「コラボレーション」
ヨン家の嫁
ヨン家の嫁 ~政略結婚?~
【コラボレーション】
「ヨン家の嫁」「友情の証」は下記の順番でお読みください。
【statice →ヨン家の嫁 →友情の証 →世間の目 (→小話) →聞きたかった事 →政略結婚?
←今ここ
】
_____________
携帯電話の着信音が鳴り響いた。
思いもかけず『ジョイ・ルー』に
『スターチスの彼女』と呼んでいたスヨンに、ドレスのデザインをしてもらうということがほぼ決定したあの日から三日。
再度ベルスを訪れて、テヨンの承諾を得たことを伝えよう、とパク・ハは出かける準備をしていた。
画面を覗き込めば、テヨンからの着信だった。
「もしもし。」
「パッカ。僕だよ。今、いい?」
「ええ。」
「大叔母様から電話があってさ。婚約式の会場の打ち合わせ・・・今日したいって。
・・・また、僕、行けそうにないんだけど・・・。」
電話の向こう、テヨンが申し訳なさそうに言った。
「仕方ないわよ、忙しいんでしょ?」
「うん、ホントにごめん。・・・大叔母様も突然なんだもんな、せめて昨日のうちに連絡くれればいいのに。」
ぶつぶつとぼやくテヨンにくすくすと笑いながら、パク・ハが言う。
「前日に言われてても難しいんじゃないの?」
「いや、分かってたら、うまく部下に押し付けるよ。」
そんなこと言って、本当はきちんと自分で仕事をこなして、どうにか時間を空けていることをパク・ハは知っている。
それが証拠に、三日前顔を見たのを最後に彼は屋根部屋には“帰って”来ていない。
実家であるヨン家の邸にも帰れずにいるらしい。
車で数十分の移動も惜しむぐらい忙しく働いて、会社の近くのホテルから通っているらしいのだ。
部下に仕事を押し付けることが可能なら、そんなことはしないだろう。
「おば様には上手く言っておくわ。ただ・・・。」
自分の結婚の準備なのに、仕事なんて放っておけばいいんだわ、とソリはいつもぶつぶつ言っていた。
婚約者をどう思ってんのかしら!とパク・ハを気遣っているようなのだが、その実、ソリ自身を構おうともしないで、やはり忙しく働いているピョ社長にも文句を言いたい、というのがソリの本音である。
パク・ハはいつもそんな大叔母を宥めていた。
「ただ?・・・何?」
パク・ハの言葉の最後は小声だったが、テヨンには届いていた。
「テヨンさん、身体、壊さないでよ?」
「ああ、ありがとう。大丈夫だよ。・・・君との婚約式を終えるまでは倒れられない!」
語気を強めるテヨンのことが可笑しくなってくる。
「婚約式を終えたら、倒れるの?・・・困るわ。」
「倒れない!ちゃんと結婚するまで、倒れないよ!」
思わずパク・ハは吹き出した。それでは、結婚した途端に倒れる、と言っているように聞こえる。
「笑うなんて、酷いな。僕がどんな思いで仕事してると思ってるの?」
「分かってるわよ。ごめんなさい。・・・分かってるから、もう仕事に戻ってよ。」
笑い続けるパク・ハに、テヨンは、もう、やってらんないよ、とぼやきながらも仕事に戻ると言った。
じゃあ、と言うパク・ハにさらりと、愛してるよ、と告げて電話を切る。
耳元で囁かれた甘い言葉に思わず赤面してしまう。
あんぽんたん。・・・気障なんだから・・・。
ソリとは婚約式の会場となるホテルで待ち合わせることにした。
その前にベルスに寄って行くことにして。
ベルスのガラス戸を押し開けるとまるで示し合わせたように、そこにスヨンがいた。
彼女はパク・ハの訪れを喜んでくれ、自身の作業部屋へと案内してくれた。
「・・・わあ!!」
パク・ハは思わずその部屋をぐるりと見廻す。
壁際の棚には色とりどりの糸。これまた様々な色、素材の小さな布の数々は、デザインする為の見本だろうか。
作業台と思しきテーブルの上には、如何にもプロ仕様のミシン、尺の長いものさし、巻尺と言った道具たち。
デザイン画が壁に貼り付けられ、お洒落な靴もディスプレイされている。
可愛らしい服を纏っているマネキンもあれば、何も着せられていないマネキンも。
如何にもデザイナーの作業部屋といった様子の、その部屋。
そこは言わば、スヨンのパーソナルスペースのように思われた。
彼女の心の中に少し踏み込ませてくれている。
そんな気がして、パク・ハはなんだか嬉しくなってくる。
凄い!デザイナーさんの作業部屋だ、と感嘆の声を上げ喜ぶパク・ハに、散らかっているだけですよ、と笑うスヨン。
コーヒーを淹れて来ます、とスヨンが部屋を出た。
作業台の上、無造作に置かれたデザイン画がパク・ハの目に留まる。
え?これって・・・ウェディングドレス?
