「長編(完結)」
生まれ変わっても
生まれ変わっても 4
テヨンは時計を見た。
少し寄り道しても大丈夫だろうと踏んでハンドルを切る。
パク・ハの店を覗くと、何人かの客がいた。
パク・ハはにこやかに応対し、客もジュースを待ちながら楽しげに何か話している。
パク・ハはよく笑うようになった。元々明るくて溌剌としていた彼女だ。
味の評判も悪くなかったところに彼女の魅力が加わって、客も増えてきていた。
常連らしい一人の客がずっとパク・ハと話し込んでいる。
テヨンからは死角になって、女性であること以外にはどんな客かはよく分からなかったが、他の客が立ち去っても彼女だけはそこにいた。
テヨンがドアを押すと、いつものようにカランと音がした。
足を一歩踏み入れたところで立ち止まり、眉根を寄せる。
いらっしゃいませ、とパク・ハが元気に声をかけた。
「あら、テヨンさん」
そう呼び掛ける彼女の声に、聞きなれた声が重なって、やはり彼の名を呼んだ。
「なあに、テヨン。仕事中じゃないの?」
振り向いたのは、テヨンの大叔母のヨン・ソリだった。
テヨンはしまった、と思ったがもう遅い。諦めてパク・ハのいるカウンターまで進んだ。
「会社に戻る途中だよ。大叔母様はジュースを買いに来たの?」
「他に何しに来るのよ?」
ソリの言葉にテヨンは微笑んだだけで、パッカの邪魔をしてたんでしょう、とは言わなかった。
「もう、帰るわ。・・・じゃあ、パッカ、土曜日の7時ね。」
「はい。ありがとうございました。」
パク・ハは明るい声でソリを見送った。
帰宅をすれば、面白がってからかってくるに違いない。テヨンは溜息を吐いた。
そんな彼を見て、パク・ハは彼がリンゴジュースと言う前にリンゴを手に取り、空いている方の手で指差すと、にっと笑って見せる。
「あ、うん。」
パッカの笑顔が増えた。テヨンの笑みもこぼれる。
「今夜は遅くなりそうだから、来れそうもないんだ。」
「そんなこと、電話かメールで良かったのに。」
パク・ハは、はい、とテヨンにジュースのカップを渡した。
「通り道だったし・・・顔が見たかったんだ。」
テヨンはストレートに愛情表現をする。パク・ハは微笑んだ。
「もう、行くけど・・・土曜の7時って何?」
「テヨンさんの昇進祝いをするそうよ。私も喚ばれたの。」
「は?そんなの聞いてないよ。」
そもそも、ソリに昇進の話などしていない。
「おば様も、聞いてないって怒ってたわよ。」
パク・ハは頭の上に指で角を作って、笑った。
「もしかして、パッカが言ったの?」
ええ、いけなかった?とパク・ハがかわいく舌を出したので、ああ、いけなかった、と言って彼は彼女の額に口づけた。
「・・・他に誰か、喚んでるって?」
「ピョ社長も喚ぶそうよ。」
やっぱり。
テヨンは納得顔で笑みを浮かべる。そして、カウンターに紙幣を置くと、じゃあ、と手を挙げた。
パク・ハは置かれた紙幣を返そうとしたが、テヨンはその手を押し返した。
いいのに、と口を尖らせるパク・ハの額にもう一度口づける。
「ん、もう。・・・ありがとうございましたっ。」
最後の"た "に力を込めてパク・ハが笑った。
彼はカウンターを離れた。
カランと鐘が鳴る。
テヨンが手を振りながら店の前を通り過ぎて行く。パク・ハもまた、手を振って彼を見送った。
自分は幸せだ、とパク・ハは思う。
テヨンは愛情表現を惜しまない。深く愛されていると思う。
好きだ、と口に出すし、かわいい、きれいだ、と褒めてもくれる。
額や頬に優しいキスもくれる。
テヨンに「好き」の一言が言えないのはなぜだろう。
彼の顔を見ると嬉しくて、触れられると嬉しくて、会えないと寂しくて、こんなにも大切だと思うのに。
自分もテヨンを愛しているのか、と自問してみたならば、分からない、というのが彼女の答えだった。
テヨンその人を愛しているのか、イ・ガクの面影を重ねているだけなのか。
面影を重ねるも何も、テヨンはイ・ガクに違いない。
しかし、テヨンの方が、パク・ハは自分を身代わりとして見ている、と思って遠慮しているように見えるから、そう思わせる自分が悪いのだ、とパク・ハもまた遠慮してしまう。
テヨンさんは身代わりなんかじゃない。
そう伝えたいのに、どう伝えていいのか分からない。
素直に「好き」と言えばいいだけなのに。
