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「短編集」
リクエスト

男なら・・・

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パスの掛かった限定記事で公開していたものをパス解除したものですので、すでにお読みの方もおられると思います。
リクに応えられてるのか甚だ怪しいのでパス付で公開していましたが

時間も経ったことですし・・・全公開です。



こちらはアクセスカウンターが25,000 を達成した時、
その瞬間に立ち会ってくださった読者様から頂いたリクエスト(に応えたつもり)で書いたものです。

いや、もう、ホントにリクに応えられてるのかは、甚だ怪しいですが・・・

それでもよろしかったら、読んでやってください。

____________

良く晴れた日曜日。
「パク・ハの甘々ジュース」は大繁盛。

テヨンさん!次、パイン切って。
うん。
ああ、レモンが無いわ。買って来てくれない?
いいよ、行ってくる。

入れ替わり、立ち代わり、客がやって来ては好みのジュースを注文していく。
パク・ハが、いらっしゃいませ、ありがとうございます、と笑顔で応対する隣で、エプロン姿のテヨンもまた、客に笑顔を振りまいていた。

男性客はパク・ハを、女性客はテヨンを、それぞれちらちらと見ながらストローを咥える。


夜、店終いをし、レジの集計をした。

「テヨンさんのお蔭で、今日の売り上げは2割増しよ。」

パク・ハはにこにことして言った。
レジから紙幣を何枚か抜き取るとテヨンの手に握らせようとする。

「パッカ、いいよ。受け取れない。」

彼は両手をぶんぶんと振りながら背中を反らせた。
パク・ハはテヨンの手を捕まえ直すと、改めてその手に紙幣を押し付ける。

「何、言ってるの!自分の仕事を放っておいて手伝ってくれたんだから、ね?」

「そんな!仕事って言ったって・・・こんなに稼げないよ、僕は。」

テヨンは情けなさそうに俯く。

「だって、今日はここでテヨンさんが稼いだのよ。だから、顔を上げて、ね?」

テヨンは顔を上げ、パク・ハの笑顔に釣られて笑った。

「ありがとう。お蔭で、画材が買えるよ。」


テヨンは目覚めてパク・ハに出会った。必然のように惹かれあい、出会ってすぐに恋人関係になった。

しかし、テヨンはパク・ハに申し訳なくて仕方ない。
祖母の会社に後継者として迎え入れられたものの、ビジネスにも経営にも面白みを感じなかった。
暇さえあれば絵を描いて過ごす彼に、とうとう社長も堪忍袋の緒を切った。

本当に絵で食っていけると言うのなら、やってみろ!

大叔母ソリと結婚し、父親同然になっていたピョ社長に実家を追い出された。

今はパク・ハの住む屋根部屋に転がり込んで、繁華街で似顔絵を描いては売っている。
この屋根部屋は元々テヨンさんの物だから、とパク・ハはテヨンを快く迎え入れてくれた。

確かに屋根部屋の名義は自分かも知れない。実家の邸だって名義だけは自分だし、自分名義の預金口座も株式も、その他いろいろ、財産は持っている。
大叔父テクスに、それらの財産を勝手に使えないように手を廻されてしまった。
総て、祖母から引き継いだものであって、自分で稼いで得た物なんてありはしない。
いくらなんでも、祖母から受け継いだ財産を食いつぶすつもりはテヨンにも毛頭なかったが、実際のところ、絵を描くための画材だって、自分の稼ぎで買うこともできずにいる。

絵で食っていく。

自分一人でも食っていけないのに、結婚して家族を養うことなどできるはずがない。
テヨンは、パク・ハにプロポーズもできない、と自分が情けなくて仕方がなかった。


一方パク・ハも、どうしたものか、とテヨンの今後を憂えていた。

絵で食べていく。

才能があっても、ほんの一握りの人間しかそんなことできるはずもない。運も大きく作用することだろう。
まして、テヨンにその才能があるのかどうか、パク・ハには判断できずにいた。

ただ一つ分かっていること、テヨンには覚悟が足らない。
甘いのだ。

恵まれた財力で絵を学び、NYにも留学し、戻ってきて会社に入ったものの、仕事が面白くないと言う。
今のままでは、絵の才能も、ビジネスの才能も、それがあるのかどうかすら分からない。
そんな中途半端を、ピョ社長は心配したに違いない。

私がテヨンさんの為にできることって、何だろう?


店休日のある日。
パク・ハは屋根部屋で家事をこなしていた。

テヨンは、少しでも稼ぎたい、といつものアーケード街で「似顔絵描きます!」の看板を掲げて、声を掛けられるのを待っていた。じっと座って。
客の方からやって来るのを、ただ、じっと、待っている。

パク・ハは買い物の途中で、物陰からテヨンのことを見つめていたが、溜息をこぼしてその場を離れた。


やがて陽も傾き、テヨンが屋根部屋に帰ってきた。

「どうだった?テヨンさん。」

「・・・うん。1枚、売れたよ。」

彼は嬉しそうに微笑んだ。

平日で人通りも少ないし、似顔絵を描いてもらおうなんて人、なかなかいないんだけど、今日は1枚、描けた。

パク・ハも静かに微笑んだが、内心溜息を吐く。

そもそも、ただ座って客を待っているだけだなんて、やる気があるのか、ないのか・・・。

ピョ社長の気持ちも分からないではない。

食事を終え、リビングで二人、テレビを見ていた。
バラエティ番組で、タレントたちがけたたましく笑っている。
コーヒーを飲みながら、テヨンも楽しそうに笑っていた。
パク・ハは大して興味もなさそうに画面を見つめていたが、ある人物が登場するや、はっとして釘付けになった。

これだわ!
テヨンさんの為に、私も頑張らなきゃ!


