「長編(完結)」
目覚めたテヨン
目覚めたテヨン 13
子供のように泣いてしまった。
そして、泣き疲れてそのまま寝てしまった。
ほんとに、子供みたいだ。
昨日のことを思い出すと恥ずかしくて、思わず頭を掻いた。
でも、ぐっすりと眠ることができた。しかも、12時間以上は眠った。
おかげで頭はスッキリしている。・・・顔は少々ひどかったけれど。
朝、大叔母と顔を合わせた時、何か言われる前に、病院へ行きますと告げた。
大叔母はうんうんと頷いて、私の車を使いなさい、すなわち、運転手付きの車に乗るようにと言ってきたわけだが、深窓の令嬢じゃあるまいに、自分で運転しますよと僕は笑った。
朝食もしっかり摂ったので、大叔母は安心したようだった。
病院へ行くと、大叔母が主治医に連絡していたらしくほとんど待つこともなく診察室へ招き入れられた。
昨日のことを中心に最近の様子を聞かれ、脈をとられ、胸や背中に聴診器を当てられた。
無理をして、ご家族に心配をかけてはいかんよ、そう一言告げられて解放された。
とりあえず、大叔母に電話をし、なんでもなかったよと伝えた。
社長命令は果たしたし、そのまま会社に行こうかとも思ったが少しラフな格好をしていたので、社長にも電話をし、着替えてから出社しますと伝えた。
社長は短く、いいから、休めと言った。それならと、遠慮せずに休むことにして街を歩いた。
そして、僕は意を決して、パク・ハさんのお店に向かった。
けれど、僕はパク・ハさんのお店に入れずにいて、今、同じ通りを往復すること5回目だったりする。
1度目は中の様子を横目で見ながら、通り過ぎた。お客さんが何人か待っている。
方向転換して、歩きながらまた店内を窺うと、待ち客はいなかったが店内の椅子に座ってジュースを飲む人がいた。
誰もいなくなったタイミングで店に入りたかったのだけど、チャンスがなくて、行ったり来たりしている。
これじゃ、怪しいやつだ。
・・・しっかりしろよ、ヨン・テヨン。日が暮れてしまうぞ。
覚悟を決めて店のドアを押した。
カランカランとドアが開いたことを告げる鐘の音がして、いらっしゃいませと彼女が小さく言う。
僕と入れ違いに一人の客が出ていき、店内は彼女と僕だけになった。
やっと、みつけた。
うつむき加減の彼女を見て、我知らず、そう思った。
「リンゴジュースを一つ。」
パク・ハさんは返事もしない。
おまけに、客である僕を見ることもしないで、惰性のようにジューサーに手を掛けた。
接客業としてその態度はどうだろうか。とても褒められたものではない。
だけど、不快感はまるで感じず、むしろ嬉しさが込み上げてくる。
店内をぐるっと見渡した後、顔を上げようともしない彼女と目が合わないことを幸いに、その顔をじっと見つめた。
パク・ハさんの手は止まってしまっている。
「リンゴジュースを。」
「はい。」
やっと小さく返事をした。
僕は多分、いや、確実に微笑んでいた。
パク・ハさんは相変わらず僕を見ようともしないで、出来上がったジュースをカップに注ぐ。
支払いを済ませて、ありがとうと言うと、彼女もありがとうございますと言ったが、心ここにあらずといった風だった。
ジュースを受け取ると、僕は彼女に背を向けた。
笑えばいいのに。
そう思いながら、彼女に背を向けたまま、僕の方がお手本みたいに微笑んでそのまま店を出た。
またカランと鐘が鳴る。
声を掛けられなかった。
彼女は僕を見なかった。見られなかったから、彼女の顔をじっと見てしまった。ずっとそうしていたい衝動に駆られていたが、そうするわけにもいかず店を出てきた。
これからどうしようか。
パク・ハさんの店の、車道を挟んだ向かい側は、公園のようなちょっとした緑地帯になっていてベンチもあった。
僕はそのベンチを目指すことにした。
ベンチに腰を下ろして、隣にバックパックを置く。
手にあるリンゴジュースを一口飲んでみた。大叔母の言う通りおいしかった。
パク・ハさんのお店がよく見えていた。中の様子もよく分かる。
表情までは分からないが、彼女はきっと笑ってはいないだろう。
うつむき加減の、どこか寂しげなその表情を思い返すと、彼女の表情とは対照的に、僕の方はその頬が緩んでしまっていた。
単純に嬉しかった。・・・声もかけられなかったのに?
