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「短編集」
リクエスト

たのしみ

 ←嫉妬 →年末のご挨拶と拍手コメント(12/18~26)へのお返事です。
このお話は【限定記事】で公開していたリクエストをパス解除したものとなります。

カウンター 44,444 に係るリクエストにお応えした(つもりの)お話です。
楽しんで頂けると良いのですが・・・

___________________________________

ノックの音がした。
パク・ハが返事をする前にすーっとドアが開き、ひょいとイ・ガクが顔を覗かせる。

彼女はノートパソコンのディスプレイから視線をドアの方に移し、軽く肩を竦めた。

ノックをしてくるだけマシにはなった、けど・・・。

「もう!返事する前に入って来ないでよ!」

パク・ハの抗議の声にも、どこ吹く風。

「どうしたのだ?部屋に籠りきりではないか。」

イ・ガクはパク・ハに歩み寄りながら、彼女をじとっと見下ろす。
パク・ハはやれやれとでも言うように、小さく溜息を漏らした。

「あ、そうだ。チョハはどんなのがいいと思う?」

イ・ガクはパク・ハの指し示すノートパソコンの画面を覗き込んだ。

彼は一瞬目を見開き、あわてたように顔を背けた。
そして、横目でパク・ハを見ながら、またそーっと画面に視線を戻す。

スタイルの良い女性達が肌も露わにポーズをとっていた。

「な、何を見ておるのだ!」

「んー?どれがいいと思う?」

「ど、どれって・・・。」

イ・ガクがたじろいでいるのを気にする風もなく、パク・ハはマウスを動かしながら画面をスクロールしていく。

「セパレートでもいいけど・・・ワンピがいいかな?」

パク・ハはイ・ガクを見上げて、ね?と首を傾げた。

「ダイエットも兼ねて、スイミングに通おうかなって思って。」

「すいみんぐぅ?」

「そう。水泳ってね、全身運動でダイエット効果も抜群なのよ。」

「そのような格好で泳ぐと申すか?」

「水着じゃないと泳げないでしょ?」

パク・ハはさも当然だと言いたげにイ・ガクを見た。

「・・・男はおるのか?」

「え?」

「すいみんぐぅには男も来るのか、と訊いておる。」

「ああ、いるわよ、たくさん。チョハも一緒に通う?」

パク・ハはにこにことして言った。
珍しいわね、運動嫌いなのに、と首を傾げている。

「ならぬ!女だけの所ならまだしも、男も!・・・そのような所で、そのような格好で肌を晒すなど!」

はあぁ?とパク・ハは片眉を吊り上げた。

「へそまで出ておるではないか!そのように肌を晒して、女子おなごの慎みを持たぬのか!
・・・それとも、何か?淫らがましく男を誘惑さそおうとでも言うつもりなのか?」

イ・ガクは腹立たしそうに、強い口調で言い募る。

「はあぁ?泳ぎに行くだけでしょ!何かと言えば、淫ら、淫らって!あんたの方がよぽっど、淫らでしょ!
水着ぐらいで何考えてんのよ!この、どスケベ!あんぽんたん!」

「なっ!王世子に向かって何と申すか!」

「うるさい!出てけ!このスケベ世子!!」

パク・ハは勢いよく立ち上がり、イ・ガクの肩を押しやって部屋から追い出そうとした。
不意のことでイ・ガクもバランスを崩し、そのままドアの外に押し出されてしまう。

「返事も待たずに入って来ないで!」

バタンとドアは閉じられ、ガチャリと鍵をかける音もした。

「パッカ!開けろ。開けぬか!
この屋根部屋を誰のモノだと心得る!ここを開けよ!」

激しくドアを叩いてみてもドアは開けられることはない。
イ・ガクは溜息を吐いた。

どうして分からぬのだ?へそなど晒して・・・男が何と思うと考えている?
そなたにその気がなくとも・・・男とはそういうものなのだ。


男である自分にはよく分かる。


スケベだと!この私に向かって!

