「長編(完結)」
贈り物
贈り物 7
開いた扉の向こうで、テヨンさんは呟くように私の名を呼ぶ。
彼は、そのまま呆然と立っていた。
今夜、私がここに来ることを知らされてなかったんですって。
私の母がテヨンさんと食事をしたいと言ってる、と聞いたのだそう。
いつもと違う服装も、きっちりとしたメイクも、全部、母からの指示だった。
テヨンさんは、無意識のように私のドレスの胸元のリボンにそっと触れ、
私のことを、母からの『贈り物』だ、と言った。
私自身が贈り物?
果たして母にそのつもりがあったかどうかは分からない。
店の経営はどうかと訊かれても、困ったことはないかと訊かれても、
大丈夫よ、といつも笑って答えていた。
お小遣いをあげると言われても、欲しい物を買ってあげると言われても、
それなりに稼いでるから気にしないで、とやんわり断ってきた。
テヨンさんへの『贈り物』だと言いながら、私のドレスを選び始めたオンマ。
「どうして、私のドレスなの?」
「あら、誕生日にはパートーナーと過ごしたいに決まってるわ。
飛び切りのお洒落をした恋人と、美味しい食事を楽しんで・・・
そのお膳立てをすることが、私からの『贈り物』よ。貴女はそれに協力なさい。」
戸惑っている私に、母は笑顔でそう言った。
こっちの方が彼の好みかしら?
これならテヨンさんも喜びそうよね!
楽しそうに、心から楽しそうに、笑っていた母。
オンマは、テヨンさんの誕生日に託けて、私に何かを買い与えたかったに違いない。
テヨンさんへの贈り物。
そう言えば、私も受け取るだろうと考えたのかも。
母の愛情を実感した。
甘えるコトも親孝行、なのよね。
母が準備した『贈り物』をテヨンさんは喜んでくれたようで
優しいキスをくれた。
テヨンさんを待ちながら自分が想像していたような流れになって・・・
彼は私をベッドルームに連れて来た。
良かった。テヨンさんが喜んでくれて。
嬉しいよ、って微笑んで
抱きしめて
・・・甘いキスを、くれて
そして・・・
後ろから抱きすくめられて、ドキドキした。
身体の密着が解かれたと思ったら、ごくりと喉を鳴らしている。
肩に触れる彼の手の熱さに、思わずぴくりと揺れてしまう。
顔だけ振り向いたら、優しく口づけられた。
・・・私・・・こんな風なキスが・・・すごく好き。
うっとりとしていると、テヨンさんはキスを続けながら、私の身体を彼の方へ反転させた。
そのまま、優しく抱きしめてくれる。
「・・・テヨン、さん。」
そして・・・もう1度、キス・・・。
!!
待って!!!
大事なことを忘れてるじゃない!
「テヨンさん・・・レストランも予約してあるの。」
時計を見たテヨンさんは、1時間以上もある、とか言ってそのまま続けようとする!
私からの『贈り物』を受け取ったテヨンさんが
嬉しいよ、って微笑んで
抱きしめて
・・・甘いキスを、くれて・・・なはずだったのに・・・
私ときたら・・・
肝心の『贈り物』を渡すこともせずに
その先に訪れるはずの流れに身を任せてしまったなんて!
まるで、それを期待してたみたいに・・・
そもそも渡す前にこんな流れになるだなんて、思いもしなかったし!
あ、でも、正直、期待してたのは否定でき・・・ない、かな。
私はオンマが準備してくれたドレスでお洒落をして、
テヨンさんは私が準備した『贈り物』を身に着けて、
一緒に美味しい食事を楽しんで、リゾートホテルの素敵な部屋で朝を迎える。
それが、ホントの流れだったはず、なんだけど・・・。
また一階のリビングに戻った。
テヨンさんは、リボンを解いてその包装 を開いた。
現れた箱の蓋を、そっと外す。
「これは・・・。」
「アジョッシに勧められたの。」
「あの、店に行ったの?」
テヨンさんは驚いた表情で私を見ている。
「うん、偶然ね。
・・・アジョッシが、テヨンさんも喜んで、私も満足するって。
私はとっても素敵だと思ってるんだけど・・・どう、かな?」
テヨンさんが喜んでくれなければ、私も、本当に満足できたことにはならない。
弾かれたように彼の腕が伸びてきて、
次の瞬間、私のウエストはその腕に捕らえられていた。ぐっと引き寄せられ、至近距離で顔を覗き込まれる。
そのまま、唇を重ねられた。
「パッカ。パッカ!ありがとう!本当に嬉しいよ!!」
苦しいぐらいに抱きしめられて、腕が緩められたかと思ったら見つめられて、
また、キスが降って来る。
「これを着けて、食事に行こう。」
テヨンさんは嬉しそうに微笑んだ。
私も嬉しくなって微笑み返す。
「食事を楽しんだ後は、君のドレス のリボンを解くからね。」
彼は片目を瞑って笑った。
「もう、知らないわよっ!・・・あんぽんたん!」
白い壁の離れ を出る。
テヨンさんは、腕を肘から曲げて私の方へ差し出すようにした。
背筋を伸ばして、隣の私に目配せをする。
私はそっと彼の腕に掴まった。
彼は、そのまま呆然と立っていた。
今夜、私がここに来ることを知らされてなかったんですって。
私の母がテヨンさんと食事をしたいと言ってる、と聞いたのだそう。
いつもと違う服装も、きっちりとしたメイクも、全部、母からの指示だった。
テヨンさんは、無意識のように私のドレスの胸元のリボンにそっと触れ、
私のことを、母からの『贈り物』だ、と言った。
私自身が贈り物?