このタイミングで、このデザイン画。もしかしなくてもパク・ハのためのデザインだろう。
婚約式用のドレスだけのつもりだったのに・・・。
いいのかしら?
でも
・・・嬉しい。
思わず手に取り、食い入るように見つめる。
そこへスヨンがコーヒーを手に戻って来た。
「・・・スヨンさん・・・これ・・・。」
彼女を振り向いてパク・ハが問いかけるのへ、スヨンが遠慮がちに口を開く。
「・・・あ。・・・勝手に描いてしまってごめんなさい。
でもなんだかイメージが膨らんでしまって・・・。って言ってもまだまだドレスのラインぐらいしか描いてないけれど。細かい場所はこれから・・・。」
スヨンの様子からして、自分のためにデザインしてくれたらしいのは明らかだ。
「すごく素敵です!!今まで見たどのドレスよりも素敵だわ。
やっぱりスヨンさんにお願いして良かった!」
笑顔のパク・ハに、スヨンもホッとしたように微笑んだ。
「気に入ってもらえて嬉しいです。あ、でも婚約者の方は?良いって言ってくれました?」
「もちろん!彼もすごく喜んでましたよ。“ジョイ・ルー”にデザインしてもらうなんて凄いって。
・・・ただ。」
「・・・ただ?」
スヨンに勧められるまま椅子に腰かける。そこでパク・ハはおもむろに口を開いた。
テヨンから聞かされた「ホーム&ショッピング」と「ベルス」の契約についての話をスヨンに告げる。
スヨンもその辺のことはオーナーから聞かされていたようで、デザイナーの自分は疎いのだと言って肩を竦めた。
テヨンは、今回の件をビジネスに結びつける気はないが、交渉に応じてくれると言うのなら喜んでその席を設けたいと言っていた。
そのことも伝えて、パク・ハは、自分もそう言う話は苦手だと、ペロッと舌を出して苦笑する。
「・・・あ、あの・・・。パク・ハさん。」
スヨンが、おずおずと躊躇いがちにパク・ハの名を呼んだ。
「・・・?なんですか?」
パク・ハはキョトンとしている。
「婚約者の方は・・・その。どんな方なんですか?」
え?
どんな方?・・・どんな方って・・・どんな方、だろ?
パク・ハには突然、虚を突かれるような質問だった。
恋人が・・・婚約者が「どんな方」か、なんて正面切って聞かれたことが無かったのだ。・・・今まで。
『恋人居るんでしょ?どんな人?』
ジュースショップを訪れる客になら、世間話のついでによく聞かれる。
『私の恋人ですよ?もちろん、素敵な人に決まってるじゃないですか!』
笑いながら、冗談めかして、軽口をたたいたことなら何度だってある。
今のスヨンの問いかけは・・・世間話のついで、話題作り、の類ではないはずだ。
見た目?のことじゃないわよね?「どんな方」か、って。
パク・ハの沈黙を何と思ってか、スヨンの表情が曇っていく。
「あの、言いたくないなら・・・。」
「あ、ごめんなさい。そうじゃないの。・・・そういう質問、初めてで・・・。」
結婚が決まっていて、婚約式をしようとしていて、「婚約者がどんな方」か、と質問をされたことが無いと言う方が、珍しんじゃないかと思う。
私、なんで、そういう場面に出会 さなかったのかしら・・・?
