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「短話シリーズ」
クリスマス

Santa Claus Is Comin'To Town

 ←一足早く、クリスマスプレゼント頂いちゃいました!【追記あり】 →Gift
今日は、クリスマス・イヴ。

ジュースショップは定休日。
けれど、朝早くからバタバタとパーティーの準備に忙しかった。

テーブルには自慢のフレッシュジュース用の果物が山積みになっている。
ツリーと飾り付けを指差しチェックしながら、パッカは、これでよしっ!と満面の笑みを浮かべた。

「ごめん。このテーブルをもう少し寄せてもいいかな?」

僕に促されるままテーブルの端に手を掛けて、パッカは一緒に持ち上げてくれる。

「・・・どうするの?」

「ここに、電子ピアノを置くんだ。」

パッカは目を見開いた。

「え?・・・誰が、弾くの?・・・誰か呼んだの?」


子供達のクリスマスパーティー用にと、僕は会社で色々な物を準備しようとした。
一人一人に配るお菓子はもちろんのこと、おもちゃも、と思っていたら、パッカは、予算が足らない、なんて言う。
僕のポケットマネーで支払うさ、と笑って見せたら、そんなに甘えられない、と彼女はかぶりを振った。

それに・・・形あるものが総てじゃないと思うの。

そう言って微笑むパッカに、僕は何も言うことができなかった。

僕は、子供のころから欲しい物は何でも与えられてきた。
今では自分の稼ぎで欲しい物を手に入れることもできる。

でも

心の深い所に、温かい思い出なんて持ち得ただろうか?

『みんなでクリスマスソングを歌って、いつもよりちょっと贅沢なお菓子をもらうだけ。』

そのことにワクワクしたと彼女は言っていた。

だったら・・・


「サンタクロースが、弾くんだよ。」

片目を瞑って見せ、電子ピアノを運び込んだ。


手伝いにやって来たミミとベッキーと共に、パッカもサンタ風のワンピースに着替えた。
きゃっきゃっと笑い合う姿が、なんとも愛らしい。

パッカサンタは想像していた以上に、可愛い。
・・・彼女が一番、可愛い。

にやけてしまう頬を引き締めて、僕もサンタクロースの衣装に身を包んだ。


そして、今日を持ち侘びていた子供達がたくさん訪れて、店内はとても賑やかになったのだった。



◇◇◇

子供達は、てんでにわーきゃー騒いでいる。
飾り付けのモールを引っ張ろうとする子。
テーブルの上、山積みのフルーツをじっと見つめる子。
ツリーを見て喜ぶ子。

IMG_1553 (480x640)

「このツリーの飾り!お菓子だ!!」

「ええ、食べられるのよ。帰りに持って帰ってね。」

子供たちから歓声が上がる。


ざわめきの中、やんちゃな男の子が、パッカのワンピースの裾を掴んだ。

まさか!スカートめくり?!
羨ま・・・いや、違う!子供だからって、絶対にダメだ!!

僕は咄嗟に手を伸ばしていた。

「そういうことする子には、サンタさんからプレゼントが貰えないわよ!」

パッカは落ち着いた声で男の子の顔を覗き込んだ。

「ごめんなさい。」

男の子は素直に謝って、手を離す。

「いい子ね。」

パッカは男の子の頭を撫でた。 僕の方を見ながら、サンタさん、許してあげてね、と微笑む。

あ、いや・・・。
伸ばした手をそのままに、頷くしか、ない。
わずかとは言え子供相手に嫉妬したことと、ある種の羨望を見透かされたようで、僕はぎこちなく笑った。


「さあ、クリスマスパーティーを始めましょう。みんなに特製のジュースをごちそうするわ。」

「「「「やったー!」」」」

パッカの合図に、子供達が一斉に笑顔になった。

「みんないい?カップを好きなようにデコレーションしてね。できた人から順番にジュースを注ぐわよ。」

女性三人で、何の柄もない真っ白なジュースカップを配っていく。
カップを受け取った子供達は、準備されていたシールを貼ったり、ペンで絵を描いたり。
歓声を上げながら、みんな楽しそうだ。

出来上がった順に、ちゃんと並んで、パッカのジュースを待っている。

あなたはリンゴ?
君はオレンジね?
そう。パインが好きなの?

