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「長編(完結)」
生まれ変わっても

生まれ変わっても 6

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テヨンはパク・ハを伴って自宅へと戻ってきた。

リビングに入るとパク・ハは、わぁ、と言って辺りを見廻す。
両手を合わせて、すごぉい、と喜んだ。

金銀のモールは部屋の明かりをキラキラと反射していた。更に、テーブルの上から部屋の隅々に至るまで、様々な花で飾り付けられている。
天井の中央には、まるでミラーボールのような久寿玉が吊り下げられてもいる。

NYでお友達のバースデーパーティーに呼ばれた時みたいよ、楽しそうに耳打ちしてくるパク・ハを見てテヨンはホッとした。

パッカが、こういうのが好きみたいで良かった。

脚立に昇ってまで飾り付けをした甲斐があるというものだ。


「さあ、どうぞ。テヨンとパク・ハはそっちに座って。」

「お招きありがとうございます。珍しくはないですが、店のジュースを持ってきました。」

パク・ハが差し出す紙袋を受け取って、ソリは、ありがとう、気が利くわね、と微笑んだ。

既に着席していたテクスに会釈をして、向かいの席に座ろうとした時、テヨンが後ろで椅子を引いてくれた。
パク・ハが腰を下ろすタイミングで椅子を前に押してくれる。
パク・ハが、ありがとう、と言うと、どういたしまして、お嬢様、とテヨンが笑った。

それを見たソリは、テヨンはジェントルマンね、と言って隣に座ったままのテクスを見た。ソリが座ろうとしてもテクスは立ち上がる素振りも見せない。

テクスは、ソリからテヨンの昇進祝いをすると聞かされたとき、祝うほどのこともないと思った。しかし、パク・ハも招待したと聞いて、二人の様子を見ておくか、と興味を覚えてやって来たのだった。

テヨンはパク・ハの尻に敷かれている、というのがテクスの感想だ。

テヨンは、社長が自分をどう評価しているかなど考えもしない。
素早くソリの後ろに回り込んで、パク・ハにしたのと同じように座り易いようにエスコートしてやる。
さすがNYで長く生活していただけはある、というところか。

テヨンも着席し、さあ、乾杯しましょう、とソリがシャンパンの栓を抜こうとした。

「大叔母様、僕は飲めないよ。パッカを車で送らなきゃ。」

「あら、泊まっていけばいいじゃないの。」

ソリの言葉にテヨンもパク・ハも固まってしまった。

「部屋なんて、いっぱいあるんだし。」

ああ、そういうこと・・・。

テヨンもパク・ハも全く同じことを思ったのだが、お互いにそうと分かろうはずもない。

「明日もお店があるので、今夜は帰らないと・・・。」

「じゃあ、テヨンだけジュース?」

「私はタクシーで帰りますから。」

「・・・俺も車だ。」

「社長は飲んでください。僕が二人を送ります。」

テクスは頭を振った。

「車を置いて行けと?・・・みんなジュースでいいじゃないか。」

だいたい、この二人の車に乗る?・・・冗談じゃない。

えぇーとソリは肩を落としたが、今日の主役であるテヨンを差し置いて自分だけシャンパンで乾杯することもできない。
パク・ハの持参したジュースで乾杯ということになった。


社長の掛け声で乾杯をした。シャンパングラスにリンゴジュースで。
せめてスパークリングだったなら格好は付いただろうが、仕方がない。

「ところで、これはいつ割るの?」

久寿玉を見上げてテヨンが訊いた。

「今でいいんじゃない?」

「段取りも決めないで用意したのか?」

と呆れるテクス。

「わくわくしますね。」


テヨンが久寿玉のひもを、グイッと勢いよく引いた。

銀色の玉は、皆の頭上でパカッと割れて、紙吹雪が舞う。
ソリとパク・ハは大喜びで、おめでとう、と口々に言いながら拍手をした。テクスは無言で女性二人に続いて拍手をする。

垂れ幕には、「慶祝!経営企画本部長」の文字とテヨンの名前まで書かれてある。

特注だったのか、これ。
しかも、この紙吹雪。掃除が大変だ。

見れば、テーブルに所狭しと置かれたごちそうの上にも紙吹雪が落ちている。
テヨンは、思わず苦笑した。

パク・ハは、大変だわ、と言いながら料理の上の紙吹雪を取り除こうとしていた。
彼女がとても楽しそうに笑うので、皆も釣られて一緒に笑った。


じゃ、食べ始める前に、とソリが言い、まだ何かあるのか?とテクスがげんなりした声を出す。

「プレゼントよ、プレゼント。お祝いだもの。」

ソリは、テヨンにリボンの掛かった長方形の箱を渡した。
テヨンは、ありがとうございます、と言って蓋を取る。
中身はネクタイだった。

「早く言ってくれれば、スーツの一着も新調したのに。」

とソリは不満顔だ。

テヨンは、スーツはあまり着ないから、と言ったが、スーツを着ないということは、ネクタイもしない、ということではないか。自らの失言に気付いて、ソリをちらりと見る。
幸いソリは気にしてないようだった。

パク・ハは、そんなテヨンの様子に気付いてくすくすと笑いながら、テヨンに小さな鉢植えを渡す。
紫のかわいい花がついた、ラベンダーだった。

「オフィスに置いて。リラックス効果があるの。」

テヨンはラベンダーの香りをくんくんと嗅いで、ありがとうと言った。
その日一番の笑顔だったかもしれない。

テクスはふんと鼻を鳴らした。

「俺もネクタイだ。」

テクスまで贈り物を用意してくるとは、テヨンは驚きながらも、ありがとうございます、と受け取った。
ネクタイにしては、箱が正方形に近い。
内心、首をかしげながら蓋を開ける。

中から現れたのは、ネクタイはネクタイでも、蝶ネクタイだった。
しかも、ショッキングピンクのド派手な代物だ。

こんなの、どこで見つけてくるんだ?
・・・だいたい、いつ、どういう場で着けろと?

せめて黒か白なら、着用のチャンスもあっただろう。

テヨンは苦笑しながら、再度、ありがとうございます、と言った。

パク・ハは隣から、テヨンの手の中を見ていたのだが、あやうく吹き出すところだった。
どうにか吹き出しそうなのを堪えて、テヨンの顔を見る。
しかし、困ったような表情のテヨンを見て余計に笑いが込み上げてくる。

「皆さん、ありがとうございます。」

テヨンが突然立ち上がったので、ソリもテクスもそちらに視線を移した。
その間にパク・ハは息を整えると、テヨンに拍手を送った。続いてソリとテクスも拍手を送る。

大丈夫?

ええ、ありがとう。

目で会話する二人をテクスは見逃さなかったが、知らんぷりをする。


さあ、食べましょう、とソリが言った。

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