「短話シリーズ」
クリスマス
Gift
光と人で賑わう街を二人で歩いた。
「テヨンさんって、歌もピアノも上手なのね。」
「そう?」
パッカに褒められると、素直に嬉しい。
「ピアノは子供の頃に習わされていたんだ。発表会で弾いたことはあるけど、人前で歌ったのは初めてだよ。」
「初めて?ホントに?そんな風になんて思えなかった!・・・とても素敵だったわ。」
更なるパッカの褒め言葉に、スキップでもしたい気分だよ。
「惚れ直した?」
パッカが立ち止まるから、僕も足を止める。
「ええ。」
彼女は視線を彷徨わせた後、僕を見上げて頷いた。
「じゃあ、いつも歌っていようかな。・・・そうしたら、パッカはずっと僕のことを好きでいてくれる?」
「もう、あんぽんたん!」
パッカは笑いながら唇を尖らせた。
結構、本気で言ったんだけど・・・
「ねえ。どこに行くの?」
「もうすぐさ。ほら、あそこだよ。」
僕は小さなレストランを指差した。
パッカが以前、気になるの、と言っていた店だ。
電話で予約をしただけで、僕も初めて入る店。下調べもしていない。
パッカの勘だけを頼りに、ちょっとした冒険をしているようで、楽しい。
「覚えてたの?」
パッカが驚く。
「君の事なら、何でも覚えているよ。」
僕は笑った。
浮かれた街とは対照的な、落ち着いた佇まいの店内。
他の客は、僕達よりかなりな人生の先輩ばかり。それだけ長く愛されている店なんだろう。
常連客らしい初老の夫婦が、カウンターの中の店主と思しき男性とにこやかに会話を交わしている。
別の客は、店主の夫人らしい女性をママと呼びオーダーしていた。
夫婦だけで切り盛りしているらしく、オーソドックスだけど、丁寧な仕事振りが感じられる料理の数々。
パッカの「美味しい!」という言葉と手が、止まらない。
今日のパーティーの話をしながら、僕も料理を味わった。
ママが小さなケーキを運んで来た。
「店長からです。・・・うちの旦那は、美人に弱くて・・・特別に、デザートをサービスさせて欲しいと言ってます。」
ママが笑いながらカウンターの中の『店長』を振り返った。
店長はにこにこしながら手を振っている。
「ごめんなさいね。素敵な彼氏がいるのに・・・。」
パッカは照れながら、店長に会釈をした。
「これ、すごく、かわいい!・・・美味しそうだけど、食べちゃうのがなんだかもったいないわ。」
パッカの目はキラキラと輝いている。
僕も、ありがとうございます、と店長夫妻に向かって会釈をした。
「良かったら、また二人で来てくださいね。」
ママの笑顔も暖かい。
「ええ。喜んで。」
二人のお気に入りの場所が増えた。
テーブルを優しく灯すキャンドルのように、胸にじんわりと温もりが広がっていく。
ここまでは、合格、かな?・・・さて、ここからだ。
「パッカ。クリスマスプレゼントだよ。」
僕は小さな箱を出して、彼女の目の前に置いた。
彼女は、ありがとう、と言いながらも、いつものように遠慮がちに微笑む。
「開けてみて。」
彼女はそっとそれを開けた。
「わぁ、きれい!」
その言葉に僕は微笑む。
箱に収まっているのは、蝶の形の、ゴールドのピアス。
「それだけじゃないんだ。」