あらぬ方向に思考が飛んで、思わず考え込むパク・ハ。
対するスヨンは、拙いことを尋ねてしまったとばかりに視線を彷徨わせていた。
「ああ!」
突然パク・ハが声を上げて弾かれたように顔を上げた。
スヨンは驚いてパク・ハを凝視している。
いつもおば様が一緒で・・・テヨンさんが仕事で忙しくしてることや・・・その・・・彼が私をどんなに愛してるかってことを、大袈裟なぐらいにしゃべり続けてて・・・今まで行ったブティックでも、ドレスの専門店でも、ホテルの会場係の人にさえ、「婚約者がどんな方」か、なんて尋ねられる隙がなかったんだ!
わあ・・・なんか、新鮮!
婚約者の方はどんな方?
テヨンさんて・・・どんな人かな?
300年もの間、私への愛を守り抜いてくれた、辛抱強い人です。・・・って、それは言えないか。
はにかんだ笑顔が可愛いの。・・・も、ちょっとこの場には相応しくないかな。
すごく仕事ができて、誰よりも会社に貢献してる。・・・ビジネスを意識させちゃうわね。
考えに考えて
「えっと・・・優しい人、かな?」
照れながら、やっとそれだけ言った。ああ、もっと気の利いた言い方あるでしょうに・・・と思いながら。
ややあって、スヨンは申し訳なさそうに、でも、心底心配そうに・・・
どうしようと迷う風で、でも、勇気を振り絞ってというように、ようよう掠れた声でパク・ハに問いかける。
「パク・ハさん。・・・すみません。本当にこの結婚・・・望んでるんですか?」
「え?・・・どうして・・・。」
「だって・・・政略・・・。」
「ああ・・・うふふ、そうね、私たち、政略結婚なの。」
飛び切りの笑顔でそう言うパク・ハにスヨンは驚きを隠せない。
「つい、この間、そうなんだって彼に教えられたの。・・・話せば長くなるけれど・・・。」
私と、彼、ヨン・テヨンさんって言うんだけど・・・出会いがちょっと変わっててね。
最初に会ったのはニュー・ヨークなんだけど、その、色々あって・・・
随分経ってからソウルで再会したの。
彼はビジネスには全く興味が無くて、だから、ニューヨークに居て・・・私も実の母の生死さえ知らなかった。
彼はソウルに戻って会社を継ぐ決意をしたんだけど・・・
それから、私達、出会って、恋に堕ちて、その・・・永遠の愛を誓い合って・・・
気付いたら、政略結婚だと噂されるような境遇だったのよ。
私なんて、そんな風に噂されてるって知ったの三日前よ?
パク・ハは、自分で自分に呆れるわ、と笑っている。
でもね、私がいくら彼を想っていても、何の役にも立てない、って思う時があって・・・。
母の娘であったことは全くの偶然だけれど、その境遇がテヨンさんの為になるのなら・・・政略結婚で良かったって思ってる。
私を・・・って言うより、私の母を恐れて、テヨンさんの敵になりたがる人は減ったそうよ。
まあ、でも・・・彼なら自力でどんな状況でも乗り越えちゃうとは思うけど、ね。
最後はテヨンの有能振りを自慢するような言葉を上せて、片目を瞑ってみせた。
「スヨンさんの方は?」
「え?」
「スヨンさんの恋人は、どんな方なんですか?」
パク・ハは悪戯っぽく笑っている。
___________
思ったより長くなってしまいました。・・・その割には、時間が進んでない!
