「長編(完結)」
贈り物
贈り物 2
出張先のホテルの一室。
ガイドブックに目を通しながら、明日の視察先をチェックする。
ここら辺の飲食店を2、3軒、廻っておくか・・・。
午後の飛行機に乗れば、夕方までには帰れるだろう。
新たな旅行プランを企画するために、僕は独り済州島にやって来た。
新婚旅行のメッカに、僕、独りって・・・。
・・・上手いこと言って、パッカも連れて来れば良かった。
パッカ、まだ起きてるかな?
スマホを取り上げ、時刻を確認する。
電話をかけようと画面に触れようとしたとたん、着信音が鳴り響いた。
社長?
「もしもし。」
「・・・なんだ?随分、出るのが早いな。」
社長の笑いを含んだ声が聞こえる。
第一声がそれって・・・手に持ってたんだから、速攻で出ますって。
「悪かったな、俺で。」
・・・じゃ、切ってもいいですか?と言う訳にもいかない。
「何です?・・・こんな時間に。」
憮然とした僕の声にも社長が怯む様子はない。
「明日、そっちで会って欲しい人物がいてな。」
え?視察もあるのに・・・。
人に会うって・・・5分、10分の話なわけは、ない、はず。
明日は僕の誕生日だ。
夕方までに帰らなきゃ、パッカとの時間が・・・!
冗談じゃない!
言いたいことはたくさんあったが、シンプルに拒否を試みる。
「・・・嫌です。」
「はぁ?何を言ってる。自分の立場ってものを自覚しろ。」
即、却下された。
分かってはいたけど・・・・。
「で、誰に会うんです?」
「ああ、香港のチャン会長だ。」
え?・・・パッカのお母さん?
「お前の義母になる人だ。無下にはできんだろう?」
「いや、もちろんそうですけど・・・なんで、済州島で?」
まして、よりによって明日って・・・。
「ソウルでなら、お義母さんもパッカに会えるし・・・僕にも会いたいと仰るなら、明日、朝一で僕が帰ります。」
「パク・ハさんには、今日の昼に会ったそうだ。会長は、今夜の最終便で済州に飛んだよ。」
ええぇっ!もう、済州島入りしたって言うのか?
あまりな展開に、僕は二の句が継げずにいた。
「チャン会長もそっちで仕事があるそうだ。会食は夜になるだろうから、お前はお前で仕事を済ませて、もう、1泊して来い。」
「え!会食・・・?」
そんな、しかも、もう1泊って・・・。
通話は切れた。
誕生日に出張で家に帰れなくて・・・
誕生日の夜に、恋人ではなくて、その母親と会食って・・・。
スマホを握り締めたまま呆然としていると、また着信音が鳴り響いた。
パッカ!パッカだ!
あわてて通話ボタンをタップする。
「もしもし!パッカ?」
「テヨンさん。・・・聞いた?」
「あ、うん。たった今。」
「ごめんね。急で・・・。」
「いや、・・・お義母さん、元気だった?」
「うん。とっても。」
元気なはず、だよな。フットワークの軽さが並みじゃない。
「そうか。良かった。・・・僕も会えるのを楽しみにしてるよ。」
「うん、ありがとう。テヨンさん、もう遅いから寝て。」
「ああ、おやすみ。」
「おやすみなさい。」
おやすみと言い合ったのに、電話は繋がったままだった。
「・・・切らないの?」
「もう、切るよ。・・・パッカ、愛してる。」
「・・・・。」
「だんまり?酷いな。・・・パッカ、愛してるよ。・・・君は?」
「私も。」
「私も、何?」
「・・・テヨンさん、愛してるわ。」
電話口で、ちゅっとリップ音を立てる。
「おやすみ、パッカ。」
「おやすみなさい、テヨンさん。」
今度こそ通話は切れた。
仕方ない。
パッカとは、1日遅れの誕生日を楽しむしかないようだ。
次の日、僕の誕生日。
僕は粛々と仕事をこなした。
僕が社長になったら、社員規則に、誕生日には出張、残業はしない、休暇を取ることを推奨する、そんな条項を加えてやる!
半ば自棄気味な思考をしながら、それでも、やるからにはいい仕事はしたい。
そんなこんなで、午後の飛行機を諦めていたせいもあって、少し念入りに視察をして廻ったのだった。
約束の時間、指定されたホテルに出向いた。
トスカーナホテル。
こじんまりとはしているが、プールもある高級リゾートホテルで、今度はこのホテルを使ったプランもいいかも知れない、なんて思う。