「え?まだ、あるの?」
僕は頷いて、今度はノート程の包みを彼女に渡す。
包装を解くと、出てきたのはキャンバス。
パステルで描かれたパッカが、優しく微笑んでいる。
「これ・・・テヨンさんが描いた、のよね?そんな時間、あったの?」
驚いた顔で彼女が尋ねてくる。
仕事が終わってからコツコツと描いていた。パッカが子供達の為の準備をしている間に。
「そうだよ。僕が描いたんだ。久しぶりだから緊張した。でも、そんなに腕は落ちてないと思うんだけど・・・どうかな?」
「なんだか恥ずかしいけど、嬉しいわ。」
彼女の笑顔にホッとした。
「よく見て。その絵と同じピアスなんだよ。」
絵の中のパッカの耳元にも、蝶のピアスが光っている。
「本当!どういうこと?」
マジックでも見ているようにパッカは驚き、キャンバスの中の自分の耳元と、箱の中の蝶を見比べて目を真ん丸にした。
「NYで初めてパッカを見かけた時、肩に黄色い蝶が止まってた。 」
あの時、どこから現れたのかゆらゆらと舞う蝶に目を奪われた。思わず手を伸ばしたらその先にパッカがいて・・・
「君の笑顔が眩しくて、思わずポストカードに描きとめて・・・どうしてもまた会いたくて、君に渡したんだ。
その時は会えなかったけど。」
「ええ。」
「きっと、あの蝶がパッカに会わせてくれたから・・・僕には幸福の使いなんだ。
ずっとこの幸せが続くように、ピアスにしてもらった。
あの時はラフ画だったけど、今回はちょっと時間をかけて、僕が一番好きなパッカの、笑顔を描いたんだ。
ずっと君が笑顔でいられるように、って。」
「今日はテヨンさんに驚かされてばっかりだわ。こんな幸せなクリスマスは初めて・・・本当に・・・ありがとう・・・」
パッカの瞳が揺れている。
泣かせたい訳じゃないんだけど・・・そんな君の、泣き笑いみたいな顔も、堪らなく、好きだ。
本当に、大好きだよ。
「私もテヨンさんにプレゼントがあるの。」
幸せな沈黙の後、今度はパッカが鞄から箱を取り出した。
そっと僕の前に置く。
リボンをほどいて、蓋を開けるとマグカップが入っていた。
取り出して見てみると、飾り文字が絵付けされている。
僕の名前?
もしかして・・・
「これ、パッカが絵付けしたの?」
マグカップを目の高さに掲げながら、三百六十度、廻してみる。
「そう。あまり上手くはないけど・・・私とお揃いのマグカップなの。」
彼女は照れたようにそう言って、そんなにまじまじと見ないで、と笑った。
パッカの手造りだということ、『お揃い』だということに、我知らず口許が綻んでしまう。
同じ物、同じ時間、同じ気持ちを大切な人と共有できる、そのこと。
こんなにも幸せなこと。
それを、君が教えてくれた。
「とても嬉しいよ。ありがとう!・・・それで、パッカのマグカップはどこにあるの?」
そんな所にありはしない、と分かってはいるけれど、テーブルの下を覗いてみたり・・・。
「家に置いてきたわ。」
あ、また唇を尖らせてる。
「二つ並べたところを、早く見てみたいな。・・・僕たちの屋根部屋に、帰ろう。」
光で彩られた街を歩く。冷たい風も平気だよ。
パッカの手の温もりがあるから。
Merry Christmas !