(会場の打ち合わせのいきさつが長すぎるんだよなぁ。ええ、分かってるんですけどね。
)
テヨンが契約がらみでベルスを訪れるのはいつになるのだろうか・・・(苦笑)
パク・ハ、何気に「永遠の愛を誓った」とか言ってますが
スヨンさんにも「恋人はどんな方」か語ってもらいましょう。
kayaさん!よろしく、ネ!
「ヨン家の嫁」「友情の証」は下記の順番でお読みください。
【statice →ヨン家の嫁 →友情の証 →世間の目 (→小話) →聞きたかった事 →政略結婚?


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携帯電話の着信音が鳴り響いた。
思いもかけず『ジョイ・ルー』に
『スターチスの彼女』と呼んでいたスヨンに、ドレスのデザインをしてもらうということがほぼ決定したあの日から三日。
再度ベルスを訪れて、テヨンの承諾を得たことを伝えよう、とパク・ハは出かける準備をしていた。
画面を覗き込めば、テヨンからの着信だった。
「もしもし。」
「パッカ。僕だよ。今、いい?」
「ええ。」
「大叔母様から電話があってさ。婚約式の会場の打ち合わせ・・・今日したいって。
・・・また、僕、行けそうにないんだけど・・・。」
電話の向こう、テヨンが申し訳なさそうに言った。
「仕方ないわよ、忙しいんでしょ?」
「うん、ホントにごめん。・・・大叔母様も突然なんだもんな、せめて昨日のうちに連絡くれればいいのに。」
ぶつぶつとぼやくテヨンにくすくすと笑いながら、パク・ハが言う。
「前日に言われてても難しいんじゃないの?」
「いや、分かってたら、うまく部下に押し付けるよ。」
そんなこと言って、本当はきちんと自分で仕事をこなして、どうにか時間を空けていることをパク・ハは知っている。
それが証拠に、三日前顔を見たのを最後に彼は屋根部屋には“帰って”来ていない。
実家であるヨン家の邸にも帰れずにいるらしい。
車で数十分の移動も惜しむぐらい忙しく働いて、会社の近くのホテルから通っているらしいのだ。
部下に仕事を押し付けることが可能なら、そんなことはしないだろう。
「おば様には上手く言っておくわ。ただ・・・。」
自分の結婚の準備なのに、仕事なんて放っておけばいいんだわ、とソリはいつもぶつぶつ言っていた。
婚約者をどう思ってんのかしら!とパク・ハを気遣っているようなのだが、その実、ソリ自身を構おうともしないで、やはり忙しく働いているピョ社長にも文句を言いたい、というのがソリの本音である。
パク・ハはいつもそんな大叔母を宥めていた。
「ただ?・・・何?」
パク・ハの言葉の最後は小声だったが、テヨンには届いていた。
「テヨンさん、身体、壊さないでよ?」
「ああ、ありがとう。大丈夫だよ。・・・君との婚約式を終えるまでは倒れられない!」
語気を強めるテヨンのことが可笑しくなってくる。
「婚約式を終えたら、倒れるの?・・・困るわ。」
「倒れない!ちゃんと結婚するまで、倒れないよ!」
思わずパク・ハは吹き出した。それでは、結婚した途端に倒れる、と言っているように聞こえる。
「笑うなんて、酷いな。僕がどんな思いで仕事してると思ってるの?」
「分かってるわよ。ごめんなさい。・・・分かってるから、もう仕事に戻ってよ。」
笑い続けるパク・ハに、テヨンは、もう、やってらんないよ、とぼやきながらも仕事に戻ると言った。
じゃあ、と言うパク・ハにさらりと、愛してるよ、と告げて電話を切る。
耳元で囁かれた甘い言葉に思わず赤面してしまう。
あんぽんたん。・・・気障なんだから・・・。
ソリとは婚約式の会場となるホテルで待ち合わせることにした。
その前にベルスに寄って行くことにして。
ベルスのガラス戸を押し開けるとまるで示し合わせたように、そこにスヨンがいた。
彼女はパク・ハの訪れを喜んでくれ、自身の作業部屋へと案内してくれた。
「・・・わあ!!」
パク・ハは思わずその部屋をぐるりと見廻す。
壁際の棚には色とりどりの糸。これまた様々な色、素材の小さな布の数々は、デザインする為の見本だろうか。
作業台と思しきテーブルの上には、如何にもプロ仕様のミシン、尺の長いものさし、巻尺と言った道具たち。
デザイン画が壁に貼り付けられ、お洒落な靴もディスプレイされている。
可愛らしい服を纏っているマネキンもあれば、何も着せられていないマネキンも。
如何にもデザイナーの作業部屋といった様子の、その部屋。
そこは言わば、スヨンのパーソナルスペースのように思われた。
彼女の心の中に少し踏み込ませてくれている。
そんな気がして、パク・ハはなんだか嬉しくなってくる。
凄い!デザイナーさんの作業部屋だ、と感嘆の声を上げ喜ぶパク・ハに、散らかっているだけですよ、と笑うスヨン。
コーヒーを淹れて来ます、とスヨンが部屋を出た。
作業台の上、無造作に置かれたデザイン画がパク・ハの目に留まる。
え?これって・・・ウェディングドレス?
