「長編(連載中)」
生まれ変わっても -朝鮮編-
生まれ変わっても 53
男たちは辺りを警戒しながら先を急ぐ。
小さな路地を右に左に曲がりながら、足早に歩いて行く。
ヨンスルも己の気配を殺しながら、男たちの後を追った。
随分と入り組んだ小路を進んで来た。男たちは、小さな家に入って行った。
ヨンスルは壁際に身をひそめ中を窺う。
ガタン、と大きな音がして扉が開いた。
男の一人が、乱暴に中から人を引きずり出そうとしている。
笠を被った初老の両班が、縄を掛けられ目隠しをされていた。口にはさるぐつわ。
拘束をされている者は、呻き声を上げながら必死の抵抗を試みている。
「じじい!静かにしろ!離してやるから、おとなしくしないか!」
離してやる、などと言われても、信じられるはずもない。
両班は暴れ続ける。
別の男が、両班のみぞおちに拳を打ち込んだ。
鈍い音がして、両班の口からくぐもった声が漏れる。そのままどさりと頽(くずお)れた。
「手間、かけさせやがって。・・・行くぞ!」
もう一人の男が荷車を押してきて、両班をその荷台に乗せた。上から蓆(むしろ)を被せてその姿を隠す。
どこへ連れて行こうと言うのだ?
がらがらと動き出した荷車を、ヨンスルが追う。
家々の間を抜けて、辺りの佇まいがだんだんと寂しくなってきた。
民家のある集落を離れて山道へ分け入っていく。
突然、荷車を止めた。
そのままそこへ捨て置いて、男たちは今来た道を去って行ってしまった。
なんと、ずさんな・・・。
まさか、ご丁寧に住まいまで送り届けるだろう、などとは思いもしなかったが、気絶させたまま、縄もさるぐつわも解かずに、山中に捨て置くとは。
チョハは、殺しはしない、と仰られてはいたが・・・。
ヨンスルが後をつけていなければ、ソ・ヒョンドクの命も危なかったかも知れない。
カン・ヨンチョルは、自らの保身にさえも慎重ではないらしい。
呆れ果てて言葉も出ない。
男たちが遠ざかったのを確認し、ヨンスルは荷車に駆け寄った。
蓆(むしろ)を捲って、両班を抱え起こす。
「しっかりなさってください!ソ堤調!」
口にかませてあったさるぐつわを外し、縄を刀で切ってやる。
後ろから両肩を持ち、ぐっと引いた。
ソ・ヒョンドクはうっと呻いて目を開けた。上体を折り曲げながらゲホゲホと咳をする。
胸を撫でながら、息を整え、ヨンスルを見上げた。
「私をどうする気だ!」
ぜいぜいと息をしながらヨンスルを睨みつける。
「チョハのご命令にて、お助けに参りました。」
ヨンスルは頭を下げた。
「チョハ?・・・チョハはご無事であられるのか?」
ヒョンドクは大きく目を見開いた。
「はい。ご健勝にて、今は宮殿におられます。」
アイゴー。ヒョンドクは天を仰ぎ、安堵の声を上げた。
「失礼した。そなたは、チョハ付きの?」
ヨンスルの顔に見覚えがあった。視察に訪れた王世子に付き従っていた供人の一人に違いない。
「世子翊衛司(*)(セジャイギサ)の翊賛(イクチャン)、ウ・ヨンスルと申します。」
ヨンスルは再度頭を下げた。
「ソ堤調、健康に問題はあられませぬか?明日の早朝には、早速、宮殿に参内頂かなければなりませぬ。」
「宮殿に?」
「はい。チョハのご命令です。」
役者は揃った。
テヨンは朝議の準備を粛々と進めている。
総ては、朝鮮で成すべきことを果たすため。
_____________
(*)世子翊衛司‐‐‐(セジャイギサ)世子の護衛を司る官庁
小さな路地を右に左に曲がりながら、足早に歩いて行く。
ヨンスルも己の気配を殺しながら、男たちの後を追った。
随分と入り組んだ小路を進んで来た。男たちは、小さな家に入って行った。
ヨンスルは壁際に身をひそめ中を窺う。
ガタン、と大きな音がして扉が開いた。
男の一人が、乱暴に中から人を引きずり出そうとしている。
笠を被った初老の両班が、縄を掛けられ目隠しをされていた。口にはさるぐつわ。
拘束をされている者は、呻き声を上げながら必死の抵抗を試みている。
「じじい!静かにしろ!離してやるから、おとなしくしないか!」
離してやる、などと言われても、信じられるはずもない。
両班は暴れ続ける。
別の男が、両班のみぞおちに拳を打ち込んだ。
鈍い音がして、両班の口からくぐもった声が漏れる。そのままどさりと頽(くずお)れた。
「手間、かけさせやがって。・・・行くぞ!」
もう一人の男が荷車を押してきて、両班をその荷台に乗せた。上から蓆(むしろ)を被せてその姿を隠す。
どこへ連れて行こうと言うのだ?
