「長編(完結)」
生まれ変わっても
生まれ変わっても 9
パク・ハは真っ直ぐに見つめてくるテヨンを見つめ返した。
泣いちゃダメ。
目を逸らしてもダメ。
言葉を発してしまったら、涙が零れ落ちてしまいそうで、彼女は無言のままゆっくりと頷いた。
彼女が車の中でずっと饒舌だったわけも、やたらとシャンパンを口に運んでいたわけも、テヨンは見抜いていた。
「ごめん。」
テヨンがささやくように、そう言った。
彼は "待つ" つもりだった。パク・ハの、心の中のイ・ガクの残像が薄れてしまうまで。
だから、イ・ガクを思い出させてしまうようなことは話題にしなかった。
いつも慎重に言葉を選んできたつもりだ。
パク・ハもまたイ・ガクに関わることを口にしたことがなかった。
テヨンが、イ・ガクのことを意識していると感じ取っていたから。
テヨンは「テヨン」として、パク・ハを愛し、愛されたいと思った。
パク・ハは、「イ・ガク」であれ、「テヨン」であれ、ただ一人の男性を愛したかった。
お互いに想い合いながらも微妙なズレがあった。
そして、そのズレの方を、お互いが愛されているという事実よりも、更に大きく感じ取ってしまっていた。
テヨンは、自分ではない男性を想っているらしいパク・ハの姿が悩ましい。
パク・ハは、同じ人物でありながら、別々の二人の人格として出会ってしまった恋人を狂おしく求めている。
・・・どうすればいいんだ?
彼にそっくりの僕が傍にいるから、パッカはずっと苦しんでる。
・・・どうすればいいの?
同じあなただと伝えたら、受け入れてもらえるのかしら。
「ごめんなさい。」
パク・ハもそう言った。
互いが、互いに責任のないことで謝っていた。
沈黙が、二人の間を横たわる。
沈黙を破ったのは、テヨンだった。
「パッカ。・・・イ・ガクがどこに行ってしまったのか、君は、知ってるの?」
パク・ハは大きく目を見開いた。
何と答えていいのか分からない。
・・・そうか。やはり知ってるんだ ね。君は、彼を追いかけたい?
「ごめん。言いたくないなら、いいんだ。」
パク・ハの手首を掴んでいたテヨンの手から力が抜けた。
「イ・ガクは、本当に戻ってはこないの?」
「ええ。『イ・ガク』には、もう二度と会えないわ。」
・・・目の前にあなた自身がいるんですもの。
今度は即答する彼女を見て、テヨンは戸惑ったような表情を浮かべたが、それは一瞬で掻き消えた。
・・・身代わりでも何でもいいじゃないか。
それで、彼女が僕の隣に居てくれるのなら。
彼は、またパク・ハの左手を取った。今度は両手で優しく包み込む。
「パッカ。これだけは覚えておいてくれないか。誓って言うけど、僕は、君を一人置き去りにして、消えたりなんかしない。」
消えたりなんかしない。絶対に、だ。
「・・・すき、よ。」
「え?」
「あなたが好きなの。愛してる。」
パク・ハの唇が愛の言葉を紡いだ。
テヨンは握っていたパク・ハの左手を引いた。反動でパク・ハはテヨンの方に倒れ込む。
彼は、彼女を自分の胸にしっかりと抱き寄せた。
両腕でしっかりと抱きしめて、彼女の髪に口づける。パク・ハの体温を感じて胸の高鳴りを覚えた。
そして、パク・ハの両肩をゆっくりと押して、彼女の身体を自身の胸から離すと、愛の言葉をくれた恋人の顔をじっと見つめた。パク・ハの瞳は、先刻の愛の言葉が、間違いなく真実であると訴えている。
「愛してるよ。」
テヨンはゆっくりと顔を近づけ、パク・ハの唇に自身の唇を重ねる。
ずっと触れたかったその部分の甘さを確かめるように、彼はパク・ハの唇を夢中で食んだ。
パク・ハもそのほっそりとした白い腕をテヨンの首に絡ませて、されるがままに、彼の口づけを受け入れた。
静まり返った闇の中、車内で、二つの人影が一つになったのを見る者は、誰もいない。
