「長編(連載中)」
生まれ変わっても -朝鮮編-
生まれ変わっても 58
テヨンは、ソ・ヒョンドク堤調 を伴い恵民署 を訪れていた。
遂に死者が出たと報告があったからである。
間に合わなかった。
一人の犠牲者も出したくなかった。
テヨンは悔やむが、既に重症化していた者達の中から死者が出ることは、予測の範疇にあった。
それでも、現代人のテヨンにはもどかしさが募る。
ワクチンがあれば・・・
現代医療を施すことができれば・・・
「チョハ。恐れながら・・・嘆いてばかりはおられませぬぞ。」
ヒョンドクの言う通りなのだ。
後悔した所で死者は甦りはしない。これ以上の犠牲を出さないことの方が、今は重要だ。
「・・・分かっておる。」
国を総べ、守ることの責任が、今更ながらにその肩にのしかかる。
イ・ガク
死ぬな。・・・死ぬなよ。
彼は死にはしない。必ず王になる。
例え史実がそのことを証明していても、テヨンはその生還を願わざるを得なかったのである。
***
恵民署には、内医院 から多くの人材が派遣されていた。
食糧も、薬剤も届けられた。
その為、病人の世話に当たる者達も、回復に向かっている病人達も、十分な休息と栄養を補給できるようになっていた。
栄養不足と過労による免疫力低下は、罹患のリスクを高め、重症化と合併症を招く。
その懸念が少しでも解消されたことに、テヨンは少しほっとしていた。
「チョハ。こちらの煎じ薬をお召し上がりください。」
ヒョンドクは薬湯の入った器を差し出す。
「これは、何だ?」
クンクンと匂いを嗅いだ。
まさか、毒を盛られるなどとは思いもしないが、得体の知れない物を飲むわけにもいかない。
「芫荽 (げんすい)を煎じた薬湯にございます。」
「芫荽?」
かすかにではあるが、独特な匂いがしている。
何処かで嗅いだことがあるような・・・。
「はい。麻疹の初期に用いれば重症化が防げ、まだ病を得ていない者には予防となります。
さすがは王宮の内医院ですな。もしやと思い調べてみれば、多少の備蓄がございました。」
なかなかに、手に入れるのは難しいらしい。
王と王族を守る内医院だからこそ備蓄されていたのだ。
ヒョンドクによれば、恵民署で従事している者、また初期症状の者にも飲ませたということだった。
「これが、麻疹に効くと言う薬剤か?」
「御意。」
「分かった。飲もう。」
テヨンはぐっと飲み干した。
口の中で広がる独特な匂い。
これは、好き嫌いに分かれそうだ。
薬を好きだと言う者もいないかも知れないが・・・
嫌いであっても薬ならば、と言うところだろう。
「ここを訪れる前に、できるだけ多くの芫荽を手に入れるよう、香辛料問屋に申し付けて参りました。」
「香辛料問屋?」
薬剤を?
香辛料問屋にか?
「芫荽は紛れもない生薬ではございますが、清国では、香草として料理にも用いられるのです。清国の商人につてを持つ香辛料問屋が、乾燥された芫荽を仕入れて参ります。」
なるほど。医食同源は漢方の基本。
ん?
香草?
この匂い・・・。
そうか!
これは、パクチーか!
「・・・チョハ?如何なされました?」
「いや・・・
して、その芫荽はいつ届く?」
「早ければ三日後に。」
「・・・そうか。王宮の芫荽は、まだあるのか?」
「芫荽は、既に重症化した者には使えませぬ。
まだ病を得る前の者、或いは病を得て間もない者にしか、その効果が期待できぬのです。
つまり、予防に使うと言うことではありますが・・・
内医院の備蓄だけでは、十分な量を確保はできませぬ。」
今ある物で賄えるなら、わざわざ清国から取り寄せなくても良かったのだろうが、予防に使うなら大量に必要になるに違いない。
今、正に苦しんでいる者達も救ってやらねばならないが、蔓延するのを防ぐのは重要なことだ。
「今、あるだけの芫荽を持って、発生源の村に参る。
清国から新たな芫荽が届き次第、民に配ることにしよう。
栄養状態の悪い者には食料も一緒に与える。」
王世子の言葉にヒョンドクは頷いた。
「その香辛料問屋には、継続して芫荽を持ち帰らせるのだ。」
「御意。」
香辛料、香草の類は漢方薬としても多く使われている。
パクチーにそんな効能があったとは・・・
現代医療が施せなくとも、知識さえあれば、病には勝てる。
いや、勝たなければならない。
必ず、勝ってみせる。
王世子イ・ガク、君ならきっと、そう言うのだろう?