このタイミングで、このデザイン画。もしかしなくてもパク・ハのためのデザインだろう。
婚約式用のドレスだけのつもりだったのに・・・。
いいのかしら?
でも
・・・嬉しい。
思わず手に取り、食い入るように見つめる。
そこへスヨンがコーヒーを手に戻って来た。
「・・・スヨンさん・・・これ・・・。」
彼女を振り向いてパク・ハが問いかけるのへ、スヨンが遠慮がちに口を開く。
「・・・あ。・・・勝手に描いてしまってごめんなさい。
でもなんだかイメージが膨らんでしまって・・・。って言ってもまだまだドレスのラインぐらいしか描いてないけれど。細かい場所はこれから・・・。」
スヨンの様子からして、自分のためにデザインしてくれたらしいのは明らかだ。
「すごく素敵です!!今まで見たどのドレスよりも素敵だわ。
やっぱりスヨンさんにお願いして良かった!」
笑顔のパク・ハに、スヨンもホッとしたように微笑んだ。
「気に入ってもらえて嬉しいです。あ、でも婚約者の方は?良いって言ってくれました?」
「もちろん!彼もすごく喜んでましたよ。“ジョイ・ルー”にデザインしてもらうなんて凄いって。
・・・ただ。」
「・・・ただ?」
スヨンに勧められるまま椅子に腰かける。そこでパク・ハはおもむろに口を開いた。
テヨンから聞かされた「ホーム&ショッピング」と「ベルス」の契約についての話をスヨンに告げる。
スヨンもその辺のことはオーナーから聞かされていたようで、デザイナーの自分は疎いのだと言って肩を竦めた。
テヨンは、今回の件をビジネスに結びつける気はないが、交渉に応じてくれると言うのなら喜んでその席を設けたいと言っていた。
そのことも伝えて、パク・ハは、自分もそう言う話は苦手だと、ペロッと舌を出して苦笑する。
「・・・あ、あの・・・。パク・ハさん。」
スヨンが、おずおずと躊躇いがちにパク・ハの名を呼んだ。
「・・・?なんですか?」
パク・ハはキョトンとしている。
「婚約者の方は・・・その。どんな方なんですか?」
え?
どんな方?・・・どんな方って・・・どんな方、だろ?
