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「短話シリーズ」

雷鳴

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社外での打ち合わせを終えて、会社に戻ろうと街中を歩いていた。
頬に雨粒が当たるのを感じて空を見上げる。
鉛色の雲が、重たげに空を覆い始めていた。
僕は近くのコンビニに入った。

傘を買うか、雨宿りするか・・・・

思案するうちに雨は激しさを増していく。


・・・どうせなら、パッカのところで雨宿りをしよう。


僕は傘を買って、コンビニを出た。

雨宿りをする為に傘を買う、そして、雨宿りをする為に激しい雨の中を歩く。

ふん

本末転倒と笑うなら笑ってくれ。
パッカに会えるなら、理由なんてなんでもいい。
そもそもが彼女に会いたいだけなんだから、その理由づけなんてモノも必要ないのかも知れないが・・・

一応、勤務中だからさ。
パッカに、油売ってるっていつも言われちゃうからさ。

誰に言い訳するでもなく言い訳めいたことを考えながら、雨の中、パッカのお店に急いだ。

そのうちに雷までなり始めて。


ガラガラガラ!ドッシャーン!!


パッカの店の前に来たとき、ものすごい音で雷鳴が鳴り響き、雷が落ちた。

厚い雨雲と、激しく打ち付ける雨のせいで辺りは暗かったけれど、街灯まで消えてしまって益々暗くなる。
どうやら、停電してしまったらしく、店の中も真っ暗だ。

パッカは大丈夫かな?

僕は思わず肩を竦めて、店の入口のガラス戸を押す。


カラン


「すごい雷だね。パッ・・・。」

目の前の光景に絶句してしまった。


全然、大丈夫なんかじゃ、なかった。


パッカが・・・

キムチーム長と

抱き合ってる?

いや
正しくは、抱き合ってるんじゃない。
キムチーム長は両手を上げて、万歳の格好になっている。

パッカが、一方的にキムチーム長に抱き付いている。

が、正しい表現だろう。

・・・・・・・。

察するに・・・

今の落雷に驚いたパッカが、近くにいたキムチーム長に抱き付いてしまった。

と、言うところか・・・。


キムチーム長は、どうして、ここに?


泳がせた視線の先、カウンターの上にはジュースカップの入っているらしい紙袋。

いつもの、部下への差し入れを買いに・・・

と言うことか。


何だか時間がゆっくりと流れているように感じていたけれど、実際には一瞬のうちに色々考えていた。


すぐにライトが点いて、パッカは何事もなかったようにキムチーム長から離れた。

そして僕の存在に気付いたらしい。

「テヨンさん。濡れちゃった?すごい雷ね。」

なんて言いながら、僕にタオルを渡してくれる。

とぼけてるの?
いっそ清々しいほどに、キムチーム長のことは無視なんだね。

僕の視線はキムチーム長に向けられたままだったから、彼もいたたまれない様子で・・・

「本部長・・・あの・・・。」


ガラガラガラ!ドン!ドッシャーン!


「きゃあっ!!」

パッカは僕に抱きついてきた。

ああ、やっぱり雷が怖くって、たまたま近くにいたキムチーム長に抱き付いただけ、だったんだね?


・・・パッカ。
そうだと思ったよ。君やキムチーム長を疑いはしないさ。
これっぽちも、疑ってなんかない。


・・・頭では、分かる、けどね。


僕以外の男に抱き付くって・・・・どういうつもり?


僕は抱きついてきたパッカの背中に手を廻し、逃げられないように締め付けた。


パッカの肩越しに、キムチーム長を見る。


キムチーム長。貴方を部下として信頼しています。
今回のこともただの事故でしょう。
僕は、本当に、貴方を信頼しています。

だけれど・・・感情は・・・抑えられない。


何故か、背筋がぞくりとして・・・意地悪く唇を歪めていた。
そして
そのままパッカの唇を奪った。
正に、奪い取るつもりで、何度も角度を変えながら吸い上げる。

キムチーム長の息を飲む気配が伝わってきたが・・・

そんなの構うもんか。
・・・パッカは僕のものだ。ちゃんと、分からせてやる。


感情だけが暴走して、半ば怒りにも似た思いが湧きあがる。
それは、そのまま欲情に直結していった。


パッカは艶めいた吐息を漏らしている。


キムチーム長はその場を離れることも許されず、くるりと僕達に背を向けたみたいだった。


まさか、流石に彼の前でパッカの痴態を見せるわけにもいかないから、何度か激しいキスを繰り返した後、力の抜け切ったパッカが正気を取り戻すまでそのまま抱き留めていた。


パッカの虚ろだった目に光が戻る。
彼女はハッとしたように僕を見て、キムチーム長を振り返ろうとしたから、その二の腕をぐいっと引いて僕の後ろに押しやる。
そうしてキムチーム長から彼女を見えないようにした。
パッカは真っ赤になって俯いてる。

