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「ユチョン応援☆妄想祭り」
同じ空の下

花吹雪

 ←一年で一番甘い日 15 (最終話) →「小話ボタン」の小話を更新しました。
パク・ハは大慌てで屋根部屋を飛び出した。

昨夜、何を着て行くかはしっかりと吟味していたはずだったのに、なんとなく違う気がして、洋服を選び直した。
その上に、化粧が濃すぎやしないか、薄すぎやしないか、鏡とにらっめこしていたら時間に遅れそうになったのだ。


バスターミナルに着いて、慌てて切符を買った。
高速バスに乗り込んで、パク・ハが座席に腰を落ち着けるとすぐに、バスは目的地に向けて走り出した。


良かった。間に合って。


この便を逃したら、後は夕方に到着する便しかない。
ホッと息を吐いて窓の外を眺めた。
 

 
◇◇◇



「桜を見に行こう。」

テヨンが言った。

「え?・・・もう、ほとんど葉桜よ。」

「まだ、満開の所もあるよ。」

テヨンが片目を瞑る。

鎮安チナンなら、まだ十分に楽しめるさ。」

「・・・鎮安チナン?」

四月から五月の鎮安チナンのパックツアーがあることは、パク・ハも知っている。
テヨンの会社、ホーム&ショッピング社の人気のパックツアー。
かつて、「ヨン・テヨン」チーム長が手掛けたそのツアーだ。

「パッカ、鎮安チナンに桜を見に行こう。」

「テヨンさん、最近、忙しいじゃない。鎮安チナンはちょっと遠いんじゃないの?」

日帰りしてできないことはないが、テヨンの忙しさを考えたら一日の休暇も取れるかどうか・・・。

「実はね、ちょうど鎮安チナンに出張に行くんだ。
午前中には仕事を終わらせるから、パッカは高速バスでその日の午後に来るといい。」

鎮安チナンで待ち合わせしよう。

そう約束を交わした。



◇◇◇



明日の午前中までかかると思っていた視察が、何とか今日中に終わった。


これで、パッカと心置きなく桜を楽しめる。


ジャケットの内ポケットで着信音が響いた。
画面を見れば、社長だった。
嫌な予感を覚えながら、無視するわけにもいかず通話ボタンをタップする。

「もしもし?」

「俺だ。テヨン、お前 今 鎮安チナンだったな?」

「・・・そうですけど・・・」

「明日、朝一で全州チョンジュに行ってくれ。」

「え?」

「ちょっとしたトラブルだ。こっちから人を遣ろうと思ったんだが・・・
そこから全州チョンジュは目と鼻の先だ。お前、行って来てくれ。」

「・・・」

「詳細はメールする。」

社長はそれだけ言うと通話を切った。
テヨンは手にしていたスマホを投げつけたい衝動に駆られたが、どうにか堪えた。

メールの着信を告げる音が響く。


明日の午前中に、絶対 片付けてやる!



◇◇◇



青く広がる空を、桜の花々が覆っていた。
時折そよぐ風に、薄紅色の花弁が舞い散る。

あの日のように、観光バスが何台も停まっており、大勢の観光客がいる。

メールの着信音が鳴った。

『今、向かってる。仕事が長引いて・・・
少し遅くなるよ。ごめん。』


そんなことだろうと思ってたわ。


忙しいのに、今日の約束を無理矢理に入れていたのだから。

『分かったわ。待っているから、気を付けて来てね。』


スマホをバッグに戻すと、辺りを見廻した。
桜が美しかった。

この観光地の旅行会社でガイドとして働いていた時、かつての上司に、大きな取引先の担当者が待っているからと、
絶対に契約をモノにしろ、と命じられた。
でないと・・・と、立てた親指を顎の下で横に引く仕草をされ、自分もその上司も首だ、と示唆された。

『任せてください!王様の如くにもてなします!』

自信満々にそう答えたことを思い出す。
その相手が『王世子』だなんて考えもしないで・・・。

パク・ハは思わず、くすりと笑った。

そして、今は『その人』のことを、ここで待っているなんて。

そんなことを思いながら、一人で先に桜を楽しんでいようと歩き出した。


突然、びゅうと強い風が吹いた。


辺り一面が薄紅色で包まれる。
美しい花吹雪。
目も眩むような花吹雪。


「きゃっ!」

咄嗟に、髪とスカートの裾を手で抑える。


あ~、ビックリした。


瞑っていた目を開けると、見覚えのある龍の刺繍が目に飛び込んで来た。
良く見知った、その龍袍リョンボ姿の主は・・・。


え?

まさか、チョハ?