がらがらと動き出した荷車を、ヨンスルが追う。
家々の間を抜けて、辺りの佇まいがだんだんと寂しくなってきた。
民家のある集落を離れて山道へ分け入っていく。
突然、荷車を止めた。
そのままそこへ捨て置いて、男たちは今来た道を去って行ってしまった。
なんと、ずさんな・・・。
まさか、ご丁寧に住まいまで送り届けるだろう、などとは思いもしなかったが、気絶させたまま、縄もさるぐつわも解かずに、山中に捨て置くとは。
チョハは、殺しはしない、と仰られてはいたが・・・。
ヨンスルが後をつけていなければ、ソ・ヒョンドクの命も危なかったかも知れない。
カン・ヨンチョルは、自らの保身にさえも慎重ではないらしい。
呆れ果てて言葉も出ない。
男たちが遠ざかったのを確認し、ヨンスルは荷車に駆け寄った。
蓆(むしろ)を捲って、両班を抱え起こす。
「しっかりなさってください!ソ堤調!」
口にかませてあったさるぐつわを外し、縄を刀で切ってやる。
後ろから両肩を持ち、ぐっと引いた。
ソ・ヒョンドクはうっと呻いて目を開けた。上体を折り曲げながらゲホゲホと咳をする。
胸を撫でながら、息を整え、ヨンスルを見上げた。
「私をどうする気だ!」
ぜいぜいと息をしながらヨンスルを睨みつける。
「チョハのご命令にて、お助けに参りました。」
ヨンスルは頭を下げた。
「チョハ?・・・チョハはご無事であられるのか?」
ヒョンドクは大きく目を見開いた。
「はい。ご健勝にて、今は宮殿におられます。」
アイゴー。ヒョンドクは天を仰ぎ、安堵の声を上げた。
「失礼した。そなたは、チョハ付きの?」
ヨンスルの顔に見覚えがあった。視察に訪れた王世子に付き従っていた供人の一人に違いない。
「世子翊衛司(*)(セジャイギサ)の翊賛(イクチャン)、ウ・ヨンスルと申します。」
ヨンスルは再度頭を下げた。
「ソ堤調、健康に問題はあられませぬか?明日の早朝には、早速、宮殿に参内頂かなければなりませぬ。」
「宮殿に?」
「はい。チョハのご命令です。」
役者は揃った。
テヨンは朝議の準備を粛々と進めている。
総ては、朝鮮で成すべきことを果たすため。
_____________
(*)世子翊衛司‐‐‐(セジャイギサ)世子の護衛を司る官庁
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~ Comment ~
Re: t*******様へ
t*******様
きちんとコメ入ってましたよ。
公開設定になってますが公開(承認)しない方がいいんですかね?
つくづくソウルのパッカが心配ですよね。(>_<) すみません。
そうなんです。イ・ガクの方も心配。テヨンの時みたいに点滴なんてありませんからね。
テヨンが存在するための措置として、イ・ガクの身体は神様が守ってくれてるってことで・・・。(苦笑)
前世ではなく祖先ですかぁ。でも、それいいですよね。苗字が一緒で面差しもどことなく似てて気づくとか。w
・・・頂き。(ぼそり)
テヨンへの応援、感謝であります。<m(__)m>
きちんとコメ入ってましたよ。
公開設定になってますが公開(承認)しない方がいいんですかね?
つくづくソウルのパッカが心配ですよね。(>_<) すみません。
そうなんです。イ・ガクの方も心配。テヨンの時みたいに点滴なんてありませんからね。
テヨンが存在するための措置として、イ・ガクの身体は神様が守ってくれてるってことで・・・。(苦笑)
前世ではなく祖先ですかぁ。でも、それいいですよね。苗字が一緒で面差しもどことなく似てて気づくとか。w
・・・頂き。(ぼそり)
テヨンへの応援、感謝であります。<m(__)m>
いよいよ…(^^)
更新ありがとうございます!
役者、揃いましたね!
いよいよ、物語も佳境ですか?(^^)
嬉しいような、寂しいような……。
でも聡明なテヨンがこれからどう解決に導くのか、そしてこれだけ長い間離れていたパッカと再会するところが、今から待ち遠しくて仕方ありません(^^)
イガクの方は心配ですが、「記憶」の方で会えるのでとりあえずほっとして……。(そういう問題じゃないですね。笑)
続きも楽しみにしております(^^)
ご無理ないよう、更新を続けて下さい。
役者、揃いましたね!
