FX

「短編集」
読み切り

桜花 ~ずっと一緒に~

 ←記憶 13 〈最終話〉 →拍手コメント(3/6~17)へのお返事です。


桜を見に行きたいわ。


そんな彼女の一言が発端だった。



桜、いつの間にか、もうそんな季節か・・・。



のんびりと旅行もいいよな。
桜を満喫して、美味しい料理を食べて。
夜は・・・一緒に、温泉?
お湯の上には桜の花びらが浮いていたり・・・
桜色に染まったパッカの・・・


「本部長。この案件ですが・・・。」

キムチーム長からの呼びかけに現実に引き戻された。
僕は思わず咳払いをする。

「ヨン本部長?」

「あ、いや・・・すみません。」

焦っている僕を訝るようなキムチーム長の再びの呼びかけに、僕は取り繕うように答えた。


旅行どころか、普通にお花見だってままならない、この現実。
とにかく仕事を片付けなければ!
彼女の願いも叶えることができないじゃないか。

いつも自分のことは後回しにしてしまうパッカの、ささやかな願い。

『桜を見に行きたいわ。・・・テヨンさんと。』

僕と、って言うのが・・・もう、ダメ押しだろ。
何が何でも、パッカに桜を見せてやらなくちゃ!



◇◇◇


仕事に精を出すこと一週間。
大丈夫、桜はまだ綻び始めたばかり。
でも、暖かい日が続けばあっという間だからな。


その日、どうにか午後からの半休を確保した僕は、パッカと公園で待ち合わせることにした。

南山公園でパッカと再会して以来、外での待ち合わせなんて久しぶりだ。
あの時は来てくれる確証もなくてドキドキしたけど・・・。

今日は、ワクワクする。


パッカが待っている、と思うと集中力が増していつもよりスムーズに仕事が片付いた。
もちろん、キムチーム長が気を回してくれたことも、多分に影響している、と思う。




待ち合わせ場所に駆けつけると、約束の時間よりもかなり早く着いてしまった。
公園は桜を楽しもうとする人達で賑わっている。


しばらくすると、こちらに向かってくるパッカを見つけた。
どんなにたくさん人がいても、僕はすぐにパッカを見つけられる。


あっ!危ない!

突然パッカの前に小さな男の子が飛び出して来て、男の子は転んでしまった。
お互いに驚いて、彼は足をもつれさせてしまったらしい。
すぐにパッカが駆け寄って、男の子を抱き起こす。

大丈夫?ケガはない?そんな事を尋ねているようだ。

近くにいた親御さんにペコペコと頭を下げている。
パッカだけが悪いわけじゃないのに。

男の子はニコニコしながら手を振って、パッカを振り返りつつ母親と共に去って行った。

大したことはなさそうで、良かった。



次は男性に呼び止められた!

何だ?ナンパか?
思わずイラッとして足を踏み出しかけたけど・・・

・・・ガイドブック?
道を尋ねられているのか?

パッカも一緒に本を覗き込んで、考えてる。

どうやら行き先が分かったみたいだ。
体いっぱい使って大きなジェスチャーをしながら、道を教えている。
男性も分かったらしい。笑顔で頷いて、その場を離れた。

パッカ!手は振らなくていいから!



今度は女性達。

写真を撮ってくれと頼まれたらしい。

・・・1枚だけでなく
もっと笑って!ポーズを変えて!なんて指示をして、楽しそうに何枚も撮っている。
上手く撮れたかどうか、一緒に画面を確認したりもして・・・。

あ、また撮ってる。何枚撮る気なんだ?

やっと満足したようで、撮影は終わった。
大きく手を振りながら別れる。


さあ次は何だ?


パッカとの待ち合わせだと言うことも忘れて、当の彼女を見ていた。
見ているだけで、楽しい。



お婆さんが重そうな荷物を持って階段を降りようとしていた。

・・・やっぱり!