少し寄り道しても大丈夫だろうと踏んでハンドルを切る。
パク・ハの店を覗くと、何人かの客がいた。
パク・ハはにこやかに応対し、客もジュースを待ちながら楽しげに何か話している。
パク・ハはよく笑うようになった。元々明るくて溌剌としていた彼女だ。
味の評判も悪くなかったところに彼女の魅力が加わって、客も増えてきていた。
常連らしい一人の客がずっとパク・ハと話し込んでいる。
テヨンからは死角になって、女性であること以外にはどんな客かはよく分からなかったが、他の客が立ち去っても彼女だけはそこにいた。
テヨンがドアを押すと、いつものようにカランと音がした。
足を一歩踏み入れたところで立ち止まり、眉根を寄せる。
いらっしゃいませ、とパク・ハが元気に声をかけた。
「あら、テヨンさん」
そう呼び掛ける彼女の声に、聞きなれた声が重なって、やはり彼の名を呼んだ。
「なあに、テヨン。仕事中じゃないの?」
振り向いたのは、テヨンの大叔母のヨン・ソリだった。
テヨンはしまった、と思ったがもう遅い。諦めてパク・ハのいるカウンターまで進んだ。
「会社に戻る途中だよ。大叔母様はジュースを買いに来たの?」
「他に何しに来るのよ?」
ソリの言葉にテヨンは微笑んだだけで、パッカの邪魔をしてたんでしょう、とは言わなかった。
「もう、帰るわ。・・・じゃあ、パッカ、土曜日の7時ね。」
「はい。ありがとうございました。」
パク・ハは明るい声でソリを見送った。
帰宅をすれば、面白がってからかってくるに違いない。テヨンは溜息を吐いた。
そんな彼を見て、パク・ハは彼がリンゴジュースと言う前にリンゴを手に取り、空いている方の手で指差すと、にっと笑って見せる。
「あ、うん。」
パッカの笑顔が増えた。テヨンの笑みもこぼれる。
「今夜は遅くなりそうだから、来れそうもないんだ。」
「そんなこと、電話かメールで良かったのに。」
パク・ハは、はい、とテヨンにジュースのカップを渡した。
「通り道だったし・・・顔が見たかったんだ。」
テヨンはストレートに愛情表現をする。パク・ハは微笑んだ。
「もう、行くけど・・・土曜の7時って何?」
「テヨンさんの昇進祝いをするそうよ。私も喚ばれたの。」
「は?そんなの聞いてないよ。」
そもそも、ソリに昇進の話などしていない。
「おば様も、聞いてないって怒ってたわよ。」
パク・ハは頭の上に指で角を作って、笑った。
「もしかして、パッカが言ったの?」
ええ、いけなかった?とパク・ハがかわいく舌を出したので、ああ、いけなかった、と言って彼は彼女の額に口づけた。
「・・・他に誰か、喚んでるって?」
「ピョ社長も喚ぶそうよ。」
やっぱり。
テヨンは納得顔で笑みを浮かべる。そして、カウンターに紙幣を置くと、じゃあ、と手を挙げた。
パク・ハは置かれた紙幣を返そうとしたが、テヨンはその手を押し返した。
いいのに、と口を尖らせるパク・ハの額にもう一度口づける。
「ん、もう。・・・ありがとうございましたっ。」
最後の"た "に力を込めてパク・ハが笑った。
彼はカウンターを離れた。
カランと鐘が鳴る。
テヨンが手を振りながら店の前を通り過ぎて行く。パク・ハもまた、手を振って彼を見送った。
自分は幸せだ、とパク・ハは思う。
テヨンは愛情表現を惜しまない。深く愛されていると思う。
好きだ、と口に出すし、かわいい、きれいだ、と褒めてもくれる。
額や頬に優しいキスもくれる。
テヨンに「好き」の一言が言えないのはなぜだろう。
彼の顔を見ると嬉しくて、触れられると嬉しくて、会えないと寂しくて、こんなにも大切だと思うのに。
自分もテヨンを愛しているのか、と自問してみたならば、分からない、というのが彼女の答えだった。
テヨンその人を愛しているのか、イ・ガクの面影を重ねているだけなのか。
面影を重ねるも何も、テヨンはイ・ガクに違いない。
しかし、テヨンの方が、パク・ハは自分を身代わりとして見ている、と思って遠慮しているように見えるから、そう思わせる自分が悪いのだ、とパク・ハもまた遠慮してしまう。
テヨンさんは身代わりなんかじゃない。
そう伝えたいのに、どう伝えていいのか分からない。
素直に「好き」と言えばいいだけなのに。
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