呆然とするパク・ハに向かって

「私を見忘れたのか?」

聞き覚えのある声が囁きかけた。

「忘れる訳なんてないわ。
チョハ、どうして・・・ここに?」

「・・・私はもう『王世子』ではない。」

イ・ガクは顎を反らして言った。

彼の纏っている袞龍袍コルリョンボは深みのある赤色で、
王世子のそれではなかった。

「王様になったの?」

「そうだ。『チョハ』などと呼んでいるのを聞き咎められたら、
首を刎ねられるぞ。」

『王様の如くに』もてなさなければ、首が飛ぶ。
パク・ハは楽しそうに微笑んだ。

「・・・笑うか?・・・そなたは何をしておるのだ?」

「私は桜を見ようと思って。」

「そのように、めかし込んで・・・」

イ・ガクはパク・ハの全身を吟味するように見て、

「一人ではあるまい?」

そう言った。

「連れは、何処におる?」

「仕事で遅れるって・・・。」

「待ちぼうけか?・・・薄情な男だな!」

イ・ガクはふんと鼻で笑った。
パク・ハは唇を尖らせる。

「テヨンさんは優しいわ。チョハみたいに意地悪じゃないわよ。」

テヨンの名を耳にして、イ・ガクは少し嬉しそうに、柔らかく笑った。

「そなたは・・・相変わらずだな。」

その笑みには、淋しさが滲み出てもいた。

「パッカ、今のそなたは、幸せか?」

「ええ、とても幸せよ。」

パク・ハはにっこりと微笑んだ。

「チョ・・・チョナは幸せなの?」

『チョナ』と呼びかけられ、イ・ガクは、おや?とでも言いたげに眉を動かした。

「ああ、そなたが幸せならば、私は幸せだ。」

イ・ガクが優しい微笑を浮かべた時、

びゅう

また強い風が吹いた。


花吹雪が、舞う。


次に目を開けた瞬間、もうそこには『王』の姿は無かった。

「また、サヨナラも言わずに行っちゃったのね。」

涙が止まらなかった。とめどもなく、後から後から溢れてくる。



◇◇◇



「パッカ!遅くなってごめん!」

大きな声で叫びながら、テヨンが駆けよって来るのが見える。

パク・ハの目の前まで来て、テヨンは瞳を見開いた。

「パッカ、どうしたんだ。」

涙を止める術を知らないパク・ハを前に、彼は驚いている。

「・・・ずっと待ってたのよ。
・・・一人で、淋しかったんだから!」

「ごめん。本当にごめん。」

テヨンは強く、優しく、パク・ハを抱きしめた。

桜に覆われた青い空を見上げながら、テヨンの腕の中で、パク・ハは幸せそうに笑う。


チョハ、聞こえてる?
私は、今、本当に幸せよ。


心の中でそっと呟いた。




____________

저하チョハ=邸下(王世子を呼ぶときの尊称)
전하チョナ=殿下(王を呼ぶ時の尊称)
※朝鮮は清国の属国扱いだったので、「陛下」は清国皇帝のみにつかわれました。



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涙が

いつも楽しみに読ませて頂いています^_^
屋根部屋が好きで、けど好きすぎて見返せません。
屋根部屋から成均館でユチョンにおちて、一昨年からの新米ユチョペンです。
「そなたが幸せならわたしは幸せだ」
すごく素敵な言葉なのに涙が止まりません。わたしもユチョンにそう言いたいのに、タイミングのせいなのか、お相手とされる方のせいなのか、まだモヤモヤの中です( ;∀;)でもユチョンを好きでいたい自分がいます。ここはわたしの癒やしです。これからも無理のない範囲での更新楽しみにしています♪

ミ**様へ (4/18 拍手コメント分)

ミ**さま

こんにちは。
共感して頂いてありがとうございます。
イ・ガクは、もう、やせ我慢の何物でもないような気がします。
でも、それだけパク・ハを想い続けたから、テヨンで具現化した、と私は思っています。
テヨンに記憶があったら、ここまで切なくはないんでしょうけども・・・。

こちらこそ、いつもありがとうございます。

Re: や***様へ (4/18分)

や***さま

こんにちは。お久しぶりです!
どうしておられるかなぁ?と思っておりました。

お孫ちゃんが、たて続けに病気をなさったのでは、そりゃぁ、気を揉まれたことでしょう。
や***さんご自身の体調は大丈夫ですか?

なんか、色々考えさせられるようなことがあって、ついつい滅入っちゃいますよね。
考えても仕方ないと、私も思うのですが・・・
せめて、ここでは幸せ気分に浸ってもらいたいと、おこがましくも思っています。
イ・ガクは、どうしても切なく書き綴ってしまうので・・・テヨンに希望を見出してくだされば嬉しいです。

また、いつでも、なんでも言いたいことがあったら吐露してくださいませ。
一人でモヤモヤし続けると体にもよくないので・・・
そう言う私も、よく人に迷惑かけてる口です。(笑)

Re: こばとん様へ (4/18分)

こばとん様

こんにちは。いつもありがとうございます。m(__)m

> 屋根部屋が好きで、けど好きすぎて見返せません。
そうなんですね。私は見返さないと書けないので見返してますが・・・
無限ループにハマるので、慎重にしてます。(笑)

> 屋根部屋から成均館でユチョンにおちて、一昨年からの新米ユチョペンです。
成均館も良いですよねぇ。私も、屋根部屋が先でした。

> 「そなたが幸せならわたしは幸せだ」
> すごく素敵な言葉なのに涙が止まりません。わたしもユチョンにそう言いたいのに、タイミングのせいなのか、お相手とされる> 方のせいなのか、まだモヤモヤの中です( ;∀;)でもユチョンを好きでいたい自分がいます。
無理矢理に自分の思いを捻じ曲げなくてもいいのではないでしょうか?
好きでいたいのなら、また、きっと、すんなり「好き」が言えるようになると思います。時間がかかったとしても。
イ・ガクはどう考えてもやせ我慢ですが、そこは相手がテヨンだから、まだ救われてると思います。
それに、イ・ガクも王に即位するくらい時間が経っちゃってて・・・寂しいながらも笑えるようにはなったんじゃないかな。
(いや、書き手としてそうであってくれないと、苦しくなってしまいます。汗)

> ここはわたしの癒やしです。これからも無理のない範囲での更新楽しみにしています♪
ありがとうございます。m(__)m
とても励みになります。
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