果たして母にそのつもりがあったかどうかは分からない。
店の経営はどうかと訊かれても、困ったことはないかと訊かれても、
大丈夫よ、といつも笑って答えていた。
お小遣いをあげると言われても、欲しい物を買ってあげると言われても、
それなりに稼いでるから気にしないで、とやんわり断ってきた。
テヨンさんへの『贈り物』だと言いながら、私のドレスを選び始めたオンマ。
「どうして、私のドレスなの?」
「あら、誕生日にはパートーナーと過ごしたいに決まってるわ。
飛び切りのお洒落をした恋人と、美味しい食事を楽しんで・・・
そのお膳立てをすることが、私からの『贈り物』よ。貴女はそれに協力なさい。」
戸惑っている私に、母は笑顔でそう言った。
こっちの方が彼の好みかしら?
これならテヨンさんも喜びそうよね!
楽しそうに、心から楽しそうに、笑っていた母。
オンマは、テヨンさんの誕生日に託けて、私に何かを買い与えたかったに違いない。
テヨンさんへの贈り物。
そう言えば、私も受け取るだろうと考えたのかも。
母の愛情を実感した。
甘えるコトも親孝行、なのよね。
母が準備した『贈り物』をテヨンさんは喜んでくれたようで
優しいキスをくれた。
テヨンさんを待ちながら自分が想像していたような流れになって・・・
彼は私をベッドルームに連れて来た。
良かった。テヨンさんが喜んでくれて。
嬉しいよ、って微笑んで
抱きしめて
・・・甘いキスを、くれて
そして・・・
後ろから抱きすくめられて、ドキドキした。
身体の密着が解かれたと思ったら、ごくりと喉を鳴らしている。
肩に触れる彼の手の熱さに、思わずぴくりと揺れてしまう。
顔だけ振り向いたら、優しく口づけられた。
・・・私・・・こんな風なキスが・・・すごく好き。
うっとりとしていると、テヨンさんはキスを続けながら、私の身体を彼の方へ反転させた。
そのまま、優しく抱きしめてくれる。
「・・・テヨン、さん。」
そして・・・もう1度、キス・・・。
!!
待って!!!
大事なことを忘れてるじゃない!
「テヨンさん・・・レストランも予約してあるの。」
時計を見たテヨンさんは、1時間以上もある、とか言ってそのまま続けようとする!
私からの『贈り物』を受け取ったテヨンさんが
嬉しいよ、って微笑んで
抱きしめて
・・・甘いキスを、くれて・・・なはずだったのに・・・
私ときたら・・・
肝心の『贈り物』を渡すこともせずに
その先に訪れるはずの流れに身を任せてしまったなんて!
まるで、それを期待してたみたいに・・・
そもそも渡す前にこんな流れになるだなんて、思いもしなかったし!
