FX

「長編」
目覚めたテヨン

目覚めたテヨン 11

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遠くで大叔母の声がする。
その声はだんだんと近付いてきて、ついには、耳元で聞こえ始めた。

僕は目を開けた。
瞬間、
大叔母が、ムチ打ちになるのではないか、という勢いで首に抱きついてきて、僕の名を叫んだ。

「大叔母様。痛いよ。」

「テヨン!テヨン。良かった。もう、びっくりしたわよ。」

「大叔母様。大丈夫だから・・・手を離して。」

大叔母の腕をそっとほどく。

時間にして数分だったが僕は気を失っていたらしい。
少し、頭がくらくらしている。

「テヨン。病院に行きましょう!」

大叔母は膝立ちの姿勢から、立ち上がりながらそう言った。

後ろではお手伝いさんが心配そうに見ている。リビングから玄関へと続くドアの向こうには運転手さんも待機していた。僕は、二人に軽く会釈をした。

「大丈夫です。昨日、よく眠れなかったから・・・水を一杯くれませんか?」

お手伝いさんが急いでキッチンに向かう。ほどなくして、水の入ったグラスを盆に載せて持って来てくれた。
水を飲むと少し落ち着いた。

「でも、テヨン。病院できちんと診てもらいましょうよ。行くのが嫌なら、往診でも・・・。」

「本当に大丈夫だから。少し、ベッドで横になるよ。」

ソファから立ち上がるとき、少しふらついた。
大叔母が手を差し出してくれたが、助けを借りることなく立ち上がった。

皆が心配そうに、病院に、医者に、と言ってくれるが丁重に断った。
血の気が引いている自覚はあったが、笑顔を作ると、大叔母も病院に連れて行くことは諦めたようだ。

「枕元に携帯を置いて寝なさい。辛かったら言うのよ。・・・ああ、そうね、一時間おきに様子を見に行くわ。」

「それは勘弁してよ。大叔母様。」

思わず苦笑したが、大叔母の心配もうなずけるし、とてもありがたいとも思っていた。

僕が自室に向かうため階段を上り始めると、大叔母は心配そうに僕を見上げていた。
お手伝いさんと運転手さんがリビングを後にする気配を、後ろに感じた。


自室のドアを開ける。

ベッドにごろんと寝転がって、天井を見た。


さっき、何かを感じた。何だったんだろう。

NY、テム従兄さん、スケッチ、これは、あの事件のことだよな。
リンゴ、女のコ、人物画・・・よく分からないな。
そして・・・蝶?パク・ハさん?

考えれば考えるほど分からなくて、また、めまいを感じたので、考えるのをやめた。

少し眠ろう。

僕は目を閉じ、やがて静けさに誘われるように、眠りに落ちていった。



身体が浮いていた。水に漂うように。
今度は闇ではない。天井らしいものを見つめていて、それは、普段ベッドから見るよりもずっと近い。
室内の、天井に近い空中を、仰向けに漂っているらしい。

水中でそうするように、くるりとひっくり返って下を見た。

・・・! 
僕が、ベットで寝ている。
幽体離脱さながらに、横たわる僕を、僕自身が上から見つめていた。

死んでしまった僕自身の魂が体を抜け出したのではないことは、服装の違いで明らかだった。
浮いている僕は、自室でベッドに横たわった時のままラフなシャツとイージーパンツ姿だ。
寝ている僕は、病院の入院患者のような着衣で、医療機器らしきものに繋がれている。

ここは病室だ。

そう思った時、病室のドアがゆっくりと開いた。

入ってきたのも、僕だった。・・・いや、イ・ガクか。

彼はベッドの側に立って、メガネ越しにじっとベッドの中の僕を見つめている。
宙に漂う僕に気付く気配はない。

これは夢だ。

僕が二人いたと大叔母様は言っていた。
なるほど、僕と彼が一緒に居るのを見るのは不思議な気分だ。

「すまぬ。ヨン・テヨン。おばあ様を守ってやれなかった。」

イ・ガクの声が聞こえた。
彼は口を開いてはいない。

「私は大きな罪を犯した。犯人を捕らえ、この手で処断し許しを請いたい。」

頭の中で響く声。

「ヨン・テヨン、奮起するのだ。」

その口調にも、聞こえてくるその内容にも、確かに覚えがあった。

僕の記憶の中にあったこと。

どうして、意識不明の僕とイ・ガクのことばかりを夢に見るのだろう。



何処かで携帯の着信音が鳴っている。
バイブレーションが響く音もする。

頭の中は霞がかかったみたいで、夢から現実に引き戻されつつあるのを自覚していた。
目を開けずに腕だけ伸ばして、サイドテーブルの上の携帯を探る。
うつ伏せにベッドで寝ていたんだな、とどうでもいいことを思った。
携帯が手に触れて、バイブレーションの振動を感じたとき、僕は完全に覚醒した。

僕は身を起こし、スマホの画面を見る。ピョ社長からの着信だった。


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