個人的には、こういうところでパッカとゆっくり過ごしたい、と、そう思う。
まったく・・・
誕生日の今日、こんなリゾートホテルにいながら、僕の隣には、どうしてパッカがいないんだろう。
思わず溜息が漏れた。
僕は深呼吸をして顔を引き締めた。
気を取り直して、フロントに向かう。
彼女の母親に会うのに、つまらなそうな顔をしているわけにはいかない。
フロントでチャン会長の名を告げ、自分の名を名乗った。
ホテルマンは僕の訪問を承知していたようで、笑顔で頷くと会長の部屋に連絡を入れてくれた。
「お部屋までご案内致します。」
ホテルマンは、建物を出て外へ。
案内されたのは、白い壁の離れ だった。
インターホンを押そうとしていたホテルマンに声を掛ける。
「ありがとう。もう、戻ってくれて大丈夫だよ。」
彼は一礼してフロントのある建物の方へ去って行った。
さてと。
僕は自分の服装をチェックする。
肩に埃やゴミは付いていないか?
靴は汚れていないか?
髪は乱れていないか?
インターホンを押した。
___________
ええっと・・・やはり日付跨いでしまいました。
推敲もそこそこにUPしてしまいます。
全然、完結しとらんし・・・
テヨン語りで、雰囲気ガラリと変わってるし・・・
後は、パク・ハ語りで「贈り物」をして、お祝いできたらと思っておる次第です。
もうちょっと早くにお誕生日企画を始めればよかったですぅ。
と、後悔しても後のマツリなんですが・・・
どのみち、構想もなかなか思い浮かばなかったんですよね。
妄想の神様が降りてこないと、難しいです。
もう少し、お付き合いくださると嬉しいです。
【6/5 17時頃 追記】
いやあ、ホント時間の余裕もなく焦ってUPすると拙いです。
どうしようかと思ったのですが、次の流れ的に必要なくだりかなと思って、誕生日当日のテヨンの動きを加筆しました。
トスカーナホテル、済州島に実在します。
ジュンス所縁のホテルです。
お話に書いちゃうからには調べなくては、とググったら、私も行きたくなりました。
テヨンもパッカと行きたいよねぇ。きっと。
ガイドブックに目を通しながら、明日の視察先をチェックする。
ここら辺の飲食店を2、3軒、廻っておくか・・・。
午後の飛行機に乗れば、夕方までには帰れるだろう。
新たな旅行プランを企画するために、僕は独り済州島にやって来た。
新婚旅行のメッカに、僕、独りって・・・。
・・・上手いこと言って、パッカも連れて来れば良かった。
パッカ、まだ起きてるかな?
スマホを取り上げ、時刻を確認する。
電話をかけようと画面に触れようとしたとたん、着信音が鳴り響いた。
社長?
「もしもし。」
「・・・なんだ?随分、出るのが早いな。」
社長の笑いを含んだ声が聞こえる。
第一声がそれって・・・手に持ってたんだから、速攻で出ますって。
「悪かったな、俺で。」
・・・じゃ、切ってもいいですか?と言う訳にもいかない。
「何です?・・・こんな時間に。」
憮然とした僕の声にも社長が怯む様子はない。
「明日、そっちで会って欲しい人物がいてな。」
え?視察もあるのに・・・。
人に会うって・・・5分、10分の話なわけは、ない、はず。
明日は僕の誕生日だ。
夕方までに帰らなきゃ、パッカとの時間が・・・!
冗談じゃない!
言いたいことはたくさんあったが、シンプルに拒否を試みる。
「・・・嫌です。」
「はぁ?何を言ってる。自分の立場ってものを自覚しろ。」
即、却下された。
分かってはいたけど・・・・。
「で、誰に会うんです?」
「ああ、香港のチャン会長だ。」
え?・・・パッカのお母さん?
「お前の義母になる人だ。無下にはできんだろう?」
「いや、もちろんそうですけど・・・なんで、済州島で?」
まして、よりによって明日って・・・。
「ソウルでなら、お義母さんもパッカに会えるし・・・僕にも会いたいと仰るなら、明日、朝一で僕が帰ります。」
「パク・ハさんには、今日の昼に会ったそうだ。会長は、今夜の最終便で済州に飛んだよ。」
ええぇっ!もう、済州島入りしたって言うのか?
あまりな展開に、僕は二の句が継げずにいた。
「チャン会長もそっちで仕事があるそうだ。会食は夜になるだろうから、お前はお前で仕事を済ませて、もう、1泊して来い。」
