「長編(完結)」
一年で一番甘い日
一年で一番甘い日 4
イ・ガクはヨンスルをギロリと睨みつけ、瞬間、ヨンスルはその場に平伏した。
王世子が歩み寄り、ヨンスルはそのままの姿勢で後ずさる。
パク・ハを見下ろし、二人で何をしておる、と低い声で囁いた。
「チョハ、パク・ハ殿は何も・・・」
ヨンスルがおずおずと頭を上げようとした。
「そちには訊いておらぬ!」
主君に撥ねつけられては引き下がるしかない。ヨンスルは再び頭を下げた。
「何って・・・話をしてただけでしょ?・・・ヨンスルさん、ソファに座ってよ。」
「・・・ヨンスラ、出て行け。」
ははっ、とヨンスルは立ち上がったが、その手をパク・ハが掴んだ。
「出て行く必要はないわよ。」
ヨンスルは狼狽え、チサンとマンボもはらはらと見ている。
臣下達は気が気でなかった。王世子が爆発するのは必至。
「ヨンスル!」
「パク・ハ殿、失礼!」
ヨンスルはパク・ハの手を振り払い、その場を後にした。
パク・ハは立ち上がり、イ・ガクを睨みつけた。
「何よ!ヨンスルさんが何をしたって言うの!」
「・・・何かしておれば、死罪だ。」
パク・ハは、思わず絶句する。
「な、何を不機嫌にしてるかは知らないけどね!
そう簡単に死罪にされてたまるもんですか!」
このままでは、また、つまらない喧嘩になってしまう。
パク・ハも分かってはいるが、どうにも気が治まらない。
「・・・分からぬのか?」
イ・ガクは意外にも静かに言った。
「・・・何がっ!」
「分からぬのなら、仕方がない。・・・もっと、身を慎め。そなたは・・・」
「何よ!」
イ・ガクの様子がいつもと違う。でも、パク・ハは意地を張り通した。
「そなたは・・・時代が時代なら、いずれ後宮に上がる身。・・・慎むがよい。」
・・・後宮って。
イ・ガクは不意にパク・ハの腰に手を廻し引き寄せた。
「臣下と言えども、男だ。・・・特に、ヨンスルはそなたのことを、好いておろう。」
イ・ガクの真っ直ぐな瞳が、なんだか怖かった。思わず目を逸らしてしまう。
「ヨンスルさんは、そんな人じゃないわよ。」
「そなたは、男を知らぬのだ。」
パク・ハは逸らした視線をイ・ガクに戻して、唇を尖らせた。
「あんただって、女心を分かってないじゃない。」
イ・ガクは訝しむように眉根を寄せる。そしてパク・ハの唇に自分のそれを重ねた。
リビングの入口付近で様子を見ていた臣下三人は、咄嗟に二人に背を向けて、拍子抜けしたように目配せし合う。
聞き耳だけはしっかり立てていた。
長いキスの後、パク・ハが囁いた。
「・・・チョコ、もう、食べないでよ。」
「何故だ?」
「・・・虫歯になっちゃう。」
「・・・それだけか?」
イ・ガクの言い方には何か含みがある。
「・・・キスしたら、うつっちゃうじゃない。」
やっぱり素直には言えなかった。
イ・ガクはふふんと鼻で笑う。
なんとも小憎らしいが、その表情もパク・ハは好きなのだ。
「王世子と分かち合えるのだ。喜ぶがよい。」
無茶苦茶な論理である。パク・ハは思わず吹き出した。
「何よ!それっ!」
「チョコレートはもうない。」
「え!全部食べちゃったの!」
「・・・馬鹿を申すな。」
イ・ガクは憤慨したようにそう言って、パク・ハを覗き込む。
「『義理チョコ』故、民に施してやったのだ。」
「え?」
パク・ハは目を見開く。王世子の口から『義理チョコ』などと言う言葉が出て来るとは思わなかったのだ。
「そなた、どういうつもりだ?何故、私にチョコレートを寄こさなかった。
女人が日頃の感謝を込めて、主君にチョコレートを贈るのであろう?」
何故か『義理チョコ』だけ理解しているらしい。
「・・・チョコレートケーキを焼いたじゃない。」
「分からぬのか!」
イ・ガクがいらいらと声を荒げた。
「意地を張るのは止めぬか!」
パク・ハはびくっと身を震わせた。
「そなたは!何故そうなのだ!何故私に楯突く?」
イ・ガクは荒っぽいと言える仕草で彼女を掻き抱いた。
「・・・私のことを、好いておろう?違うのか?」
パク・ハはイ・ガクの胸の中で目を閉じた。その頭をぐりぐりと彼の胸に押し付ける。
「あんぽんたん。好きに決まってるでしょ!」
イ・ガクはパク・ハの両肩を掴むと自らの胸から引き剥がした。
その荒っぽさに、パク・ハはきゃっと小さく叫ぶ。
イ・ガクは構うことなくその勢いのままパク・ハに口づけた。
「『義理』ではないチョコレートがあるであろう?」
イ・ガクは『本命チョコ』も知っている?
