日、短め。許して・・・。


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~ Comment ~

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忙しい最中の更新ありがとうございます(^^)
でも嬉しいです。

テヨンはやっぱり聡明ですね。
さすがイガクの生まれ変わり。
そんな彼らだからこそ、ヨンスルみたいな良い家臣が付いているんだろーなと思います。
なんだかヨンスルの想いを感じたら無性にイガクの方に会いたくなりました(^^ゞ

続きも楽しみにしています(^^)

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イ・ガクにはヨンスル、マンボ、チサナ…
この3人が居てくれるのが、とても心強いですね。世子嬪さえ、心許せないかも知れない時代に、信頼でき、パッカの事を話せる3人。

ヨンスルにとっては、テヨンもチョハも同一人物みたいなのかしら?

私もイ・ガクに会いたくなりました…(T_T)

Re: kaya様へ

kaya様

こちらこそ、いつもありがとうございます。

ウリテヨンをお褒め頂き嬉しい限り!<m(__)m>

> なんだかヨンスルの想いを感じたら無性にイガクの方に会いたくなりました(^^ゞ
ホントですね。私もです。そうやってチョロチョロ短編が生まれていくんですよね。
私の能力では、長編を同時には書けないので・・・。(涙)

> 続きも楽しみにしています(^^)
ありがとうございます。(/_;)

Re: か****様へ

か****様

こんにちはぁ。
小悪党、ここに来て、突然、見た目を説明すると言う・・・。
(この話で思いついたことだ、というのは、内緒。w)
ヨンスルへの応援、ありがとうございます。

欠乏症に関しては・・・
メールください!語り合いましょう!ww

> ٩(╬ʘ益ʘ╬)۶ ← か、か****さんの怒りが伝わる。
安定の顔文字、ありがとうございます。か****さんの顔文字、最高!ww

Re: ふにゃん様へ

ふにゃん様

もう臣下3人組は外せませんよね。
イ・ガクは3人とパッカのことを話しながら、記憶を留めようとしてたのではないかなぁ、なんて。

> ヨンスルにとっては、テヨンもチョハも同一人物みたいなのかしら?
どうでしょう?同じであって違う、違うようでいて同じ、って感じですかね。
他の2人もそうだと思うのですが、イ・ガクへの忠誠が大前提ではあると思います。

> 私もイ・ガクに会いたくなりました…(T_T)
はい、そうですよね。分かります。私もです。
今、短編を書いてるのですが、うまくまとまらず・・・(苦笑)
本編は止まるわ、短編もまとまらんわ、涙もんです。(キリン化必至でごめんなさい。汗)

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Re: t*******様へ

t*******様

お忙しかったんですね。
どうかされたかしらと気にしておりました。(あ、コメントの催促をしてるつもりは、ないんですよ。汗)
なんせ、ムラっ気の強い更新体制なので、ご迷惑おかけします。<m(__)m>
でも、来てくれて嬉しいです!

t*******さんの仰ること、同感です。
なんたって身体張ってますからねぇ。1番に危険に飛び込むのは、どうしたって彼になりますし・・・
何より、パク・ハを譲った(?)(と言うと語弊がありますかね。)

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Re: t*********0様へ

t*********0様

コメントありがとうございます。
旦那への気遣いも感謝、です。

皆さん、イ・ガクに会いたいんですね。そうですよね。
(うーむ、いつUP 出来るかしら・・・)

ユチョンの「最愛」いいですよね!
そう、イ・ガクとパク・ハの姿に重なってしまって切ないんですよ。(/_;)
また、ユチョンの歌い方も切ないもんだから・・・悶えます。

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Re: F****様へ

F****様

ドラマでの現代のヨンスル。確かにあのおとぼけ振りはかわいかったですよね。w
悪人を伸していく姿が恰好いい!ギャップがかわいいです。
映像を妄想して頂けるような活躍振りを描けるといいのですが・・・こんな私に期待してくださるそのお言葉に励まされて、やる気が出てきますよ!
ありがとうございます。
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