「長編(完結)」
難攻不落の城
難攻不落の城 5
パッカの手を取り車を降りた。
当然ながらアルコールのサーブもあるから社用車で送らせた。
ホテルのスタッフに案内されて、運転手は地下駐車場へ向かう。
僕はパッカをエスコートしてホテルのエントランスへ。
エレベーターで、会場のある上層のフロアを目指した。
***
ポーンと音がしてエレベーターは止まる。
「・・・テヨンさん、化粧室 に行ってくるわ。」
パッカは緊張した面持ちで僕を見上げていた。
「付いて行こうか?」
他意はなく彼女が心配でそう言っただけなのだけど、パッカは何を思ったのか
「え?いいわよ!一人で行ける。」
慌てたようにそう言った。
まあ、確かに女性の化粧室の前で立って待ってると言うのも考え物だ。
「受付の前で待ってるから、行っておいで。
場所、分かる?」
僕を心配性だと笑って、彼女は化粧室へ向かった。
彼女を待ちながら、見知った顔も少なくなくて軽い挨拶を交わしていた。
パーティーなんて初めてだけど・・・
これは、デート気分じゃ拙いかも知れない。
そんな風に思っていたら、パッカが戻って来た。
「テヨンさん、ごめんなさい。待った?」
「・・・いや。」
そうは言ったけど、実は思ったより遅いなと感じていた。
「パッカ・・・蝶がいない。」
今日、彼女は衣装に合わせて可愛らしい髪飾りを着けている。
小さな花のモチーフが散りばめられて、蝶がその周りを飛んでいたはずなのに、その蝶がいない。
「え?・・・よく気づいたわね?」
僕が気付いたことが嬉しかったようで、パッカはにっこりと笑った。
「小さな天使にあげちゃったの。」
「小さな天使?」
パッカはうふふと笑う。
「化粧室でね、小さな子供を連れたお母さんが困ってて、お手伝いしたのよ。」
聞けば、まだ乳飲み子らしい赤ん坊を抱いた若い母親がいたと言う。
赤ん坊だけでなく、小さな女の子も連れていた。
女の子は一人で個室に入るのは嫌だと泣いていたらしい。
母親が女の子の手伝いができるようにと、パッカがその赤ん坊を抱いて待ってあげていた、という訳だ。
女の子が蝶の髪飾りを欲しがるから、あげちゃったと笑う彼女。
なんともパッカらしくて、微笑みを誘われる。
でも・・・
このパーティー会場は、子連れでは入れないはずだけど?
僕が怪訝に思ったのが伝わったらしい。
「その子たちをハルモ二に会わせるために来たから、顔を見せたら帰るって言ってたわ。」
「ふうん。・・・じゃあ、行こうか?」
*
受付を済ませて広い会場に入った。
すでに多くの人で賑わっている。
さすが老舗の企業だ。
ちらほらと、財界や芸能界でよく知られている顔もあった。
「・・・とても豪勢ね。」
どうやらパッカは雰囲気に飲まれているようで・・・
僕はすっと彼女の腰に腕を廻す。
僕がいる、大丈夫だよ。
とそう声を掛けようとした、その時―――
「ヨン・テヨン本部長ではありませんか?!」
大声で呼びかけられて、僕は振り向くことになる。
男性が、転びそうな勢いで僕に向かって走って来ていた。
あの顔は・・・確か資料で見た・・・
あっという間に僕の前までやって来た。
「ああ、やっぱりだ!
ヨン・テヨン本部長、初めまして。
私は社長のチョン・ウヌです。お会いできて光栄です!」
僕の両手をガシッと掴むなり、ブンブンと上下に振り始めた。
かなり驚いたが、それを顔には出さず挨拶を返す。
「初めまして、ホーム&ショッピング社のヨン・テヨンです。お会いできて―――」
「もちろん存じてますとも!
もう、ずっとお会いしたかったんですからね!」
『光栄です』の僕の言葉はチョン社長に遮られてしまった。
社長という肩書きの割には、随分と調子のよさそうな人だ。
僕は心の内で苦笑する。
受付で僕の来場を知ったのだろう。
どうやら待ち構えられていたらしいな。
どれだけ契約を結びたいのか、捲し立てるように話している。
・・・これは長引きそうだ。
「大切なお話のようなので、どうぞごゆっくり。」
様子を察したパッカが、微笑みながらすっと僕から離れていった。
こんなはずじゃ、なかったのに・・・。
無下に話を切るわけにもいかず、僕は社長の熱弁を聞くより他になかった。
髪飾りが一つ減ってるだけなのにそれを気付いてくれたら、そりゃ嬉しいよね~。
でも、パッカは離れて行っちゃった。パーティーの行方は如何に?