臣下三人は、ほーっと肩の力を抜いた。
何と言うか・・・ホッとしたら怒りが込み上げてくる。
「放っておきましょう。」
マンボが唇を歪めた。
「そうだな、最初から勝手にさせておけば良かったんだ。」
チサンが両掌を上に向けて肩を竦めてみせた。
「・・・私はどうなるのだ?」
ヨンスルが不満気に囁いた。

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振り廻されてる臣下がかわいそう。(^_^;)
それにしても、お話の展開が当初の予定と変わって来ていて・・・うまく着地させられんのか?(-_-)
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王世子が歩み寄り、ヨンスルはそのままの姿勢で後ずさる。
パク・ハを見下ろし、二人で何をしておる、と低い声で囁いた。
「チョハ、パク・ハ殿は何も・・・」
ヨンスルがおずおずと頭を上げようとした。
「そちには訊いておらぬ!」
主君に撥ねつけられては引き下がるしかない。ヨンスルは再び頭を下げた。
「何って・・・話をしてただけでしょ?・・・ヨンスルさん、ソファに座ってよ。」
「・・・ヨンスラ、出て行け。」
ははっ、とヨンスルは立ち上がったが、その手をパク・ハが掴んだ。
「出て行く必要はないわよ。」
ヨンスルは狼狽え、チサンとマンボもはらはらと見ている。
臣下達は気が気でなかった。王世子が爆発するのは必至。
「ヨンスル!」
「パク・ハ殿、失礼!」
ヨンスルはパク・ハの手を振り払い、その場を後にした。
パク・ハは立ち上がり、イ・ガクを睨みつけた。
「何よ!ヨンスルさんが何をしたって言うの!」
「・・・何かしておれば、死罪だ。」
パク・ハは、思わず絶句する。
「な、何を不機嫌にしてるかは知らないけどね!
そう簡単に死罪にされてたまるもんですか!」
このままでは、また、つまらない喧嘩になってしまう。
パク・ハも分かってはいるが、どうにも気が治まらない。
「・・・分からぬのか?」
イ・ガクは意外にも静かに言った。
「・・・何がっ!」
「分からぬのなら、仕方がない。・・・もっと、身を慎め。そなたは・・・」
「何よ!」
イ・ガクの様子がいつもと違う。でも、パク・ハは意地を張り通した。
「そなたは・・・時代が時代なら、いずれ後宮に上がる身。・・・慎むがよい。」
・・・後宮って。
イ・ガクは不意にパク・ハの腰に手を廻し引き寄せた。
「臣下と言えども、男だ。・・・特に、ヨンスルはそなたのことを、好いておろう。」
イ・ガクの真っ直ぐな瞳が、なんだか怖かった。思わず目を逸らしてしまう。
「ヨンスルさんは、そんな人じゃないわよ。」
「そなたは、男を知らぬのだ。」
パク・ハは逸らした視線をイ・ガクに戻して、唇を尖らせた。
「あんただって、女心を分かってないじゃない。」
イ・ガクは訝しむように眉根を寄せる。そしてパク・ハの唇に自分のそれを重ねた。
リビングの入口付近で様子を見ていた臣下三人は、咄嗟に二人に背を向けて、拍子抜けしたように目配せし合う。
聞き耳だけはしっかり立てていた。
長いキスの後、パク・ハが囁いた。
「・・・チョコ、もう、食べないでよ。」
「何故だ?」
「・・・虫歯になっちゃう。」
「・・・それだけか?」
イ・ガクの言い方には何か含みがある。
「・・・キスしたら、うつっちゃうじゃない。」
やっぱり素直には言えなかった。
イ・ガクはふふんと鼻で笑う。
なんとも小憎らしいが、その表情もパク・ハは好きなのだ。
「王世子と分かち合えるのだ。喜ぶがよい。」