いよいよ、物語も佳境ですか?(^^)
嬉しいような、寂しいような……。
でも聡明なテヨンがこれからどう解決に導くのか、そしてこれだけ長い間離れていたパッカと再会するところが、今から待ち遠しくて仕方ありません(^^)
イガクの方は心配ですが、「記憶」の方で会えるのでとりあえずほっとして……。(そういう問題じゃないですね。笑)
続きも楽しみにしております(^^)
ご無理ないよう、更新を続けて下さい。
- #666 kaya
- URL
- 2015.06/09 15:55
- ▲EntryTop
Re: いよいよ…(^^) kaya様へ
kaya様
こちらこそ、ありがとうございます。
> いよいよ、物語も佳境ですか?(^^)
うーむ、大丈夫か、私?って感じです。(汗)
> でも聡明なテヨンがこれからどう解決に導くのか、そしてこれだけ長い間離れていたパッカと再会するところが、今から待ち遠しくて仕方ありません(^^)
ますます、大丈夫か、私?ですね。(滝汗)
> 続きも楽しみにしております(^^)
「お話は生きている」が持論な私。心を無にしてペンを握り、テヨンが下りてくるのを待つことにします。(笑)
> ご無理ないよう、更新を続けて下さい。
はい。無理はしません。(キリっ)なので、皆さん、キリンです!(← おいっ!)
こちらこそ、ありがとうございます。
> いよいよ、物語も佳境ですか?(^^)
うーむ、大丈夫か、私?って感じです。(汗)
> でも聡明なテヨンがこれからどう解決に導くのか、そしてこれだけ長い間離れていたパッカと再会するところが、今から待ち遠しくて仕方ありません(^^)
ますます、大丈夫か、私?ですね。(滝汗)
> 続きも楽しみにしております(^^)
「お話は生きている」が持論な私。心を無にしてペンを握り、テヨンが下りてくるのを待つことにします。(笑)
> ご無理ないよう、更新を続けて下さい。
はい。無理はしません。(キリっ)なので、皆さん、キリンです!(← おいっ!)
Re: 24963番目だった_| ̄|○ガックリ・・ か****様へ
か****様
24963でしたか。6/10 14:45現在、24990であと10人!
告知記事をUPして24時間を待たずに25000に達しそうな勢いですね。
私の告知が遅すぎたので、何も知らずに覗いたら一足早かった、とか、遅かった、とかになっちゃいますよね。(汗)
どうぞ、26002を狙ってくださいませ。<m(__)m>
末っ子ちゃんも風邪ひいちゃいましたかぁ。大変だあ。
うちの旦那は元気を取り戻しつつあります。お気遣いに感謝!
目隠しに、縄に、口も塞いで、放置プレイって・・・思わず、吹いちゃいましたよ。
(書けってことでしょうか?ww)
お陰様で早1年。ほんとにありがとうございます。
こちらこそ、今後ともヨロシクお願いいたします。<m(__)m>
24963でしたか。6/10 14:45現在、24990であと10人!
告知記事をUPして24時間を待たずに25000に達しそうな勢いですね。
私の告知が遅すぎたので、何も知らずに覗いたら一足早かった、とか、遅かった、とかになっちゃいますよね。(汗)
どうぞ、26002を狙ってくださいませ。<m(__)m>
末っ子ちゃんも風邪ひいちゃいましたかぁ。大変だあ。
うちの旦那は元気を取り戻しつつあります。お気遣いに感謝!
目隠しに、縄に、口も塞いで、放置プレイって・・・思わず、吹いちゃいましたよ。
(書けってことでしょうか?ww)
お陰様で早1年。ほんとにありがとうございます。
こちらこそ、今後ともヨロシクお願いいたします。<m(__)m>
Re: F****様へ
F****様
役に立ってないなど!とんでもない!!
その応援が、私の妄想脳に栄養を注いでくれるのです!
ありがとうございます。
ただ、ちょっと叫んでいいですか?
朝鮮時代、もう、分け分かんない!なんで、テヨンもイ・ガクも朝鮮時代?!
失礼しましたぁ。
あの、F****さん、その瞬間を見るためだけ、だったのですか?
いや、なんか、申し訳ないやら、嬉しいやら。(/_;)
狙ってくださるのも嬉しいですが、その瞬間のドキドキを共有してくださって、嬉しい!!
日曜日の昼ごろになりそう、って私も思ったので、その瞬間に立ち会えないかも、って思ってたんですが
私自身その瞬間を目撃できて、同じように見守ってくださってたなんて、感激です!
ありがとうございます。(/_;)
役に立ってないなど!とんでもない!!
その応援が、私の妄想脳に栄養を注いでくれるのです!
ありがとうございます。
ただ、ちょっと叫んでいいですか?
朝鮮時代、もう、分け分かんない!なんで、テヨンもイ・ガクも朝鮮時代?!
失礼しましたぁ。
あの、F****さん、その瞬間を見るためだけ、だったのですか?
いや、なんか、申し訳ないやら、嬉しいやら。(/_;)
狙ってくださるのも嬉しいですが、その瞬間のドキドキを共有してくださって、嬉しい!!
日曜日の昼ごろになりそう、って私も思ったので、その瞬間に立ち会えないかも、って思ってたんですが
私自身その瞬間を目撃できて、同じように見守ってくださってたなんて、感激です!
ありがとうございます。(/_;)
Re: パスワード申請します n*****様へ
n*****様
先程パスワードをお送りしました。
ご確認くださいませ。
先程パスワードをお送りしました。
ご確認くださいませ。
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