翌朝、パク・ハはまだベットでまどろんでいるテヨンから布団を引き剥がした。

う、うーん。何?パッカ?まだ眠いよ。
もう、6時よ!起きて、支度をなさい!
え?いつも、7時まで寝かせてくれるじゃない?

テヨンは、布団を奪い返そうとその端を掴んだ。

それで?7時に起こして、私が出て行った後は、いつもどうしてるの?
朝ご飯食べて、着替えて、テレビ見て、9時ごろ出てるけど・・・。
今から朝ご飯を食べて、道具を準備したら、8時前にはいつものアーケード街に着くわよね?

テヨンはベッドの上に座り込んだまま目を見開く。

8時?まだお店も開いてなくて、人もあんまり歩いてないよ。
テヨンさん。少しでも稼ぎたいのよね?
え、そりゃあ、まあ。いつも君の世話になってばかりだし・・・。
どうやったら、私の世話にならずに済む?どうやって稼ぐ?
・・・1枚でも多く、描いて売る。
どうやったら、1枚でも多く売れると思う?
え、そりゃ、お客さんが来てくれたら・・・。

パク・ハは腰に手を当てて盛大に溜息を吐いた。

「ヤア!ヨン・テヨン!待ってるだけじゃ客は来ない!いい場所を陣取るとか、客層を調べるとか、少しは研究したらどうなのよ!ちょっとぐらい絵が上手いからって、そう簡単に売れるもんですか!」

さっさとご飯食べて、支度をなさい!

パク・ハの怒鳴り声に、テヨンはベッドを飛び降りた。


「今日は、何枚、売る?」

朝ご飯を食べながら、パク・ハはテヨンに詰め寄った。

え?・・・平日だし・・・昨日は1枚、売れたけど・・・今日は・・・。
情けないこと言ってんじゃないわよ!男でしょ!目標ぐらい持ちなさいよ!
・・・じゃあ、1枚?
はあぁ?たった1枚売ったって一人分の食事代にもなんないでしょ!
はい。すみません。
謝ってないで、何枚、売るか、決めなさい!
は、はい。じゃあ、3枚で・・。
・・・3枚ね?まあ、いいわ。頑張んなさい!
はい。頑張ります。



パク・ハはいつものように、にこやかに接客をしながらもテヨンのことが気になってしょうがない。

いきなり、厳しくし過ぎたかしら?
でも、テヨンさんの為・・・。


一方テヨンは、その日の朝、まだシャッターが開いてないアーケード街を歩きながらパク・ハの言葉を噛みしめていた。

パッカは急にどうしたんだろう?
やっぱり、稼げない僕は嫌われてしまったんだろうか?
・・・男として、情けないもんな。
でも、今日は3枚売るって約束したし・・・パッカに喜んでもらいたいし・・・

やがて、アーケード街の店々も徐々に開店し始めた。
毎日のようにここに来ていたのに、どんな店があるのか、どんな人が働いているのか、全くと言っていいほど知らなかった。もちろん、どんな人たちが買い物に来ているのかも知らない。

どうやって、似顔絵を3枚売るか?


少しは研究したらどうなのよ!


パク・ハの言葉通り、テヨンは辺りを観察し始めた。



夕刻、閉店間際のパク・ハの店のドアが勢いよく開いた。
カンッカラン、とけたたましく鐘もなる。

「パッカ!売れたよ!3枚売れたんだ!」

「ほんと?やったじゃない。目標達成よ!」

パク・ハはカウンターから出てくるとテヨンの腕の中に滑り込んだ。
テヨンが彼女にキスをしようとした瞬間、ハッとしたように自ら飛び込んだはずの彼の腕の中から逃れたパク・ハ。
肩透かしを喰らって、テヨンは彼女の名を呼んだ。

「パッカ?」

「・・・ダメ。もっと売れたら、キスしてもいいわ。・・・その代り、今夜はオムライスにしてあげるから。」

オムライスよりも・・・。
キスがダメなら、当然、それ以上もダメってこと?・・・だよな。
稼ぎがないんじゃ、仕方ない、か。


それからというもの、テヨンは似顔絵をコンスタントに売ってくるようになる。
週末ともなれば、人だかりができるまでになった。
画材も自分で買えるようになったし、デート代も払えるようになった。


パク・ハに褒められたり、すかされたり、時には怒鳴られたり・・・


テヨンの為の、彼女の決意。それは・・・


私は鬼嫁になる!!


彼女がテレビの画面を通じて出会った人物。それは、鬼嫁として人気を博する"北斗晶"であったのだ。


パク・ハの決意の甲斐あって、テヨンは、そのアーケード街でもちょっとした有名人になっていた。イケメン似顔絵描きとして。
まだまだ、その稼ぎはパク・ハのそれに及ばなかったけれど、テヨンは彼女にプロポーズをし、パク・ハは喜びの涙を流した。


屋根部屋では、パク・ハの声が響かない日はない。
昼はテヨンをどやす声。
夜は・・・。

稼ぎの少ない僕なんて、"男として"パッカを悦ばせる以外に、ここに存在している価値がないだろう?

今夜もテヨンに真心こめて愛されて、パク・ハの悦びの声が響いている。
____________

リクエストをお寄せくださった か****様 ありがとうございました。
こんなんなって・・・すみません。

えーっ、リクエストの内容は「ヘタレなテヨン」ではなくて

幾つかリクを頂いた中から「テヨンが御曹司ではなくて貧乏だったら」で書いてみたわけですが、
御曹司設定はそのままにしちゃったもので、テヨンがえらいヘタレになってしまいまして・・・
「パク・ハの性格が"北斗晶"のような鬼嫁だったら」も付け加えてみることにしました。



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