はあああぁ。
・・・・スケベでないと子が生せぬではないか・・・男とは、そういうものなのだ。


ドアの内側でも、パク・ハが溜息を吐いていた。

チョハのあんぽんたん!なんで、他の男を誘惑さそわなきゃなんないのよ!バカっ!

・・・私が誰を意識してダイエットしようと思ってるのか、考えもしないクセに!!
こうなったら、飛び切りスタイル良くなってびっくりさせてやるんだから!

見てなさいよ!どスケベ世子め!!!



翌日。
イ・ガクは会社で、商品企画室を訪ねた。

「あ、ヨンチーム長。何か御用ですか?」

一人の女子社員がイ・ガクに気付いて声を掛けてくる。

「・・・うむ。水着を求めたいのだが・・・。」

パッカに、人前で、まして男もいるような場所で肌を晒させる、というのは許せぬ。
だが、しかし、あの意地っ張りのパッカのこと。どんなに、ならぬ、と止めても“すいみんぐぅ”とやらには行くつもりだろう。
ならば、少しでも露出の少ないモノを、自らが選んで与えてやらねば・・・。
そう考えたイ・ガクは、手っ取り早くH&S社で問題の“水着”を手に入れることにしたのだ。

「水着、ですか?」

「すいみんぐぅとやらに通う、と・・・。」

「ああ、それなら、こちらにカタログが・・・。」

女子社員は1冊のカタログをイ・ガクが見やすいように開いてくれた。

「スイミングに通うのなら、競泳用ですかね?やっぱり。」

イ・ガクはカタログを見て、目を見開く。

何ということだ!これでは、裸も同然ではないか!
これを見てもこの女子おなごは何も感じぬのか?
パッカといい・・・この時代の女人は、何を考えておる?

カタログを指差しながら、最近の流行りはこれですよ、などとにこやかに説明する女子社員を凝視する。

「あ、いや、もう・・・すいみんぐぅは、止めさせることにする・・・。」

「え?ヨンチーム長?ご自身のモノをお求めではなかったのですか?」

女子社員はてっきり目の前のヨンチーム長がスイミングを始めるものと思い込み、男性用の競泳水着のページを開いて見せたのだ。

胸の筋肉も逞しい色黒の男が、爽やかそうに笑って写真に納まってはいるが・・・その爽やかな笑顔とは裏腹に、着けているのは局部の小さな布きれ1枚。

ならぬ!ならぬ!
裸も同然の男だぞ!
そこに、へそまで出して近付けば・・・襲ってくれと言うようなものではないか!

イ・ガクは踵を返して部屋を出た。女子社員が自分を呼び留めるのも無視して。



急ぎ屋根部屋に戻って来たイ・ガクは、階段を上りきった所で出かけようとするパク・ハを見咎めた。

「どこへ行く!」

「何よ?いきなり・・・どこでもいいでしょ!」

「すいみんぐぅに行くのか?」

「そのスイミングに行くための水着を買いに行くのよ。あんたには関係ないでしょ!」

イ・ガクを意識してダイエットをしようと言うのだから、大いに関係はあるのだが、そんなことは言えない。

「ならぬ!」

イ・ガクはパク・ハの手首を掴んで屋根部屋の中に連れ戻そうとした。
パク・ハはその手を振り払う。
イ・ガクは尚もパク・ハの手を捕まえようとする。
何度かそんなことを繰り返し、男の力に敵うはずもなくパク・ハは家の中に連れ戻されてしまった。


パク・ハはリビングで半ば無理矢理ソファに座らされる。
イ・ガクは掴んだパク・ハの手首を離そうともせず自分も腰掛けた。

「そなた、どういうつもりだ?」

「・・・何が?」

「そんなに男が欲しいのか?」

「は!何、言ってんのよ!」

「肩も、へそも、足も露わに、裸も同然の男に近付くとは、そういうことであろう?」

「訳の分かんないこと言ってないで!手を離しなさいよ!」

「いいや、離さぬ。淫らな女を放ってはおけぬ。」

と、突然、パク・ハがイ・ガクに口づけた。
勢いよく唇をぶつけるような、好いた恋人と交わすような甘やかさとはかけ離れた、まるで挑むような口づけだった。

「そうよ!私はあんたの言うように淫らな女ですからね!」

そう言うなり、掴まれた手首とは反対の手で着ていたシャツの裾に手を掛ける。
イ・ガクが呆然と見ている間にシャツはたくしあげられ、繋げられた手と手の間に引っかかった。
キャミソールだけになったパク・ハの姿が目に飛び込んでくる。

