同じ空の下

これでよしっ！

片付けも終わったし、明日の準備もＯＫ。
さ、鍵を閉めて帰りますか。


店に飾ってある笹飾りが、微かに揺れた。



いつもの様に、ジュースショップの仕事を終えて屋根部屋に帰る。



でも、いつもと違うのは、帰り道も、帰ってからも私一人だけ。
テヨンさんがいない。

「仕事で日本に出張なんだ。四日後には帰って来るよ。」

今朝、彼はそう言って、出かけていった。


一人で住んでいた事もあるはずなのに・・・
今は、テヨンさんがいないと、屋根部屋は広過ぎるし、静か過ぎる。

寂しい。

私、いつからこんな寂しがり屋になっちゃったんだろう・・・



玄関を上がり、灯りを点けた。
リビングに行くと、テーブルの上に一枚のカード。


何かしら？


私はカードを手に取った。


『パッカ　おかえり。お仕事お疲れ様。』


表紙には、テヨンさんの優しい文字。


朝、一緒に屋根部屋を出たのに・・・
出かけた後に、わざわざ戻ってきたのかしら。

お疲れ様って・・・テヨンさんの方が忙しいじゃない。


私は、嬉しさも手伝って笑顔になってた。


カードをめくると・・・


『冷蔵庫の中を見て。』


冷蔵庫？


不思議に思いながら扉を開けると、テイクアウトの美味しそうなお弁当が、目に付くところに入れてある。
そして蓋の上にはまたカード。


『たまには家事を休んで。　次はバスタブを見て。』


テヨンさんがいなきゃ、いつも手抜きよ。


思わず、くすくすと忍び笑いする。


今度はお風呂ね。
うふふ、なんだか楽しい。


浴室にいって、バスタブを覗き込んだ。

中にはきれいに包装されたバスソルトが置いてある。
当然、またカードが添えられていて・・・


『ゆっくりと、リラックスできますように。　次はベッドを見て。』


次は何かしら。


ワクワクと寝室に向かう。



ベッドの上にはかわいいアロマポッドが置かれていた。


『良い夢が見られますように。　最後にパジャマのポケットを見て。』


次で、最後なのね。


クロークを開けてパジャマを出す。


私の？
テヨンさんの？
どっちのパジャマ？
・・・宝探しみたい。


テヨンさんのパジャマのポケットを見た。
何もない。

自分の方のポケットを覗くと、封筒が入っていた。

封筒の中には、私が観たいと言っていた映画のチケットが二枚。
そして最後のカード。


『七夕なのに一緒にいられなくてごめん。
出張から帰ったら、二人で映画を観に行こう。
ディナーもご馳走するよ。』


織姫と彦星の年に一度の逢瀬の日。

私たちは、もっとたくさん一緒にいられる日があるわ。
気にしなくても、いいのに。

でも

やっぱり、嬉しい。


一生懸命に、こっそりと、私の為に準備してくれたテヨンさんを思うと、
ついさっきまで寂しく感じていたのに・・・

今は胸がいっぱい。



バッグからスマホを取り出してメッセージを送る。



テヨンさん　お仕事、お疲れ様。
屋根部屋の指令は最後まで遂行しました。

ありがとう。

映画楽しみにしてます。


すぐに返事が来た。



エージェント・パッカは優秀だね。
僕も映画楽しみだよ。

早く君に会いたいよ。

女々しいかな？


私も早く会いたいわ。

お仕事、頑張ってね。
おやすみなさい。


パッカも、仕事頑張って。
おやすみ。

夢の中で会おう。


テヨンさんの優しい香りがするベッドで眠る。

一人だけど・・・
彼に包まれているような気がした。



夢の中で、会えますように。



織姫と彦星の年に一度の逢瀬の日。

星々に祈ろう。
いつも笑いかけてくれるあの人が、明日も、明後日も、その次の日も
ずっと、ずっと、笑っていてくれますように。

夢の中で、笑顔の彼に会えますように。


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今日は七夕。
お天気はどうでしょう？星が見えるといいですね。

同じ空の下、みんな、みんな、笑顔になれますように。