テヨンは空を見上げた。
300年前にパクチーだって!?
どっかで聞いたフレーズですねぇ。(笑)
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えーっと
いろいろ、補足でございます。
まず、パクチーは生薬としても用いられ、その生薬名を「芫荽」と書き、日本語では(げんすい)と読みます。
実際に麻疹の治療に用いられるそうです。
ただし、作中にも書きましたが、初期症状のうちにしか使えません。麻疹特有の発疹が表れている患者には使ってはいけないそうです。
56話で、ソ・ヒョンドク堤調が、「医術書には載ってない」「清国の民間伝承」と言ってるんですが・・・
いや、漢方の生薬としてガンガン用いられてたと思います。(汗)
そのことを書いた時には、パクチーが麻疹の治療薬として使われてた、なんて知らなかったんです。(汗)
だから、「麻疹に効く薬剤は、私の創作」なんてことも書いてたんです。
(実際には、その生薬があったんですね。)
当初、全く別の物を薬剤として用いようと思っていました。香辛料問屋に仕入れに行かせるのも、それの予定でした。
(ちなみに、それは陳皮にしようと思ってたんですけどね。)
パクチーが麻疹の治療に使われているなら、これを書かないわけにはいかぬ!と思ったわけですが・・・
最初は知らないで書いてたので、お話の整合性が取れていない部分が多々あります。
(ま、今に始まったこっちゃないですけど。汗)
いろいろ無理矢理な部分は、大目に見てやってください。m(__)m
「難攻不落の城」に着手した時、このお話までは書きたい!と思っていましたので、本日UPできて嬉しいです。
これから、ホントにキリン化期に突入です。(スミマセン)
皆さん、元気でいてくださいね。m(__)m

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遂に死者が出たと報告があったからである。
間に合わなかった。
一人の犠牲者も出したくなかった。
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ワクチンがあれば・・・
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「チョハ。恐れながら・・・嘆いてばかりはおられませぬぞ。」
ヒョンドクの言う通りなのだ。
後悔した所で死者は甦りはしない。これ以上の犠牲を出さないことの方が、今は重要だ。
「・・・分かっておる。」
国を総べ、守ることの責任が、今更ながらにその肩にのしかかる。
イ・ガク
死ぬな。・・・死ぬなよ。
彼は死にはしない。必ず王になる。
例え史実がそのことを証明していても、テヨンはその生還を願わざるを得なかったのである。
***
恵民署には、
食糧も、薬剤も届けられた。
その為、病人の世話に当たる者達も、回復に向かっている病人達も、十分な休息と栄養を補給できるようになっていた。
栄養不足と過労による免疫力低下は、罹患のリスクを高め、重症化と合併症を招く。
その懸念が少しでも解消されたことに、テヨンは少しほっとしていた。
「チョハ。こちらの煎じ薬をお召し上がりください。」
ヒョンドクは薬湯の入った器を差し出す。
「これは、何だ?」
クンクンと匂いを嗅いだ。
まさか、毒を盛られるなどとは思いもしないが、得体の知れない物を飲むわけにもいかない。
「
「芫荽?」
かすかにではあるが、独特な匂いがしている。
何処かで嗅いだことがあるような・・・。
「はい。麻疹の初期に用いれば重症化が防げ、まだ病を得ていない者には予防となります。
さすがは王宮の内医院ですな。もしやと思い調べてみれば、多少の備蓄がございました。」
なかなかに、手に入れるのは難しいらしい。
王と王族を守る内医院だからこそ備蓄されていたのだ。
ヒョンドクによれば、恵民署で従事している者、また初期症状の者にも飲ませたということだった。
「これが、麻疹に効くと言う薬剤か?」
「御意。」
「分かった。飲もう。」
テヨンはぐっと飲み干した。
口の中で広がる独特な匂い。
これは、好き嫌いに分かれそうだ。
薬を好きだと言う者もいないかも知れないが・・・
嫌いであっても薬ならば、と言うところだろう。
「ここを訪れる前に、できるだけ多くの芫荽を手に入れるよう、香辛料問屋に申し付けて参りました。」
「香辛料問屋?」
薬剤を?
香辛料問屋にか?
「芫荽は紛れもない生薬ではございますが、清国では、香草として料理にも用いられるのです。清国の商人につてを持つ香辛料問屋が、乾燥された芫荽を仕入れて参ります。」
なるほど。医食同源は漢方の基本。
ん?
香草?
この匂い・・・。
そうか!
これは、パクチーか!