思わず、自問しつつ頭を掻いた。
しばらく、彼女の様子を観察していたが、ハッとしてバックパックを探る。
1枚の絵ハガキを取り出した。
今見てきたばかりの彼女の姿を思い浮かべながら、鉛筆を滑らせていく。
初めてにしては上出来だ。そんなことを思いながら、ふと大叔母の言葉が頭をよぎった。
若い女のコなら描くくせに。
否定できなくなったよ、大叔母様。
そして、やはり頬が緩むのを自覚していた。
大叔母が見ていたら、気持ち悪いと言ったことだろう。
ここに大叔母はいないが、人に見られてはたまらない。
僕は下を向いた。
そして、泣き疲れてそのまま寝てしまった。
ほんとに、子供みたいだ。
昨日のことを思い出すと恥ずかしくて、思わず頭を掻いた。
でも、ぐっすりと眠ることができた。しかも、12時間以上は眠った。
おかげで頭はスッキリしている。・・・顔は少々ひどかったけれど。
朝、大叔母と顔を合わせた時、何か言われる前に、病院へ行きますと告げた。
大叔母はうんうんと頷いて、私の車を使いなさい、すなわち、運転手付きの車に乗るようにと言ってきたわけだが、深窓の令嬢じゃあるまいに、自分で運転しますよと僕は笑った。
朝食もしっかり摂ったので、大叔母は安心したようだった。
病院へ行くと、大叔母が主治医に連絡していたらしくほとんど待つこともなく診察室へ招き入れられた。
昨日のことを中心に最近の様子を聞かれ、脈をとられ、胸や背中に聴診器を当てられた。
無理をして、ご家族に心配をかけてはいかんよ、そう一言告げられて解放された。
とりあえず、大叔母に電話をし、なんでもなかったよと伝えた。
社長命令は果たしたし、そのまま会社に行こうかとも思ったが少しラフな格好をしていたので、社長にも電話をし、着替えてから出社しますと伝えた。
社長は短く、いいから、休めと言った。それならと、遠慮せずに休むことにして街を歩いた。
そして、僕は意を決して、パク・ハさんのお店に向かった。
けれど、僕はパク・ハさんのお店に入れずにいて、今、同じ通りを往復すること5回目だったりする。
1度目は中の様子を横目で見ながら、通り過ぎた。お客さんが何人か待っている。
方向転換して、歩きながらまた店内を窺うと、待ち客はいなかったが店内の椅子に座ってジュースを飲む人がいた。
誰もいなくなったタイミングで店に入りたかったのだけど、チャンスがなくて、行ったり来たりしている。
これじゃ、怪しいやつだ。
・・・しっかりしろよ、ヨン・テヨン。日が暮れてしまうぞ。
覚悟を決めて店のドアを押した。
カランカランとドアが開いたことを告げる鐘の音がして、いらっしゃいませと彼女が小さく言う。
僕と入れ違いに一人の客が出ていき、店内は彼女と僕だけになった。
やっと、みつけた。
うつむき加減の彼女を見て、我知らず、そう思った。
「リンゴジュースを一つ。」
パク・ハさんは返事もしない。
おまけに、客である僕を見ることもしないで、惰性のようにジューサーに手を掛けた。
接客業としてその態度はどうだろうか。とても褒められたものではない。
だけど、不快感はまるで感じず、むしろ嬉しさが込み上げてくる。
店内をぐるっと見渡した後、顔を上げようともしない彼女と目が合わないことを幸いに、その顔をじっと見つめた。
パク・ハさんの手は止まってしまっている。
「リンゴジュースを。」
「はい。」
やっと小さく返事をした。
僕は多分、いや、確実に微笑んでいた。
パク・ハさんは相変わらず僕を見ようともしないで、出来上がったジュースをカップに注ぐ。
支払いを済ませて、ありがとうと言うと、彼女もありがとうございますと言ったが、心ここにあらずといった風だった。
ジュースを受け取ると、僕は彼女に背を向けた。
笑えばいいのに。
そう思いながら、彼女に背を向けたまま、僕の方がお手本みたいに微笑んでそのまま店を出た。
またカランと鐘が鳴る。
声を掛けられなかった。
彼女は僕を見なかった。見られなかったから、彼女の顔をじっと見てしまった。ずっとそうしていたい衝動に駆られていたが、そうするわけにもいかず店を出てきた。
これからどうしようか。
パク・ハさんの店の、車道を挟んだ向かい側は、公園のようなちょっとした緑地帯になっていてベンチもあった。
僕はそのベンチを目指すことにした。
ベンチに腰を下ろして、隣にバックパックを置く。
手にあるリンゴジュースを一口飲んでみた。大叔母の言う通りおいしかった。
パク・ハさんのお店がよく見えていた。中の様子もよく分かる。
表情までは分からないが、彼女はきっと笑ってはいないだろう。
うつむき加減の、どこか寂しげなその表情を思い返すと、彼女の表情とは対照的に、僕の方はその頬が緩んでしまっていた。
単純に嬉しかった。・・・声もかけられなかったのに?
思わず、自問しつつ頭を掻いた。
しばらく、彼女の様子を観察していたが、ハッとしてバックパックを探る。
1枚の絵ハガキを取り出した。
今見てきたばかりの彼女の姿を思い浮かべながら、鉛筆を滑らせていく。
初めてにしては上出来だ。そんなことを思いながら、ふと大叔母の言葉が頭をよぎった。
若い女のコなら描くくせに。
否定できなくなったよ、大叔母様。
そして、やはり頬が緩むのを自覚していた。
大叔母が見ていたら、気持ち悪いと言ったことだろう。
ここに大叔母はいないが、人に見られてはたまらない。
僕は下を向いた。
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