パッカが駆けより、手伝いましょうか?と声をかけている。

これは見てるわけにはいかないな。僕の出番だ。

慌てて駆けつけて、お手伝いしますよ、と告げた。
パッカは驚いて僕を見上げる。

「あらぁ・・・良かね?悪かったいね?
そげんまで重くはなかとばってん、
長いこと持ってさるきよったけん、疲れたったいねぇ。
いやぁ、助かります。ありがとうねぇ。」

お婆さんは地方の言葉で笑った。

荷物を運び終えると、更に深いしわを刻んでにっこりと笑うお婆さん。

「そんお嬢さんも別嬪さんばってん、あたも、たいぎゃ、良か男たいね。
うちゲんお父さんの若い頃に、ぎゃん、似とらすばい。
二人とも顔だけじゃなか、心ん中もきれいとたいね。
桜ん花もきれいかったし、今日は良か日和たい。
ほんなごて、ありがとうねぇ。」

お国言葉で褒められて、感謝もされて、照れるけど、僕も良い気持ちだ。
半分くらいは意味が分からなかったけど、嬉しさに笑顔になる。
手を振ってお婆さんと別れた。


「テヨンさん、だいぶ待たせた?ごめんなさい。」

「いいや。それほど待ってないし・・・そんな事じゃ怒らないよ。」


僕は、三百年もパッカを待っていたんだ。
こんな僅かな時間、お人好しの君を待つ事なんて大した事ないさ。


パッカの細い指に僕の指を絡めて、ギュッと握る。

「さあ、僕らも桜を満喫しようか。」

「ええ。」


一年に一度の桜。この先何度見られるだろうか?

桜の花が散るように、いつかは僕の命も散るだろう。

その時が来るまでは・・・


パッカと一緒に

ずっと一緒に


桜の花を見続けられますように。


僕は心の中で、そっと願った。


___________________________________

皆様、こんにちは。
「記憶」があまりにも切なかったので、ほっこりしてほしくて・・・
読者様の種から芽吹いた桜です。

荷物を持ってあげたお婆さん、言葉の意味、分かりました?
熊本弁のお婆ちゃんです。(笑)

私、現在は熊本県在住ですが、出身は広島なので、熊本弁のネイティブじゃありませんけども。(笑)
標準語訳を載せておきます。

「あらぁ・・・良かね?悪かったいね?
そげんまで重くはなかとばってん、
長いこと持ってさるきよったけん、疲れたったいねぇ。
いやぁ、助かります。ありがとうねぇ。」

『あら・・・良いの?悪いわね?
そんなにも重くはないんだけど、
長時間持って歩き回ってたから、疲れちゃったのよ。
いや、助かります。ありがとうね。』


「そんお嬢さんも別嬪さんばってん、あたも、たいぎゃ、良か男たいね。
うちゲんお父さんの若い頃に、ぎゃん、似とらすばい。
二人とも顔だけじゃなか、心ん中もきれいとたいね。
桜ん花もきれいかったし、今日は良か日和たい。
ほんなごて、ありがとうねぇ。」

『そちらのお嬢さんも別嬪さんだけど、あなたも、かなりなイケメンさんね。
うちの旦那さんの若い頃に、とても、似てるわよ。
二人とも顔だけじゃないわ、心の中もきれいなのね。
桜の花もきれいだったし、今日は良い日和だわ。
本当に、ありがとうね。』


さるく → 歩き回る  『ほっつき歩く』 と言うようなニュアンスです。

あた → あなた

たいぎゃ → かなり とても  漢字で書くなら 『大概 』 だと思います。

うちゲ → 私の家  『ゲ』 と言うのが 『家』 のことで、『ばあちゃんゲ』 『あたゲ』 など、言います。

ぎゃん → とても ものすごく

ほんなごて → ほんとにもう  『本当に』 を更に強調する感じでしょうか。

旦那の、祖父母が鹿児島出身で、私の熊本弁には「かごんま」の言葉も混じっているようでして(本人はよく分かってない)
私の話し言葉は、広島弁が主体で熊本弁も混じってるし、もう無茶苦茶です。(苦笑)