パク・ハには突然、虚を突かれるような質問だった。
恋人が・・・婚約者が「どんな方」か、なんて正面切って聞かれたことが無かったのだ。・・・今まで。
『恋人居るんでしょ?どんな人?』
ジュースショップを訪れる客になら、世間話のついでによく聞かれる。
『私の恋人ですよ?もちろん、素敵な人に決まってるじゃないですか!』
笑いながら、冗談めかして、軽口をたたいたことなら何度だってある。
今のスヨンの問いかけは・・・世間話のついで、話題作り、の類ではないはずだ。
見た目?のことじゃないわよね?「どんな方」か、って。
パク・ハの沈黙を何と思ってか、スヨンの表情が曇っていく。
「あの、言いたくないなら・・・。」
「あ、ごめんなさい。そうじゃないの。・・・そういう質問、初めてで・・・。」
結婚が決まっていて、婚約式をしようとしていて、「婚約者がどんな方」か、と質問をされたことが無いと言う方が、珍しんじゃないかと思う。
私、なんで、そういう場面に
あらぬ方向に思考が飛んで、思わず考え込むパク・ハ。
対するスヨンは、拙いことを尋ねてしまったとばかりに視線を彷徨わせていた。
「ああ!」
突然パク・ハが声を上げて弾かれたように顔を上げた。
スヨンは驚いてパク・ハを凝視している。
いつもおば様が一緒で・・・テヨンさんが仕事で忙しくしてることや・・・その・・・彼が私をどんなに愛してるかってことを、大袈裟なぐらいにしゃべり続けてて・・・今まで行ったブティックでも、ドレスの専門店でも、ホテルの会場係の人にさえ、「婚約者がどんな方」か、なんて尋ねられる隙がなかったんだ!
わあ・・・なんか、新鮮!
婚約者の方はどんな方?
テヨンさんて・・・どんな人かな?
300年もの間、私への愛を守り抜いてくれた、辛抱強い人です。・・・って、それは言えないか。
はにかんだ笑顔が可愛いの。・・・も、ちょっとこの場には相応しくないかな。
すごく仕事ができて、誰よりも会社に貢献してる。・・・ビジネスを意識させちゃうわね。
考えに考えて
「えっと・・・優しい人、かな?」
照れながら、やっとそれだけ言った。ああ、もっと気の利いた言い方あるでしょうに・・・と思いながら。
ややあって、スヨンは申し訳なさそうに、でも、心底心配そうに・・・
どうしようと迷う風で、でも、勇気を振り絞ってというように、ようよう掠れた声でパク・ハに問いかける。
「パク・ハさん。・・・すみません。本当にこの結婚・・・望んでるんですか?」
「え?・・・どうして・・・。」
「だって・・・政略・・・。」
「ああ・・・うふふ、そうね、私たち、政略結婚なの。」
飛び切りの笑顔でそう言うパク・ハにスヨンは驚きを隠せない。
「つい、この間、そうなんだって彼に教えられたの。・・・話せば長くなるけれど・・・。」
私と、彼、ヨン・テヨンさんって言うんだけど・・・出会いがちょっと変わっててね。
最初に会ったのはニュー・ヨークなんだけど、その、色々あって・・・
随分経ってからソウルで再会したの。
彼はビジネスには全く興味が無くて、だから、ニューヨークに居て・・・私も実の母の生死さえ知らなかった。
彼はソウルに戻って会社を継ぐ決意をしたんだけど・・・
それから、私達、出会って、恋に堕ちて、その・・・永遠の愛を誓い合って・・・
気付いたら、政略結婚だと噂されるような境遇だったのよ。
私なんて、そんな風に噂されてるって知ったの三日前よ?
パク・ハは、自分で自分に呆れるわ、と笑っている。
でもね、私がいくら彼を想っていても、何の役にも立てない、って思う時があって・・・。
母の娘であったことは全くの偶然だけれど、その境遇がテヨンさんの為になるのなら・・・政略結婚で良かったって思ってる。
私を・・・って言うより、私の母を恐れて、テヨンさんの敵になりたがる人は減ったそうよ。
まあ、でも・・・彼なら自力でどんな状況でも乗り越えちゃうとは思うけど、ね。
最後はテヨンの有能振りを自慢するような言葉を上せて、片目を瞑ってみせた。
「スヨンさんの方は?」
「え?」
「スヨンさんの恋人は、どんな方なんですか?」
パク・ハは悪戯っぽく笑っている。
___________
思ったより長くなってしまいました。・・・その割には、時間が進んでない!