あ、でも、正直、期待してたのは否定でき・・・ない、かな。
私はオンマが準備してくれたドレスでお洒落をして、
テヨンさんは私が準備した『贈り物』を身に着けて、
一緒に美味しい食事を楽しんで、リゾートホテルの素敵な部屋で朝を迎える。
それが、ホントの流れだったはず、なんだけど・・・。
また一階のリビングに戻った。
テヨンさんは、リボンを解いてその
現れた箱の蓋を、そっと外す。
「これは・・・。」
「アジョッシに勧められたの。」
「あの、店に行ったの?」
テヨンさんは驚いた表情で私を見ている。
「うん、偶然ね。
・・・アジョッシが、テヨンさんも喜んで、私も満足するって。
私はとっても素敵だと思ってるんだけど・・・どう、かな?」
テヨンさんが喜んでくれなければ、私も、本当に満足できたことにはならない。
弾かれたように彼の腕が伸びてきて、
次の瞬間、私のウエストはその腕に捕らえられていた。ぐっと引き寄せられ、至近距離で顔を覗き込まれる。
そのまま、唇を重ねられた。
「パッカ。パッカ!ありがとう!本当に嬉しいよ!!」
苦しいぐらいに抱きしめられて、腕が緩められたかと思ったら見つめられて、
また、キスが降って来る。
「これを着けて、食事に行こう。」
テヨンさんは嬉しそうに微笑んだ。
私も嬉しくなって微笑み返す。
「食事を楽しんだ後は、君の
彼は片目を瞑って笑った。
「もう、知らないわよっ!・・・あんぽんたん!」
白い壁の
テヨンさんは、腕を肘から曲げて私の方へ差し出すようにした。
背筋を伸ばして、隣の私に目配せをする。
私はそっと彼の腕に掴まった。
~ Comment ~
NoTitle
ありちゃんさん、こんばんは。
連載、嬉しいです。
テヨン、焦らされてますねぇ。
「食事を楽しんだ後は君のドレス(ラッピング)のリボンを解くからね」
↑こんなセリフ言ってサマになる人ってそうそういませんよね。
さすがテヨン。
でも食事を楽しむ余裕あるんでしょうかね・・・?
早く部屋に戻りたくて気もそぞろなんじゃ・・(笑)
次回も楽しみです!
連載、嬉しいです。
テヨン、焦らされてますねぇ。
「食事を楽しんだ後は君のドレス(ラッピング)のリボンを解くからね」
↑こんなセリフ言ってサマになる人ってそうそういませんよね。
さすがテヨン。
でも食事を楽しむ余裕あるんでしょうかね・・・?
早く部屋に戻りたくて気もそぞろなんじゃ・・(笑)
次回も楽しみです!
- #1385 瑞月
- URL
- 2016.06/14 23:31
- ▲EntryTop
Re: やすべぇ様へ
やすべぇ様
> パッカになりすまして、この妄想を一人楽しんで
> おります!
どんどん妄想してください!
楽しんでください!
> 続きがあって、嬉しいです。
ありがとうございます。
ちまちま続けております。(笑)
> パッカになりすまして、この妄想を一人楽しんで
> おります!
どんどん妄想してください!
楽しんでください!
> 続きがあって、嬉しいです。
ありがとうございます。
ちまちま続けております。(笑)
Re: か****様へ
か****様
38度、越えてるぅ?
どうして子供って熱があっても元気なんでしょうね?
お母さんは大変だぁ。(苦笑)
当然、パッカも期待してますから。♡
ユチョンの報道の件は・・・情報が錯綜しています。
私としては幸せな妄想で、傷ついたペンたちがほっこりしてくれるといいなと思うし、ユチョンに応援の気持ちが伝わるといいなと思ってます。
38度、越えてるぅ?
どうして子供って熱があっても元気なんでしょうね?
お母さんは大変だぁ。(苦笑)
当然、パッカも期待してますから。♡
ユチョンの報道の件は・・・情報が錯綜しています。
私としては幸せな妄想で、傷ついたペンたちがほっこりしてくれるといいなと思うし、ユチョンに応援の気持ちが伝わるといいなと思ってます。
Re: 瑞月さまへ
瑞月さま
テヨン、焦らされてますねぇ。ww
> でも食事を楽しむ余裕あるんでしょうかね・・・?
仰る通り!(次話で)本人、はっきり言っちゃってますから!(笑)
テヨン、焦らされてますねぇ。ww
> でも食事を楽しむ余裕あるんでしょうかね・・・?
仰る通り!(次話で)本人、はっきり言っちゃってますから!(笑)
Re: ま***様
ま***さま
パッカは家族に恵まれませんでしたからね。
私のお話の中でくらい、オンマに甘えさせてあげたかったんです。
オンマはのりのりでドレスを選んだと思います。(笑)
パッカは家族に恵まれませんでしたからね。
私のお話の中でくらい、オンマに甘えさせてあげたかったんです。
オンマはのりのりでドレスを選んだと思います。(笑)
うわぁ~
のいる、パッカになりすまして、この妄想を一人楽しんで
おります!お祝いの言葉、ありがとうございました!(ぺこり)
続きがあって、嬉しいです。