パッカ。
僕にとっては君自身が
最高のギフトだ。
「テヨンさんって、歌もピアノも上手なのね。」
「そう?」
パッカに褒められると、素直に嬉しい。
「ピアノは子供の頃に習わされていたんだ。発表会で弾いたことはあるけど、人前で歌ったのは初めてだよ。」
「初めて?ホントに?そんな風になんて思えなかった!・・・とても素敵だったわ。」
更なるパッカの褒め言葉に、スキップでもしたい気分だよ。
「惚れ直した?」
パッカが立ち止まるから、僕も足を止める。
「ええ。」
彼女は視線を彷徨わせた後、僕を見上げて頷いた。
「じゃあ、いつも歌っていようかな。・・・そうしたら、パッカはずっと僕のことを好きでいてくれる?」
「もう、あんぽんたん!」
パッカは笑いながら唇を尖らせた。
結構、本気で言ったんだけど・・・
「ねえ。どこに行くの?」
「もうすぐさ。ほら、あそこだよ。」
僕は小さなレストランを指差した。
パッカが以前、気になるの、と言っていた店だ。
電話で予約をしただけで、僕も初めて入る店。下調べもしていない。
パッカの勘だけを頼りに、ちょっとした冒険をしているようで、楽しい。
「覚えてたの?」
パッカが驚く。
「君の事なら、何でも覚えているよ。」
僕は笑った。
浮かれた街とは対照的な、落ち着いた佇まいの店内。
他の客は、僕達よりかなりな人生の先輩ばかり。それだけ長く愛されている店なんだろう。
常連客らしい初老の夫婦が、カウンターの中の店主と思しき男性とにこやかに会話を交わしている。
別の客は、店主の夫人らしい女性をママと呼びオーダーしていた。
夫婦だけで切り盛りしているらしく、オーソドックスだけど、丁寧な仕事振りが感じられる料理の数々。
パッカの「美味しい!」という言葉と手が、止まらない。
今日のパーティーの話をしながら、僕も料理を味わった。
ママが小さなケーキを運んで来た。
「店長からです。・・・うちの旦那は、美人に弱くて・・・特別に、デザートをサービスさせて欲しいと言ってます。」
ママが笑いながらカウンターの中の『店長』を振り返った。
店長はにこにこしながら手を振っている。
「ごめんなさいね。素敵な彼氏がいるのに・・・。」
パッカは照れながら、店長に会釈をした。
「これ、すごく、かわいい!・・・美味しそうだけど、食べちゃうのがなんだかもったいないわ。」
パッカの目はキラキラと輝いている。
僕も、ありがとうございます、と店長夫妻に向かって会釈をした。
「良かったら、また二人で来てくださいね。」
ママの笑顔も暖かい。
「ええ。喜んで。」
二人のお気に入りの場所が増えた。
テーブルを優しく灯すキャンドルのように、胸にじんわりと温もりが広がっていく。
ここまでは、合格、かな?・・・さて、ここからだ。
「パッカ。クリスマスプレゼントだよ。」
僕は小さな箱を出して、彼女の目の前に置いた。
彼女は、ありがとう、と言いながらも、いつものように遠慮がちに微笑む。
「開けてみて。」
彼女はそっとそれを開けた。
「わぁ、きれい!」
その言葉に僕は微笑む。
箱に収まっているのは、蝶の形の、ゴールドのピアス。
「それだけじゃないんだ。」
「え?まだ、あるの?」
僕は頷いて、今度はノート程の包みを彼女に渡す。
包装を解くと、出てきたのはキャンバス。
パステルで描かれたパッカが、優しく微笑んでいる。
「これ・・・テヨンさんが描いた、のよね?そんな時間、あったの?」
驚いた顔で彼女が尋ねてくる。
仕事が終わってからコツコツと描いていた。パッカが子供達の為の準備をしている間に。
「そうだよ。僕が描いたんだ。久しぶりだから緊張した。でも、そんなに腕は落ちてないと思うんだけど・・・どうかな?」
「なんだか恥ずかしいけど、嬉しいわ。」
彼女の笑顔にホッとした。
「よく見て。その絵と同じピアスなんだよ。」
絵の中のパッカの耳元にも、蝶のピアスが光っている。
「本当!どういうこと?」
マジックでも見ているようにパッカは驚き、キャンバスの中の自分の耳元と、箱の中の蝶を見比べて目を真ん丸にした。
「NYで初めてパッカを見かけた時、肩に黄色い蝶が止まってた。 」
あの時、どこから現れたのかゆらゆらと舞う蝶に目を奪われた。思わず手を伸ばしたらその先にパッカがいて・・・
「君の笑顔が眩しくて、思わずポストカードに描きとめて・・・どうしてもまた会いたくて、君に渡したんだ。
その時は会えなかったけど。」
「ええ。」
「きっと、あの蝶がパッカに会わせてくれたから・・・僕には幸福の使いなんだ。
ずっとこの幸せが続くように、ピアスにしてもらった。
あの時はラフ画だったけど、今回はちょっと時間をかけて、僕が一番好きなパッカの、笑顔を描いたんだ。
ずっと君が笑顔でいられるように、って。」
「今日はテヨンさんに驚かされてばっかりだわ。こんな幸せなクリスマスは初めて・・・本当に・・・ありがとう・・・」
パッカの瞳が揺れている。
泣かせたい訳じゃないんだけど・・・そんな君の、泣き笑いみたいな顔も、堪らなく、好きだ。
本当に、大好きだよ。
「私もテヨンさんにプレゼントがあるの。」
幸せな沈黙の後、今度はパッカが鞄から箱を取り出した。
そっと僕の前に置く。
リボンをほどいて、蓋を開けるとマグカップが入っていた。
取り出して見てみると、飾り文字が絵付けされている。
僕の名前?