(会場の打ち合わせのいきさつが長すぎるんだよなぁ。ええ、分かってるんですけどね。

テヨンが契約がらみでベルスを訪れるのはいつになるのだろうか・・・(苦笑)
パク・ハ、何気に「永遠の愛を誓った」とか言ってますが

スヨンさんにも「恋人はどんな方」か語ってもらいましょう。

kayaさん!よろしく、ネ!

~ Comment ~
Re: そうかぁ… 阿波の局さまへ
阿波の局さま
> 今まで、パク・ハが口を開く隙もないほどソリのマシンガントークが行く先々で…さもありなん…テクス社長も大変ですねぇ。
ホント。(汗)ま、でも適当に相槌を打っておけば、聞いてなくてもそのことは気にしてなさそうと言うか・・・
静かに物思いに耽りたい時は・・・きっと会社から帰らないんだ。間違いない!
> それはともかく、テヨンは「優しい人」ですか。
> ふ〜む、ふむ← 何様!
優しい人じゃないですか?・・・夜は、その限りでは・・・イヤ、その・・・。ムフフ。
> スヨンはジョンウのことをどんなふうに語るのかな。
ねえ、楽しみですよねぇ。
> 今まで、パク・ハが口を開く隙もないほどソリのマシンガントークが行く先々で…さもありなん…テクス社長も大変ですねぇ。
ホント。(汗)ま、でも適当に相槌を打っておけば、聞いてなくてもそのことは気にしてなさそうと言うか・・・
静かに物思いに耽りたい時は・・・きっと会社から帰らないんだ。間違いない!
> それはともかく、テヨンは「優しい人」ですか。
> ふ〜む、ふむ← 何様!
優しい人じゃないですか?・・・夜は、その限りでは・・・イヤ、その・・・。ムフフ。
> スヨンはジョンウのことをどんなふうに語るのかな。
ねえ、楽しみですよねぇ。
返された!
ありちゃんさん~お忙しい中更新ありがとうございます(^^)
どんな方、見事に返されましたね!
来るかな~とは思いつつ、何も考えてなかったので内心どきどきしてます(笑)
それにしても…ちょこちょこ出てくるテヨンが甘くてもう…(*´-`)
式場のくだり、全然長くないです!
こういうちょっとした会話が良いですね(^^)
パクハの「どんな方…?どんな方…って。どんな方だろ…?」にありちゃんさんを見ました(笑)
私もテヨンと対面する日を楽しみに、続きも頑張りまーす(^_^ゞ
どんな方、見事に返されましたね!
来るかな~とは思いつつ、何も考えてなかったので内心どきどきしてます(笑)
それにしても…ちょこちょこ出てくるテヨンが甘くてもう…(*´-`)
式場のくだり、全然長くないです!
こういうちょっとした会話が良いですね(^^)
パクハの「どんな方…?どんな方…って。どんな方だろ…?」にありちゃんさんを見ました(笑)
私もテヨンと対面する日を楽しみに、続きも頑張りまーす(^_^ゞ
- #993 kaya
- URL
- 2015.10/21 00:57
- ▲EntryTop
Re: 返された! kayaさまへ
kayaさま
> どんな方、見事に返されましたね!
> 来るかな~とは思いつつ、何も考えてなかったので内心どきどきしてます(笑)
にょほほほぉ。ベタですんません。ww
> それにしても…ちょこちょこ出てくるテヨンが甘くてもう…(*´-`)
> 式場のくだり、全然長くないです!
そう言って頂けるとほっとします。ε-(´∀`; )
甘々テヨン、でれでれテヨン、Sっ気テヨン・・・どれも好きでして。♡
> パクハの「どんな方…?どんな方…って。どんな方だろ…?」にありちゃんさんを見ました(笑)
え?私、ですか???
> 私もテヨンと対面する日を楽しみに、続きも頑張りまーす(^_^ゞ
パク・ハの沈黙で悩んじゃうスヨン、ジョンウを語るスヨン、楽しみにしてます!♪( ´θ`)ノ
> どんな方、見事に返されましたね!