「あんたも男でしょ!ほら、私をどうにかしてみなさいよ!淫らに誘惑さそってやってんのよ!」

叫んでイ・ガクを睨みつけながら大粒の涙をこぼし始めた。

「・・・誘惑さそわれなさいよ!あんぽんたん!」

イ・ガクの手から力が抜けた。
パク・ハはその拘束から逃れ、パク・ハの着衣だったモノもはらりと落ちる。
彼女はイ・ガクの真正面に立った。

「あんたが言うように淫らな女になってやるわよ!どう?満足?」

キャミソールの裾に彼女の指が掛けられた時、イ・ガクも立ち上がり、パク・ハを掻き抱いた。

「・・・止さぬか。パッカ。・・・そのような振る舞い、そなたには、似合わぬ。」

「誰が!男を・・・あんた以外の男を!誘惑さそってるって言うのよ!」

パク・ハはしゃくりあげながらイ・ガクを見上げた。

分かっておる。・・・そなたを欲しがっているのは、私の方、なのだ。

「誰が・・・淫らに・・・」

もう、止めよ。
腕の中で、自分を見上げるパク・ハにそっと口づけを落とす。

「・・・すまぬ。・・・私が悪かった。そなたのことが、心配だったのだ。」

そなたを・・・肌を露わにしたそなたを、他の男に見せたくはない。

もう1度、唇を重ねた。


長い口づけの後、唇を離したイ・ガクが不敵に笑った。

身を屈ませると不意にパク・ハを抱き上げる。
パク・ハは思わず身を固くした。

「そなたの望みを叶えてやる。王世子が誘惑さそわれてやろうと言うのだ。ありがたく思うがよい。」

パク・ハは驚いて彼の双眸を見た。

熱を孕んだ男の眼。

イ・ガクの真意を悟ると、あわててその腕から逃れようとする。
彼の両腕は肩と膝にがっちりと食い込んで、びくとも動かなかった。

「おとなしく致せ。」

そう言いながら露わになっている肩に口づけを落とし、そのまま2階の自室に向かおうとする。

「・・・チョハ。さっきのは言葉のアヤと言うか、売り言葉に買い言葉と言うか・・・お願い、降ろして。」

心細げにパク・ハが言い募る。

「私はすっかりそなたに誘惑さそわれてしまった。」

イ・ガクは意地悪な笑みを浮かべた。

「心配せずとも、降ろしてやる。私の寝台の上に、な。」


部屋に入ると、少し乱暴に投げ出すようにしてパク・ハをベッドに降ろした。
彼女があわてて起き上がろうとすると、ドアに鍵をかけたイ・ガクが素早く戻ってきて彼女の肩をベッドに押し付ける。

首筋に口づけた後、耳元にその唇を寄せた。

「パッカ。衣を自分で脱ぐでない。着ているモノを剥ぎ取っていくのも、男の愉しみの一つなのだ。」

キャミソールの肩ひもを外す。

「ああ、しかし、私の部屋に来て、私を誘惑さそいたいのなら、その時は自ら衣を脱くことも許す。
良いか?その肌を晒していいのは私にだけだ。」

分かったな?と言いながら、イ・ガクはパク・ハの肩に唇を寄せた。

___________________________________

リクエストくださった ち****様 ありがとうございました。

リクエストの内容は、「下着姿のパク・ハを見たときのイ・ガクの反応は?・・・大人(ムフっ)な話」だったのですが・・・
これってリクエストに応えてないって、言う、ね。
前振りが長すぎて・・・こうなっちまった、的な?・・・ええ、言い訳です。
でも、「イ・ガクとパク・ハなら何でも」と言って頂けてたので・・・スミマセン。甘えました。


え?続きがあるか、ですか?




さあ、どうでしょう?


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