泣いちゃダメ。
目を逸らしてもダメ。
言葉を発してしまったら、涙が零れ落ちてしまいそうで、彼女は無言のままゆっくりと頷いた。
彼女が車の中でずっと饒舌だったわけも、やたらとシャンパンを口に運んでいたわけも、テヨンは見抜いていた。
「ごめん。」
テヨンがささやくように、そう言った。
彼は "待つ" つもりだった。パク・ハの、心の中のイ・ガクの残像が薄れてしまうまで。
だから、イ・ガクを思い出させてしまうようなことは話題にしなかった。
いつも慎重に言葉を選んできたつもりだ。
パク・ハもまたイ・ガクに関わることを口にしたことがなかった。
テヨンが、イ・ガクのことを意識していると感じ取っていたから。
テヨンは「テヨン」として、パク・ハを愛し、愛されたいと思った。
パク・ハは、「イ・ガク」であれ、「テヨン」であれ、ただ一人の男性を愛したかった。
お互いに想い合いながらも微妙なズレがあった。
そして、そのズレの方を、お互いが愛されているという事実よりも、更に大きく感じ取ってしまっていた。
テヨンは、自分ではない男性を想っているらしいパク・ハの姿が悩ましい。
パク・ハは、同じ人物でありながら、別々の二人の人格として出会ってしまった恋人を狂おしく求めている。
・・・どうすればいいんだ?
彼にそっくりの僕が傍にいるから、パッカはずっと苦しんでる。
・・・どうすればいいの?
同じあなただと伝えたら、受け入れてもらえるのかしら。
「ごめんなさい。」
パク・ハもそう言った。
互いが、互いに責任のないことで謝っていた。
沈黙が、二人の間を横たわる。
沈黙を破ったのは、テヨンだった。
「パッカ。・・・イ・ガクがどこに行ってしまったのか、君は、知ってるの?」
パク・ハは大きく目を見開いた。
何と答えていいのか分からない。
・・・そうか。やはり知ってるんだ ね。君は、彼を追いかけたい?
「ごめん。言いたくないなら、いいんだ。」
パク・ハの手首を掴んでいたテヨンの手から力が抜けた。
「イ・ガクは、本当に戻ってはこないの?」
「ええ。『イ・ガク』には、もう二度と会えないわ。」
・・・目の前にあなた自身がいるんですもの。
今度は即答する彼女を見て、テヨンは戸惑ったような表情を浮かべたが、それは一瞬で掻き消えた。
・・・身代わりでも何でもいいじゃないか。
それで、彼女が僕の隣に居てくれるのなら。
彼は、またパク・ハの左手を取った。今度は両手で優しく包み込む。
「パッカ。これだけは覚えておいてくれないか。誓って言うけど、僕は、君を一人置き去りにして、消えたりなんかしない。」
消えたりなんかしない。絶対に、だ。
「・・・すき、よ。」
「え?」
「あなたが好きなの。愛してる。」
パク・ハの唇が愛の言葉を紡いだ。
テヨンは握っていたパク・ハの左手を引いた。反動でパク・ハはテヨンの方に倒れ込む。
彼は、彼女を自分の胸にしっかりと抱き寄せた。
両腕でしっかりと抱きしめて、彼女の髪に口づける。パク・ハの体温を感じて胸の高鳴りを覚えた。
そして、パク・ハの両肩をゆっくりと押して、彼女の身体を自身の胸から離すと、愛の言葉をくれた恋人の顔をじっと見つめた。パク・ハの瞳は、先刻の愛の言葉が、間違いなく真実であると訴えている。
「愛してるよ。」
テヨンはゆっくりと顔を近づけ、パク・ハの唇に自身の唇を重ねる。
ずっと触れたかったその部分の甘さを確かめるように、彼はパク・ハの唇を夢中で食んだ。
パク・ハもそのほっそりとした白い腕をテヨンの首に絡ませて、されるがままに、彼の口づけを受け入れた。
静まり返った闇の中、車内で、二つの人影が一つになったのを見る者は、誰もいない。
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