テヨンがんばれ~。(応援ポチをヨロシクお願いします。)
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当然ながらアルコールのサーブもあるから社用車で送らせた。
ホテルのスタッフに案内されて、運転手は地下駐車場へ向かう。
僕はパッカをエスコートしてホテルのエントランスへ。
エレベーターで、会場のある上層のフロアを目指した。
***
ポーンと音がしてエレベーターは止まる。
「・・・テヨンさん、
パッカは緊張した面持ちで僕を見上げていた。
「付いて行こうか?」
他意はなく彼女が心配でそう言っただけなのだけど、パッカは何を思ったのか
「え?いいわよ!一人で行ける。」
慌てたようにそう言った。
まあ、確かに女性の化粧室の前で立って待ってると言うのも考え物だ。
「受付の前で待ってるから、行っておいで。
場所、分かる?」
僕を心配性だと笑って、彼女は化粧室へ向かった。
彼女を待ちながら、見知った顔も少なくなくて軽い挨拶を交わしていた。
パーティーなんて初めてだけど・・・
これは、デート気分じゃ拙いかも知れない。
そんな風に思っていたら、パッカが戻って来た。
「テヨンさん、ごめんなさい。待った?」
「・・・いや。」
そうは言ったけど、実は思ったより遅いなと感じていた。
「パッカ・・・蝶がいない。」
今日、彼女は衣装に合わせて可愛らしい髪飾りを着けている。
小さな花のモチーフが散りばめられて、蝶がその周りを飛んでいたはずなのに、その蝶がいない。
「え?・・・よく気づいたわね?」
僕が気付いたことが嬉しかったようで、パッカはにっこりと笑った。
「小さな天使にあげちゃったの。」
「小さな天使?」
パッカはうふふと笑う。
「化粧室でね、小さな子供を連れたお母さんが困ってて、お手伝いしたのよ。」
聞けば、まだ乳飲み子らしい赤ん坊を抱いた若い母親がいたと言う。
赤ん坊だけでなく、小さな女の子も連れていた。
女の子は一人で個室に入るのは嫌だと泣いていたらしい。
母親が女の子の手伝いができるようにと、パッカがその赤ん坊を抱いて待ってあげていた、という訳だ。
女の子が蝶の髪飾りを欲しがるから、あげちゃったと笑う彼女。
なんともパッカらしくて、微笑みを誘われる。
でも・・・
このパーティー会場は、子連れでは入れないはずだけど?
僕が怪訝に思ったのが伝わったらしい。
「その子たちをハルモ二に会わせるために来たから、顔を見せたら帰るって言ってたわ。」
「ふうん。・・・じゃあ、行こうか?」
*
受付を済ませて広い会場に入った。
すでに多くの人で賑わっている。
さすが老舗の企業だ。
ちらほらと、財界や芸能界でよく知られている顔もあった。
「・・・とても豪勢ね。」
どうやらパッカは雰囲気に飲まれているようで・・・
僕はすっと彼女の腰に腕を廻す。
僕がいる、大丈夫だよ。
とそう声を掛けようとした、その時―――
「ヨン・テヨン本部長ではありませんか?!」
大声で呼びかけられて、僕は振り向くことになる。
男性が、転びそうな勢いで僕に向かって走って来ていた。
あの顔は・・・確か資料で見た・・・
あっという間に僕の前までやって来た。
「ああ、やっぱりだ!
ヨン・テヨン本部長、初めまして。
私は社長のチョン・ウヌです。お会いできて光栄です!」
僕の両手をガシッと掴むなり、ブンブンと上下に振り始めた。
かなり驚いたが、それを顔には出さず挨拶を返す。
「初めまして、ホーム&ショッピング社のヨン・テヨンです。お会いできて―――」
「もちろん存じてますとも!
もう、ずっとお会いしたかったんですからね!」
『光栄です』の僕の言葉はチョン社長に遮られてしまった。
社長という肩書きの割には、随分と調子のよさそうな人だ。
僕は心の内で苦笑する。
受付で僕の来場を知ったのだろう。
どうやら待ち構えられていたらしいな。
どれだけ契約を結びたいのか、捲し立てるように話している。
・・・これは長引きそうだ。
「大切なお話のようなので、どうぞごゆっくり。」
様子を察したパッカが、微笑みながらすっと僕から離れていった。
こんなはずじゃ、なかったのに・・・。
無下に話を切るわけにもいかず、僕は社長の熱弁を聞くより他になかった。
髪飾りが一つ減ってるだけなのにそれを気付いてくれたら、そりゃ嬉しいよね~。
でも、パッカは離れて行っちゃった。パーティーの行方は如何に?
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