「え!会食・・・?」
そんな、しかも、もう1泊って・・・。
通話は切れた。
誕生日に出張で家に帰れなくて・・・
誕生日の夜に、恋人ではなくて、その母親と会食って・・・。
スマホを握り締めたまま呆然としていると、また着信音が鳴り響いた。
パッカ!パッカだ!
あわてて通話ボタンをタップする。
「もしもし!パッカ?」
「テヨンさん。・・・聞いた?」
「あ、うん。たった今。」
「ごめんね。急で・・・。」
「いや、・・・お義母さん、元気だった?」
「うん。とっても。」
元気なはず、だよな。フットワークの軽さが並みじゃない。
「そうか。良かった。・・・僕も会えるのを楽しみにしてるよ。」
「うん、ありがとう。テヨンさん、もう遅いから寝て。」
「ああ、おやすみ。」
「おやすみなさい。」
おやすみと言い合ったのに、電話は繋がったままだった。
「・・・切らないの?」
「もう、切るよ。・・・パッカ、愛してる。」
「・・・・。」
「だんまり?酷いな。・・・パッカ、愛してるよ。・・・君は?」
「私も。」
「私も、何?」
「・・・テヨンさん、愛してるわ。」
電話口で、ちゅっとリップ音を立てる。
「おやすみ、パッカ。」
「おやすみなさい、テヨンさん。」
今度こそ通話は切れた。
仕方ない。
パッカとは、1日遅れの誕生日を楽しむしかないようだ。
次の日、僕の誕生日。
僕は粛々と仕事をこなした。
僕が社長になったら、社員規則に、誕生日には出張、残業はしない、休暇を取ることを推奨する、そんな条項を加えてやる!
半ば自棄気味な思考をしながら、それでも、やるからにはいい仕事はしたい。
そんなこんなで、午後の飛行機を諦めていたせいもあって、少し念入りに視察をして廻ったのだった。
約束の時間、指定されたホテルに出向いた。
トスカーナホテル。
こじんまりとはしているが、プールもある高級リゾートホテルで、今度はこのホテルを使ったプランもいいかも知れない、なんて思う。
個人的には、こういうところでパッカとゆっくり過ごしたい、と、そう思う。
まったく・・・
誕生日の今日、こんなリゾートホテルにいながら、僕の隣には、どうしてパッカがいないんだろう。
思わず溜息が漏れた。
僕は深呼吸をして顔を引き締めた。
気を取り直して、フロントに向かう。
彼女の母親に会うのに、つまらなそうな顔をしているわけにはいかない。
フロントでチャン会長の名を告げ、自分の名を名乗った。
ホテルマンは僕の訪問を承知していたようで、笑顔で頷くと会長の部屋に連絡を入れてくれた。
「お部屋までご案内致します。」
ホテルマンは、建物を出て外へ。
案内されたのは、白い壁の
インターホンを押そうとしていたホテルマンに声を掛ける。
「ありがとう。もう、戻ってくれて大丈夫だよ。」
彼は一礼してフロントのある建物の方へ去って行った。
さてと。
僕は自分の服装をチェックする。
肩に埃やゴミは付いていないか?
靴は汚れていないか?
髪は乱れていないか?
インターホンを押した。
___________
ええっと・・・やはり日付跨いでしまいました。

推敲もそこそこにUPしてしまいます。

全然、完結しとらんし・・・
テヨン語りで、雰囲気ガラリと変わってるし・・・
後は、パク・ハ語りで「贈り物」をして、お祝いできたらと思っておる次第です。
もうちょっと早くにお誕生日企画を始めればよかったですぅ。
と、後悔しても後のマツリなんですが・・・
どのみち、構想もなかなか思い浮かばなかったんですよね。

妄想の神様が降りてこないと、難しいです。
もう少し、お付き合いくださると嬉しいです。
【6/5 17時頃 追記】
いやあ、ホント時間の余裕もなく焦ってUPすると拙いです。

どうしようかと思ったのですが、次の流れ的に必要なくだりかなと思って、誕生日当日のテヨンの動きを加筆しました。
トスカーナホテル、済州島に実在します。
ジュンス所縁のホテルです。
お話に書いちゃうからには調べなくては、とググったら、私も行きたくなりました。

テヨンもパッカと行きたいよねぇ。きっと。
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