「長編(完結)」
生まれ変わっても
生まれ変わっても 13
テヨンはずっとまともに眠っていなかったから、ベッドに入った途端に眠りに落ちた。
そして、例の夢は始まった。
今回はテヨンがパク・ハの手を握っていた。いつも通り袞龍袍(コルリョンボ)をその身に纏って。
しばらくパク・ハと見つめ合っていたが、テヨンの手が透け始める。
これもいつも通りだ。
そしてパク・ハに触れることができなくて、テヨンの腕が空を切った。
彼女の顔が哀しみでいっぱいになってくる。
いつもなら、パク・ハの名を呼んで、目を覚ます。
込み上げてくる不安に、テヨンはパク・ハの名を呼びたくなるのをぐっと堪えた。
やがて、手の先からだんだん消えていき、上腕まで薄れていく。
腰から下も消えていた。
テヨンは更なる不安に襲われた。
このままこの世から自分自身が消え失せてしまうのではないか、という焦りと不安。
彼女の名を呼べば良かった、とテヨンは後悔した。
いつもなら、その自分の声で目が覚める。
このまま、夢の世界で消え失せて、目を覚まさないかも知れない、と思った。
夢だと自覚していて、夢の中ならば身体が消えることもあり得そうなものだが、「イ・ガクが消えた」と聞かされ、夢の中とは言え、その様子を何度も見せられたテヨンには、もう、夢も現実もごちゃ混ぜになって、冷静な判断を下すことができない。
夢であっても、彼には、今、体感していることこそが「事実」なのだ。
僕は、彼女を置き去りにして消えたりしないと約束したのに・・・。
『パッカ、ごめん。』
テヨンは確かにそう言ったのに、声という音を作り出せていなかった。
だんだん視界がぼやけてくる。
自分という存在が、完全に消えようとしている過程なのだろうか。
目の前にいるはずのパク・ハの姿が霞んでいく。
パク・ハの唇が動いているのが分かったが、声として耳に届いてこない。
パッカ!
その叫びは、思念だけになっていた。
袞龍袍を纏ったテヨンは、完全に消え失せてしまった。
「・・ハ。」
明確な言葉として聞き取れないが、パク・ハの声が聞こえたような気がした。
テヨンは、自分は身体を失い、魂だけになったのだと思った。
しかし、手だったはずの部分に温もりを感じる。
頬と思われるところに涙が伝っているのを感じる。
身体はなくても感覚は残るのか・・・。
テヨンは目を開けた。
開ける目があったことに驚いた。
彼はパク・ハの手を握って立っていた。あの日、パク・ハに会いに行った時、そのままの服装で。
「パッカ!」
叫んで、彼女の手を引き、抱き寄せた。
声も出せたし、確実にパク・ハを胸に抱きしめることもできた。
「パッカ。」
確認するように、もう一度彼女の名を呼んだ時、パク・ハが自分の腕の中から自分を見上げているのを見た。
・・・良かった。
夢には続きがあったのだ。王世子に扮する自分が消えた後、現代の服装の自分がパク・ハの手を取る。
もう一つのパターンの夢と同じ成り行き。
掻き消えてしまうイ・ガクを追体験させられた。
しかしながら、どういう意味があるのかはさっぱり分からない。
テヨンが首を傾げた時、彼はパク・ハから遠ざかっていた。
少し離れた位置から、パク・ハと袞龍袍を纏うイ・ガクを見ている。
また、最初から?
最初から、というのもおかしな表現だが、もう一方の夢が始まったのだから仕方がない。
やはり、イ・ガクの身体が透け始める。
テヨンは生唾をごくりと飲み込んで、事の成り行きを見守った。
先刻の自分と同じように、手や足の先から徐々に消えていくイ・ガク。
パク・ハの表情を見ればいたたまれなくなる。
それでも無言で見つめていると、完全にイ・ガクが消えてしまった。
そして、次の瞬間には、パク・ハの手を取る自分がいた。
イ・ガクにしろ、テヨンにしろ、王世子姿の人物が消えると、最終的にパク・ハの手を取っているのは現代風のテヨンになる。
イ・ガクはもう現れないということなのだろうか?
・・・なんで、消えるときは王世子の格好なんだ?
