同じ空の下

「小話ボタン」に掲載していた小話を集めたものです。
※「小話ボタン」からは取り下げました。


＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿


テヨンの愛（図面）


テヨンはそれをテーブルの上に拡げた。

「パッカ、新しいお店の図面だよ。」

テヨンが車で突っ込んで無茶苦茶になってしまったパク・ハのジュースショップ。
どうせ総てを作り直さなければならないのだから、全面的にリニューアルをしようということになった。

パク・ハも嬉しそうにその図面を覗き込んだが、怪訝な顔をして、ある個所を指差した。

「テヨンさん、ここ・・・。」

そこはパク・ハのジュースショップの隣、空き店舗になっているはずの場所であって
図面に入るはずのない場所である。

「ああ、リニューアルついでに隣の空き店舗も有効活用できたらと思って。」

「・・・隣も借りるようにしたの？勝手に？家賃、いくらよ？」

パク・ハは唇を尖らせた。

「家賃は要らないよ。」

「え？・・・もしかして・・・。」

「うん、オーナーは僕だ。ビルごと買った。」

「ビルごと？」

「ビルの所有者は僕だから、これからは家賃は払わなくていい。
・・・防犯カメラも増設したし、警備会社とも契約した。」

「・・・・。」

「あんな危険な目に遭ったのに、君はお店をやめる気なんてないだろう？
本当は四六時中僕の傍にいて欲しいけど・・・。」


パク・ハを守るためなら、テヨンは何だってするだろう。


これもテヨンの愛なのだ。



＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿



テヨンの愛（事務所）


四六時中、テヨンの傍に・・・。

パク・ハは溜息を一つ吐く。

大袈裟な・・・と言うには、本当に危険な目に遭ってしまった。
テヨンが助け出してくれたのも事実である。
自分への愛ゆえだと思えば、拒否するのもどうかと思う。
それに・・・もうビルごと買ってしまった後なのだ。

「それで？この部屋は何にするつもりなの？」

「うん？パッカの好きにしてもらっていいけど・・・。」

テヨンに何か考えがありそうなのは明らかで、パク・ハは黙って彼を見つめていた。

「店内の、防犯カメラのモニターを置こうと思ってて・・・。」

「防犯カメラ？」

大して広くもないお店なのに？

「そんなに驚くことじゃないだろ？当然だよ。
要所要所に防犯ブザーも設置する予定だ。レジの横とか・・・。」

それは、まあ、あっても悪い物じゃないけど・・・。

「ここは、事務所兼、休憩室にすればいいんじゃないかな？
この部屋にはカメラは設置しないし・・・結構広いから・・・
なんならベッドも置く？」

「ベッド！なんで？！」

「いや・・・仮眠用と言うか・・・休憩用？」

パク・ハは、テヨンを軽く睨んだ。

「ベッドは要らない。」

「え？じゃあ・・・せめてソファを・・・。」

「事務机と小さな書棚だけでいい。」

ベッドとソファを却下され、テヨンは首を竦めた。

「・・・そういうことは、家ですればいいから・・・。」

「・・・パッカ。そういうことって・・・どういうこと？」

「知らないっ！！」

そっぽを向いたパク・ハの頬は薄っすらと染まっていた。


＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿



ほくろ


パッカにはホクロがある。
僕しか知らないホクロがある。

僕以外の誰にも見せない、その部分に・・・。
もしかしたら、本人も知らないかも知れない、そのホクロ。


「こんなトコロに・・・ホクロが、あるね。」

そう囁いてみようか？


「僕しか知らないだろう？」

そう呟いてみようか？



このホクロも・・・僕だけのモノだ。