「長編(完結)」
目覚めたテヨン
目覚めたテヨン 4
チャン会長を外まで見送って、社長と僕は応接室に戻った。
「驚いたな。パク・ハさんが、チャン会長の娘、インジュ嬢 だったとは。」
僕は思わず、社長をキッと睨んだ。
「それは、こっちのセリフです!知らなかったんですか?」
仮にも亡き会長の孫が、会社の株主の娘と親密になってるのに、社長が知らないって・・・。
そもそも当の本人が知らないって・・・ありえないよ。
本当に、僕が彼女と付き合ってたとか・・・。
なんてことはあるはずがない・・・。
NYにいた時も、その前も、女の子に関心を向けたことがない。
いくら見覚えがあるとしても・・・。
記憶障害があるとしても・・・。
困惑している僕をよそに、社長は何かをじっと考えていたが、突然 ハッとしたように僕を見た。
「そうか、そういうことだったのか。」
「・・・何です?」
社長はふーっと息を吐いた。
「また一つ、テムの悪事を知ることになるな。」
今まで社長は、必要に応じて、少しずつテム従兄さんがしてきたことを僕に話して聞かせていた。
それは、社長の僕に対する気遣いだった。
「・・・いいか?まずは、もう一度整理するぞ。」
そう前置きして社長は静かに説明し始めた。
////////////////////////////////////////////////////////////////////////////
祖母の秘書だったホン・セナという女性は、テム従兄さんと恋人同士だったが、それは誰も知らない関係だった。
彼らは、チャン会長が娘を探していると聞いて、その娘を探し出す。
しかし、彼らは、会長がその娘に株を譲渡しようとしている と知って、本当の娘の所在を隠した。
そして、ホン秘書こそその娘だ、 と嘘をつく。
実はホン秘書もチャン会長の娘であり、その事実は会長自身も知っていた。
探していたのは、ホン秘書の妹の方だったのだ。
そうとは知らないホン秘書は、実の母親の前で、自身の妹のふりをし続けた。
チャン会長は、テム従兄さんの企みを知り、不信感を抱き、僕(の身代わり)の方に肩入れした。
というのが、チャン会長と会う以前に聞いていた話だった。
「そう言えば、その頃 パク・ハさんがチャン会長の秘書のようなことをしていたんだ。」
「それで、パク・ハさんが娘だと知ったと?」
「いや。」
社長はかぶりを振った。
「それは分からないが・・・パク・ハさんとテヨンが、いつも一緒なのを、知っていたんだよ。 ・・・屋根部屋で同居していたこともな。」
「つまり、おばあ様・・・ヨ会長 の孫の恋人を秘書に雇ったつもりでいたら、後になって、それが娘だと気付いた、と?」
「そういうことだ。・・・彼が去ってお前がまだ眠っていた時、『ヨン・テヨン』は体調を崩して再度入院した、と公には発表した。その時、チャン会長はお前の様子を知りたがって、見舞いに来るとまで言い出したんだ。 俺は、ヨ会長の事件に長女が関わっていることで、責任を感じているのかと思ってたんだが、・・・今思えば、次女の恋人を気遣っていたんだな。」
社長は僕をちらりと見て、コホンと咳払いをした。
「ともかく、話を戻すぞ。・・・チャン会長が、ホン秘書の母親として名乗りを上げた後、ヨ会長の事件が起こった。」
僕は拳をギュッと握った。
テム従兄さんは、従兄さんの悪事の証拠が集められたPCを僕の部屋で見つけた。
あせった従兄さんは、ホン秘書にPCを持ち出すよう指示して・・・それを見咎めた祖母は、ホン秘書と揉み合いになって・・・。
以前聞いた話を思い出し、握った拳に更に力が入る。
「会長の葬儀も終わって遺言執行という時になって、テムが、テヨンを詐欺師だと通報したことは、前に話したな?」
「はい。でも、彼はぎりぎりになって現れ、会社と、おばあ様の財産を、守った・・・。」
「そうだ。そしてまだ続きがある。・・・パク・ハさんのことだ。」