キムチーム長は相変わらず背を向けていた。

「キムチーム長。」

「・・・はい。」

彼はゆっくりと振り向いた。

「少し、小降りになった、ようですね。」

あれほどうるさかった雷鳴も遠ざかり、雨も小雨程度になっていた。

「え?ああ・・・そうみたいです。」

「傘は持っていますか?」

「いえ・・・それで、雨宿りを・・・。」

「外に、僕の差してきた傘があります。使ってください。」

「・・・・ありがとうございます。」

本部長はどうするのですか、とか訊いてこない辺りは、流石だ。


キムチーム長はカウンターの上の紙袋を取ると、僕に会釈をして横を通り過ぎた。
僕の背後に隠してあるパッカのことは、彼女の為にも無視してくれているのだろう。


「本部長。」

ガラス戸を開けながら、振り向かないで僕を呼ぶ。

「何です?」

「会社には戻らず、直帰、なさいますか?」

「・・・・ええ。」

「では、報告書はまた、明日。」

「ええ、そうしてください。」

カラン、と鐘が鳴りキムチーム長は出て行った。



「パッカ。」

彼女は俯いたまま何も言わない。

「パッカ。」

「・・・・。」

「何?聞き取れないよ。」

「・・・あんぽんたん!もう恥ずかしくて、キムチーム長に会えないわ!」

・・・酷いな。あんぽんたんは君の方だろ。

「大丈夫だよ。」

「大丈夫じゃない!!」

パッカが僕を睨む。
恥ずかしさで真っ赤になって・・・色っぽいな、なんて思ってしまう辺り・・・
僕も相当惚れ込んでるんだ。

「君が悪いんだよ。」

「どうして!」

は?・・・どうして?って・・・

「キムチーム長に抱き付いた君が悪い!」

「は?私がいつ、キムチーム長に抱き付いたのよ!」

は?だって?・・・はぁ?って言いたいのは僕の方だよ。
パッカ、それって、本気で言ってるの?

「抱き付いたのは、テヨンさんに、でしょ!人前で、あんなキスして・・・
あんぽんたん!抱き付くんじゃなかった!」

僕は思わず全身の力が抜けてしまった。

とぼけてるのか、ごまかしてるのか・・・ホントは自覚してるんだろ?

ねえ、パッカ。



ふう。



無かったことにするつもりなんだ?

分かった。それなら、それでいいけどね。



僕は店の入口ドアに鍵をかける。
店内のライトも総て消した。



「パッカ。人前じゃなければいいんだろう?」


また彼女の二の腕を掴んで引き寄せた。
さっきよりは優しめに口づけたつもりだが、それでも激しいキスだったろう。


ああ・・・やっぱりパッカは自覚してる。
それが証拠に抵抗してこない。

悪かったって思ってるから、こんな時間、こんな場所でも、
僕の・・・

こんなキスを受け入れるんだろう?




まったく・・・意地っ張りなお嬢さんだね。
そんなに謝りたくないの?
いいよ、それでも・・・



僕が

君の口から


ごめんなさい


って、言わせてみせるから。






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~ Comment ~

キスは大人なんだけど~

やっていることは、大人なんだけど、子供っぽい~かな?
テヨナほど、素敵な人なら、わたしなら、このやきもちもおまけ付きで
許せちゃう~毎日、更新、うれしいです。

Re: やすべぇ様へ

やすべぇ様

> やっていることは、大人なんだけど、子供っぽい~かな?
あはは、ホントですね。大人な手段で子供っぽい振舞いだぁ。

> テヨナほど、素敵な人なら、わたしなら、このやきもちもおまけ付きで
> 許せちゃう~
ホント、ホント、同感です。

> 毎日、更新、うれしいです。
ありがとうございます。でも、そろそろ息切れが・・・(汗)

ホントに~

息切れてください~お疲れの出ませんように....
ありちゃんのブログは細くででも
長く、続けてほしいから!
いつも、癒されてます。ありがとう!

Re: やすべぇ様へ

やすべぇ様

> 息切れてください~お疲れの出ませんように....
> ありちゃんのブログは細くででも
> 長く、続けてほしいから!
> いつも、癒されてます。ありがとう!

ホントに暖かいお言葉、ありがとうございます。(/_;)
実生活とすり合わせながら、できるだけのことはしたいと思っています。
もう、どう表現していいか分かりませんが・・・
こう言うしかない。
ありがとうございます。

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このコメントは管理人のみ閲覧できます

Re: ま***様へ

ま***さま

どうぞ、ご自分のペースでゆっくり読んでくださいね。
ゆっくりと言うことは、じっくりと言うことであり、それもまた書き手としては嬉しいことです。
ホントにありがとうございます。

キムチーム長、災難と言うほかありません。(苦笑)
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