「・・・チョハ?如何なされました?」
「いや・・・
して、その芫荽はいつ届く?」
「早ければ三日後に。」
「・・・そうか。王宮の芫荽は、まだあるのか?」
「芫荽は、既に重症化した者には使えませぬ。
まだ病を得る前の者、或いは病を得て間もない者にしか、その効果が期待できぬのです。
つまり、予防に使うと言うことではありますが・・・
内医院の備蓄だけでは、十分な量を確保はできませぬ。」
今ある物で賄えるなら、わざわざ清国から取り寄せなくても良かったのだろうが、予防に使うなら大量に必要になるに違いない。
今、正に苦しんでいる者達も救ってやらねばならないが、蔓延するのを防ぐのは重要なことだ。
「今、あるだけの芫荽を持って、発生源の村に参る。
清国から新たな芫荽が届き次第、民に配ることにしよう。
栄養状態の悪い者には食料も一緒に与える。」
王世子の言葉にヒョンドクは頷いた。
「その香辛料問屋には、継続して芫荽を持ち帰らせるのだ。」
「御意。」
香辛料、香草の類は漢方薬としても多く使われている。
パクチーにそんな効能があったとは・・・
現代医療が施せなくとも、知識さえあれば、病には勝てる。
いや、勝たなければならない。
必ず、勝ってみせる。
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テヨンは空を見上げた。
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いろいろ、補足でございます。
まず、パクチーは生薬としても用いられ、その生薬名を「芫荽」と書き、日本語では(げんすい)と読みます。
実際に麻疹の治療に用いられるそうです。
ただし、作中にも書きましたが、初期症状のうちにしか使えません。麻疹特有の発疹が表れている患者には使ってはいけないそうです。
56話で、ソ・ヒョンドク堤調が、「医術書には載ってない」「清国の民間伝承」と言ってるんですが・・・
いや、漢方の生薬としてガンガン用いられてたと思います。(汗)
そのことを書いた時には、パクチーが麻疹の治療薬として使われてた、なんて知らなかったんです。(汗)
だから、「麻疹に効く薬剤は、私の創作」なんてことも書いてたんです。
(実際には、その生薬があったんですね。)
当初、全く別の物を薬剤として用いようと思っていました。香辛料問屋に仕入れに行かせるのも、それの予定でした。
(ちなみに、それは陳皮にしようと思ってたんですけどね。)
パクチーが麻疹の治療に使われているなら、これを書かないわけにはいかぬ!と思ったわけですが・・・
最初は知らないで書いてたので、お話の整合性が取れていない部分が多々あります。
(ま、今に始まったこっちゃないですけど。汗)
いろいろ無理矢理な部分は、大目に見てやってください。m(__)m
「難攻不落の城」に着手した時、このお話までは書きたい!と思っていましたので、本日UPできて嬉しいです。
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~ Comment ~
Re: 星***様へ(11/10 拍手コメ分)
星***さま
イ・ガクの為にも、テヨンに頑張ってもらわなきゃなりませんね。
引き続き、イ・ガクの無事を祈りつつ(もちろん、無事に生還するけど)テヨンに応援をお願い致します。m(__)m
イ・ガクの為にも、テヨンに頑張ってもらわなきゃなりませんね。
引き続き、イ・ガクの無事を祈りつつ(もちろん、無事に生還するけど)テヨンに応援をお願い致します。m(__)m
Re: ほ**様へ
ほ**さま
> パクチーか!
そう!パクチーなんです!(笑)
> テヨン現代に戻ったら、仕事にパクチー活かすよね?w
もちのろん!(笑)
私も死者は出したくなかったんですが・・・
全く死者が出ないのも現実味に欠けて・・・←いや、そこ、お話だからね!
テヨンはますます決意を固めて頑張ることでしょう。
お蔭で、私も大変です。(苦笑)
キリン化でごめんなさ~い。m(__)m
> パクチーか!
そう!パクチーなんです!(笑)
> テヨン現代に戻ったら、仕事にパクチー活かすよね?w
もちのろん!(笑)
私も死者は出したくなかったんですが・・・
全く死者が出ないのも現実味に欠けて・・・←いや、そこ、お話だからね!
テヨンはますます決意を固めて頑張ることでしょう。
お蔭で、私も大変です。(苦笑)
キリン化でごめんなさ~い。m(__)m
Re: t*******様へ
t*******さま
そう!ここに掛かって来るんですよ!
もう、t*******さん、いつも私のツボを心得たコメントくださって・・・
愛してます!(≧▽≦)
そう!ここに掛かって来るんですよ!
もう、t*******さん、いつも私のツボを心得たコメントくださって・・・
愛してます!(≧▽≦)
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