> 来るかな~とは思いつつ、何も考えてなかったので内心どきどきしてます(笑)
にょほほほぉ。ベタですんません。ww
> それにしても…ちょこちょこ出てくるテヨンが甘くてもう…(*´-`)
> 式場のくだり、全然長くないです!
そう言って頂けるとほっとします。ε-(´∀`; )
甘々テヨン、でれでれテヨン、Sっ気テヨン・・・どれも好きでして。♡
> パクハの「どんな方…?どんな方…って。どんな方だろ…?」にありちゃんさんを見ました(笑)
え?私、ですか???
> 私もテヨンと対面する日を楽しみに、続きも頑張りまーす(^_^ゞ
パク・ハの沈黙で悩んじゃうスヨン、ジョンウを語るスヨン、楽しみにしてます!♪( ´θ`)ノ
Re: か****様へ
か****さま
お久しぶりです!
ああ、やっぱり風邪うつっちゃいましたかぁ。しかも熱まで・・・。
大変でしたね?もう、体調はよろしいのでしょうか?
> いいですねぇ(*♡´◡` 人´◡` ♡*)
良かったですか?
いやぁ、そう言って頂けてホッとしました。
もう、無理矢理テヨンを登場させてますからね。(苦笑)
> でも、ソリさんとの温度差が笑える(σ≧▽≦)σ
あはは、そうですね。パク・ハは気遣いの人で、自分を主張しないから・・・
物分かりが良過ぎて、テヨンも実は寂しいかも知れません。
> スヨンと彼氏の、のろけ話ですか〜
はい!楽しみですよね。
お久しぶりです!
ああ、やっぱり風邪うつっちゃいましたかぁ。しかも熱まで・・・。
大変でしたね?もう、体調はよろしいのでしょうか?
> いいですねぇ(*♡´◡` 人´◡` ♡*)
良かったですか?
いやぁ、そう言って頂けてホッとしました。
もう、無理矢理テヨンを登場させてますからね。(苦笑)
> でも、ソリさんとの温度差が笑える(σ≧▽≦)σ
あはは、そうですね。パク・ハは気遣いの人で、自分を主張しないから・・・
物分かりが良過ぎて、テヨンも実は寂しいかも知れません。
> スヨンと彼氏の、のろけ話ですか〜
はい!楽しみですよね。
Re: k*c**様へ
k*c**さま
おはようございます。
コメントありがとうございます。
> コラボって楽しいですねー
そう言って頂けると励まされます。m(__)m
私もkayaさんも、1番は自分たちが楽しんでいて、読者様を置いてけぼりにしてないか常に心配してるもので・・・(汗)
「幸せそうなパク・ハ」に見えました?良かった!
最高の褒め言葉です。ありがとうございます。
kayaさんがスヨンにどうジョンウを惚気させるのか、楽しみでなりません。
一緒に楽しんでくださいね。(^_-)
おはようございます。
コメントありがとうございます。
> コラボって楽しいですねー
そう言って頂けると励まされます。m(__)m
私もkayaさんも、1番は自分たちが楽しんでいて、読者様を置いてけぼりにしてないか常に心配してるもので・・・(汗)
「幸せそうなパク・ハ」に見えました?良かった!
最高の褒め言葉です。ありがとうございます。
kayaさんがスヨンにどうジョンウを惚気させるのか、楽しみでなりません。
一緒に楽しんでくださいね。(^_-)
Re: 妄想が… ほ**様へ
ほ**様
おおおおおおおぉぅ!
ありがとうございます。
種じゃなくて、苗だ!
キムチーム長ですか、そうですか。
小話2 行っちゃいますか?(ニヤリ)
おおおおおおおぉぅ!
ありがとうございます。
種じゃなくて、苗だ!
キムチーム長ですか、そうですか。
小話2 行っちゃいますか?(ニヤリ)
そうかぁ…
それはともかく、テヨンは「優しい人」ですか。
ふ〜む、ふむ← 何様!
スヨンはジョンウのことをどんなふうに語るのかな。