と言うわけで、ありちゃんの(ちょっとあやしい)熊本弁講座でした。(^^ゞ

(熊本弁ネイティブの方、添削指導をお願いします。ww)







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~ Comment ~

熊本弁講座

こんちには!熊本弁、解説なしで、おっげ~です。
私、今は東京ですが、出は長崎でしてー
祖母は島原というところ、熊本は、ばあちゃんの親戚のお寺があり...
なんか、すごく懐かしかったです。普段使いはもうこちらの言葉で大丈夫ですが、高校の同級生が仲が良いので二月に一度くらい会うのですが、懐かしいのと、共通言語ですから御国ことばを使うと、あんたは言葉が抜けんね!って言われてしまうほどです。
パッカの花見、テヨンとふたり、南山公園ですね。
これからも、もう何回も、そのうち家族も増えて、一緒に
見る桜、ずっと、続きますように~

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Re: やすべぇ様へ

やすべぇ様

こんにちは!いつもありがとうございます。

> 私、今は東京ですが、出は長崎でしてー
そうですか!長崎の方だったんですね。

> 祖母は島原というところ、熊本は、ばあちゃんの親戚のお寺があり...
以前、海沿いに住んでいたころ、天気のいい日は普賢岳が見えてました。
天草に行った時には、そのまま島原も行きたいねって話してました。

> 共通言語ですから御国ことばを使うと、あんたは言葉が抜けんね!って言われてしまうほどです。
抜けませんよね。私は、普段は色々混じった変なしゃべり言葉ですが、電話で母と話すと戻りますもん。(笑)

> これからも、もう何回も、そのうち家族も増えて、一緒に
> 見る桜、ずっと、続きますように~
本当に!
共感して頂いてありがとうございます。

Re: ほ**様へ

ほ**様

こちらこそ、ありがとうございまぁす。(^^ゞ

ほんまよぉ。
ぶち、にやけっとったに違いないわいねぇ。
キムチーム長の方が、うわてじゃけぇ!
まあ、二人が幸せじゃったら、それでええんじゃけどね。♪

広島弁でお返事してみました。(笑)

あっ!

広島も3年間ほど住んだことあり!
広島弁も呉弁も。おっげ~うちの下の適応以上障害?の三番目の
女子は転勤二日後には、現地の子供でした~。

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Re: やすべぇ様へ

やすべぇ様

おお!広島にもおいでだったんですね!

ほいじゃぁ、私の言いよることは分かるんじゃね。ww
ほんまに、嬉しいことよねぇ。ww

しつこいですね。スミマセン。

Re: 宝***様へ

宝****さま

こんにちは。

テヨンにほっこりして頂けて感謝!
宝***さんの桜のお話もステキでしたよ!(ここでコメするんかい!)
桜って色からして柔らかくて暖かくて、見るだけで嬉しいですよね。
花びらが風に舞うさまは幻想的で、異空間に飛ばされても不思議はない気がします。

方言もある意味異空間。(笑)

「雨ば降りよらして、じっくりなっとらすけん、気を付けなんよ。」(熊本弁)
「雨が降りよって、ぐちゃぐちゃじゃけぇ、気を付けんさいよ。」(広島弁)

何の講座でしょうか・・・。面白くって・・・。ww

Re: ま***様へ

ま***様

ホント、韓国ドラマに熊本弁かぁい!ですよね。(笑)
済州島訛りとか、釜山訛りとかあるらしいので、その代替えのつもりで書いてみました。(笑)
方言って、面白いですよね。

Re: か****様へ

か****様

花粉症!それは大変!
でも、テヨンと花見なら耐えるって!分かります!!
しかも、花よりテヨンなのも!

パッカ、ホントになかなかテヨンの所まで辿り着いてませんね。(クスっ)
的確な表現です!
熊本弁、面白かったですか?
私も嫁いできたばかりの頃は、意味わかんなくて固まってましたよ。(笑)
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