もしかして・・・
「これ、パッカが絵付けしたの?」
マグカップを目の高さに掲げながら、三百六十度、廻してみる。
「そう。あまり上手くはないけど・・・私とお揃いのマグカップなの。」
彼女は照れたようにそう言って、そんなにまじまじと見ないで、と笑った。
パッカの手造りだということ、『お揃い』だということに、我知らず口許が綻んでしまう。
同じ物、同じ時間、同じ気持ちを大切な人と共有できる、そのこと。
こんなにも幸せなこと。
それを、君が教えてくれた。
「とても嬉しいよ。ありがとう!・・・それで、パッカのマグカップはどこにあるの?」
そんな所にありはしない、と分かってはいるけれど、テーブルの下を覗いてみたり・・・。
「家に置いてきたわ。」
あ、また唇を尖らせてる。
「二つ並べたところを、早く見てみたいな。・・・僕たちの屋根部屋に、帰ろう。」
光で彩られた街を歩く。冷たい風も平気だよ。
パッカの手の温もりがあるから。
Merry Christmas !
パッカ。
僕にとっては君自身が
最高のギフトだ。
~ Comment ~
Re: や***様へ
や***さま
お返事が遅くなってスミマセン。(-_-;)
素敵なコメをありがとうございます。
年齢なんて関係ないと思います!!
そして、や***さんや、ファン達の想いと言うのは、ユチョンに伝わってると思うんですよ。
だから、ユチョンはもちろん、ジェジュンやジュンスも、コンサートやファンミで応えてくれるのだと思います。
私自身はファンミもコンサートも行ったことが無くて、それでファンを名乗ってていいのか、と思わないではないのですが・・・
お話を通して、テヨンやイ・ガクを通して、ユチョンに熱くなってしまいます。
(妄想が過ぎると危険な奴になりそうです。┐(´д`)┌)
や***さんのような方が、共に私のお話を楽しんでくださって、ユチョンへの愛で共に胸を熱くしてくれることが嬉しいです。
きっと、ユチョンも喜んでくれてる!・・・と信じて、テヨンにあれこれさせてる私でした。(汗)
お返事が遅くなってスミマセン。(-_-;)
素敵なコメをありがとうございます。
年齢なんて関係ないと思います!!
そして、や***さんや、ファン達の想いと言うのは、ユチョンに伝わってると思うんですよ。
だから、ユチョンはもちろん、ジェジュンやジュンスも、コンサートやファンミで応えてくれるのだと思います。
私自身はファンミもコンサートも行ったことが無くて、それでファンを名乗ってていいのか、と思わないではないのですが・・・
お話を通して、テヨンやイ・ガクを通して、ユチョンに熱くなってしまいます。
(妄想が過ぎると危険な奴になりそうです。┐(´д`)┌)
や***さんのような方が、共に私のお話を楽しんでくださって、ユチョンへの愛で共に胸を熱くしてくれることが嬉しいです。
きっと、ユチョンも喜んでくれてる!・・・と信じて、テヨンにあれこれさせてる私でした。(汗)
- #1166 ありちゃん
- URL
- 2015.12/27 16:59
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