結局、何も分からない。
その時、パク・ハがテヨンに呼びかけた。
「・・・チョハ。」
そして、例の夢は始まった。
今回はテヨンがパク・ハの手を握っていた。いつも通り袞龍袍(コルリョンボ)をその身に纏って。
しばらくパク・ハと見つめ合っていたが、テヨンの手が透け始める。
これもいつも通りだ。
そしてパク・ハに触れることができなくて、テヨンの腕が空を切った。
彼女の顔が哀しみでいっぱいになってくる。
いつもなら、パク・ハの名を呼んで、目を覚ます。
込み上げてくる不安に、テヨンはパク・ハの名を呼びたくなるのをぐっと堪えた。
やがて、手の先からだんだん消えていき、上腕まで薄れていく。
腰から下も消えていた。
テヨンは更なる不安に襲われた。
このままこの世から自分自身が消え失せてしまうのではないか、という焦りと不安。
彼女の名を呼べば良かった、とテヨンは後悔した。
いつもなら、その自分の声で目が覚める。
このまま、夢の世界で消え失せて、目を覚まさないかも知れない、と思った。
夢だと自覚していて、夢の中ならば身体が消えることもあり得そうなものだが、「イ・ガクが消えた」と聞かされ、夢の中とは言え、その様子を何度も見せられたテヨンには、もう、夢も現実もごちゃ混ぜになって、冷静な判断を下すことができない。
夢であっても、彼には、今、体感していることこそが「事実」なのだ。
僕は、彼女を置き去りにして消えたりしないと約束したのに・・・。
『パッカ、ごめん。』
テヨンは確かにそう言ったのに、声という音を作り出せていなかった。
だんだん視界がぼやけてくる。
自分という存在が、完全に消えようとしている過程なのだろうか。
目の前にいるはずのパク・ハの姿が霞んでいく。
パク・ハの唇が動いているのが分かったが、声として耳に届いてこない。
パッカ!
その叫びは、思念だけになっていた。
袞龍袍を纏ったテヨンは、完全に消え失せてしまった。
「・・ハ。」
明確な言葉として聞き取れないが、パク・ハの声が聞こえたような気がした。
テヨンは、自分は身体を失い、魂だけになったのだと思った。
しかし、手だったはずの部分に温もりを感じる。
頬と思われるところに涙が伝っているのを感じる。
身体はなくても感覚は残るのか・・・。
テヨンは目を開けた。
開ける目があったことに驚いた。
彼はパク・ハの手を握って立っていた。あの日、パク・ハに会いに行った時、そのままの服装で。
「パッカ!」
叫んで、彼女の手を引き、抱き寄せた。
声も出せたし、確実にパク・ハを胸に抱きしめることもできた。
「パッカ。」
確認するように、もう一度彼女の名を呼んだ時、パク・ハが自分の腕の中から自分を見上げているのを見た。
・・・良かった。
夢には続きがあったのだ。王世子に扮する自分が消えた後、現代の服装の自分がパク・ハの手を取る。
もう一つのパターンの夢と同じ成り行き。
掻き消えてしまうイ・ガクを追体験させられた。
しかしながら、どういう意味があるのかはさっぱり分からない。
テヨンが首を傾げた時、彼はパク・ハから遠ざかっていた。
少し離れた位置から、パク・ハと袞龍袍を纏うイ・ガクを見ている。
また、最初から?
最初から、というのもおかしな表現だが、もう一方の夢が始まったのだから仕方がない。
やはり、イ・ガクの身体が透け始める。
テヨンは生唾をごくりと飲み込んで、事の成り行きを見守った。
先刻の自分と同じように、手や足の先から徐々に消えていくイ・ガク。
パク・ハの表情を見ればいたたまれなくなる。
それでも無言で見つめていると、完全にイ・ガクが消えてしまった。
そして、次の瞬間には、パク・ハの手を取る自分がいた。
イ・ガクにしろ、テヨンにしろ、王世子姿の人物が消えると、最終的にパク・ハの手を取っているのは現代風のテヨンになる。
イ・ガクはもう現れないということなのだろうか?
・・・なんで、消えるときは王世子の格好なんだ?
結局、何も分からない。
その時、パク・ハがテヨンに呼びかけた。
「・・・チョハ。」
← 【 お礼画像と、時々SS 掲載してます 】
↑↑↑
読んだよ!のしるしにポチッとしてねん。
↓↓↓ ツイッターに更新情報を投稿中
Follow @arichan6002
↑↑↑
読んだよ!のしるしにポチッとしてねん。

↓↓↓ ツイッターに更新情報を投稿中
Follow @arichan6002
- 生まれ変わってもの関連記事
-
- 生まれ変わっても 14
- 生まれ変わっても 13 « «
- 生まれ変わっても 12
~ Comment ~