一人一人の好みを聞きながら手際よくジュースを絞っていく。


微笑ましいなと見ていると、一人の女の子が僕の元に駆け寄って来た。

「どうしたの?」

「サンタさん、このカップ、持って帰ってもいいの・・・?」

「もちろんだよ。」

「ありがとう!うれしい!宝物にするね!」

女の子はスキップして、列に戻って行った。

大人から見ればただのジュースカップが『宝物』に変身か・・・おもちゃを買わなくて正解だったよ。
パッカの気持ちはちゃんと子供達に伝わってる。


ジュースが行き渡ると、僕は背中に背負っていた白い大きな袋からお菓子を取り出して、子供達に手渡してまわった。

子供達の「ありがとう!」の言葉と笑顔で、僕も幸せな気持ちを貰ってる。


お菓子を配り終わって、僕はゆっくりと深呼吸をした。

「じゃあ、もう一つプレゼントがあるよ。」

僕は電子ピアノの前に腰かける。


注目を浴びて、緊張するけど・・・。  


「みんなも知ってるクリスマスソングだよ。」



僕はピアノの演奏とともに歌い終えた。

あれ?静まり返ってる?・・・僕の歌、ダメだった?
あ、英語で歌ったのがまずかったか・・・。そうだよな・・・。

ちょっとした失態に不安な気持ちになった時、

「サンタさん、お歌がとっても上手だね~!」

一番幼い男の子が、小さな手を叩きながら言ってくれた。

その言葉を合図に、たくさんの拍手が鳴り始める。
子供達が駆け寄ってきて「すごーい!もっと歌って!」とせがまれた。

ピアノは小さな頃に習っていたけど、人前で演奏して歌うのは初めてだ。
子供達が喜んでくれてホッとした。

パッカを見ると、微笑みながら頷いている。
一番喜んでほしい人が喜んでくれて・・・本当に、良かった。

「じゃあ、次はみんなで一緒に歌おう。」
「「「「はーい!」」」」

僕は鍵盤に指を滑らせた。

ミミとペッキーのつぶやきが聞こえてくる。

「テヨンさん、やるわね。」
「とんでもない破壊力だわ。」
「あのルックスで、あんな歌声を聴かされたら、完全に反則よ。」
「見て、パッカオンニの目がハートになってる。」

聞こえるように言ってるだろ?
・・・まあ、でも、悪い気はしない。

「私達も楽しむわよ!」

ベッキーはそう言うなり、ミミとパッカの手を取って子供達の前に引っ張り出した。
二人は顔を見合わせたが、すぐににっこりと微笑んでベッキーのスイングに合わせて踊りだす。

僕は更に軽快にピアノを奏でた。

子供達も楽しそうに、思い思いに踊っている。


歌って、踊って、ゲームをして・・・



あっという間に時間は過ぎて行った。



◇◇◇

「「「「今日はありがとうございました!」」」」

子供達が帰ってしまうと、急に店内はがらんとして、なんだか寂しささえ感じる。


「ふう、嵐のようだったわね。」
「うん、でも、楽しかったぁ。」

あらかた片付け終わったところで、ミミとベッキーは帰り支度を始めた。
訊けば、女二人でクリスマスを過ごすのだとか・・・。

「パッカ。お邪魔虫は消えるねー。」
「パッカオンニ。ファインティン!」

二人は軽く拳を握って片目を瞑る。パッカは、何にファインティンなのよ?と笑った。

何って・・・パッカ、分かんないの?

「二人ともありがとう。お疲れ様。」

気を利かせてくれたらしい二人に、僕も頭を下げる。
二人はそんな僕を見て、にやにやしながら手を振った。
何だよ。・・・そっちは女同士で楽しくやってくれよ。

パッカに見送られて、ミミとベッキーは帰って行った。


洗い物が終わって、エプロンを外しながらパッカが僕を振り返った。

「テヨンさんありがとう。でも、ごめんなさい。疲れたでしょ?」

忙しない中、彼女は本当に楽しそうに笑っていた。
その笑顔が見られただけで、僕は幸せだ。
それに、普段接することのない子供達と無邪気に笑い合えて、僕自身も楽しかった。

「確かに疲れたけど、楽しかったよ。
パッカもずっと準備やら何やらで・・・疲れただろう?美味しいものを食べに行こう。
頑張った良い子のパッカに、サンタクロースがご馳走するよ。」


きれいに片付いた店を閉め、僕の隣に並んだ彼女の手を握る。

「さぁ、今からは二人でクリスマスを楽しもう!」

光で彩られた街に、二人で一緒に飛び出した。


___________

子供達とのクリスマスパーティーを終えて、二人きりのイヴの夜が待ってます。( ´艸`)

今夜8時に続きをUPしますので、よろしかったらまたお越しくださいませ。 ( ̄^ ̄)ゞ


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サンタさーん!

なんでしょう、とても楽しい気分になりました☆
嬉しいな、美味しいな、楽しいな!
子供に欠くことのできない大切な感情ですよね(ToT)
ピアノ弾くか~、歌、上手なんだ~(笑)
テヨンさんのスペックの高さに感心です。
でも、一番好きなのはキムチ、ーム長ですからっ(吠)

20時の二人の素敵な夜も楽しみにしています。
うふふフフ腐。

乱文にて失礼します<(_ _)>

Re: 追いつきました! る***様へ

る***さま

お返事が遅くなってスミマセン。(-_-;)

リアルタイムに追いついて頂けましたか。ありがとうございます!
ですが・・・これからは首の長ぁいキリンさんになられること請け合いです。
スミマセン。(汗)

クリスマスプレゼントとして受け取って頂きまして、ありがとうございます。
喜んで頂き、私の方こそ嬉しいです。

Re: か****様へ

か****さま

お返事が遅くなってスミマセン。(-_-;)

か****家のクリスマスは如何でしたか?
子供にとっては欠かせない楽しいイベントですが、親御さんは大変!
私のお話で少しは癒されてくれたなら嬉しいです。

テヨンサンタはカッコいい。
うちにも来てほしかったなぁ。(ぼそり)

クッキーは、ちょっとずつ旦那に食べられてしまいまして・・・・
今日、私も食べました。
美味しかった!!

Re: サンタさーん! さち様へ

さち様

お返事遅くなってスミマセン。(-_-;)

> なんでしょう、とても楽しい気分になりました☆
おお!良かったです。

> ピアノ弾くか~、歌、上手なんだ~(笑)
> テヨンさんのスペックの高さに感心です。
ホント!スペック高すぎ!!(自分の都合のいいように妄想しまくった結果であります。 ( ̄^ ̄)ゞ)

> でも、一番好きなのはキムチ、ーム長ですからっ(吠)
あ、キムチ、ーム長、出ませんでしたね。スミマセン。

きっと彼も楽しく過ごしたことでしょう。多分・・・。(笑)
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