無茶苦茶な論理である。パク・ハは思わず吹き出した。
「何よ!それっ!」
「チョコレートはもうない。」
「え!全部食べちゃったの!」
「・・・馬鹿を申すな。」
イ・ガクは憤慨したようにそう言って、パク・ハを覗き込む。
「『義理チョコ』故、民に施してやったのだ。」
「え?」
パク・ハは目を見開く。王世子の口から『義理チョコ』などと言う言葉が出て来るとは思わなかったのだ。
「そなた、どういうつもりだ?何故、私にチョコレートを寄こさなかった。
女人が日頃の感謝を込めて、主君にチョコレートを贈るのであろう?」
何故か『義理チョコ』だけ理解しているらしい。
「・・・チョコレートケーキを焼いたじゃない。」
「分からぬのか!」
イ・ガクがいらいらと声を荒げた。
「意地を張るのは止めぬか!」
パク・ハはびくっと身を震わせた。
「そなたは!何故そうなのだ!何故私に楯突く?」
イ・ガクは荒っぽいと言える仕草で彼女を掻き抱いた。
「・・・私のことを、好いておろう?違うのか?」
パク・ハはイ・ガクの胸の中で目を閉じた。その頭をぐりぐりと彼の胸に押し付ける。
「あんぽんたん。好きに決まってるでしょ!」
イ・ガクはパク・ハの両肩を掴むと自らの胸から引き剥がした。
その荒っぽさに、パク・ハはきゃっと小さく叫ぶ。
イ・ガクは構うことなくその勢いのままパク・ハに口づけた。
「『義理』ではないチョコレートがあるであろう?」
イ・ガクは『本命チョコ』も知っている?
臣下三人は、ほーっと肩の力を抜いた。
何と言うか・・・ホッとしたら怒りが込み上げてくる。
「放っておきましょう。」
マンボが唇を歪めた。
「そうだな、最初から勝手にさせておけば良かったんだ。」
チサンが両掌を上に向けて肩を竦めてみせた。
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振り廻されてる臣下がかわいそう。(^_^;)
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~ Comment ~
Re: 瑞月さまへ
瑞月さま
こんにちは~。
> ふっふっふ・・。
> これぞ二次創作「あるある」!
> ありちゃんさん、きっとイ・ガクに書かされてるんですよ(笑)
あ、やっぱり?(笑)
もうね、あれ、こんなはずじゃ・・・って感じで
臣下3人組じゃないけど、勝手にして、って感じです。(^_^;)
> 気の向くまま(イ・ガクに操られたまま?)書くのもまた一興(笑)
イ・ガクは何を考えてるんでしょうね。
> 続き、楽しみにしてま~す!
誰かが書いてくれるのなら、私も楽しみにしてます。(笑)
いつもありがとうございます!m(__)m
こんにちは~。
> ふっふっふ・・。
> これぞ二次創作「あるある」!
> ありちゃんさん、きっとイ・ガクに書かされてるんですよ(笑)
あ、やっぱり?(笑)
もうね、あれ、こんなはずじゃ・・・って感じで
臣下3人組じゃないけど、勝手にして、って感じです。(^_^;)
> 気の向くまま(イ・ガクに操られたまま?)書くのもまた一興(笑)
イ・ガクは何を考えてるんでしょうね。
> 続き、楽しみにしてま~す!
誰かが書いてくれるのなら、私も楽しみにしてます。(笑)
いつもありがとうございます!m(__)m
NoTitle
>お話の展開が当初の予定と変わって来ていて
ふっふっふ・・。
これぞ二次創作「あるある」!
ありちゃんさん、きっとイ・ガクに書かされてるんですよ(笑)
気の向くまま(イ・ガクに操られたまま?)書くのもまた一興(笑)
続き、楽しみにしてま~す!