「長編(完結)」
目覚めたテヨン
目覚めたテヨン 14
描き上げたパク・ハさんの絵を見つめた。
僕の目に映った彼女そのままに描いたから、うつむき加減だし、笑顔とは程遠い。
笑顔の彼女を描きたかった、本当は。
でも、僕は、この絵を見ても、さっき見てきたばかりの彼女の言動の最初から最後まで、一部始終を思い浮かべてみても、うきうきと心踊る。
どうして、こんなに嬉しいのか。
そして、またあの笑顔が見たい、という思いも湧いてくる。
あの笑顔。
そう、 僕は彼女の笑顔を知っている。
彼女は少しも笑ってはいなかったのに。
今日初めて間近にその姿を見たはずなのに。
彼女に会うのは、初めてではないということだ。結局、そう結論付けるしかなかった。
どこでパク・ハさんに会ったのか。それを知りたくて、彼女に会いに来たはずだったけれど・・・それどころじゃなかった。
彼女を目の前にしたら、総てが吹っ飛んで、ただ見つめていたくなって・・・。
なんなんだよ、もう。
下を向いたまま、口の中で独りごちた。
自分の感情の脈絡のなさに困惑してしまう。
落とした目線の先で、女性のものらしい靴先が視界に入った。前方に人の気配を感じる。それで、僕は顔を上げた。
目の前に、綺麗な女性が戸惑った表情で立っている。
「ヨン・テヨンさん、ですよね?」
「はい。そうです。」
彼女は、一瞬ためらったようだったが思い切ったように口を開いた。
「初めまして。・・・ホン・セナです。」
「・・・初めまして。」
僕は立ち上がった。
「やはり、テヨンさんなんですね。」
イ・ガクであることを期待したのだろうか?
「テヨンさん。ごめんなさい。私・・・。」
震える声で、目の前の女性は僕に謝った。そして、彼女の目に涙が溜まっていく。
僕はギョッとした。こんな所で、泣かないでくれ。
道行く人が僕達二人を横目で見て通り過ぎていく。痴話げんかと思われているのは明らかだった。
「私・・・あなたのおばあ様を・・・。」
ついには涙をこぼし始めた。
僕は、自分のバックパックからハンカチを取り出すと彼女に差し出した。
「もう済んだことですよ。」
セナさんは、ごめんなさいとまた言って、ハンカチを持つ僕の手をそっと押し返す。そして自分のバッグからハンカチを出して涙を拭った。
「あなたに、なんて言ったらいいのか・・・私・・・。」
「セナさん。止しましょう。」
蒸し返してもお互いにいいことはない。
ごめんなさい、とまた呟く彼女。
彼女は涙をこらえながら、気持ちを整理しているようだったから、僕はそのまま待った。
しばらく沈黙が続く。
セナさんが僕を見た。もう涙はない。
「テヨンさん。パク・ハに・・・妹に、会われましたか?」
さっきジュースは買いに行った。・・・あれは、「会った」とは言えない・・・かな・・・。
僕は微妙な表情をしたのだと思う。セナさんが、少し困ったような顔をした。
「少し、お時間をいただけませんか?」
「え?・・・はい。」
辺りを見回すと、数十メートル先に小さなカフェが見えたので、あそこに行きましょう、と僕は言った。
僕の目に映った彼女そのままに描いたから、うつむき加減だし、笑顔とは程遠い。
笑顔の彼女を描きたかった、本当は。
でも、僕は、この絵を見ても、さっき見てきたばかりの彼女の言動の最初から最後まで、一部始終を思い浮かべてみても、うきうきと心踊る。
どうして、こんなに嬉しいのか。
そして、またあの笑顔が見たい、という思いも湧いてくる。
あの笑顔。
そう、 僕は彼女の笑顔を知っている。
彼女は少しも笑ってはいなかったのに。
今日初めて間近にその姿を見たはずなのに。
彼女に会うのは、初めてではないということだ。結局、そう結論付けるしかなかった。
どこでパク・ハさんに会ったのか。それを知りたくて、彼女に会いに来たはずだったけれど・・・それどころじゃなかった。
彼女を目の前にしたら、総てが吹っ飛んで、ただ見つめていたくなって・・・。
なんなんだよ、もう。
下を向いたまま、口の中で独りごちた。
自分の感情の脈絡のなさに困惑してしまう。
落とした目線の先で、女性のものらしい靴先が視界に入った。前方に人の気配を感じる。それで、僕は顔を上げた。
目の前に、綺麗な女性が戸惑った表情で立っている。
「ヨン・テヨンさん、ですよね?」
「はい。そうです。」
彼女は、一瞬ためらったようだったが思い切ったように口を開いた。
「初めまして。・・・ホン・セナです。」
「・・・初めまして。」
僕は立ち上がった。
「やはり、テヨンさんなんですね。」
イ・ガクであることを期待したのだろうか?
「テヨンさん。ごめんなさい。私・・・。」
震える声で、目の前の女性は僕に謝った。そして、彼女の目に涙が溜まっていく。
僕はギョッとした。こんな所で、泣かないでくれ。
道行く人が僕達二人を横目で見て通り過ぎていく。痴話げんかと思われているのは明らかだった。
「私・・・あなたのおばあ様を・・・。」
ついには涙をこぼし始めた。
僕は、自分のバックパックからハンカチを取り出すと彼女に差し出した。
「もう済んだことですよ。」
セナさんは、ごめんなさいとまた言って、ハンカチを持つ僕の手をそっと押し返す。そして自分のバッグからハンカチを出して涙を拭った。
「あなたに、なんて言ったらいいのか・・・私・・・。」
「セナさん。止しましょう。」
蒸し返してもお互いにいいことはない。
ごめんなさい、とまた呟く彼女。
彼女は涙をこらえながら、気持ちを整理しているようだったから、僕はそのまま待った。
しばらく沈黙が続く。
セナさんが僕を見た。もう涙はない。
「テヨンさん。パク・ハに・・・妹に、会われましたか?」
さっきジュースは買いに行った。・・・あれは、「会った」とは言えない・・・かな・・・。
僕は微妙な表情をしたのだと思う。セナさんが、少し困ったような顔をした。
「少し、お時間をいただけませんか?」
「え?・・・はい。」
辺りを見回すと、数十メートル先に小さなカフェが見えたので、あそこに行きましょう、と僕は言った。
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