今まで知らなかった事実を、社長が語り始めた。
「驚いたな。パク・ハさんが、チャン会長の娘、インジュ嬢 だったとは。」
僕は思わず、社長をキッと睨んだ。
「それは、こっちのセリフです!知らなかったんですか?」
仮にも亡き会長の孫が、会社の株主の娘と親密になってるのに、社長が知らないって・・・。
そもそも当の本人が知らないって・・・ありえないよ。
本当に、僕が彼女と付き合ってたとか・・・。
なんてことはあるはずがない・・・。
NYにいた時も、その前も、女の子に関心を向けたことがない。
いくら見覚えがあるとしても・・・。
記憶障害があるとしても・・・。
困惑している僕をよそに、社長は何かをじっと考えていたが、突然 ハッとしたように僕を見た。
「そうか、そういうことだったのか。」
「・・・何です?」
社長はふーっと息を吐いた。
「また一つ、テムの悪事を知ることになるな。」
今まで社長は、必要に応じて、少しずつテム従兄さんがしてきたことを僕に話して聞かせていた。
それは、社長の僕に対する気遣いだった。
「・・・いいか?まずは、もう一度整理するぞ。」
そう前置きして社長は静かに説明し始めた。
////////////////////////////////////////////////////////////////////////////
祖母の秘書だったホン・セナという女性は、テム従兄さんと恋人同士だったが、それは誰も知らない関係だった。
彼らは、チャン会長が娘を探していると聞いて、その娘を探し出す。
しかし、彼らは、会長がその娘に株を譲渡しようとしている と知って、本当の娘の所在を隠した。
そして、ホン秘書こそその娘だ、 と嘘をつく。
実はホン秘書もチャン会長の娘であり、その事実は会長自身も知っていた。
探していたのは、ホン秘書の妹の方だったのだ。
そうとは知らないホン秘書は、実の母親の前で、自身の妹のふりをし続けた。
チャン会長は、テム従兄さんの企みを知り、不信感を抱き、僕(の身代わり)の方に肩入れした。
というのが、チャン会長と会う以前に聞いていた話だった。
「そう言えば、その頃 パク・ハさんがチャン会長の秘書のようなことをしていたんだ。」
「それで、パク・ハさんが娘だと知ったと?」
「いや。」
社長はかぶりを振った。
「それは分からないが・・・パク・ハさんとテヨンが、いつも一緒なのを、知っていたんだよ。 ・・・屋根部屋で同居していたこともな。」
「つまり、おばあ様・・・ヨ会長 の孫の恋人を秘書に雇ったつもりでいたら、後になって、それが娘だと気付いた、と?」
「そういうことだ。・・・彼が去ってお前がまだ眠っていた時、『ヨン・テヨン』は体調を崩して再度入院した、と公には発表した。その時、チャン会長はお前の様子を知りたがって、見舞いに来るとまで言い出したんだ。 俺は、ヨ会長の事件に長女が関わっていることで、責任を感じているのかと思ってたんだが、・・・今思えば、次女の恋人を気遣っていたんだな。」
社長は僕をちらりと見て、コホンと咳払いをした。
「ともかく、話を戻すぞ。・・・チャン会長が、ホン秘書の母親として名乗りを上げた後、ヨ会長の事件が起こった。」
僕は拳をギュッと握った。
テム従兄さんは、従兄さんの悪事の証拠が集められたPCを僕の部屋で見つけた。
あせった従兄さんは、ホン秘書にPCを持ち出すよう指示して・・・それを見咎めた祖母は、ホン秘書と揉み合いになって・・・。
以前聞いた話を思い出し、握った拳に更に力が入る。
「会長の葬儀も終わって遺言執行という時になって、テムが、テヨンを詐欺師だと通報したことは、前に話したな?」
「はい。でも、彼はぎりぎりになって現れ、会社と、おばあ様の財産を、守った・・・。」
「そうだ。そしてまだ続きがある。・・・パク・ハさんのことだ。」
今まで知らなかった事実を、社長が語り始めた。
~ Comment ~